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ロッシーニの歌劇「イタリアのトルコ人」

ロイヤルオペラの新演出を観てきました。
なんとこのオペラ、長い歴史を誇るロイヤルオペラでも初登場だそうです。5月28日が初日で私の行った6月6日が4回目の公演です。

キャストは、
Selim: Ildebrando d'Arcangelo
Fiorilla: Cecilia Bartoli
Prosdocimo: Thomas Allen
Don Geronio: Alessandro Corbelli
Don Narciso: Barry Banks
Zaida: Heather Shipp

Conductor: Adam Fischer
Directors: Moshe Leiser and Patrice Caurier
Set Designs: Christian Fenouillat
Costume Designs: Agostino Cavalca
Lighting: Christophe Forey

あらすじ:ナポリの金持ち、Geronioの妻Fiorillaは奔放な浮気女。そこにトルコから着いたばかりのSelimに一目ぼれ。亭主とボーイフレンドNarcisoは怒っていろいろ画策します。そこにSelimと昔婚約していたトルコ娘Zaidaもからんでどたばた喜劇が始まりますが、最後はそれぞれもとの鞘に収まってめでたしという他愛無い筋です。傍観者として、オペラブッファを書こうとしている詩人Prosdocimoが自分の好む筋書きに沿った進行役のような振る舞いを見せますが、恐らくロッシーニ自身を模したものでしょう。

演出は、プロットを現代に置き換えて、ナポリらしい明るい配色の衝立が左右に動いて場面転換を図る簡素な(チープなとも言う)舞台造りでした。イタリアらしく、スクーターやフィアットのミニ、アルファロメオの車も舞台に登場します。あまり経費をかけないでそれらしい雰囲気を出すことに成功したといえるでしょう。登場人物の服装も性格に応じた工夫がなされ、よかったです。Fiorillaが最初に登場したときは、赤いブレザーに白を基調にしたスカートと緑の靴、とイタリア国旗の配色です。喜劇としての演出はとてもよく出来ていて、頻繁に笑わせてくれました。歌手もすべて演技がうまく、歌がなくても成立するくらいの芝居になっています。

歌唱のほうですが、登場頻度の多い上記配役の最初の4人は文句をつけるところは余りありません。チェチリア・バルトリは実演を聴くのは初めてですが、評判通りとても歌のうまい人で、好ましい美しい声です。誰かから聞いていましたが、声量的にはやや物足りないところは確かにありました。男声陣はトーマス・アレンとタイトルロールのイルデブランド・ダルカンジェロが歌のうまさ、安定感、声量、ともに他を圧していました。

オーケストラの方ですが、全体にもうちょっとテンポを早めに小気味よく演奏してくれたほうがいいのじゃないかという感じがします。
写真はアンコールにこたえる出演者。
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by dognorah | 2005-06-07 20:34 | オペラ

木嶋真優さんの演奏評

先日このブログで紹介した「ロンドン交響楽団リハーサル」の本番演奏会は6月2日に行われました。私は別のイベントがあったため聴けませんでしたが、イギリスの高級紙Guardianにその演奏批評が掲載されましたので木嶋真優さんの分を翻訳してご紹介します。

「Mayu Kishimaはショスタコーヴィッチの最初のヴァイオリン協奏曲の独奏者として見事な演奏を披露した。輪郭のくっきりした輝かしい音色は最終楽章を奔放なヴィルトゥオーゾのショーケースと化しただけでなく、スローな第3楽章においてもより暗い内面の世界と光り輝く変奏曲を描いて見せた。Kishimaはまだ10代後半であるが、最も印象的であったのは、特に最後の二つの楽章を繋ぐ巨大なカデンツァにおいて、すすり泣くようなグリッサンドから荒れ狂うヴィルトゥオーゾ的エネルギーにまで発展させることの出来る演奏の幅の広さである。」

この評の著者は、そのあとに演奏されたチャイコフスキーの交響曲第4番に関しては手厳しい批評を載せていますが、木嶋さんに対してはこのようにかなり好意的な評でした。
by dognorah | 2005-06-06 06:18 | 音楽

ヴィオラリサイタル

フィルハーモニア管弦楽団が主催する有望な若手奏者のリサイタルシリーズで、今回はヴィオラ奏者が選ばれて演奏した。場所はロイヤルフェスティヴァルホール。

c0057725_123299.jpgヴィオラ:Dimitri Murrath
 1982年ベルギー生まれ。ロンドンのGuildhall School of Music and Dramaで現在も研鑽を積んでいる。


