2006年12月11日、ROHにて。
ROH久しぶりのカルメンは新演出ですが、アントナッチのカルメン、カウフマンのドン・ジョゼ、ダルカンジェロのエスカミーリョ、アンセレムのミカエラという豪華出演者とも相俟ってすばらしいプロダクションでした。 アントナッチは9月にパリで「皇帝ティートの慈悲」でヴィテリア役(ソプラノ)を歌ったのを聴きましたが、そういうお姫様役より今回のカルメン(メゾソプラノ)の方がはるかに存在感を発揮できる人です。声も歌唱も演技も完全に嵌っています。メーキャップもよくできていて、あばずれのジプシー女が余すところなく再現されている感じです。 ![]() アンセレムは第1幕ではちょっと霞がかかったような声で余り好きではないですが、第3幕ではかなり改善されていました。 男声陣では、期待していたカウフマンは絶好調ではなく、第1幕はやはりちょっと霞がかかったようなところがありました。しかしその後は調子を取り戻し、ニュアンスの表現の上手い歌唱を披露して絶賛されていました。 ダルカンジェロは先般の「ドン・ジョヴァンニ」で強烈な印象を与えてくれた人ですが、今日も全く言うことなし、迫力のエスカミーリョでした。本物の馬に騎乗して現れ、馬上で闘牛士の歌を歌いましたが、声量も迫力ある歌唱もすばらしいとしか言いようがない出来です(写真はThe Opera Criticから)。 ![]() フラスキータ、メルセデの女声陣、中尉や密輸者など他の脇役陣も概してできがよく、レヴェルの高い公演となりました。 この新演出はよい出来だと思います。大勢の登場人物に馬やロバなどの動物も含めて舞台は大賑わいですが子供たちの合唱も含めてきちんと統制が取れていてとても気持ちがいい。 舞台装置はすぐにスペインを思い起こさせるオレンジっぽい黄土色の壁を配置させるだけのシンプルなものですが、各場面を実に上手く表現しています。第4幕の華やかさもなかなか贅沢な作りで、聖女を乗せた山車も豪華さを盛り上げています。 序曲に次ぐ序奏部で幕が開くと紗幕の向こうで最後の場面が回想的に演じられますが、この場面や大群衆処理部分でちょっとゼッフィレッリの影響を感じ取れます。 演技ではカルメンが色気たっぷりで、観客まで彼女の魅力になびきそう。最後の刺殺場面も緊張感いっぱいで好ましい。刺殺された瞬間に闘牛場の中の照明がぱっと消えるのはとても印象的です。 パッパーノ指揮するオケは第1幕でちょっとガチャガチャという印象の音だったのが、だんだん良くなり第3幕と第4幕ではとても美しくまた力強い演奏でした。 帰宅してベッドに入っても興奮が覚めやらず、なかなか寝付けませんでした。 今年はヴェローナの野外公演と共に2回もすばらしいカルメンを見れて幸せです。 CARMEN Opéra comique in four acts Music: Georges Bizet Libretto: Henry Meilhac and Ludovic Halévy after Prosper Mérimée's novel Conductor: Antonio Pappano Director: Francesca Zambello Designs: Tanya McCallin Lighting: Paule Constable Choreography: Arthur Pita The Royal Opera Chorus Chorus Director: Renato Balsadonna The Orchestra of the Royal Opera House Concert Master: Peter Manning Moralès: Jacques Imbrailo (a corporal) Micaëla: Norah Amsellem (a country girl) Don José: Jonas Kaufmann (a corporal) Zuniga: Matthew Rose (a lieutenant) Carmen: Anna Caterina Antonacci (a