Museu de Arte Contemporanea da Universidade de Sao Paulo, Brazil Photo: Nelson Kon Amedeo Modigliani (1884-1920)の肖像画作品約50点がロイヤル・アカデミーに展示されています。デフォルメされた肖像画は不思議な魅力を放ち、私は昔から好きな画家でした。個性ある優れた画家の作品は御多分に漏れず生前はほとんど売れなかったそうですが、にも拘らず彼の生活を全て面倒見てせっせと絵を描かせた画商がいたわけで、その優れた目利きには敬服します。そのポーランド系の画商、ズボロフスキー(Léopold Zborovski)はモディリアーニの死後、絵が高値で売れて大金持ちになったそうです。上の絵は唯一の自画像ですが、死ぬちょっと前に描かれたもので、写真とはあまり似ていません。 久しぶりに見た絵もありましたが、印象的には初めて見る作品がほとんどで、やっぱり魅了されました。特に、死ぬまでの数年間共に暮らした女性ジャンヌ・エビュテルヌ(Jeanne Hébuterne)の肖像画は良かった。何枚か展示されていますが、それらを比較していると彼女の様々な性格が浮き出てきて面白い。 次の2枚の絵は共に1919年に描かれたものですが、一方は彼の作品によく見られる瞳を描いていない青い目なのにもう一枚はしっかりと瞳が描かれています。その瞳からは尋常ではない強い意思の持主であることが感じられます。まるで「あなたとは一生離れないわよ」と言っているかのようです。事実、この絵が描かれた翌年、病死した彼の後を追って自殺してしまいますが。 Portrait of Jeanne Hébuterne, 1919, Oil on canvas, 92.1x54cm, private collection Portrait of Jeanne Hébuterne, 1919, oil on canvas, 55x38cm, private collection 絵としては私は青い空虚な目の肖像画のほうが好きです。会場に入って最初に見た絵がこれですが、なんともいえない魅力があってしばらく絵の前を離れることが出来ませんでした。青い目に吸い込まれてしばしモディリアーニの世界をさまよったという感じです。両手の表現からはジャンヌをいとおしむ温かい感情も感じられます。 今回はヌードもかなりの枚数が展示されています。モデルはズボロフスキーがアトリエに送り込んだ女性たちで、どこの誰かというのはわかっていないようです。今まで何度か見たものもありますが人気のある蠱惑的な作品に混じって展示されていた次のものは多分初めて見るものです。ジョルジョーネ(Giorgione)の眠れるヴィーナスとそっくりなポーズですが、その静けさがとても印象的です。トップに掲げた自画像と共に、死を予感し、覚悟した人の静けさでしょうか。 Reclining nude with her right arm under the head, 1919, oil on canvas, 73x116cm, private collection Modigliani and his models Royal Academy of Arts 8 July – 15 October 2006
by dognorah
| 2006-08-12 00:53
| 美術
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Comments(6)
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paul-ailleurs
at 2006-08-12 03:21
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こんにちは。モディリアーニ、いいですね。好きになりつつある画家のひとりです。彼の映画を見たことがあります。映画としては今ひとつと感じましたが、彼の生き様に目を向けさせるには充分でした。
http://blog.goo.ne.jp/paul-ailleurs/e/eed7cf95a74fe1d346da4e4013d5ce8a 先日、この秋に日本でも展覧会があるというパンフレットを見つけました。楽しみにしております。
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dognorah at 2006-08-12 05:49
paul-ailleursさん、映画の記事読ませていただきました。私は見たことがないのですが「モンパルナスの灯」と共に見たいなぁと思っています。なぜか彼の絵は肖像画だけでなく数少ない風景画にも惹かれてしまいます。
秋の日本での展覧会、ぜひご覧になってください。彼は日本でも絶大な人気を誇る画家の一人ですので混雑は避けられないと思いますが。
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助六
at 2006-08-12 07:06
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パリでも3年前に例の「抒情的抽象展」があったリュクサンブール美術館で回顧展があり、その後ミラノにも行ったと言うので、一瞬それが廻り回ってとか思いましたが、さすがに全然別企画のようですね。パリでは油約100枚、デッサンと彫刻も少しあり、「全作品の4分の1を集めた史上最大、パリでも20数年ぶりのモディリアーニ展」という触れ込みでした。さすがに大人気で4ヶ月ちょっとの会期で58万人だかが入ったそうです。日本でも30年近く前デパートで中々見応えあるモディリアーニ展見たことがあります。
100枚見ると類型化の兆しもあり、贋作が多いというのも頷けましたが、エビュテルヌをモデルにしたものとか最良の作品は、恐ろしいような透明感をたたえていて、同じ位の年で死んだモーツァルトみたいに「こいつは神から何か特別のものを授かったに違いない」と思わされてしまいましたね。実生活は呑んだくれだったみたいですが。目が入ったエビュテルヌはよく覚えてます。私も他の肖像画の方が好きでしたが。
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dognorah at 2006-08-12 07:36
油絵100枚とはすごい規模ですね!しかもそれで全作品の4分の1とは。まさにモーツァルトと同様の多作なんですね。
約30年前の日本のデパートの中の展示、多分私も見ていますね。結構な品揃えでした。そのときに見た強烈なヌードが今回も来ていました。個人蔵ですが、この人は貸し出すことで稼いでいるのでしょうね。 今回の展示作品の中で、バーの学生アルバイトをモデルにした作品があるのですが、描いている最中にも血を吐き、数日後に死んで彼女を驚かせます。彼女が仕上がった絵を見たのは40数年後というエピソードがあり、とにかくドラマの多い画家ですね。
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Sardanapalus
at 2006-08-12 13:05
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私も、エビュテルヌを描いた肖像画の数々は気に入りました!それぞれ雰囲気が違いますが、どの絵にも愛情が感じられました。ヌードがずらりと並んでいたのも圧巻でしたね。静かなのにパワフル。
>青い空虚な目の肖像画のほうが好きです モディリアニは、モデルの目を入れないことでその人物をより正確に表現することのできた画家だと思います。本当に、「天才は早死に」の典型ですよね。
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dognorah at 2006-08-12 18:51
ずらりと並んでいたあのヌードがパリで展示されたとき、直ちに警察から撤去命令が出たというのも1917年という時代を考えたら不思議ではないですね。
青い目というのは多分目を入れたら霞んでしまうかもしれない印象を表現したかったのでしょうね。
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