人気ブログランキング | 話題のタグを見る

オペラ「スペインの時」と「ジャンニ・スキッキ」

2007年4月24日、ROHにて。

本当は4月3日に見る予定でしたが不覚にも体調を崩して寝込んでしまったため最終日の今日見る羽目になってしまいました。どちらのオペラも1時間程度の短いものなので2本立てとなったわけですが、ジャンニ・スキッキは本来プッチーニがIl Tritticoという3部作を一晩に上演するように作曲したものの中の第3部です。なぜ作曲家の意図通りに上演しないのかよくわかりませんが、2本でも面倒なのに3本なんてやれないよ、ということでしょうか。なお今回のオペラについては既に多くの方がごらんになって感想を書かれています。あらすじに関してはロンドンの椿姫さんのブログをご参照ください。

L'HEURE ESPAGNOLE (Comédie musicale in one act)
Music: Maurice Ravel
Libretto: Maurice Ravel, after the play by Franc-Nohain

GIANNI SCHICCHI (Opera in one act)
Music: Giacomo Puccini
Libretto: Giovacchino Forzano after a passage from Dante Alighieri's narrative poem Commedia Part I: lnferno

Conductor: Antonio Pappano
Director: Richard Jones
Set Designs: John Macfarlane
Costume Designs: Nicky Gillibrand
Lighting: Mimi Jordan Sherin
Choreography: Lucy Burge
lllusionist: Paul Kieve

The Orchestra of the Royal Opera House
Concert Master Vasko Vassilev

出演
L'HEURE ESPAGNOLE
Torquemada: Bonaventura Bottone
Ramiro: Christopher Maltman
Consepcion: Christine Rice
Gonzalve: Yann Beuron
Don Inigo Gomez: Andrew Shore

GIANNI SCHICCHI
Buoso Donati: Bob Smith
Simone: Gwynne Howell
Zita: Elena Zilio
Rinuccio: Saimir Pirgu
Betto di Signa: Jeremy White
Mareo: Christopher Purves
La Ciesca: Marie McLaughlin
Gherardo: Jeffrey Lloyd-Roberts
Nella: Joan Rodgers
Gherardino: Jesus Duque
Gianni Schicchi: Bryn Terfe!
Lauretta: Dina Kuznetsova
Maestro Spinelloccio: Henry Waddington
Ser Amantio di Nicolao: Enrico Fissore
Pinellino: Nicholas Garrett
Guccio: Paul Goodwin-Groen

まず、「スペインの時」です。ラヴェルのオペラは見るのはもちろん聴くのも初めてですが、すばらしい音楽とおもしろい舞台設定で大いに楽しませて貰いました。写真は最後の場面です。
オペラ「スペインの時」と「ジャンニ・スキッキ」_c0057725_0273187.jpg

1幕ものなので場面展開はありませんが、額縁の中に嵌めた作りの時計屋がとても美しい仕上げで様々な時計が華やかです。コメディとしての演出もよくできています。出演者はすべて演技も上手かったし。最後に筋とは無関係にショーダンサーが出てきて華やかさを盛り上げていましたが、いいですねこういうの。

歌手ではマルトマンとブロンが声も歌も印象的です。マルトマンが鬘をつけてふさふさした頭にしているので最初はわからなかった(^^; でもこうして見ると結構ハンサムな人だなぁと思いましたよ。ブロンは昨年12月にバービカンでの「キリストの幼児」でボストリッジの代役で出演したときが初の体験でしたが、今日もそのとき同様すばらしい歌唱でした。クリスティーヌ・ライスはいつもズボン役で見ていたのがど派手なメーキャップで好色女房役を好演しているのにびっくり。赤いパンティを見せるなど熱演していましたがその太ももを見るにつけこんなに太った人とは今まで気づきませんでした。歌は上手いのですが私は今までの印象通り、どうもこの人の声は好みじゃないです。パッパーノ指揮の管弦楽団のラヴェルはすばらしい演奏でした。
写真は左から、ボットーネ、ブロン、ライス、マルトマン、ショアです。
オペラ「スペインの時」と「ジャンニ・スキッキ」_c0057725_0304124.jpg

次のジャンニ・スキッキは以前のプロダクションをROHで見た記憶があります。新作といっても1幕ものじゃあまり変える余地はないような気がしますが。ということで演出的にはまぁこんなところかという感じで特に印象的ではないです。演技はこちらの方もすべて上手かったと思います。ターフェルは悪役的な所作はとても上手いし。声はちょっと迫力ありすぎる感じでした(まさかマイクなんて使ってないでしょうね)。
他の歌手では、今年の1月にヴィーンの「コジ・ファン・トゥッテ」のフェランド役で好印象を残してくれたSaimir Pirguがやはりすばらしい。ROHデビューのディナ・クズネツォワが歌う例のアリアはなかなか上手かったと思います。余り感情を込めて歌うシーンじゃないから今回のようにさらっと歌うのがいいのでしょう。しかしこのローレッタ役はこれ以外にほとんど出番がないんですよね。父親によって部屋から追い出されるものですから。
喜劇オペラとしては先の「スペインの時」の方が優れていると思いました。音楽的にもラヴェルの方に軍配です。
写真は左から、パッパーノ、クズネツォワ、ターフェル、ピルギュです。ターフェルの巨体ぶりが目立ちますね。
オペラ「スペインの時」と「ジャンニ・スキッキ」_c0057725_0311633.jpg


