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東京弦楽四重奏団(Tokyo Quartet)演奏会

7月3日、Stationers’ Hallにて。City of London Festivalの一環。全4回の公演のうちの第3回目。このStationers’ Hallは、15世紀に各種設立されたギルドのうち本を作ったり売ったりしていた人たちの本部的存在であった。現在は貸しホール的存在である。下の写真に外見とホールの内部を示す。演奏者は中央のステンドグラスの前に位置する。
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ロンドンはこの夏一番と思われる暑さで、30度を超えたらしい。夕方にはやや涼しい風が吹いていたが、冷房のない古い建物の中は昼間の熱気がそのままで、コンサートのため窓は閉じたまま。聴衆は聴いているだけだけど、演奏者は燕尾服でかなりの運動量、さぞかし大変だっただろう。文字通り熱演であるが、すばらしいエネルギーを発散させていた。

Tokyo Quartetは1969年に桐朋学園出身の奏者たちによって設立された団体で、メンバーの交代を経ながら現在も次の4名で活発な活動を行っている。日本音楽財団より貸与されている楽器はThe Paganini Quartetと名づけられた由緒あるもので、全てストラディヴァリウスとのこと。
第1ヴァイオリン:Martin Beaver
第2ヴァイオリン:Kikuei Ikeda
ヴィオラ:Kazuhide Isomura
チェロ:Clive Greensmith

このうち、ヴィオラ奏者が設立以来のメンバーだそうで、多分リーダー的存在のせいなのか通常のカルテットの配置と違って右端に座って演奏している。

プログラム
モーツァルト:弦楽四重奏曲ヘ長調 K590
間宮芳生:弦楽四重奏曲第3番(A Song the White Wind)
ブラームス:弦楽四重奏曲変ロ長調 Op.67
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲アメリカの第4楽章(アンコール)

モーツァルトの第1印象は4人の奏でる音がとても透明で美しいこと。アンサンブルは何も言うことなし。すばらしい音楽がホールに満ちる。丁度演奏が終わったときに近くの教会から鐘の音が聞こえて、みんな笑いながらも盛大な拍手。時計を見たら8時だった。

間宮の音楽が欧州で演奏されることは珍しいことと思う。私も聴くのは初めてである。聴いて、自分の現代音楽好みが再確認できた。先のモーツァルトの後なので余計新鮮に聞こえた面があるとは思うが、その美しさよりも何かを切り開こうとするような鋭さを持ったこの音楽の方が好きだ。不安や不確定性も強く感じられるが、二人の日本人メンバーのお陰で解釈的にも問題ないのだろう、心に素直に入ってくる演奏だ。

ブラームスは、実に緻密な演奏で隙というもののない完成度の高さに感心した。この暑さのもとでよくこれだけ精神を集中できるものだ。3つの作品の中では音楽的にはやはり一番深さを感じる作品である。

写真は終演後のTokyo Quartetで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラの各奏者である。
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by dognorah | 2006-07-04 23:53 | コンサート | Comments(2)
Commented by 助六 at 2006-07-06 07:52 x
初めて東京Q聴いたのは70年代後半、第2Vnが女流の名倉さんから菊池さんに替わったあとでした。この時聴いた鮮烈なラヴェルが私には彼らの一番の思い出です。その後80年代初めに第1Vnの原田さんが理由をはっきり発表しないまま退団してしまい、当人が「現メンバーのままでなるべく長く続けたい」と言っておられたので残念に思ったものです。原田氏の後任をコンクール形式で募集し、しかも日本人ではないウンジャン氏を採用したのには驚きました。個人的には全員日本人の四重奏団でなくなったのは残念でしたが、もう20年も前から日本人には珍しく大変グローバルに開けた考えを持っておられたということですね。私が最後に聴いたのはウンジャン+日本人3人のメンバーによるパリでのベートーヴェン全曲演奏の1回で、ここ数年でまた第1VnとVcが替わってからは聴いていません。四重奏団は第1Vnが去ると解散してしまうケースもあるけれど、このキャリア段階で、再度日本人に拘らず新メンバーを入れて(今回はどういう経緯で人選をしたのか知りませんが)活動を続ける磯村・菊池両氏の精神的若さと四重奏への拘り、間宮作品紹介の努力には敬意を覚えますね。
Commented by dognorah at 2006-07-06 10:00
助六さんはずいぶん以前からTokyoSQを注目されていたのですね。私はそういった敬意は全く知りませんでした。今回の全4回の演奏は、武満、林、間宮、細川の作品をそれぞれ一つずつ紹介していました。私は2回しか行きませんでしたが、そういう作品を聴けることはとてもうれしいことです。
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