ウイグモアホールです。
Soprano: Nina Stemme Piano: Bénédicte Haid プログラム Edvard Grieg: 6 Songs Richard Strauss: 5 Lieder (休憩) Gosta Nystroem: Sånger vid havet Richard Wagner: Wesendonk Lieder アンコール2曲 昨年12月、ヴェルディの仮面舞踏会のアメリア役を聴いたときは調子はいまいちという気がしましたが、今日は最初のグリーグからもう絶好調。オペラとリサイタルでは条件がずいぶん違う気がしますが、それにしてもワーグナー歌いらしい骨太の美声が響き渡り、よく伸びる高音が耳にびんびんするヴォリューム。歌唱も陰影が豊かで非常に満足できたリサイタルでした。ピアノ伴奏がまたすばらしく、繊細かつ美しい演奏でニーナをしっかり支えています。 グリーグの作品は多分私は初めて聴くものですが、叙情的な内容ながらなかなか魅力的な歌で聴き応えがあります。北欧の作曲家ということで彼女も共感しているのでしょう。シュトラウスの5曲はかなり明るい調子の歌が多く、先のグリーグと共にプログラムの前半はそういう傾向でまとめたのでしょう。美声の絶叫とも思える歌い方がすごい迫力。 後半のプログラムの最初は母国スエーデンの作曲家を取り上げたもの。かなり暗い内容で、あまりのめりこめる歌とはいえないながら、彼女の表情豊かな声をうっとり聴いている分には不満はありません。ワーグナーのヴェーゼンドンクの歌は不倫的恋愛の情熱で生み出された「トリスタンとイゾルデ」と関係付けられるものですので、かなり情念がこめられた歌といえます。後半のプログラムは従って彼女の表現力を見てもらおうというわけでしょうか。相変わらずの美声ながら重々しい印象を与えてくれました。 写真は暗赤色のビロードドレスを着たシュテンメと伴奏者のハイドです。私が切符を買ったときはもう前の方の席はなく、やむを得ずバルコニーの最前列を買いましたが、ここがすごく音響がいい。ウイグモアホール自体音がいいのですが、天井に近くなるせいかストール席よりよい気がします。残念ながらすべてのコンサートにこの席が供されるわけではなく、入りのいいものだけに限定されるようです。 先日の中嶋彰子のリサイタルや昨日のキーシンのリサイタルでは日本人の聴衆がいっぱいでしたが、今日は私以外一人も見かけませんでした。このソプラノ歌手、日本ではあまり有名ではないのでしょうか。 日本人はいないけれど、隣のイギリス人のおばさんに「相撲の3月場所はもうやっているか?」なんてとんでもない質問を受けてしまいました。何でも、相撲の大ファンで、最近イギリスのChannel 4というTV曲が放送しなくなったので欲求不満になっているのだとか。
by dognorah
| 2006-03-09 10:10
| コンサート
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Comments(13)
>このソプラノ歌手、日本ではあまり有名ではないのでしょうか
いえいえ、ワーグナーを聞く人なら誰でも知っていると言って過言ではないと思いますよ。バイロイトのイゾルデですし。特に去年の指揮は大植さんでしたからね。ただ、ロンドン在住でワーグナーに興味ない日本人にはどうでしょう?後、知っている人も歌曲には興味が無いのかもしれませんね。 >隣のイギリス人のおばさんに「相撲の3月場所はもうやっているか?」 わはは(^^)凄いなぁ。確かにChannel4で放送していたという話は聞きましたが、実際見ていた人もいるんですね~。最近はまた日本(スシ)ブームなんだから放送再開すればいいのに。