プログラム;
 Ysaiye: Sonata for Violonchello solo Op.28
 Edwin Roxburgh: Soliloquy 2(世界初演)
 Rebecca Clarke: Sonata for viola and piano

Ysaye(1958-1931、ベルギーの作曲家)の曲は奏者自身によるヴィオラ用に編曲したもの。あまり魅力的ではなかった。

Edwin Roxburgh(1937-)の曲は不安と希望が入り混じったような印象を受ける作品でなかなか聴かせる。作曲者自身が会場にいて、終演後は舞台で挨拶。

Rebecca Clarke(1886-1979)はイギリス生まれで主にアメリカで活躍した作曲家兼ヴィオラ奏者。最初の2曲と違ってピアノとのソナタなのでほっとする。ピアノはTom Blach氏で室内楽で世界各地で演奏する傍ら、Guildhall School of Music and Dramaで教鞭もとっている。弦楽器のソロというのは張り詰めた空気を結構シリアスに与えるところがあって偶にはいいのだが、こればかり連続するのはあまり積極的には聴きたくない。
この曲は全体として古典的な流れを汲む作品で、ピアノはかなりロマンティックである。様々な楽想が散りばめられていて詩が感じられる曲だ。本日最も楽しめた。
by dognorah | 2005-06-05 01:16 | コンサート

The London Mozart Trio演奏会

St John’s Smith Squareで開催された演奏会に行ったので感想を。
このトリオは1989年に結成されて以来ずっと欧州を中心に演奏活動をしてきた。1999年からはヴァイオリニストが交代し、現在に至る。

本日の曲目は、
 シューベルト:ピアノ3重奏曲 変ホ長調 D929
 チャイコフスキー:ピアノ3重奏曲 イ長調 Op.50

シューベルトは2曲のピアノ3重奏を残しているが、これは死の前年に作曲された最後のものである。演奏時間50分以上の長大な曲であるが、この演奏は美しく深みがあるすばらしいもので終わるのが惜しいくらい至福に浸らせてくれた。3人とも腕のたつ人達だ。ほころびのかけらも見せない完璧な演奏だった。

2曲目のチャイコフスキーはシューベルトに比べると甘いメロディが随所に出てきて、らしさを感じさせる。シューベルトはピアノを主役にするようなところがあるが、チャイコフスキーは弦を大事にする人だなということが感じられる。
この曲も50分近くかかる大曲だが、ここでも確信に満ちた演奏で、長さなど感じさせない。

私は普段、駆け出しの若い演奏家たちの演奏をよく聴いていることはこのブログでも度々記事にしているが、出発点からしてあの高いレベルなのだ。それが長年活動を継続して今回聴いたグループのような一段高いレベルに到達した団体の数はいったいどれくらいいるのだろう。各ホールの演奏会の案内を見るだけでも数え切れない人達が室内楽を演奏している。そのすべてが満足いくものではないだろうけれど、この音楽市場の規模とレベルの高さはほんとにすごいものだ。
by dognorah | 2005-06-04 00:58 | コンサート

ロンドン交響楽団のリハーサル

c0057725_440252.jpg現在ロンドンで実力一番といわれているロンドン交響楽団が毎月一度だけリハーサルを公開していることを知り、練習場であるSt Luke’sというBarbican Hallの近くにある元教会に駆けつけた。参考のために外見と内部の写真を掲げる。
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感心したのは、ロンドン交響楽団がかなりのお金持ちであること。練習場としての目的でこの建物を買い取り、コンサートも開催できる程度にまで内部を改装したのだ。元教会だけに窓が多いので、内側から丈夫な金属フレームに嵌められたガラスをすべての窓に取り付けるなど防音処置を施し、天井と床は板張り、太い鉄の柱を4隅に立てて天井を支えると共に照明装置なども設置してある。さらに観客席(300席程度)を1階の一部と2階のギャラリーに設けてある。音もいいのだ。この改装費だけでも何億円とかかるだろう。

c0057725_4465491.jpgさて、本日のリハーサルは、ロストロポーヴィッチの指揮でチャイコフスキーの交響曲第4番と、ショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲第1番である。ヴァイオリン独奏は、木嶋真優という19歳の才媛(左の写真)。

