2008年4月17日、バービカンホールにて。
Handel: Flavio, re de’ Langobardi Academy of Ancient Music Christopher Hogwood: conductor Iestyn Davies: Flavio (countertenor) Karina Gauvin(Sandrine Piauの代役): Emilia (soprano) James Gilchrist: Ugone (tenor) James Rutherford: Lotario (bass-baritone) Robin Blaze: Guido (countertenor) Maite Beaumont: Vitige (mezzo-soprano) Renata Pokupić: Teodata (mezzo-soprano) ヘンデルのオペラを鑑賞するのもこれで恐らく6つめでかなりの数になりました。ただし舞台上演はヘラクレス一つだけで後はすべてコンサート形式ですが。過去にいい思いをしたために上演があると行くことにしているのでこれからも増えて将来的にはモーツァルトを凌ぐかもしれません。以前に比べるとロンドンでの上演数も増えているような気がします。そういう状況で2009年5月17日にはバービカンホールとロイヤルフェスティヴァルホールでバッティングするという憂うべき事態になっています。バービカンではArianna in Cretaを今回のホグウッドが上演し、かたやロイヤルフェスティヴァルホールではミンコフスキー率いるチューリッヒオペラが来てAgrippinaを上演することになっています。どちらが先にプログラムを固めたのか知りませんが、日程をずらせば両方とも満員になるだろうに、これじゃ共倒れではありませんか。こういうことがあるから両者ともどんどん前倒しで切符を販売するんでしょうが、協調できないものでしょうかね。歌手ではキルヒシュラーガーとカサロヴァの対決になりますが、私は先に情報が入ったバービカンの切符を買ってしまったのでミンコフスキーはあきらめざるを得ません。 それはさておき、今回のオペラは音楽的にはとても楽しめたのですが、ヘンデル音楽の出来は今までの作品に比べてちょっと弱い感じがしました。ホグウッドの指揮はさすがといわざるを得ない出来で、安心して聴いていられます。彼は昨年5月にここでAmadigi di Gaula を上演し、来年は上に書きましたようにArianna in Cretaを上演してヘンデルの死後250年に合わせてこの3つのオペラの上演を完結させる計画です。 歌手では題名役のカウンターテノール、イェスティン・デイヴィースは美声な上に声量もあり歌も上手いです。聴いた後、心に余韻が残る感じでした。もう一人のカウンターテノール、ロビン・ブレイズは歌唱に芯が無くごく並の歌手という印象です。ヴィティーゲ役のメゾソプラノ、マイテ・ボーモントは良く響く美声で上手い歌唱です。これに比べるともう一人のメゾソプラノ、レナータ・ポクピッチは顔の表情が多彩で魅力的なのですが歌唱はやや力弱く、タメがない感じがします。エミリア役のソプラノ、カリナ・ゴーヴァンは相変わらず素敵な声でいい歌唱です。印象としては2月の「ティート・マンリオ」の時より更に太ったような。ウゴーネ役のジェイムズ・ジルクライストはいいテノールで声量もあって印象的でした。バスバリトンのジェイムズ・ラザフォードも文句のない声でした。 下の最初の写真は左からMaite Beaumont、Renata Pokupić、Karina Gauvinです。 次の写真は左からChristopher Hogwood、Iestyn Davies、Robin Blaze、James Gilchrist、James Rutherfordです。 【あらすじ】 紀元7世紀のミラノでの悲喜劇。ロンバルディアの王フラヴィアの宮廷に仕えるウゴーネには妙齢の息子グイドと娘テオダータがいる。グイドは同じく宮廷に仕えるロタリオの娘エミリアと恋仲で婚約している。またテオダータは若い宮廷吏ヴィティーゲと密かに相思相愛の仲である。ウゴーネはグイドとエミリアの婚約の件をフラヴィアに報告するときにテオダータをフラヴィアに紹介する。フラヴィアは后がいるにも拘わらずテオダータに一目惚れし、ヴィティーゲに仲介の労を執るように命令する。一方、フラヴィアはブリテン島の総督が辞任したので後任にロタリオを任命すると宣言していた。しかしテオダータという美しい娘を獲得する下心があって総督としてウゴーネを任命することに変更してしまう。これに怒ったロタリオは王に盾突けない鬱憤晴らしにウゴーネを殴って娘のエミリアに婚約を破棄しろと迫る。殴られたウゴーネは名誉が傷つけられたとして息子のグイドに仇を取るように頼む。グイドはエミリアの強い愛を確かめてからロタリオに決闘を挑み、彼を殺してしまう。息を引き取る間際に犯人の名前を聞いたエミリアは激怒してグイドを責め、王に裁きを求める。王はグイドを死刑にすると約束する。一方では執拗にテオダータに攻勢をかける。やきもきしたヴィティーゲは彼女に言うことを聞く振りをするようにアドヴァイスする。しかし王が離婚してテオダータを女王にすると提案すると彼女は有頂天になってホイホイと王に従う。ひどいじゃないかとヴィティーゲが彼女を捕まえて責めているのを物陰から聞いた王はすべてを察し、彼等を結婚させようと心に決める。 エミリアの方は、父の仇とはいえさすがに恋人が死刑になるということで大きな葛藤を感じていた。そこに王がグイドの首を持ってこいと官吏に命令すると大きなショックを受けて失神しそうになる。ところが持ってこられたのは生きたままのグイドで、その瞬間彼女は彼を許す気持ちになり二人はよりを戻す。
