2007年10月24日、バービカンホールにて。
Il Sant' Alessio Music:Stefano Landi (1587 – 1639) Sant' Alessio: Philippe Jaroussky (counter-tenor) Sposa: Max Emanuel Cencic( counter-tenor) Madre: Xavier Sabata (counter-tenor) Curtio: Damien Guillon (counter-tenor) Nuntio: Pascal Bertin (counter-tenor) Martio: José Lemos (counter-tenor) Nutrice: Jean-Paul Bonnevalle (counter-tenor) Religione/Roma: Terry Wey (counter-tenor) Adrasto: Ryland Angel (counter-tenor) Angelo: David Malczuk / Beniamin Hiraux (boy soprano) Eufemiano: Alain Buet (bass) Demonio: Luigi de Donato (bass) Uno del choro: Ludovic Provost (bass) William Christie (Music Director) Benjamin Lazar (Stage Director) Alain Blanchot (Costumes) Orchestra and Chorus of Les Arts Florissants La Maîtrise de Caen children's choir 1631年に作曲された作品で、主人公のアレッシオは妻も両親も捨てて精進した結果天上に召されて聖人に列せられたという単純な物語ですが、悪魔や道化なども絡んで登場人物は多いですね。9人のカウンターテノールが出演するという情報がBowlesさんからもたらされたときはオエーっとびっくりしましたが、聴いてみるとすばらしい音楽で大満足の結果となりました。歌手はそれに加えてバス3人、ボーイソプラノ二人で男ばかりです。子供合唱団の中に女の子がいたので全員男性とはなりませんでしたが。 カーンの舞台写真などを見るとすばらしく美しい装置と衣装ですが、出演者は全く同じなのにロンドンではコンサート形式です。それなりの演技をするために合奏団は舞台奥に設置されて前面に空間を作っていました。衣装も布を羽織ったり合唱団が色とりどりのTシャツ、黒の上下、上着を脱ぐなど割ときめ細かく変えてディレクターはそれなりの仕事をしていたようで、最後の挨拶の時も舞台に出てきました。 William Christieは今日はずっとチェンバロとオルガンの前に座りっぱなしで、左右に配された合唱団が歌うときだけ立ち上がって両手で指揮をしていました。管弦楽が鳴り始めたらまあいつもの音だなという感じでしたが、合唱が加わると雰囲気ががらっと変わって彼等の作る世界にどっぷりつかってしまいます。それだけで今日は質の高い音楽が聴けそうというすばらしさ。歌手も最初に出てきたTerry Weyとそれに続くPhilippe Jarousskyの柔らかく無理のない美声に感嘆。プログラムにあらすじさえ載っていない不備に不満は大きかったものの単純な筋に助けられて劇の進行を気にすることなく音楽に浸れました。 9人もいるとカウンターテノールといってもいろいろな声質があることもよく分かります。お母さん役のMadreを歌ったXavier Sabataの声は女性でいえばアルトに相当しますね。タイトルロールのPhilippe Jarousskyは声だけでなく、女装すれば完全に欺かれるであろう女性的な顔をしています。妻のSposaを歌ったMax Emanuel Cencicは外見は坊主頭ですが非常に美しい声でした。バスでは悪魔役のLuigi de Donatoがいい歌手と思いました。 カーンの舞台が見たくなります。 写真は左から二人目がアレッシオ役のPhilippe Jaroussky、右端がスポサ役のMax Emanuel Cencicです。 ![]()
by dognorah
| 2007-10-27 00:33
| オペラ
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Comments(13)
おはようございます。世界には、何十人もカウンター・テナーが居るんでしょうけど、「9人」というのは凄いですね。この作品、昨日のガーディアンで満点がついていました。もう、ロンドンでは観れないでしょうね。このような作品をきちんと舞台化できるフランス、コンサート形式でしか見ることの出来ないロンドン、文化の成熟の違いなんでしょうか。
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この手のオペラを専門に上演する団体がイギリスでは少ない気がしますが、今回オペラとして上演されなかったのは恐らくビジネス上の齟齬のせいじゃないかと思っています。
古楽関係はあまり聴かないので、昔っから英国がリードしている存在だという印象を持っていたのですが、違うのですか。ついこの間までこのクリスティも英人だと思い込んでいました、米人なんですね。
これ、この後シャンゼリゼに来て舞台上演されるんですが、17世紀ローマ・オペラそれも宗教劇となると、朗唱風の音楽がデレデレ続いていかにも退屈そうという先入見で、正直なところ気が進まずにいました。
