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カテゴリ:美術( 88 )

ルオーとマティスの交流

Rouault, Matisse Correspondancesという展覧会がパリ市立近代美術館で開催されています。趣旨はあまりよくわからなかったのですが、持ち帰ったパンフレットを英語に機械翻訳してわかったことは、Gustave Moreauの弟子時代からGeorges RouaultとHenri Matisseの二人は仲がよく、死ぬ直前まで手紙のやり取りをして芸術に関する意見を交わしていたということです。付き合いは家族ぐるみであったらしく、本人の死後も交流は続いていたことがわかっています。
二人とも尊敬するモローから多大な影響を受けたことが知られていますが、お互いにも当然のことながら影響しあっていたので、この展覧会ではモローを含む3者の作品をパリの主だった美術館から借りてきて年代順あるいはテーマ別に展示してそれを感じてもらおうということです。作品数はルオーが圧倒的に多く、モローとマティスは付録みたいなものです。

正直なところ、ルオーの絵からはモローの影響は感じられましたが、それ以外は余りよく実感できませんでした。ということで普通に3人の絵を鑑賞するスタイルに徹しました。
ルオーの絵というのはカンヴァスに分厚く絵の具を塗って描いたキリスト像などを思い出すだけで、あまり好きでもないことからほとんどまとめて見たことはありません。今回は年代順に見ていって、そういう類の絵は晩年のスタイルであることを知りましたが、初期の作品などを見るとやはり相当な腕前の持ち主であることがよく理解できました。次の絵は紙に水彩とパステルを使って仕上げたものですが、そのヴォリュームの迫力ある表現に圧倒されました。一番目玉作品なのかポスターにもなって地下鉄の通路に張ってあります。写真でも結構魅かれる絵ですが、実物の前では暫し動けないほどの感銘を受けました。
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Georges Rouault: Fille/Nu aux jarretieres rouge, 1906
Aquerelle et pastel sur papier, 71 x 55 cm, Musée d’Art moderne de la Ville de Paris

残念ながら他の作品はやはり好きになれず、マティスもたいした作品は展示されていません。そういう中で、モローの作品で風景を描いたものにちょっと抽象的な趣を感じたのが新しい発見でしょうか。写真は入手できませんでしたが、モロー美術館所蔵のものです。以前、そこを訪れたことがあるので見ているはずですが、やはり絵というものは時と場所で印象は違ってくることを改めて感じました。

Rouault, Matisse Correspondances
Musée d’Art moderne de la Ville de Paris
27 October 2006 – 11 February 2007
by dognorah | 2006-11-11 09:42 | 美術

David Hockney展2題

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Mr and Mrs Clark and Percy 1970-1
Acrylic on canvas 2134 x 3048 mm Tate


現在National Portrait Galleryで「David Hockney Portraits」という特別展が開催されています。それと呼応するかのように、Bond Street駅近くのAnnely Juda Fine Artなるギャラリーで「David Hockney: A Year in Yorkshire」という風景画展開催の情報をコメントとして守屋さんにいただき、あわせて鑑賞しました。

c0057725_6561875.jpgホックニーという人の作品はあちこちで散発的に見たことはあるものの、今までまとめて見たことはありません。特段の興味がなかったことにもよります。彼の絵に対する印象は、例えば左の写真のような明るいカリフォルニアを題材にしたイラスト的なものでした。今回の経験でも彼を理解したとは言いがたいのですが、結構奥の深い作家であることはわかりました。ペンで描いた肖像のスケッチ画でも的確に対象の個性を捉える目と技術はやはり一流画家のものです。
冒頭に掲げた写真は、学生時代からの友人達を描いた大作ですが、制作に1年かけただけあって丁寧に描かれ、かなり訴えるものがあります。今回一番感銘を受けた作品です。本人の言葉では最も自然主義的作品というだけあって色使いも含めて極めて写実的です。二人の間にバルコニーに出るドアがあって外の風景が描かれていますが、この距離を置いた構図が夫婦の現在の状況を現わしているのだという解説は面白いと思いました。この絵の完成後程なくして二人は離婚したそうです。このほかにもカップルを描いた作品がありますが、全て二人の精神的状況がわかるようになっているとの解説は説得力があります。

