人気ブログランキング | 話題のタグを見る

能とオペラの融合(3月28日)

能とオペラの融合(3月28日)_c0057725_24511.jpgN-Operaという能とオペラを融合させた舞台(マクベス)のロンドン初公演を見ました。日本人の演じる能と欧州人の独唱者、欧州人と日本人による合唱とアンサンブルが見事に調和してとてもすばらしいパフォーマンスでした。場所はRoyal College of Musicの中のBritten Theatreです。

作曲:浅井暁子
台本:Kazuko Matsuoka
演出:Kan Yuki
照明:Miwa Sakaguchi
衣装:Kana Hashizume

出演者
マクベス
 能:Ryoko Aoki
 テノール:Tyler Clarke
マクベス夫人
 能:Shintaro Ban
 ソプラノ:Kimberly Robinson
マクダフ
 能:Hiroko Akai
 バリトン:Håkan Ekenäs
バンクォー
 能:Maiko Aoyagi
 バス:Lukas Jakobczyk

合唱
Maho Ino (S)、Eva Karell (S)、Susanne Hawkins (A)、James Armitage (A)、Hiromitsu Maeda (T)、Ben Eastley (T)、Alan Tsang (B)

器楽
Makiko Nishio (Percussion I)、Nicholas Reed (Percussion II)、Eri Kaishima (Percussion III)、Andrew Aaron (Piano)

指揮:Sofi Jeannin

舞台は蝋で作った白い柱が7-8本立っている(Wax Art by Yoshiki Ban)以外は後ろの蝋柱数本をを隠す紗のカーテンが上下するのみの簡単なもの。

幕が上がると、マクベスは黒の羽毛で作ったと思われる衣装で座っている。能面は前においてあるがマクベス自身による謡が終わるまでは装着しない。マクベス夫人は同じデザインで赤色、バンクォーとマクダフは白い装束で、この3人は能面はつけない。髪の毛はすべてヴォリュームのあるものがデザインを違えて付けられている。

筋はシェイクスピアの原作にほぼ準拠しているが、歌詞による説明が主で能役者の舞台上の行動は単純化されている。歌詞はすべて日本語で、英語字幕が出る。
感心するのは歌手がほとんど非日本人なのに独唱者も合唱も結構日本語がよく理解できること。筋の進行に従って奏でられる音楽はよく出来ており、能役者の動きも美しく様式化されて、休憩なしの1時間半のパフォーマンスに集中できました。最後のマクベスとマクダフとの一騎打ちの動きもなかなかすばらしいものがあります。なお、マクベスの衣装には進行と共に白い羽がどんどん刺さっていき、最後に討ち取られたときには天井からどさっと大量の白羽が落ちてきます。黒いマクベスの勢力がマクダフの白に圧倒されていく様を表しているのでしょう。

ところでマクベスとマクベス夫人をやる人が男女入れ替わっていますが、ロンドン在住の能役者Aokiさんが主役をやるということでこうなったのでしょうか。

これは既に東京とニューヨークで上演されており、昨年夏にロンドンでお会いした作曲家の浅井暁子さんから、ロンドンでもやりたくて準備している、という話を伺っていましたが、多くのバリアを乗り越えてここまで持ってこられた皆さんの努力には敬意を捧げます。特に、ロンドン在住の非日本人歌手によるパフォーマンスにこだわっていらっしゃった浅井さんの希望がほとんどかなえられたものの、かなり困難なことであったこととお察しいたします。

思えば、昔東京で初めて能というものを鑑賞した時、西洋のオペラをとことん昇華させると能という様式に到達するのではなかろうか、と感じたことがあります。こうして目の当たりにこういうパフォーマンスを見ると、自分の直感は大きくは間違っていなかったのではないかと思います。

最後に、このBritten Theatre、初めて経験しましたがとても立派な劇場で、さすがにロンドンを代表する音楽大学だけのことはあるとひたすら感心しました。オーケストラピットも舞台も広く、客席もこじんまりながら馬蹄形の席配置でランプなどの装飾も凝っています。ストールから天井桟敷まである点も一流劇場並です。座席数約400。
by dognorah | 2006-03-30 02:07 | オペラ | Comments(6)
Commented by ロンドンの椿姫 at 2006-03-30 04:58
こんな珍しいパフォーマンス、私も行きたかったのですが、仕事の都合がどうしてもつかず諦めました。でもdognorahさんの記事でどういうものだったかなんとなくわかりました。ちゃんと能を見たことが一度もないので、実際にこれを見てもどう比較していいのかわからなかったでしょうが。
Commented by stmargarets at 2006-03-30 08:29
昨日はどうもです。青木さんがマクベスを演じられるのはロンドンに限らずです。NYではM夫妻を歌う歌手も男女入れ替わっていたような気がします(ちょっとあやふやな記憶です)。
とにかく歌い手が日本語をきっちり歌っていたのは本当にすごいと思いました。それに曲もよかったですね。
私もちゃんとお能を観た事がないので、(中学校の時に鑑賞教室といって連れて行かれましたが恥ずかしながら爆睡してしまったので・・・)一度しっかり観てみたいと思いました。歌舞伎は時々来ますけど、お能は来ませんね・・・。
Commented by dognorah at 2006-03-30 18:34
ロンドンの椿姫さん、決算月はほんとに忙しいですよね。私もかつてはそうでしたからよくわかります。
本当の能は私もずいぶん長い間見ていません。日本に一時帰国してもなかなか時間が取れないのですよね。
Commented by dognorah at 2006-03-30 18:43
stmargaretsさん、ごいっしょさせていただきありがとうございました。あれだけ日本人がいても誰も知り合いには会いませんでした。
音楽もよかったですよね。器楽の方は合いの手や効果音的な要素が強かったので歌手の出来が非常に重要ですね。
本当の能は一度ぐらいは見ることをお勧めします。オペラの娯楽性を削ぎ落としたあるいは圧縮した感じで、とても芸術的です。
Commented by Sardanapalus at 2006-03-30 23:45
奇遇ですが、ついこの前「狂言オペラ」を見逃しました(笑)演目は「フィガロの結婚」。この「マクベス」と同時上演出来ないものでしょうかね?普通の能楽公演のように。

stmargaretsさん>
確か去年のエディンバラ・フェスティバルに「隅田川」がきていたと思います。ブリテンのオペラ'Curlew river'(「隅田川」が原作)をやったので、そのあたりの企画だったのかもしれませんが、今年のプログラムもチェックしてみる価値ありますよ~。
Commented by dognorah at 2006-03-31 01:48
Sardanapalusさん、他にも試みがあるのですね。これから少しずつレパートリーが増えていくといいですね。
<< 来シーズンのロイヤルオペラ Josef AlbersとLá... >>