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Josef AlbersとLászló Moholy-Nagy展

Josef Albers(1888-1976)とLászló Moholy-Nagy(1895-1946)はともにヴァイマールにあったバウハウス(Bauhaus)で1923年から5年間教えていたが、お互いに刺激もし合って似たような美術作品を作ることもあった。ナチスの台頭と共に二人は別々の経路でアメリカに亡命するが、新世界では二人は交わることなくそれぞれ独自の世界を構築して行き、ともに現代美術に多大の影響をもたらしたとされている。この展覧会はその二人のバウハウス時代からアメリカでの創作活動までを時代順に回顧するものである。

その時代のバウハウスといえば既にカンディンスキーが教官として指導しており、モンドリアンも別の形で抽象主義を唱えて雑誌を発刊していたこともあって、この二人からはかなり影響を受けたはずである。事実、当時使われた教科書にこの二人の作品を紹介した本などがありそれも今回展示されていた。

(1) ジョゼフ・アルバース
Josef AlbersとLászló Moholy-Nagy展_c0057725_7393778.jpg当初から光をどう捉えるか、どう作用させるかに関心があったようでいろいろの試みをしている。もちろん写真作品も多数残されている。バウハウス初期時代の作品で、ステンドグラスのように彩色ガラスを並べての裏側から光を当てるオブジェはなかなか魅力的な作品である。代表例として左にPark (1924)を示す。

この、ガラスを使うというアイデアは形を変えて維持され、例えば、下の写真に示すように、Upward (1926)とかAquarium (1934), Structural Constellation (1950)など技術手法はそれぞれ違うもののマテリアルとしてのガラスまたは透明性のあるプラスティックには一生執着し続けている。
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一方、絵画の方は展示されている主な作品はほとんどがアメリカに移ってからのものであるが、魅力的な抽象画をものにしている。例えば、Evening: An Improvisation (1935), Layered (1940)など。戦後は当初は長方形、次いで正方形の形と色の組み合わせに囚われ、Homage to the Squareという題名のシリーズを死ぬまで四半世紀にわたって描き続けた。例えばStudy for Nocturne (1950)など。後年になると色使いはかなり茫洋としたものが多い。正方形という単純な形に限定してもっぱら色と光の効果を研究して若いころからの課題を死ぬまで追求するという姿勢を感じる。もう一人のラズロ・モホリ-ナギと違って、この人は直線が好きで、ほとんどの作品にそれが感じられる。その他、家具や食器のデザインも手がけており、いくつかは展示されている。ガラスを使ったものにしろ油彩画にしろ、私は比較的初期の作品の方により惹かれる。
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(2) ラズロ・モホリ-ナギ
この人も光に関しては大きな関心があり、カメラを使わないで乾板にいろいろな対象物を置いて露光するphotogramという手法で多くの作品を残している。美術史的あるいは写真芸術的には意味があるのかもしれないが作品そのものは私にはいまいちぴんと来ない。

Josef AlbersとLászló Moholy-Nagy展_c0057725_772220.jpgしかし光を対象物に当てて効果を探るという方向は機械仕掛けのオブジェに光を照射して展示するInstallation作品に結実し、この分野で大きな影響を与えたと思われる。例としてLight Prop for an Electric Stage(1928-30)と名付けられたもののレプリカが展示されている。これ自体モーター仕掛けで動く様もあるメッセージを伝えてくれるが、さらに床から光を照射して壁に影を映すと共に、磨き上げられた金属板の反射する光が灯台のように動き回り、独特の空間をかもし出す。このような手法に影響を受けた芸術家は数知れず、昨年私が見たレベッカ・ホーン展で似たような空間を体験したことを記事で紹介したが、まさにモホリ-ナギがその分野の先駆者であったわけだ。


Josef AlbersとLászló Moholy-Nagy展_c0057725_711124.jpgこれに対して、絵画は初期のころからカンディンスキーやモンドリアンの影響が見て取れるが独自の世界を構築している。例えば左の写真に示すComposition QIV (1923)など。この初期の絵画で私が最も感銘を受けたBlack Quarter Circle with Red Stripes (1921)が個人所有者の許可が得られず、ディジタル写真が公表されないのは残念だ(カタログには印刷されているが)。この人の絵は初期のものは正方形、長方形と共に円が描かれているものが多いが、後年は円が主流になり、線もほとんどが曲線を使うようになっていく傾向はアルバースと対照的で面白い。円と矩形が無秩序に描かれているようであるが、そばで仔細に観察すると鉛筆の下書きが見えるものがあり、きちんと遠近法的な線を引いて綿密に計算して構成しているのがわかる。そのために、ぱっと絵を見てもある秩序が直ちに感じられ、これも計算したであろう調和した色使いと共にある種の心地よさを与えてくれる。

Josef AlbersとLászló Moholy-Nagy展_c0057725_7152060.jpg彼はずっと円や曲線を使って絵画の方向を模索していたと思われるが、特にブレークすることなく51歳で若死にしてしまったのは残念である。左の絵は死ぬ年に描いたNuclearシリーズの一つで、広島への原爆投下にショックを受けて描いたとされる。





Albers & Moholy-Nagy: From the Bauhaus to the New World
Tate Modern
9 March – 4 June 2006
by dognorah | 2006-03-29 07:41 | 美術 | Comments(2)
Commented by 湯葉 at 2006-05-09 06:56
パリに行ってらしたのですね。 シモン・ボッカネグラも展覧会も楽しまれた様子興味深く読みました。
やっと行ってきました。  アルバースの試みも好きでしたが、なんといってもモホリーナギのlight prop。 光とメカニックなからくりの世界にかなり引き込まれましたねぇ。 あのフィルムに音楽がついていたとしたら。。。やっぱりバルトークでしょうか。  
Commented by dognorah at 2006-05-09 08:33
湯葉さんは美術も興味をお持ちなのですね。light propは当時としては大変ユニークな作品ですよね。バルトークは弦、打楽器、チェレスタでしょうか。シュニトケなんかもいかが?
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