gypsy) Frasquita: Elena Xanthoudakis (a gypsy friend of Carmen) Mercédès: Viktoria Vizin (a gypsy friend of Carmen) Lillas Pastia: Caroline Lena Olsson (owner of a tavern) Escamillo: Ildebrando D'Arcangelo (a torero) Le Dancaïre: Jean Sébastien Bou (a smuggler) Le Remendado: Jean-Paul Fouchécourt (a smuggler) Guide: Anthony Debaeck 写真は左からアンセレム、カウフマン、パッパーノ、ウエストロップ(副合唱指揮)、アントナッチ、ダルカンジェロです。 ![]()
by dognorah
| 2006-12-12 22:25
| オペラ
|
Comments(23)
私も11日の公演を見ていました。面白かったですね。
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興奮冷めやらず、いつもとは大違いの早さでブログを書いた気持ち、分かって頂けましたよね!(笑)
面白いプロダクションでした。初めて全幕を通して体験して、こんなに素晴らしいメロディがてんこもりのオペラも珍しいな、と。反面、台詞がかなり多いことが、知らなかったからでしょうか、けっこう違和感がありました。
アントナッチとカウフマンは、両者とも初めて聞きましたが、素晴らしい歌手ですね。そうそう、昨夜舞台に居たのは、バルサドナでなく、アシスタント・コーラス・マスターのウェストロップです。彼は、ロイヤル・バレエのシーズン開幕ミックス・プログラムの中の「ヴォランタリーズ」で素晴らしいオルガン・ソロを聞かせてくれました。 ところで、恐らくご存知かと思いますが、アラーニャがスカラ座でとんでもないことをしでかしたようです。 http://www.guardian.co.uk/international/story/0,,1969863,00.html
ゆうこさん、これもご一緒でしたか。充実したプロダクションだと思います。
stmargaretsさん、カウフマンは8日の方が調子がよかったようですね。アントナッチがこんなによいとわかっていたら、もう一度Aキャストで切符を取っていましたよ。
守屋さんも同じ日にご覧になったんですね。以前からCDやDVDで経験していたので台詞は余り気になりません。慣れですね。
アントナッチはパリでソプラノを聴いたときは今ひとつピンと来なかったのですが、今回は快演でした。カウフマンは2年前にゲオルギューと共演したLa Rondineですばらしい歌唱を聴かせてくれたので今回大いに期待していましたが、私的にはちょっと絶好調とは言えませんでした。 コーラスマスターじゃなかったんですね。修正させていただきます。 アラーニャのニュースは知っていました。マリア・カラスも同じことをしているので彼もそれぐらい大物になったということでしょうか。スカラ座の聴衆はちょっとうるさ過ぎる印象ですね。ドイツかどこかでもブーイングに怒った指揮者がピットを飛び出してその観客を殴ったという事件を誰かのブログで読んだことがあります。
stmargaretsさんのところでも書いてますが、アントナッチのカルメンが見たい~~!彼女はこういう押しの強い役が似合ってますよね。私だったら他のキャストとの兼ね合いからも、迷わずAキャスト重視です(^^)
演出もにぎやかで楽しそうですね。それにしても、エスカミーリョは本物の馬の上で歌うんですか!一応トレーナーは横についてました?エスカミーリョ役は馬の乗り方も覚えなくちゃいけないから、再演になったら大変そうですね。動物はお金もかかるって言うし。これってDVDになるんでしたっけ?Aキャストで出るなら絶対買いますよ☆
Sardanapalusさんはアントナッチをどこでご覧になったんでしたっけ?