最後に訃報
オペラ「スペインの時」と「ジャンニ・スキッキ」_c0057725_033636.jpg我々日本人はいつもピットの中を見て、ここにも日本人奏者がいると気づいていました。第2ヴァイオリンプリンシパルの一之瀬康夫氏です。もう30年もここで弾いてきた人ですが、3月27日に逝去されたことが今回のプロダクションの出演者表の最後のページ全面に掲載されています。そしてこのプロダクションを彼の思い出のために捧げますと。享年65歳。ご冥福をお祈りします。LSOの第2ヴァイオリン奏者にMiya Ichinoseという人がいますが、彼のお嬢さんのようです。
by dognorah | 2007-04-26 00:41 | オペラ | Comments(16)
Commented by Sardanapalus at 2007-04-26 20:30 x
dognorahさんとロンドンの椿姫さんの感想を読んで、私も「スペインの時」見たくなってしまいました~。歌手も揃っていて良いですね。「ジャンニ・スキッキ」のターフェルには絶句…うーん、どう見てもそこら辺のパブにいそうなおじさんですね(笑)

>最後に訃報
ええ!密かに毎回チェックしていたので、もうお姿を見られないなんて寂しいです。ご冥福をお祈りします。
Commented by 湯葉 at 2007-04-26 22:13 x
Dognorah さん、体調を崩されていたとのことですが大丈夫ですか?
お大事になさってくださいね。 

新聞などでの批評では、ジャンニスキッキの方が誉められていましたが、私もラベルの60年代キッチュに徹した演出のオペラの方がとても気に入りました。  あまりに気に入ったので、2回目を先日観に行ってしまいました。  クリスチ-ヌ・ライスを始め歌手陣の演技にも拍手ですが、
なんといっても衣装も含めて演出のリチャ-ド・ジョ-ンズに大拍手です。  
   

Commented by ロンドンの椿姫 at 2007-04-27 00:38 x
こういう芝居の要素が重要なオペラは近くの席で観るのがいいですよね。dognorahさんの座られた席からは細かい演技もよく見えたことでしょう。写真もいつもにも増して素晴らしいですし。私は今回は近くの席が取れなくて遠くからだったのが残念です。
休憩時間にお会いしたとき、足長美人ダンサーをまじかに見た直後でdognorahさんの鼻の下、ちょっと長かったですよ~。彼女たち、一体なんだったんでしょうね~?でも綺麗だからいっか。
Commented by dognorah at 2007-04-27 02:00
Sardanapalusさん、「スペインの時」は必見ですよ。しかしこれがたったの25回目の上演なので次回はいつになるやらですが。
Commented by dognorah at 2007-04-27 02:03
湯葉さんも「スペインの時」の方を評価されましたか。絶対こっちの方がすばらしいですよね。リチャード・ジョーンズはこっちに時間を使いすぎてジャンニ・スキッキはお座なりで済ませたのでしょう。
Commented by dognorah at 2007-04-27 02:12
ロンドンの椿姫さん、お金さえあればどんな演目でも近くがいいですよ(^^;
ただし、平土間は余り好きじゃなく(舞台の床が見えない)ストールズサークルの最前列がいいですが。
あそこでナイトクラブダンサーがいきなり登場するという演出家の遊び心が好きです。以前、日本人と思われるダンサーが踊っているときに(ファウストだったかな)私と目が合って、彼女はずっと私の目を見ながら踊ったものだからちょっとドキドキしちゃいましたよ。
Commented by Bowles at 2007-04-27 09:39 x


Il tritticoの一挙上演、生では一度しか聴いたことがありません。タイプの違う歌手を何人もそろえる必要がありますから、なかなかむずかしいでしょうね。今度METではやりますが。