ホックニーはロサンジェルスに居を移してからも頻繁に故郷のヨークシャーに帰ってきて絵を描いています。その中で少年時代の自分を育んだ風景画も数多く描いていますが昨年から今年にかけて仕上げたものを数十点展示しているのが上に述べたギャラリーです。次の写真はその中の一枚です。
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かなりおとなしい色使いの作品もありますが、大体がちょっとイギリスの風景とは思えないような派手な色が使われています。c0057725_70089.jpgこれがカリフォルニアの風景なら例えば左の作品(Nichols Canyon)のようなものでも、あの太陽の下では印象的にありえると思ってしまいますが。恐らく少年時代の思い出を重ね合わせてこういう表現になったのでしょう。守屋さんは描かれた木々のフォルムを見てセザンヌを思い出されたようですが、私はむしろゴッホを思い浮かべるようなものを何点か発見しました。しかし、今年69歳ですがまだまだ制作意欲は続くようです。

David Hockney Portraits
National Portrait Gallery
12 October 2006 – 21 January 2007

David Hockney: A Year in Yorkshire
Annely Juda Fine Art
15 September 2006 – 28 October 2006
by dognorah | 2006-10-27 07:13 | 美術

イギリスにおけるホルバイン

ドイツ生れの画家Hans Holbein (1497/8 - 1543)は10代でスイスのバーゼルに移住した。絵は同名の父から学んだ。1526年にエラスムスからトマス・モアを紹介してもらってロンドンを訪問し、2年間をそこで過ごした。いったんバーゼルに帰国するも、当地での宗教改革の破壊行動に耐えられず、1932年に再びロンドンに来た。時のイギリス王ヘンリー8世に認められて1536年に宮廷画家となってその後イギリス国籍も得た。1543年にロンドンで没。

今回のテート・ブリテンでの展覧会は彼のイギリス時代の画業その他を紹介するものでバーゼルを始めドイツ、フランス、アメリカなど内外から約160点が集められた。そのうち約30点が油絵であるが、大作Ambassadorsはナショナル・ギャラリーで見てくださいというわけかここには展示されなかった。しかし肖像画家としての彼の作品を見るなら今回の油絵よりもカラーチョークを用いて紙に描いた作品がお勧めである。さすがに大画家、人物の性格を的確に捉えた迫力あるスケッチであるし、その大部分は当然のことながら王室美術館所蔵で、そこが特別展でも催さない限り一般にはなかなか公開されないものだからである。
次の写真は左がチョーク画で、モデルはトマス・モアが後見人を勤めて後に彼の息子と結婚した人。Anne Cresacre (1526–7), Lent by Her Majesty The Queen, Black and coloured chalks on paper, 375 x 268 mm
右は油絵でモデルはヘンリー8世。小さな絵であるがさすがにパトロンの絵は精緻に描き込んであり、モデルの精悍さがよく表現されている。Henry VIII (about 1537), Lent by the Museo Thyssen-Bornemisza, Madrid, Oil on oak, 275 x 175 mm
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Holbein in England
Tate Britain
28 September 2006 – 7 January 2007
by dognorah | 2006-10-22 02:57 | 美術

イギリスにあるセザンヌ展

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Stil Llife with Teapot, National Museum of Wales, Cardiff