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Channnel4の相撲放送はとても面白かったですよ~。人気番組だったしね。力士はちゃかされたけど、背景についてあれこれ説明してくれて、日本で結構相撲を見ていた私でもなるほどと思うことばかり。武士道がどういうものか理解してもらうのにも役立つし、復活して欲しい番組です。
すみません、相撲のコメントだけではいけないですよね。
シュテンメはたしかに「仮面舞踏会」はあまり彼女の声質に合っていなかったようですね。イゾルデやる人がアメリアやるんですものね。両方抜群というのは難しいでしょう。 Wigmore Hallは音がいいですよね。でもあんなに小さいホールだから、有名な人のチケットはなかなか買えません。以前メンバーだったときはしょっちゅう最前列に座りましたが、メンバーやめてからほとんど行ってません。勿体ないことです。又行きたいけど、お金が! 時間が! 貧乏ヒマ無しの哀しさ・・。
ロンドンは彼女の登場が多くて羨ましいです。パリは皆無。特に小さな会場でニューストレムの「海辺の歌」、お聞きになれたのが羨ましい。曲も北方的な中にもちょっとフランスっぽいところもあって捨てがたい魅力があるし、やはりどこの歌い手さんも、仮にドイツ・リートは余りうまくない人でもアンコールのお国ものは必ずナチュラルな美しさがあって幸せな気分にしてくれますね。彼女は「ヴェーゼンドンク」と合わせて録音もしてたような。
相撲はシラクの尽力もありフランスでも人気があり、ケーブルTVでもやってましたが今はどうなってるのか知りません。「儀式」的部分の面白さが受けて文化的評価も高かったですね。サルコジの無知マル出し発言はあったにせよ。「マワシの色はどうやって決めるのだ」とか訊かれたこともありましたねぇ。どこの世界でもオタク恐るべし!
Sardanapalusさん、そう、私もワーグナー歌いというイメージがあります。日本人の行動は類型的なことが多いと思っています。
>最近はまた日本(スシ)ブーム・・・ といっても回転寿司で、しかも回っているのは寿司以外の方が多い。今日はやむを得ずコヴェントガーデンのくるくる寿司に行きましたが、本当の寿司を食べているのは私一人でした。私が取らなかった物はいつまでもくるくる回っていましたから。でもあそこで発見したおいしいものは、えびのてんぷらとアヴォガドとサーモンの手巻き寿司。ひとつ£3と値が張りますがこれは旨い。今日のは特にてんぷらがぱりっと揚がっていて抜群。
椿姫さん、わたしもあのChannel 4の番組はイギリス人向けによく作られた番組と思います。とても面白かった。
シュテンメですが、私も全く同感です。ヴェルディなんかじゃなくワーグナー一点張りでやってもらいたいです。今日もマクベスを見ているときに左隣のおばさんと過去の演目についてあーだこーだと話しているときに、昨日のシュテンメのリサイタルがすばらしかったんだよーと自慢したのでした。そしたら右隣のおじさんが、彼女は何を歌ったんだ?と訊くから説明したら納得して、彼女のようなワーグナー歌いがヴェルディなんか歌うもんじゃない、と同じようなコメントをしていました。 ウイグモアホールはほんとに格調が高いコンサートが多いですよね。仰るとおり、キャパシティが小さいので入場料の高いのが悩みの種です。
助六さん、そのかわりロンドンで聴けなくてパリではよく聴けるというものも多いですよ。特定の歌手もそうですが、フランスオペラは一般にそうですね。ガーディナーはなぜロンドンでオペラをやらないのでしょうか。
しかしニューストレムをご存知とはさすがですね。私は故国の作曲家を取り上げるのは当然というあのルールに沿ったものとしか見ていませんでしたが、国際的にも名の知れた作曲家なんですね。不明の至りです。 コンサート会場で相撲オタクに会うとはまったく予期していませんでした。ロンドンでは席に座るときに既に隣に人が座っているときは会釈するのが普通ですが、彼女は単なる会釈以上のうれしさを表していたので、相撲のことが訊けそう!と期待感いっぱいだったのでしょうね。