チャイコフスキーは、いきなり演奏開始、金管が終わって弦が鳴り出すとすぐにストップさせて注文をつける。この有名なチェリスト兼指揮者、国際的キャリアーが長いものの、いかにも外国人という感じの下手な英語にまずびっくり。あまり細かいところは指示が100%は伝わらず、コンマスとチェロのトップがしょっちゅう指揮台の譜面のところにやってきて確認している。遠くの楽団員からは質問も発せられる。自分の譜面を指揮者に見せて違うんじゃない?なんて感じの場面もある。ということでこれは時間がかかるぞと思っていたらポイントを数箇所やっただけですぐに第2楽章へ。ここはトランペットとトロンボーンは演奏場面がないので、彼らはさっさと練習場を出る。コーヒーでも飲んでいるのかしら。第2楽章も結構やり直し場面があった。気に食わないフレーズをロストロポーヴィッチが、腰に手を当てて体をふにゃふにゃくねらせて、お前らの奏でるメロディはこんなだよー、とやって笑わせる。そろそろ第3楽章が始まろうかというときにはちゃんと金管連中も席に戻る。こういう調子で各楽章のポイントポイントだけをみっちり練習。曲は冒頭部分と終曲の部分はなぜかきっちりと演奏されたが通しての演奏はなし。リハーサル時間は50分で終わり。思うに、午前中にもリハーサルをやっていたのだろう。ここでずいぶん沢山の楽員が帰った。逆に新登場の楽員もいる。

しばし休憩の後、ソリストの木嶋さんと一緒に指揮者が登場。初顔合わせらしく、指揮者が木嶋さんをみんなに紹介していた。彼女全く物怖じしないで、いきなり冒頭部分を引き始め、オケも追随する。そのまま第1楽章を中断なしで終える。全く問題がないということですぐに第2楽章へ。
ところが第2楽章は問題だらけらしく、オケに対して何度も何度もやり直し。第3楽章も第4楽章もそうだった。第4楽章など通して2回も演奏した。そのたびに終了後楽員が彼女へ拍手を贈る。この曲、第2楽章は不協和音の単調な繰り返しがあってちょっと退屈だが、第3楽章は美しく、第4楽章は楽想もちりばめられ、強弱の変化も富んでいてとてもすばらしい。とにかく、初リハーサルのせいかこの曲だけで80分ぐらいの時間を使った。翌日がバービカンホールでの本番なので、きっと後はいわゆるゲネプロを本番直前にやるだけなのだろう。リハーサルというのは意外に短いんだなーと思った次第。指揮者にもよるだろうけれど。

リハーサル中、ロストロポーヴィッチ氏はオケに注文をつけるだけで木嶋さんにはあまり指示はしない。これから察するに、指揮者はソリストと既に綿密な打ち合わせを済ませているみたいであった。あとでWebで調べると、ロストロポーヴィッチ氏はモスクワで彼女のブラームスの協奏曲を聴いて以来、世界最高の若手ヴァイオリニストと評価し、自分の指揮するあちこちのオケと共演させている。したがってこの曲もどこかで弾いているはずである。

木嶋さんは13歳のときにポーランドのヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール・ジュニア部門で最高賞(1位なしの2位)を獲得したのを手始めに世界各地で賞を取っているらしい。今年始めから世界中のオケと協奏曲の予定が沢山入っているようだ。

ロストロポーヴィッチ氏、昔チェロも指揮も見たことがあるはずで、割と背の高い人だった印象がある。しかし今日間近で見ると意外にずんぐりむっくりだった。あれーという感じ。太ったせいかしら。リハーサルは精力的で、時には指揮棒で譜面台をたたきながら拍子をとったり、指示をがんがん飛ばしながらコントロールしたり。オケのリハーサルというものをビデオ以外で見るのは初めてだけれど、すごく面白かった。来月も行こうと思う。

ショスタコーヴィッチでは、ハープを2本使うがそれが第1楽章だけなのだ。で、第2楽章に入ると、二人のハーピスト、さっさとハープをケースに入れて台車に乗っけてごろごろさせながら帰っちゃった。とにかく自分の出番がなくなると即退出するというのが面白い。
by dognorah | 2005-06-03 04:50 | 音楽