セザンヌは今年没後100年ということで今年は各地で記念展が開かれたと思いますが(私もパリエクスで見ました)、1906年の10月に彼が亡くなったということで今月からロンドンのナショナルギャラリーで標記のような題で開催されています。イギリスの各地にあるセザンヌをある程度集めて鑑賞するというもので、油絵を中心に50点以上が展示されています。コートールド美術館だけで20点持っている作品の中から数点が展示されているだけなのでまじめにイギリス中の作品を集めたら傑作かどうかはさておき、たいした数になることが理解できます。世界中から集めたらとんでもない数になりそうですね。生存中はあまり売れなかったのにこれだけ描けたということはやはり資産家の父親がいたからでしょう。
それはともかく、上に例として示した絵を始め、初めて見たのじゃないかという作品がいくつかあって、なかなか充実した時間が過ごせました。入場無料ですし、お勧めです。
写真の静物画は果物とティーポットがハイライトになっていて、セザンヌのエネルギーを感じることが出来るものです。
また、「カードをする人」は何枚か残されていて、オルセーにあるもの(次の写真)が代表的ですが、今回はコートールドのものが展示されています。
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あそこで何回も見た絵ですが、異なる場所に展示された絵を見てオルセーのものとはちょっと違うことに気付きました。写真ではわかりにくいかもしれませんが、オルセーのものは二人とも手札に集中している静的な雰囲気を感じていました。しかし、コートールドのもの(下の写真)は右側の丸い帽子をかぶった人はかなり勝負に執着していることが感じられます。きっと、負けが込んでいて挽回しなくちゃ、という感じでしょうか。これに比べると左側の人は余裕でプレイしている感じです。服装も右側の人物に比べると割りと裕福そうです。なお、掲載した写真の色に関してはディジタル画像ですのであまり比較できません。
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Cézanne in Britain
4 October 2006 – 7 January 2007
The National Gallery, London
by dognorah | 2006-10-14 03:38 | 美術

ハワード・ホジキン展

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Rain 1984–9
Tate


Howard Hodgkin (1932 - )は、より有名なホックニー(David Hockney (1937 - ))とも同世代のイギリスの画家である。1960年代はホックニーと似たようなポップアート的作品も描いていたが、70年代以降は具体的な風景や出来事を題材にしながらも自分の心で感じたイメージを表現する方向に独自性を発揮していく。

今回テート・ブリテンで開催されているものは1960年代から現在までの画業を回顧するもので、油絵が時代順に60数枚展示されている。ほとんどが英米で売れており、欧州や日本では馴染の薄い画家だろう。
作風としては、キャンヴァスを使わずに木のパネルに直接絵の具を載せるもので、そのパネルも額縁のような縁取りがあったり、それがない場合でも絵の具で額縁の枠のようなものをほとんどの絵に描いている。色使いは原色もあれば中間色もあり、かなり多彩で、バランス的に魅力的なものが多い。また、情念を強く感じる絵も多い。21世紀になってからも創作意欲は盛んで、絵からは相当なエネルギーを感じる。ただし、やや類型的と感じることもあるが。
以下、気に入った絵を並べてみよう。
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Red Bermudas 1978–80
The Museum of Modern Art, New York


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Snapshot 1984–93
Private Collection


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Lovers 1984–92
Private Collection

こうしてみると、トップに掲げたものも含めて1980年ごろの作品が一番充実しているように見える。

Howard Hodgkin
14 June – 10 September
Tate Britain
by dognorah | 2006-08-16 00:19 | 美術

モディリアーニ展

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Amedeo Modigliani, Self Portrait, 1919, Oil on panel 100 x 64.5cm
Museu de Arte Contemporanea da Universidade de Sao Paulo, Brazil
Photo: Nelson Kon


Amedeo Modigliani (1884-1920)の肖像画作品約50点がロイヤル・アカデミーに展示されています。デフォルメされた肖像画は不思議な魅力を放ち、私は昔から好きな画家でした。個性ある優れた画家の作品は御多分に漏れず生前はほとんど売れなかったそうですが、にも拘らず彼の生活を全て面倒見てせっせと絵を描かせた画商がいたわけで、その優れた目利きには敬服します。そのポーランド系の画商、ズボロフスキー(Léopold Zborovski)はモディリアーニの死後、絵が高値で売れて大金持ちになったそうです。上の絵は唯一の自画像ですが、死ぬちょっと前に描かれたもので、写真とはあまり似ていません。

