8月15日、ロイヤル・アルバート・ホールにて。
ヴァイオリン:クリスチャン・テツラフ(Christian Tetzlaff) 指揮:イルジー・ビエロフラーヴェク(Jiří Bělohlávek) 曲目 シューマン:マンフレッド序曲 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 スコットランド テツラフ(左の写真)は1966年ドイツ生れ。結構ヴェテランながら聴くのは初めてです。ヴィルトゥオーゾでバリバリ弾くというタイプではなく各フレーズを丁寧に美しく表現する人でしょうか。第2楽章はことのほか美しい演奏でした。驚いたのは、カデンツァは初めて聴く変わったものであったこと。しかも第1楽章ではティンパニーに協力を仰いで演奏するのです。ご存知のようにこの曲ではティンパニーは結構活躍しますが、カデンツァの間も出番があるとは本人も驚いたことでしょう。後で調べたらこれはベートーヴェンがこの曲をピアノ協奏曲用に編曲した(そんな話は初めて知りました)際に作曲したものをテツラフがヴァイオリン用に編曲したものだそうです。もともとベートーヴェンはカデンツァに関してはヴァイオリン独奏者に任せている部分で、昔はみんな自分の技量を見せびらかす曲を作って演奏したのでしょうが、いつの頃からか、名人のクライスラーやヨアヒムの作曲したものを演奏する習わしになってしまいました。 演奏会でこの曲を聴くのは久しぶりですが、10数年前に聴いたナイジェル・ケネディ独奏クラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送響のものはすごい名演でとても感動したことを覚えています。そのときケネディは自作のカデンツァで頑張ったのでした。しかし同じ組み合わせで録音したCDではクライスラーのものを使っています。レコード会社のプロデューサーの意向が働くのでしょう。CDでそうするのは理解できますが、一期一会の演奏会では全ての独奏者はこれくらいの心意気を見せて欲しいものです。いつもクライスラーじゃマンネリだし、例え自作ではなくても今日のように変わったものを演奏するのは大歓迎です。 演奏は、管弦楽のスケール感が少なくややこじんまりしたものの、テツラフの伸び伸びしたヴァイオリンとビエロフラーヴェクのきびきびした職人技でまとまりよく、聴き応えのあるいい演奏でした。聴衆の反応も大きいもので、大好評だったようです。第1楽章終了後に拍手が出ましたが、変わったカデンツアに対するものと解釈しました。 写真は拍手に応えるテツラフとビエロフラーヴェクです。今日のコンサートマスターは女性でした。 終了後は、やんやの喝采にこたえてアンコールが演奏されました。弾いてあげなかったクライスラーのカデンツァの代わりに彼の小品でも弾くと面白いと思いましたが、それはなく多分バッハの何か。私の知らないとてもおとなしい曲でした。 最後のメンデルスゾーンは躍動感溢れる演奏でなかなかの名演といえましょう。全楽章ほとんど切れ目なく演奏されました。第1楽章はテンポを揺らしながらぐいぐい惹きつける迫力があり、第2楽章は生き生きしたリズムがすばらしく、第3楽章はゆったりと美しく、第4楽章はスケール大きく、ロマンティックな面もたっぷり感じられ、とにかくすばらしい演奏でとても楽しみました。ひょっとしてビエロフラーヴェクの得意曲だったりするかもです。 今日はポピュラーな演目だったせいでしょう、客は8-9割の入りでした。
by dognorah
| 2006-08-17 03:25
| コンサート
|
Comments(4)
こんにちは。まだストリーミングを聞けてないのですが
ビエロフラーヴェクさんは、メンデルスゾーンの交響曲の3番と4番を 自分が創設したプラハフィルの方で録音をしてるので 多分そうだと思います。 この日のプログラムは、シーズンガイドを見て以来 楽しみにしてたのでストリーミングを聞くのが楽しみです (ゲンダイ音楽があるわけでもなく、BBC交響楽団とビエロフラーヴェクさんのコンビの組み合わせをオーソドックスなもので確かめられるので)
0
Commented
by
dognorah at 2006-08-17 19:49
ぜひ聴いてみてください。充実した演奏が楽しめると思います。
Commented
by
hummel_hummel at 2006-08-19 01:24
テツラフはBPOとのバルトークの2番を聴き、素晴らしかったものの、ロマン派以前の曲の方を聴いてみたいと思わされました。ベートーヴェンは良さそうですね。
>ナイジェル・ケネディ独奏クラウス・テンシュテット指揮北ドイツ放送響 このコンビを生で聴かれたとは!「すごい名演」でしたか!羨ましいです。ケネディ自作カデンツァとは、個性的だったことでしょうね!
Commented
by
dognorah at 2006-08-19 07:47
ケネディが個性的なのはいいのですが、個性的過ぎてクラシック音楽界から逸脱してしまったのが悔やまれます。最後に聴いたのは4年ぐらい前ですが、かなりふざけた状態でがっかりしました。
|
最新の記事
以前の記事
2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 カテゴリ
プロフィール
ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
検索
その他のジャンル
ブログパーツ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||