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シュトラウスのオペラ「Capriccio」

2008年10月9日、ヴィーン国立歌劇場にて。
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Capriccio
Ein Kanversationsstück für Musik
Text von Clemens Krauss und Richard Strauss
Musik von Richard Strauss

Dirigent: Philippe Jordan
Inszenierung, Bühne und Licht: Marco Arturo Marelli
Kostome: Dagmar Niefind
Choreographie: Lukas Gaudernak

CAST
Die Gräfin: Renée Fleming
Der Graf: Bo Skovhus
Flamand: Jörg Schneider (Michael Schade の代役)
Olivier: Adrian Eröd
La Roche: Wolfgang Bankl
Die Schauspielerin Clairon: Angelika Kirchschlager
Monsieur Taupe: Peter Jelosits
Eine italienische Sängerin: Jane Archibald
Ein italienischer Tenor:. Ho-yoon Chung
Der Haushofmeister: Clemens Unterreiner

Orchester der Wiener Staatsoper

今年の6月にプレミエだったものをほぼ同じ出演者で再演したものです。因みに題名の「Capriccio」というイタリア語は、気紛れなどの意味があります。

まず特筆すべきはジョルダンの指揮。とてもよくコントロールされた美しい表現がすばらしい。前奏曲こそ眠くなるような音楽でしたが、どんどん調子を上げて最後は乗りに乗っている様が伝わってきます。この人は何度も聴いているけれど何を聴いても安心して任せられるという印象です。

歌手ではルネ・フレミングが相変わらずの美声を響かせ、最後の長大なアリアも見事でした。彼女の声がこの役に最適かどうかはよく分かりませんが。私の持っているDVDではキリ・テ・カナワが主演ですが声質は似ているという印象です。
舞台監督を演じたヴォルフガンク・バンクルもすばらしい歌唱で、終始艶のあるバスはとても心地よく響きます。
ミヒャエル・シャーデの代役は姿が似ているせいか声まで似ていてなかなか上手いものでした。詩人役を演じたアドリアン・エレートはやや調子が悪く、今まで聴いた中では最低の出来。声に艶のない時が多かった印象です。
キルヒシュラーガーは時折彼女らしい美声が聴けたものの全般的にはやや不調でした。
ボー・スコーフスは終始よい歌唱でした。しかしこの人は演技が下手だなぁという印象。

演出はよくできたものです。舞台も全体的に美しいし衣装もまあまあ。全てのオペラ関係者が退出した後、伯爵夫人が一人になる場面は特によく出来ていて、彼女のドレスや豪華なネックレスやドレスアクセサリーに使われた宝石類も舞台と非常に良くマッチした気品のあるものです。登場人物と音楽をそのままにして行われる舞台転換もスマートでよく出来ています。

オペラとしてはストーリーというものがほとんど無く、会話ばかりなのでやや退屈ですが、音楽がすばらしくてそれを補っていますので、いい歌手を揃えて上演しないと失敗する気がします。

トップの写真は終演直後に舞台上で挨拶するRenée Flemingです。
次の写真は指揮者Philippe Jordanと笑顔を交わすところ。
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次の写真はいつものカーテンコールで、彼女の右側がWolfgang BanklとAngelika Kirchschlagerです。この写真の伯爵夫人の衣装の色が一番現実に近いです。
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by dognorah | 2008-10-11 19:41 | オペラ | Comments(11)
Commented by sarahoctavian at 2008-10-11 21:46 x
あでやかな歌手のお2人、衣装も色といいデザインといい素敵ですね。何となく流石ウィーン・・っと思わせるエレガントさ。カプリッチョ、見てみたいオペラの一つです。
Commented by dognorah at 2008-10-11 22:50
sarahoctavianさん、ロンドンで上演されることはないだろうと思ってヴィーンに見に行きました。今度ロンドンに来られるようですね。ひょっとしたらオペラハウスでお会い出来るかも。
Commented by Sardanapalus at 2008-10-12 10:53 x
さすが、普段からリサイタルでは豪華なドレスを着ているフレミング、衣装に負けていませんね。美しい舞台だったとのこと、この動きの少ないオペラを見るならそういう演出がいいですね♪

>Der Graf: Bo Skovhus
おっ、ボーは伯爵なんですね?バンクルが伯爵かと思っていました(^_^;)元々シャーデが作曲家だったなら、ボーが詩人でもおかしくないですよね。
Commented by 守屋 at 2008-10-13 00:12 x
こんにちは。フレミング、綺麗ですね。オペラ界広しといえども、彼女ほど縦ロールが似合う人はいないでしょうね。