クリスティーは90年にもシャトレで、やはりバルベリーニ・オペラのルイジ・ロッシの「オルフェオ」演奏会形式でやってくれたことがありましたけど(確か『若き日の』アイムが巧みなコンティヌオ付けてた)、リュリの直接の先祖ということはよく分かるものの、お経みたいと言うか、なんとも退屈だったもので。私が知識も経験も薄かったせいもあるのでしょうが。 この辺の曲は音楽史的には重要だし、オタクの悲しさ、「見ない訳にもいかん」というヘンな義務感みたいなものもあるので困ってましたが、dognorahさんの感想伺って一挙に気が楽になりました。
当時の上演は地獄の劫火あり天使の空中車ありの大スペクタクルだったそうですから、現代的演出で舞台上演しても必ずしも効果的ではないかもという疑念もありますが。この辺のオペラは歌のパートと数字付低音、僅かな楽器指定しか残ってないから、クリスティーか誰かがオケ譜準備したはずで、大変貴重な機会ではありますね。それにしてもCT苦手の私は、9人と聴いただけでゲッソリ。ジャルスキーの他Cencicも最近評判の人みたいですね。当時はカストラートだったんだから、女声に配しても構わないと思うんですが。
amaoさん、古楽演奏はイギリスは盛んですが、意外にオペラの上演がないんですよね。この点はフランスが凄いと思います。
助六さん、CT9人と聞いて私もげんなりしましたが実際に聴いてみると大変楽しめましたので、舞台付きの公演とあれば是非聴いて感想を教えていただきたいと思います。いろんなCTを聴いて私はかなりアレルギーが無くなりました。女声ではなくCTを使うというのは話題性も狙ったクリスティの趣味かなと思いますが。
当初はいやがっておいてでしたが(笑)。
>女声ではなくCTを使うというのは話題性も狙ったクリスティの趣味かなと思いますが。 「クリスティの趣味」は大正解!!「話題性」ということで言えば、オタク的にはクリスティとバンジャマン・ラザールが組んだことのほうが話題だと思います。クリスティは以前にこの曲を録音していますが、その時はSant'Alessioをソプラノのプティボンに歌わせていました。当時と比べるとカウンター・テナーの水準が著しく上がったのが、今回のような舞台を可能にしたのだと思います。 妻役のチェンチッチ、彼はウィーン少年合唱団のスターでした。 2,3年前マルコンの指揮でAndromeda liberataを歌いに来日したとき、ソロ・リサイタルを開いたのですが、その会場に一歩脚を踏み入れた途端、まちがった場所に来てしまったような感じがしました。一種宝塚のような...当時からのファンが、歌うものは変わっても、ずっと追っかけて来ているのです。その時のアンコールに歌ったケルビーノ、今まで聴いた中ではバルトリと双璧でした。 この前TCEでの町人貴族、やはりちょっとハコが大きいような気がしたので、IlSant'Alessioは来年ナンシーで聴く予定です。
すみません、追加です。
やはりちょっと気になったので調べてみました。 >子供合唱団の中に女の子がいたので全員男性とはなりませんでしたが。 クリスティが「初演のときと同じように」ということにこだわっていたので(さすがカストラートはいませんが)、La Maîtrise de Caenについて調べてみたところ、やはりあそこは11歳から14歳までの少年で構成されているとのことでした。この舞台の映像を見ると、たしかに女の子のように見受けられる子どもたちがいますが。 クリスティって、ヘンなところにこだわるのだと思います。
Bowlesさん、これだけの歌唱を聴かせてもらったらもうCTに関して駄々はこねません(笑) しかしクリスティが「そういう趣味」とは知りませんでした。
チェンチッチは日本ではそういう状態ですか。確かに今回の歌唱もすばらしく、追いかける気持ちは分かりますね。顔もきれいだし。 子供合唱団、そうですか。私はあれは女の子だろうと思ったのが2-3いたように思ったのですが単に髪が長いだけでしたか。
うーん、退屈する暇などない優れた音楽でしたねぇ。
やはり僅かの有節形式アリア、あとシンフォニア、リトルネッロ、ダンス、合唱の他は延々と朗唱風の音楽が続いてきますから、もうこれはアーティキュレーションが全て。以前「ウリッセ」でクリスティーのコンティヌオはアーティキュレートする力が弱くてガッカリしたことがあったんですが、今回は優秀な第二チェンバロに多くを任せていてその点でも見事な出来でした。曲は合唱部分含め、ローマ派の元祖という以上に、モンテヴェルディの「オルフェオ」の直系という印象を受けました。 舞台は古代ローマというよりイタリア15世紀風、つまり「何となく歴史的」な装置に衣装、暗めで動きも少なく、視覚的美しさ・分かりやすさ主眼の仕事で、膝叩くようなアイデアは皆無。
コミカルなシーンや、幕切れのダンスのカタルシス的効果なんかは舞台上演の方がよく分かりそうですけど、基本的にスタティックな演出でこれで見たから演奏会形式より曲の真価が分かるとは特に思えませんでした。
このオペラ、宗教劇の体裁を取ってながら、聖と俗の混入・性的曖昧さ・天使の合唱や地獄の見世物性とか17世紀ローマ・バロック世界の体現みたいなとこがあるから、個人的にはもう少しダイナミックでお品の悪さのある演出で見てみたい気がしました。 CTはジャルスキー、チェンチッチ、エンジェルなんかは声の放射力、音程の確かさ、音色の豊かさと女声使うのと遜色ない出来でしたけど、その他は技術的に僅かに不満というか、やっぱりCTだなぁという感じでしょうかね。 でもお蔭様で楽しめました。Bowlesさんも感想教えて下さいね。
助六さん、詳細な感想ありがとうございました。私にはアーティキュレーションがどうのこうのと論評する力はありませんが、とにかく今回の演奏はそれが優れていたということですね。かなり楽しまれたようで、行かれるきっかけの記事を書いた者としてはほっとしました。
ほんと、Bowlesさんの感想も聞きたいですね。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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