3年ほど前、小澤の指揮で、またったく同じ組合わせで聴きました。演出はロラン・ペリ。パリとの共同制作です。今回のコヴェント・ガーデンの写真を見て、びっくり!!《スペインの時》、とてもよく似ています。やはのあのオペラを演出すると、ああいう風にしかならないのでしょうか。

http://www.music.co.jp/classicnews/c-news/2003/0413-0419.html
右側の写真、クリックで拡大されます。
Commented by dognorah at 2007-04-27 20:15
歌手を揃える必要ということはやはりお金の問題ですか。その点METは出来るということですね。しかしそこまでやる気にさせる作品かどうかも一つ考慮すべき点かも。
ペリーの写真見てみましたが、余り似ている感じはしなかったです。ジョーンズのやつはまるで宝石店のように美しい室内を丁寧に作り込んだもので、がらくたは一切出てきません。唯一似ているのはコンセプシオンの衣装で、どちらも花柄ですね。
Commented by 助六 at 2007-04-28 08:43 x
小生も04年に松本からパリが買ってきたペリー演出のこの2作組み合わせ、ガルニエで接しました。やはりブロンがゴンサルベ歌ってました。小沢の指揮が大変好評で、オケからもヤンヤの大喝采、「ガル監督のプロダクションで良いのは外国からの借り物ばかり」なんて言われてましたね。小沢のオペラ苦手な私でも、プッチーニでさえ、ノスタルジックな反映にグッと来ちゃいましたねぇ。
個人的にはこの2作の組み合わせは悪くないと思いましたが、確かに「3部作」は、プッチーニの最初のアイデアだったダンテ「神曲」の「地獄」「煉獄」「天国」3部オペラ化構想の論理(闇から光へ)を残しているから、本当は作曲者が望んだように(「アンジェリカ」抜きの上演を許可したリコルディに腹を立ててる)3本立てでやるのが理想かも知れません。個人的には一作ごとの完結性も高いし、色んな組み合わせも結構と考えてます。
現実には3本立て上演が少ないのは、やはりソリストの数が大変多くなってカネが掛かることと、現代の生活リズムでは長くなりすぎるせいのようです。
Commented by 助六 at 2007-04-28 08:45 x
既に80年代初めのミュンヘンでも、サヴァリッシュ指揮、ヴェラディ、ポップなんか出演で「アンジェリカ」抜きでやってましたね。フィレンツェ5月祭で88年に3本立て観たことがありましたが、8時開演でノンビリ休憩が入り、終演は12時半位だったと思います。「スキッキ」楽しんだ後、初夏の宵のアルノ河渡って宿に戻ったのは最高に幸せな想い出なのですけど。フィレンツェ上演は3人別々の演出家でしたが、パリでオペラ・コミックが87年にやったときはマルティノティが3作一人で演出してました。オマケにL・ミッチェルが3作のヒロイン一人で歌うという無茶苦茶ぶり(笑)!ガルニエはR・ジョーンズ演出でツェムリンスキー「王女の誕生日」とラヴェル「子供と魔法」の2本立てというのも組んだことがありました。器用な演出家ですよね。
ところで前から気になってるのですが、ラウレッタのアリアの「ポルタ・ロッサに指環を買いに行く」って言うのは、どういう意味なのでしょう? ポルタ・ロッサってフィレンツェに実在してて、結婚指環屋街とか(笑)?Bowlesさんご存知ありませんか?
Commented by Bowles at 2007-04-28 09:45 x
dognorahさん

>まるで宝石店のように美しい室内を丁寧に作り込んだもので、がらくたは一切出てきません。

いやその、がらくたがどうのということではなくて(笑)、あの作品をどう舞台に載せるかというコンセプトのことです。

助六さん

フィレンツェのPonte Vecchioから歩いて5,6分のところにVia Porta Rossaという通りがあります。ここに同じ名前の、14世紀から営業しているホテルがあるのですが、多分当時は貴金属を扱う店が多かったのでしょうね。
Commented by Matthew at 2007-04-29 20:34 x
亡くなられたのですね。ちょっとショック。
いつも日本人頑張っているなぁ~って彼の姿見ていたのに。。。。

Cristina Gallardo-DomasのLa BohemeのDVDを聴きながら
読んでました。
Commented by Matthew at 2007-04-29 20:41 x
関係ないけど、NetrebkoはPROMSのラスト・ナイトに出るんですね。
見たい~。
Commented by dognorah at 2007-05-02 19:57
助六さんは2回も3部作上演に接しておられるのですね。Bowlesさんも経験されているし、やはり長いオペラ鑑賞歴が必要というくらいまれな上演であることは理解できました。現代の生活リズムが作曲家の意図と合わなくなっている例はヘンデルやヴァーグナーで散見されますが、これからどんどんそうなる気がします。長いオペラというのは、昔の人は体力があったのかあるいはいい加減に聴いて時間をつぶしていたのか、と考えちゃいます。
Commented by dognorah at 2007-05-02 19:58
Bowlesさん、私は想像力不足で写真だけではなかなか演出内容まで思い至りませんでした。
Commented by dognorah at 2007-05-02 20:00
Matthewさん、あそこで彼を見ていた我々には感慨深いものがありますよね。
ネトレプコのラストナイトよりオペラを見に来られたら?
<< 小澤征爾の復帰公演「さまよえる... ROHのランチタイムコンサート >>