久しぶりに見た絵もありましたが、印象的には初めて見る作品がほとんどで、やっぱり魅了されました。特に、死ぬまでの数年間共に暮らした女性ジャンヌ・エビュテルヌ(Jeanne Hébuterne)の肖像画は良かった。何枚か展示されていますが、それらを比較していると彼女の様々な性格が浮き出てきて面白い。
次の2枚の絵は共に1919年に描かれたものですが、一方は彼の作品によく見られる瞳を描いていない青い目なのにもう一枚はしっかりと瞳が描かれています。その瞳からは尋常ではない強い意思の持主であることが感じられます。まるで「あなたとは一生離れないわよ」と言っているかのようです。事実、この絵が描かれた翌年、病死した彼の後を追って自殺してしまいますが。
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Portrait of Jeanne Hébuterne, 1919, Oil on canvas, 92.1x54cm, private collection

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Portrait of Jeanne Hébuterne, 1919, oil on canvas, 55x38cm, private collection

絵としては私は青い空虚な目の肖像画のほうが好きです。会場に入って最初に見た絵がこれですが、なんともいえない魅力があってしばらく絵の前を離れることが出来ませんでした。青い目に吸い込まれてしばしモディリアーニの世界をさまよったという感じです。両手の表現からはジャンヌをいとおしむ温かい感情も感じられます。

今回はヌードもかなりの枚数が展示されています。モデルはズボロフスキーがアトリエに送り込んだ女性たちで、どこの誰かというのはわかっていないようです。今まで何度か見たものもありますが人気のある蠱惑的な作品に混じって展示されていた次のものは多分初めて見るものです。ジョルジョーネ(Giorgione)の眠れるヴィーナスとそっくりなポーズですが、その静けさがとても印象的です。トップに掲げた自画像と共に、死を予感し、覚悟した人の静けさでしょうか。
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Reclining nude with her right arm under the head, 1919, oil on canvas, 73x116cm, private collection


Modigliani and his models
Royal Academy of Arts
8 July – 15 October 2006
by dognorah | 2006-08-12 00:53 | 美術

Cézanne en Provence 2006展

セザンヌ(1839-1906)の没後100年を記念してエクス(Aix)周辺で制作された絵画を中心とする回顧展がAix-en-Provenceで開催されていますので見てきました。油絵と水彩画を合わせて約70点です。
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特別な年ですので米国やロシアなどからも多くの作品が集められて大変見応えのある展覧会になっています。先般開催されたピサロとセザンヌの交友関係に焦点をあてた展覧会もなかなかすばらしかったのですが、今回は年代的にも幅が広くてその分多彩なセザンヌを見れる分迫力がありました。普段はなかなかお目にかかれないアメリカに散らばっている作品や個人蔵のものを見ることが出来たのも大収穫です。改めて彼の偉大な画業を実感した次第です。やはり故郷で落ち着いて描く絵には凝縮したエネルギーが感じられます。迫力がありました。特に十数点に及ぶサント・ヴィクトワールを描いた作品は芸術的価値はどうであれ圧巻です。上の絵は、Montagne Sainte-Victoire (1902-06 - Oil on canvas, 65.1 x 85 cm Private collection)です。