17世紀オランダ美術展のレンブラント

引き続き、バッキンガムパレスの女王美術館で開催されている展覧会の報告です。
スペインのハプスブルゲ家の支配下にあったネーデルランド地方(現在のオランダとベルギー)はプロテスタント勢力の抵抗で17世紀になってまず北部が独立してオランダとなりました。後年、残りの地域はカソリック国として独立してベルギーとなりますが、紆余曲折を経て完全に独立したのは19世紀になってからです。

オランダは独立によって社会は充実し、多くの画家が輩出して数々の傑作を残し、黄金時代を迎えます。それをいち早く認めて沢山の絵を購入した当時のイギリス王室はなかなかのものだと思います。その絵がイギリスの画家たちに影響を与えて、ゲインズバラ、コンスタブルやターナーなどの風景画家、さらにはレイノルズなどの肖像画家を生み出す素因になったのだろうと察せられます。

c0057725_7172519.jpgレンブラントの絵はカタログによるとここに4枚あるのですが、今回はそのうち、老婦人の肖像(1629年)、墓場で復活したキリストとマグダラのマリア(1638年)、自画像(1642年)の3枚が展示されています。

老婦人の肖像はレンブラントが23歳のときの作品で、既にレンブラントならではのものすごい腕前に圧倒されます。迫力があります。よくこれだけ精緻に皺が描けたこと。c0057725_7193943.jpgこのモデルは画家のお母さんだという説がありますが、23歳の息子の母親にしては老齢過ぎると思います。

自画像は彼が頂点にいるときのもので、顔からゆったりした満足感が漂っています。絵のサイズは50x40cmぐらいで小型ながらかなり丁寧に描かれています。キリストの絵は彼が最初に復活したのはマグダラのマリアのそばという伝説を題材にしたもので、c0057725_7202651.jpgレンブラントの絵としては珍しいテーマだと思います。少なくとも私はこの手のものは他には知りません。ただ、絵としてはあまり感心しません。
by dognorah | 2005-06-02 07:25 | 美術

バッキンガムパレス美術館のフェルメール

Queen’s Galleryは恐らく10年ぶりぐらいの再訪でした。現在の特別展は17世紀オランダ絵画です。英国王室ではチャールズ1世以降ジョージ4世ぐらいまでオランダ絵画を蒐集する趣味があったようです。そのため、オランダ絵画だけで200点ぐらいのコレクションになっています。今回の特別展はその中から約100点ぐらいが展示されていました。もちろんフェルメールとレンブラントが含まれているので再訪したわけです。

c0057725_965334.jpgそのフェルメールは、「A Lady at the virginals with a gentleman」別名「Music lesson」という題名のものです。大きさは74x64cmでフェルメールにしては大きめの部類です。彼が32ないし35歳のときの作品で、非常に精緻な描き方でかなりのエネルギーを感じます。左側と奥の壁に注目すると、光に応じた微妙な壁の色の変化の表現法に圧倒されます。画面真ん中にある椅子の青色は彼が好んだ色で、有名な「真珠のイアリングをつけた少女」のターバンと同じ色だそうです。その同じ系統の薄い色がvirginalsの影になっている壁にも使われ、椅子の唐突な青が和らいでいます。手前のテーブルにかけてある織物のなんと精緻に描かれていることか。この絵を顕微鏡で調べた研究者によると、絵全体が細かい点描のような手法で描かれているそうです。相当な時間がかかったでしょう。

右上にはこれもよく使われるキューピッドの姿が半分描かれています。二人の男女の関係を暗示しているのでしょうか。この絵では珍しく鏡もあります。向こうを向いている女性の顔を映すのはわかりますが、フェルメールのイーゼルも映っているのです。これは何を意味するのでしょう。鏡の向こうの世界でその女性に思いを寄せるフェルメールを表現したかったのでしょうか。この鏡を使うという方法はベラスケスの「宮廷の侍女たち」が有名ですが、このフェルメールより30年ぐらいあとなので、この絵の影響を受けた可能性もありますね。

とにかく飽きずに観察できる絵です。どこをとってもただただ感心するばかり。これでロンドンにある4枚の絵はすべて再鑑賞したわけですが、この絵に最も感銘を受けました。UKには後一枚がエディンバラにありますが、初期の作品でしかも宗教画なので私はあまり興味がなく、そこまでもう一度見に行く気はありません。
by dognorah | 2005-06-01 09:08 | 美術