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ブリテン「ヴェニスに死す」コンサート形式

11月23日、QEHにて。
Opera “Death in Venice” by Benjamin Britten (1973)
Libretto by Myfanwy Piper based on Thomas Mann

演奏
Philip Langridge (テノール、 Gustav von Aschenbach)
Alan Opie (バリトン、Traveller他6役)
William Towers (カウンターテノール、The Voice of Apollo)
Philharmonia Voices (その他の役と合唱)
Philharmonia Orchestra(管弦楽)
Richard Hickox (指揮)
Aidan Oliver (演出)

オペラはもちろん、管弦楽を聴くのもこれが初めてである。
歌手は総じてよかったが、特にオピーは傑出している。テノールに近い部分からバスまで音域が広そうで、艶と張りがあり、堂々とした歌唱だ。簡単な仕種をするそのやり方から演技も上手そう。実は4年前にシモン・ボッカネグラのパオロ役で聴いているがあまり印象はない。
主役のラングリッジはオペラではいつも脇役で聴いている人。すべてというわけには行かなかったが立派な歌唱だった。声もとてもよく出ていた。
合唱団は2004年に結成された若い歌手によるプロ団体であるが、すばらしいアンサンブルだし、それぞれの役どころでもしっかりと独唱している。
ヒコックス指揮のフィルハーモニア管も美しいアンサンブルで文句なし。このオケを聴くのは久しぶりだが、今日はLeaderである日本人ヴァイオリニストMaya Iwabuchiさんがコンサートマスターを勤めている。ブリテンの作曲手法にはかなり感心させられた。打楽器を多用するがそのアンサンブルが気持ちいいし、効果的である。ヴァイオリンを中心とする弦のメロディも時にはマーラーを思わせる官能的な調子で美しい。ブリテンは作曲前にヴィスコンティの映画(1971年)を多分見ているだろう。

ということで音楽的には大変満足できる演奏だったが、単純な筋であるだけにコンサート形式では長すぎて(約3時間)やや退屈であったのは否めない。歌手は結構動き回って、アポロやデュオニソスは客席で歌ったり、イチゴ売りの少女は舞台下から本物のイチゴをアシェンバッハに食べさせたりと変化はつけているのだが。舞台にすれば演出によっては退屈せずに済むかもしれない。ヴィスコンティの映画は全く退屈しなかった記憶がある。このオペラが上演されたら見るか?多分見ないでしょう(^^;

写真は指揮者の左側にいるのがラングリッジ、その左の白い上着がタワーズ、指揮者の右側にいるのがオピー。
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by dognorah | 2006-11-24 20:11 | オペラ | Comments(3)
Commented by 助六 at 2006-11-25 10:16 x
小生には、「グライムズ」「夏の夜の夢」と並んで大好きなブリテンです。「ビリー・バッド」と「オーウェン・ウィングレイヴ」はゴメンですが(笑)。
90年代初めにROHで観たことありますよ! 主役はやはりラングリッジ、演出はモシンスキーだったような気がするのですが、記憶がはっきりしません(汗)。正統派の美しい舞台で、退屈せずに大変楽しめ、コヴェント・ガーデンでこそ見たい演目を見れて満足でした。指揮は初演も振ったベッドフォードで、ブリテンの信頼を得ていた人ですから期待したのですが、まるで微温的で残念でした。ヒコックスとPOならいいでしょうね。やはりROHのオケはLSO等ロンドンのシンフォニー・オケより劣る傾向はあるでしょうか?オピーは、ブリテンの他、ヘンデル、モーツァルト、現代物でも聴いたことがありますから、器用な歌い手さんですね。
舞台観ると、美少年タッジオを一言も喋らぬダンサーが演じるのが大変成功しておリ、dognorahさんが仰るように、ガムランの響きを模したとかいう、少年の登場に付随する繊細なパーカションの響きが、少年の超現実的な雰囲気を見事に醸し出すと思います。
Commented by 助六 at 2006-11-25 10:17 x
打楽器で巧みに神秘的な雰囲気を作り出すのはブリテンの得意技で、「夏の夜」や「ねじの回転」でも見事なモンです。あとこの曲でも、ブリテン得意の海の雰囲気描写が美しく、弦のグリッサンドにハープとクラリネットを重ねる響きにいつも魅せられてしまいます。
ブリテンは、71年秋に台本作家やピアーズと共にヴェネツィアを訪れてますが、71年初めに世界中で評判になっていたヴィスコンティ映画は、頑固に見るのを拒んだそうです。5-6年前から暖めていた、彼にとっては重要な企画だっただけに、「先を越された」無念さもあったようですし、映画のブームに刺激されたと思われるのが嫌だったと言います。ヴィスコンティが主人公を音楽家マーラーに置き換えたのも、評価してなかったそうです。ブリテンは、アシェンバッハに自己の影を見てた上、マーラー好きだったから、何とも居心地悪い思いだったらしい。まあ分かりますよね(笑)。
Commented by dognorah at 2006-11-26 07:55
助六さん、作品の詳しい解説をありがとうございます。コヴェントガーデンで見られたとは!タッジオをバレーダンサーが演じるというのはすごい発想でとても感心しました。やはり演出で見るべきものに仕上げられるのですね。
ヴィスコンティに関してはブリテンにちょっと失礼な推量をしてしまいました。プログラムに長文の解説が掲載されているのですが、ヴィスコンティが映画を作り始めたという情報で作曲をあきらめましょうという意見を退けて継続したという件が言及されているだけで助六さんが仰るようなことは書いていなかったものですからついそういう風に考えてしまいました。そういう事情なら確かに悔しいでしょうね。ゲイが取り上げる素材は限られているのでこういうことも起るんですね。
ROHのオケはいいときと悪いときにかなりの差があり、その点ではLSOやPOの常に一定レヴェル以上のオケとは差がついている気がします。
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