今回学んだことは、
・同じ場所を繰り返し描くことの意味。自然が提示する対象は時間的に一つとして同じものはありえず、時々刻々変化する自然を描くことこそが自然の本質に迫ることである、との彼の言葉の意味が少しわかったこと。
・風景画に人物を描き入れることをしないのは、人間の作った構築物を描くことで人間の存在を示しているからである。
・カンヴァスの空白は塗り残しではなく、あえて塗らずに空気を描こうとしたかららしい。
・対象の建物が傾いていたり、静物のりんごが転げ落ちそうなのはヴィデオのようなダイナミックな動きを表現したかったのでは。
・彼の描く道はたいてい画面のどこかで途切れていて先が見えないのは、不確定性を表現したかったのでは。
Maison au toit rouge (Jas de Bouffan)
R603 - 1885-1886 - Huile sur toile, 73 x 92 cm
Collection privée
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・1906年に死なずにさらに画業を続けていたらカンディンスキーを待たずとも抽象への道をもっと明確に提示していたのでは?死ぬ直前に描いた次の絵を見てそう思いました。
Le Jardin des Lauves
R926 - c.1906 - Huile sur toile, 65,5 x 81,3 cm
The Phillips Collection, Washington, D.C.
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・彼の人物画というものをそれほど注目していなかったけれど、次の農夫を描いたものはカード遊びをする場面の絵と同様に人物の内面を描き切っている感じがして感銘を受けました。
Le Paysan
R704 - 1890-1892 - Huile sur toile, 55 x 46 cm
Collection privée
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今回の絵で特に気に入ったものを挙げるとすれば、上の抽象画的なものと、次の初めて見た個人蔵の絵です。この絵は真ん中に木があるという彼が良く用いる手法のものであまり愉快な構図ではないですが、木の両側で別世界を描きながら、さらに水による鏡面で第3の世界を付け加え、すごく惹かれる色の配合によってそれらを有機的に繋げている絵がなんともいえない魅力を放っています。
Le bassin du Jas de Bouffan en hiver
R350 - c. 1878 - Huile sur toile, 52,5 x 56 cm
Collection privée
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とても暑い日でした。11時入場の切符を持っていったら少々早くても入れてもらえるだろう(5月のオルセーでのセザンヌとピサロ展ではそうだった)という甘い考えは見事に打ち砕かれて炎天下できっちり行列。前後の客を見るとみんな私と同じ時間の予約客でした。でも、中に入るとそれほど混雑はしていなくてまあまあ自分のペースで鑑賞できました。日本語のオーディオ解説機器が用意されていたのも便利でした。

美術館の中で、どこかで見たことのある日本人女性がいました。考えたら昨日のオペラの合唱隊にいた人です。声をかけたらやはりそうで、今日は公演がないので美術館に来ていたようです。ヴィーン在住で、ドイツ人のご主人ともどもこの魔笛はヴィーンとエクスの両方で出演しているとのこと。ひとしきり話して名詞を交換させていただきました。こういう出会いは楽しいことです。

約2時間ぐらい鑑賞した後、大汗を掻きながら近くのレストランで昼食を取り、家内の買い物に付き合ってゆっくり宿に帰ろうとしたら突然雷雨に襲われました。昨日に続いて夕立です。雨が降る前に地下駐車場に飛び込み、走り出したらものすごい豪雨。しばらく邪魔にならない路上で様子を見ていましたが、お陰で汚れ放題だった車はすっかりきれいに洗車されてしまいました。夕食時にはすっかり雨が上がったので再びセンターに戻り、歩道に張り出したレストランのテーブルで夕食を取りました。Romaniというどうやらイタリア系のチェーン店で、牛肉のカルパッチョの食べ放題というのをやっていました。私には一皿で十分でしたが、現地人がどれだけ食べるか興味があったので観察していたらみんな3皿で降参でした。薄切り肉だからたいしたことはないと思うけれど結構な量なんですね。味は前菜も含めてまあまあ良かった。

Cézanne en Provence
9 June – 17 September 2006
Musee Granet
Place Saint-Jean de Malte、Aix-en-Provence
by dognorah | 2006-07-30 00:19 | 美術

カンディンスキー展

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テイト・モダンで開催中のものを見てきました。副題として「抽象への道のり」とされているように、ロシアを出てミュンヘンで絵を描き始めた1906年頃から第1次大戦のために帰国していたロシアを革命後の社会と折り合えず、再び出る羽目になった1921年ごろまでの本格的抽象画になる前の作品を時代を追って展示し、彼がいかに抽象への道を歩んで行ったかに焦点を当てた展覧会になっています(上の絵は1910-11年作Cossacks)。油彩画が50点以上、その他が30点程度の規模でバーゼルの近代美術館との共同企画です。絵画は、ロシア、スイス、ドイツ、アメリカ、フランス、イギリスなどから集められたものですが、そのほとんどはイギリス初公開ということです。テイトには何しろたった2枚しかコレクションがないのでほとんど借りてくるしかないのですが、パリのポンピドゥーセンターにはスケッチや資料も含めて1200点以上あるのに比べてなんと貧弱なことでしょう。