 カプリッチョ、ロイヤル・オペラに是非上演して欲しいオペラの一つです。声が合うかどうか、レパートリーに入っているかどうか判りませんが、マッティラで観てみたいものです。
Commented by dognorah at 2008-10-13 06:15
Sardanapalusさん、演出は無難にやろうと思えば今回のように伝統的な舞台になるのでしょうね。歌手も名前の通った人ばかり集めると言葉遊びの退屈さもかなり薄まるでしょうし。ところでプレミエの6月からずっとこの公演を観ている人が見つかり(http://www2.diary.ne.jp/user/143218/)、読んでみると6月は音楽も舞台もずたずたのひどいものだったらしいです。フレミングのドイツ語は回を追うごとによくなっているらしいけれど、当初は全く駄目だったそう。
また、シャーデは前回(10月5日)の公演ではかなりひどい状態だったそうで、どこか体が悪いのでしょう。
ボーが詩人でもおかしくないですが、バンクルはバスなのでラ・ロッシュ役になってしまうでしょう。
Commented by dognorah at 2008-10-13 06:19
守屋さん、他の出演者がドイツ語系の人ばかりで、フレミングのドイツ語は上のコメントに書きましたように相当な失笑ものだったらしいですね。ところが彼女は奮起して回を追うごとによくなりこの10月公演では見違えるほどだそうです。やはりプロですね。
Commented by ロンドンの椿姫 at 2008-10-13 17:50 x
フレミングは、ちょっと前のインタビューで「私はドイツ語に堪能よ」と言っていましたけどね、やっぱり本場では通用しませんか。
そうなんです、リヒャルト・シュトラウス好きのロイヤルオペラハウスですが、カプリッチョだけはないんですよね。私はガルニエで観たのですが、ドイツ語に堪能ではない私には辛かったです。
そう言えば、一年くらい前に、コベントガーデンの若手歌手たちがワークショップでカプリッチョをちょっとだけやった時ご一緒しましたね。その完成版を彼らは今年7月に舞台でやってくれたのですが、若過ぎて未熟な彼らには背伸びしすぎの選択でした。
Commented by dognorah at 2008-10-14 02:09
ロンドンの椿姫さんが観たガルニエの公演のようにドイツ人抜きの外国人だけで公演する環境だとフレミングが出演しても堪能なドイツ語という評だったでしょうけれど、さすがにドイツ語圏では馬脚が現れたようです。でも、もう大丈夫でしょう。パリはフランス語字幕だけですからつらかったでしょうね。その点ヴィーンは英語字幕が選べるので楽です。
今年7月のヤングアーティストの公演は私も観ました(記事にはしていません)が、あまり印象に残るような出来じゃなかったですね。尤も、会話部分だけじゃ印象に残るはずはないですか。
Commented by 助六 at 2008-10-20 08:25 x
小生が四半世紀前にヴィーンで「カプリッチョ」観たときは、ヤノヴィッツ、ルートヴィッヒ、シュライヤー、アダムらのオール独墺歌手による上演で、今から思うとヴィーンがまだ統一感のあるあるアンサンブルでシュトラウス上演を組めたギリギリ最後の時代だったのかも知れません。当時の演出は確かシェンクですでに古色蒼然の感がありましたが、今回の舞台もマレッリは演出家というより舞台美術家だし、洗練されたオーソドックスに美しいもののようですね。「カプリッチョ」は独創的演出など難しいわけだから(パリのカーセン演出も小ネタ以外は手が出ない感じだった)、古典路線に徹するのも支持できる選択でしょうね。
伯爵夫人も思い返してみると、ヤノヴィッツ、フレミングの他、カサピエトラ、ロット、クリンゲルボルンとか聴きましたけど、私はレコードでしか知らないシュヴァルツコプフの呪縛がやはり大きく、他の歌手はどうもマが抜けて聞こえてしまいます。中ではロットの2回目がまあまあ良かったですが。
Commented by 助六 at 2008-10-20 08:26 x
「カプリッチョ」はシュトラウスの旋律湧出力の衰退は明らかだし、私も特に好きなシュトラウス作品ではないですけど、聴けば聴くほど面白くなるのも実感です。ただ台本見ながら聴ける演奏会形式の時の方が感銘はいつも大きかった気がします。
私にフレミングの独語を判断する能力など無論ありませんが、確かに彼女の発音は出来不出来が非常に大きい印象を持ってます。最初お団子だった仏語が再演のヴィデオ収録時には見事な出来に豹変する例は、私もバスティーユの「マノン」で経験しました。「カプリッチョ」はやっぱり何かモゴモゴしてましたが、リートを歌った2回のリサイタルでは耳を疑うほど美しく品格と微細な陰影に富んだ独語に驚嘆した憶えがあり、よきコーチを得た時の仕事は実にプロと思います。バイロイトでのエファの独語も「受け入れられる」との独紙評を読んだことがありますし、レパートリーの(無謀な)広さを考えればリッパというべきなんでしょうね。
Commented by dognorah at 2008-10-21 07:10
助六さんは25年も前からこの作品を聴いてこられたわけですね。さぞかし今のヴィーンとは違う雰囲気だったことでしょう。今は多分独墺系の歌手だけというのはないだろうと思います。それにしてもシュトラウスの中でも上演頻度がそれほど高いとも思えないこの作品で年季がいっているというか沢山の歌手で聴いてこられましたね。ほとほと感心します。
この作品は古典的な演出に徹するか、コンサート形式でというのは私も大いに賛同します。あの長い台詞を聞き取る(読み取る)ためには他に邪魔が入らない環境がいいです。
シュヴァルツコップフは現在でも独墺系歌唱のお手本ですよね。カプリッチョは知りませんが今でもマーラーの4番のようにちょっとしか歌う箇所がないものでも彼女の歌った第4楽章はすばらしくて他の歌手では物足りない印象です。
フレミングの場合はドイツ語もフランス語もきちんとやったときは現地の方も受け入れられる出来になるということですね。元々好きな歌手ですが歌が上手くてディクションもすばらしいということであればこれからも安心して聴きに行けるというものです。
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