6月7日、バービカンホールにてコンサート形式(ドレスリハーサル)。
このリハーサルはロイヤルオペラのフレンズに対してオファーがあったので行ったもの。観客は関係者を含めて数十人のみ。本番は翌日の8日に公演される。 Thomas Adèsという人(左の写真)は1971年にロンドンで生れた作曲家、ピアニストで指揮者でもある。ケンブリッジ大学のKing’s College卒業。シェークスピアに基づいた最新のオペラThe Tempestは2004年にロイヤルオペラで初演されて好評だったらしいが私は行きそびれてしまった。本日の演目は彼が24歳のときに作曲した初のオペラ作品で、作曲家自身が指揮する。リブレットは誰の作品か書かれていないので不明であるが言語は英語。物語は20世紀のイギリス。上演時間は正味2時間。室内オペラということで管弦楽は15人編成。弦と管が主要楽器一人ずつ、アコーディオン、ハープ、ピアノ、打楽器群といった構成。 あらすじ Duchess of Argyllの男漁りをするスキャンダルに満ちた半生を描いたもの。Dukeから離婚されて一人でホテル暮らしをし、支払不能になって追い出されるのだが、その間に過去のいろいろな出来事を思い出す。その思い出話がオペラの大部分を占める。オペラとして評価は高い反面、真に迫ったフェラチオの“音楽的”描写で悪評もある。バービカンの宣伝でも子供向きではないと書いてある。 出演 公爵夫人:Mary Plazas (mezzo-soprano) 電気技師(兼ホテル従業員):Daniel Norman (tenor) メイド:Valdine Anderson (soprano) ホテルマネージャー(兼公爵):Stephen Richardson (bass-baritone) 指揮:Thomas Adès 管弦楽:LSO Chamber Ensemble 音楽 序曲はバーンスタインまたはミュージカルを思わせる音とメロディーで陽気に始まる。金管の音はかなり鋭く、不協和音もいっぱい。公爵家のメイドと何かの修繕に来た電気技師との噂話がひとしきり描写されるがソプラノの音域はかなり甲高いもので、それをアンダーソンはよく通る美しい声で歌う。そのあと、ホテルの部屋にいる公爵夫人の描写に移るが、この頃にはアデスの音楽にはかなり慣れてくる。打楽器群の使い方がとても効果的。夫人がルームサーヴィスを依頼し運んできたウェーターをソファーに座らせてフェラチオをするのだが、開始から終了までのメゾソプラノによる表現は確かに想像力を十分に掻き立てるリアルなもの。歌手もなかなか大変だけどこのメゾソプラノさんもここだけではなく歌も声もとてもすばらしい。今回はテノールの声の張りがやや不足と思った以外は全て水準の高い歌手である。曲の持つきめ細かい描写に対して管弦楽も含めてとても表現力が高い。さすがに作曲者の指揮である。前半と後半に一回ずつ音楽を止めて歌手に指示を出し、歌い直させる場面があったが、歌手はすぐ指示を飲み込んで対応していた。 全体的印象としては面白い音楽だった。舞台パフォーマンスは演出家によってかなり左右されるので実際に見るまではなんともいえないけれど。
by dognorah
| 2006-06-09 00:11
| オペラ
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Comments(11)
こんにちは。解説すばらしいですね!私は本番のほうをききました。
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atlantisdreamさん、こんにちは。作曲されるんですね。ブログとホームページの両方とも読ませていただきました。
その視点から見てこの作品はいかがだったでしょうか?また、本番当日の聴衆の反応など聞かせていただけるとありがたいです。
この曲は個人的には高く評価していますし、アデス君はやはりとても魅力的な作曲家だと思います。(でも、’きらいだ’という人も、’この曲を高く評価しない’人も知っているので、まあ、これにかぎらず、現代作品の真評価というのは、難しいものです。(>_<))
これは批評では決してありませんが、音(楽器の)が多い、というか厚いと思いました。これは良いとか悪いとかといっているのではなくて、あの手の音の多さはものすごく’ヨーロッパ的’なものです。 本番のお客さんはよく反応していて、とても熱心でした。ただ、やはりよくある現代音楽のコンサートの悲しさか、ホールは満員ではありませんでしたが。
atlantisdreamさん、早速答えていただきありがとうございます。どんな曲でも好き嫌いは生じると思いますが、現代曲はそれがはっきり出ると思います。私は現代曲はあまり違和感なく受け入れているつもりですが、非常に積極的かというとあまり肯定は出来ません。今回も全く予備知識がなかったので当初は敬遠していましたが気にはなっていたのでリハーサルのオファーがあったのを契機に行きました。聴いてよかったと思います。
彼の音楽は小編成の管弦楽にしては確かに音が厚くてとても芳醇ですよね。私はそういうのは好きですが。日本人作曲のものだと例えば武満のものでも枯れた音の印象が強いです。 客の入りは危惧していましたが、やはり少なかったですか。でもこういう音楽を聴きに来る人はきちんと目的意識があるので反応はいいでしょう。 いつかatlantisdreamさんの作品を聴いてみたいです。
そういっていただいて恐縮です。。。まあいつか。。。(-_-;)
ちなみに上記の’ヨーロッパ的’というのは、’大陸的’といったほうが、厳密でした。(日本本土内ではヨーロッパ的といっても同じですが) でもその辺のことににあまり入り込むと、ツマラナイ話になりますのでやめます。(^^) また、dognorahさんのいろいろな解説楽しみにしています!
ROHでのオペラ上演を期待しています(現在進行中ですよね?)。
また、イギリス作曲回のことなどこれからも教えてください。 ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
「テンペスト」は04年9月にROHのプロダクションが指揮者と歌手の大半を入れ替え、ストラスブールの現代音楽祭「ムジカ」に来てました。私はもちろん見てませんが、毀誉褒貶あるようですね。
数年前放送局の現代音楽祭が小特集を組んだことがあるので、いくつか聴きましたが、管弦楽曲「Asyla」は緻密で華麗な書法に加え表現性とはっきりしたパーソナりティもありなるほどという感じでしたが、自作自演のピアノ曲は最低のポスト・モダン、ノーテンキな書法と安手のセンティメンタリズムの映画音楽もどきという印象でまるで頂けませんでした。ブーも出てましたねぇ。ちょっと死んだリゲティを思わせると言うか、緻密な書法と表現性の組み合わせが成功すれば、オペラで成功するタイプだろうという気はしました。ぜひ一度観てみたいです。
助六さんはいいものも悪いものも聴いていらっしゃるんですね。いつもながら作品の分析もちゃんとされていて大いに参考になります。来年3月にROHで「テンペスト」の再演があるので見ようと思っています。
こんにちは。ちなみにテンペストはpowder her faceとはぜ~んぜん違いますので。(初演のときに見ました。)おっと、私は批評はぜったいしないので、これでストップです(^^)。
テンペスト、音楽は想像できませんが少なくともリブレットは古典ですものね。初演ものをぜんぜん見ていない自分に反省です。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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