馬の横にはちゃんとトレーナーらしき人が付いていましたよ。第4幕ではカルメンも馬に乗って現れるんですよ。騎手の後ろに横座りでしたけど。 DVDになるかどうか情報なしです。最近TVカメラが入ることもないのです。
あっ、話題のアントナッチのカルメン・デビューをお聴きになりましたか!いいですね~。最近彼女の声の状態に少し不安を感じていたので、一安心しました。
ベルガンサやバルツァ以降あまりパッとするカルメン歌いがいない感じで、近年はユリア=モンゾン(悪くないです)が盛んに起用されてますけど、アントナッチが加われば一挙に賑やかになりますね。
>アントナッチをどこで
実はまだ映像やCDでしか聞いたことがありません(^_^;)一番気に入っているのはフェラーラ音楽祭の「ドン・ジョヴァンニ」でのドンナ・エルヴィーラですかね。詳しくは↓に書いてあります。 http://blog.so-net.ne.jp/sardanapalus/2005-10-19 助六さん> >ユリア=モンゾン(悪くないです) オランジュ音楽祭かな?の映像で見ました。ちょっと綺麗すぎる気もしますが、私も結構好きなカルメンです。映像では「アムレット」のジェルトルードのインパクトの方が強いですが(^^)
アントナッチのカルメンの感想、嬉しく読ませていただきました。彼女は今絶好調!!ですね。情熱的な役柄が特に彼女には向いていますね。去年の「メディア」もはまってましたし、カルメンを今まで歌わなかったのが不思議なくらいですね。
来春はミンコの指揮のカルメンを聴きにパリに行く予定です。当初はアントナッチという噂もあったのですが、Sylvie Brunetが歌うようです。映像で良かったのはオッター(グラインドボーン)とユーイング(ロンドン)です。 カウフマンも大好きなテノールで、最近はエジンバラでワーグナーを聴きました。レパートリーを広げすぎているような気もしますが・・・。
助六さん、アントナッチはすばらしかったですが、私がヴェローナで聴いたLuciana D’Intinoもいいカルメン歌いですよー。
Sardanapalusさん、ドンナ・エルヴィーラで見られた役なら今回のカルメンは変身振りにびっくりしますよ。
aliceさんはさすがに彼女の実演を見ていらっしゃいますね。ミンコ指揮のカルメンとはまた面白そうですね。5月のシャトレですか。
カウフマンはヴァーグナーも歌うのですか。そっち方面に興味を向けているのでしょうかね。
Sardanapalusさん、追加情報です。この公演は12月26日にBBC Radio3で放送されるそうです。また、TV用に収録予定という情報もROHより入りました。これでDVDの前段階はクリアですね。
アントナッチ、カルメンを歌うのは初めてではありません。マチェラータでもうずいぶん前に歌っていますし、多分他でも。
あ、既に歌ったことがあるのですか。貴重な情報ありがとうございます。
なんだか、アントナッチのカルメンは書き込みが白熱してますね。メトロでも5つ星でしたし、相当良かったんですね。私は11日に券を買っていたんですが、日本からエラい人が出張で来たため、泣く泣くキャンセルしました。代わりに明日行きます。あー、楽しみです。
といいつつ、1月のドマシェンコも期待してるんですよね。ドマシェンコのカルメンは、7月にベルリンで聞きましたが、ジプシーというには上品でしたが、歌そのものは迫力があって良かったです。ホセを「直情径行」のヴィラソンが歌っていて、バレンボイムの味付けもドラマティックだったので、オペラ全体が「いけいけモード」だったのは否めませんが、カルメンはそれがいいんですよね。 パリの「ティート」で聞いたアントナッチは、今一つパッとしませんでしたが、今回のカルメンは皆さんこぞって絶賛なので、明日が待ち遠しいです。
>12月26日にBBC Radio3で放送
>TV用に収録予定 ありがとうございます。待ち望んでいた情報です!やった、ラジオもAキャストなのね♪(Bかもしれないという噂があったのです)しっかり録音したいと思います(^^)
ガラちゃんさんの感想もぜひ聞かして下さいね。当日券を並んでゲットするだけの価値はあるぞ、とけしかけたりして多くのメディアが絶賛する中、Guardianは☆3つとそれほど評価していませんね。やっぱり人それぞれ。
スカラ座で退場したアラーニャのコメントによると、「せっかくコヴェントガーデンの話をキャンセルしてスカラに来たのに・・・」というくだりがありましたが、恐らく当初はこのカルメンでドン・ジョゼを歌う予定だったのでしょう。フランス語のオペラだから当然ありえますね。
カウフマンがよかったから、アラーニャが出ていてもよりすばらしくなったかどうかは微妙ですが。
へぇ~、もしかしたらアラーニャが出ていたかもなんですね。それはそれで観てみたかった気もしますが確かによりすばらしくなったかは微妙ですね。
3月のウィーンはちゃんと歌うのかなぁ。
ヴィーンのマノン以前には予定はなかったんでしたっけ?
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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