彼はモスクワの裕福な家庭で育ち、法律と経済学を学んだものの、あるとき印象派の絵画展を見たことから画家になりたいという思いが募り、1996年、30歳で画家になる決断をし、ミュンヘンに絵の勉強をしに行きます。ミュンヘンに行ったもう一つの理由は同時期にワーグナーの歌劇「ローエングリン」を体験したことで、強くその音楽の影響を受けたことによります。彼は後にシェーンベルクの音楽にも傾倒しますが音楽的に感受性の高い人だったのでしょう。
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上の写真に示した初期の絵、Song (1906)はロシアそのものが色濃く漂うプリミティヴなものですが、まろやかな線と多彩な色使いはとても魅力的で、並々ならぬ個性を感じることが出来ます。この頃はロシアへの郷愁を表現した作品が多くあります。

20世紀初頭にはガブリエレ・ミュンターという絵を教えていた生徒のひとりと愛人関係になり、ミュンヘン郊外のムルナウという村に住み始めますが、その頃のカンディンスキーがドイツ表現主義の推進者である彼女の絵の影響を強く受けていることは前に紹介しました。
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例に挙げた上の絵、Murnau-Castle Courtyard (1908)でもそういう印象を持ちますが、まとめて展示されている作品を見ると、構図や原色の組み合わせ方などやはり独特の叙情性が感じられます。私にとってはとても好ましい絵画達です。

大体1910年前後から次第に作品は変容を遂げていくのですが、ミュンターとの生活に飽きてきて、その影響を脱したいという意思もあったのでしょう、絵画表現上の試行錯誤の試みが精力的になされるようになります。当初は具象的な対象物の姿形を画面上にとどめながら全体を象徴的に表現するようになっていきます。その頃は色も原色に近い派手なものは影を潜め、落ち着いた色使いです。
この頃の彼は自分の作品を次の3種類に分類していました。
(1)Impressions
自然界を観察したそのままを表現。
(2)Improvisations
対象物から受けるムードや感覚をそのまま画面に表現。例えば下の写真に示すImprovisations 11(1910)。
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(3)Compositions
Improvisationsと同様心象表現であるが、よりスケール大きくより野心的な表現。例として下の写真に示すCompositions VII(1913)。
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ImprovisationsやCompositionsを描くときは彼は何枚もの下絵を試みて構想を練りに練って仕上げます。しかし一旦それが決まると後は仕事は早く、例えば上の例で挙げたCompositions VIIは2m x 3mの大作ですが、ミュンターの話によると3日で描き上げたそうです。
第1次大戦の勃発を契機に彼はミュンターと別れてロシアに戻り、絵画からどんどん具象的なものがなくなっていく傾向をさらに強めていきます。そしてロシア革命後の混乱の2年間は空白になりますが、画業を再開した1919年以降は抽象への道をまっしぐらといったところでしょうか。1921年には革命政府に失望した彼はドイツに行き、Bauhausで職を得ますが、再びロシアに帰ることはありませんでした。下の写真は1921年の作品Circles on Blackです。
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私はこれよりずっと後期の作品が好みですが、残念ながら今回の展示では含まれていません。

Kandinsky: The path to abstraction
22 June – 1 October 2006
Tate Modern (http://www.tate.org.uk/modern/)
by dognorah | 2006-07-01 23:24 | 美術

The Virgin Mother by Damien Hirst

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もう旧聞なのでタイムリーな話題ではないですが、刺激的な作品でいつも物議をかもしているイギリスのターナー賞受賞(1995年)アーティスト、デイミアン・ハーストの巨大ブロンズ作品に「The Virgin Mother」というのがあり、その二つ目のコピーが5月末にピカデリーにあるRoyal Academyの中庭に設置されました(上の写真)。妊婦のヌード立像ですが、彼女の右半分は皮を剥いだ状態になっており、頭蓋骨、筋肉組織、胎児などが露になっています。c0057725_1494863.jpg立っているスタイルはドガのブロンズ作品「小さな踊り子」(右の写真)とそっくりで、恐らく敢えてそれをモデルにしたのだろうといわれています。