by dognorah
| 2008-04-19 10:04
| オペラ
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Comments(5)
初めまして、ロンドン在住のクラシックをこよなく愛する者です。私もフラヴィオ、たまたま観に行っていて、レビュー興味深く拝見しました。イェステン・ディヴィスは、まだ26、7歳とは思えないくらい安定した声で、これからがとても楽しみな歌手ですね。
良かったら、また私のところにも遊びにきてください。まだブログ初心者でよく分からないのですが、私のブログにリンクを貼らせてもらっても構いませんか?
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dognorah at 2008-04-21 19:56
lonevoiceさん、ご訪問とコメントをありがとうございます。ブログを読ませていただきましたが私と趣味が重なっているようで、これからたびたびお邪魔しそうです。リンクはご自由にどうぞ。
今までヘンデルのオペラを聴きに行ってもあまり普段の音楽仲間に会うこともなかったので同好の士がいらっしゃることを発見できて嬉しいです。カウンターテノールは昔はあまり好きじゃなかったのですが最近上手な人を沢山聴いたせいで全く普通に受け入れることができるようになりました。 今後ともよろしくお願いします。
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助六
at 2008-05-05 09:17
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ホグウッド+キルヒーVSミンコ+カサロヴァですか!いや、これはハムレット的懊悩?になっちゃいますね。まあ私でしたら、「アグリッピーナ」は何度もぶつかってますけど、「アリアンナ」は聴いたことないもんで「アリアンナ」にします。演奏陣から言っても、キルヒーはヘンデル向きとは言えないけど小生好きな歌い手さんですし、先シーズンのシャンゼリゼの「アリオダンテ」も抒情的アリアで聞かせてくれる繊細な音楽性はやはり素晴らしかったので。カサロヴァはベルカントもそれなりに器用にこなす人で、ガルニエの「アルチーナ」も04年再演時には中々良かったんですが、07年再々演には同役でもレガートが擦れ声も引っ込み気味、これは先日のシャンゼリゼのオケ伴リサイタルでも同じで、仏人常連さんたちも同意見。2回こういうことが続くとちょっと引けてしまいます。声の状態に問題が生じてるのかもとも自問しましたが、無理な役など全く歌ってない彼女には不思議なことで判断しかねてます。一時的不調であることを祈ってますが。
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助六
at 2008-05-05 09:20
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私はミンコ苦手ですがオケを操る力量はやはりホグウッドより明らかに上だし「セメレ」など中々のものでした。ホグウッドはダメな時はまるでダメだけど、良いときはまあまあですし、学者肌で面白い解釈聞かせてくれることもあるもんで。
ハムレット的悩みは時々生じますが、近年では小沢/ヴィーンとアルゲリッチ+チョンのシューマン・ピアノ協が重なったときは困りました。本気でハシゴ検討してる人もいましたが時間的にやはり無理だそうで、私は結局先に切符買ってしまった小沢に行きました。 ゴヴァン、先日ヘンデルの「トロメオ」で初めて聞きましたが、様式感もまずまず、技術も確かで美しい音楽性の持ち主ですね。好感持ちました。
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dognorah at 2008-05-06 03:25
異なる演目でのハムレット的懊悩なら今まででも何度もありましたが、ヘンデルの異なるオペラでこんなことが起こるなんて!?と嘆いたわけですが、250周年でそれだけヘンデルの公演回数が増えているわけですね。
私はカサロヴァとはあまり縁がなかったのですが不調とは心配ですね。 アルゲリッチは来期久し振りにロンドンに来てくれます。例によって元夫との共演ですが。
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