高さ10メートルを優に超える巨体で、よくここへ持って来れたなぁと思っていたのですが、BBC TVでグロースター州の工房からこのロンドンの都心までトレーラーに乗せて運んでくる様子が放送され、ちゃんとアーチ型の正面入り口をくぐって搬入されたことがわかりました。工房では各パーツが鋳型で製造された後、溶接で各部を接合して全体像を作り、多くの作業員が表面を機械ポリッシュして仕上げる様も紹介されていました。ブロンズだけでは足首など細い部分が全体重を支えきれないので、その内側にステンレスを入れて補強してあるとのことです。

c0057725_1503146.jpg上の文章で二つ目のコピーと書きましたが、実は最初のコピーは2005年9月にニューヨーク(Madison AvenueにあるLever Houseの敷地内)に設置されています。その作品は、皮を剥いだ部分が赤い色に塗ってあり、より生々しい印象です(左の写真)。
現在第3体目が製造中で(一体の完成に18ヶ月かかる)、聞きそこないましたが欧州内のどこかに設置されるようです。

この像が設置されて以来ニューヨークでもロンドンでも様々な反応があるのは当然ですが、概してネガティヴな意見が多いようです。もっとも、みんなから歓迎されるようではハーストの名が廃れますが。私は実物を見に行って、「さすがハースト、なかなかやるじゃん」と思いました。少なくとも動物のホルマリン漬けよりはずっとましな芸術作品と思います。今回も奇抜なアイデアではありますが、とてもユニークである点は相変わらず。展示は8月20日ごろまではされるようですが、ずっとそこに置いておいてもいいじゃないかと思います。
しかし、ロイヤル・アカデミーがこういう作品を展示するとは時代も変わったものです。ここは代々、非常に保守的な雰囲気を維持してきたところで、あの印象派の作品が世に出たときは真っ先に否定的な態度を表明したものです。
by dognorah | 2006-06-24 01:54 | 美術

コンスタブルの風景画展

Tate GalleryとWashington National Galleryの共催でイギリスを代表する風景画家コンスタブルの約60枚の油彩画が集められて展示されています。当然かなりアメリカで集められた作品も来ています。

c0057725_7131722.jpgJohn Constable (1776-1837)はロンドンから東北方面に列車で2時間ぐらいの距離にあるSuffolk州の小さな村で生れました(左のデッサンは1806年の自画像)。家は農産物の取引をしている商人で比較的裕福であったため、彼は家業を継ぐことなく希望の画家になることがすんなり認められました。ロンドンのRoyal Academyに入学して腕を磨きますが、画家として生きようと決心したのは30歳ぐらいのときといわれています。40歳(1816年)で11歳年下の女性と結婚しますが、52歳のときに妻は肺結核で他界。その後も絵を描き続けますが9年後には彼も亡くなります。
生涯にわたってほとんど風景画しか描かない人でした。その多くは生れ故郷の日常ののんびりした一瞬を捉えたものです。手ごろな大きさのキャンヴァスを外に持ち出して下絵を描き(油彩)、それをもとにアトリエでより大きな作品を仕上げるというやり方をしていました。そうして仕上げた作品はしかしながら細部が当然のことながら精緻ではなく、批評家の格好の的になったりします。彼の仕上げる作品を6フィート幅の大きなキャンヴァスにすることにしたとき、そういう批評をかわすためにも現場に同じ大きさのキャンヴァスを持ち込んで下絵を描きました。従って今日多くの下絵と本番絵が存在します。今回はかなり多くの作品が下絵と共に展示されています。研究家ならともかく一般の鑑賞家にとってはあまり面白くないですが。
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ほぼ時代順に展示された画業を追っていくと、結婚直後の1817年辺りから1824年辺りまでの作品が特に充実していることが感じられます。絵が生気を漲らせているのです。上の絵はその当時に描かれたものです。実は1824年に妻の病気が発覚しその時点から彼自身もかなりネガティヴな影響を受けていると感じました。それ以降の作品は絵自体は相変わらず上手いのですが、あの当時のエネルギーはあまり感じられません。

The Great Landscapes – CONSTABLE 
Tate Britain、6月1日-8月28日
by dognorah | 2006-06-03 07:21 | 美術