Sardanapalusさんのおっしゃるとおり、日本でも彼女、結構有名です。でもまあいつの場合でも「一部で」ですけれどね。ホントはヴェルディ歌いとヴァーグナー歌いは別のはずなんだけれど、過去ではニルソンなんかが歌っていましたね、両方。シュテンメのCD、ニューストレームが入ったもの、ちゃんと出ています。ちょっと試聴してみてください。URLが長すぎるようなので、Fnacのサイトで
Nina Stemmeと入れてみてください。
Bowlesさん、今回はロンドンとパリでいろいろご覧になられたようですね。
ニルソンはヴェルディだけでなくプッチーニだって歌っていますね。ワーグナーよりお金になるそうです。 そうですね、ヴェーゼンドンクとニューストレーム両方とも入ったCDが出ていますね。なぜか会場では販売していませんでした。
>ガーディナーはなぜロンドンでオペラをやらない
そう言えばROHには数年前ヤナーチェクの「女狐」で登場した位かも知れませんね。確かにシャトレではモーツァルト・シリーズ始め、ベルリーズ「ファウストの劫罰」「トロイ人」、グルック「イフィジェニー」「オルフェ」、セミステージ形式ではヴェーバー「オベロン」、ヴェルディ「ファルスタッフ」まで色々やってくれましたね。インタビューでガーディナー自身が話してたことがありましたが、要するに英ではオペラへの公的補助金は既存劇場が吸収してしまい、手兵のオケ・合唱を起用した彼が望む舞台上演には金が回らないということが大きいようです。尤もシャトレでも「ファウストの劫罰は」はEBSではなくフィルハーモニア管でしたが。そのシャトレの前監督ともケンカ別れで、モーツァルト・シリーズも「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」は実現せずに打ち切りとなりました。リスネール監督はテイト指揮「指環」上演に金を必要としてた上、ガーディナーが「コジ」以降演出もやらせろと言い出して愛想が尽きたとか。他の仏マネージャーからも「大変気難しく招聘が難しい」と聞いたことがあります。
独系歌手のヴェルディがドイツっぽいというのはトートロジーに過ぎず、発声が基本的に独型の歌手がいかにしてヴェルディの様式に迫り、新たな光を当てるかを聞き取っていくのでなければ、特に日本人歌手の存在意義など吹き飛んでしまうというのは、アタマでは分かってても、私も独系歌手のヴェルディには違和感を感じてしまう方です。確かにシュテンメの声はヴェルディにはどうかなという感じですね。
ヴァーグナー歌手がヴェルディ歌唱でも一定の成果を挙げる例は珍しくないけれど(ヴァルナイやリザネックのマクベス夫人・デズデモーナ)、十全の成功はやはりないようですね。仏独で評価の高い(Bowlesさん、伊ではどうでしょうね?)リザネックのデズデモーナの録音にしても、歌は良いけどあの篭りがちで単色の発声は私はやはり苦手です。キャリアの初期にヴェルディをかなり歌っていたジョーンズのデズデモーナ録音は嫌いではありません。
独系レパートリーを中心にしてたヴァラディのアビガイーレには感心したことがあります。ユリナッチもゼンタまで歌ってて独系でしょうが器用にエリザベート歌ってますね。ルートヴィッヒのアダルジーザやシュヴァルツコプフのアリーチェなんかは面白いと思います。ベーレンスのトスカ・ヴィデオ、アムネリスもレパートリーに持ってるマイヤーの仏語版エボリなんかは違和感ありましたねぇ。フラグスタート、メートル、デルネッシュなんかは多分イタリア物には手を出さなかったみたいですね。
逆にイタリア系歌手のヴァーグナー進出はドミンゴや初期のカラスを除いて珍しいですね。まあアライザも最後はヴァーグナー歌ったし、テバルディも伊語でエルザ歌ってるらしい。ロス・アンヘレスはラテン系の印象が強いけどバイロイトで大きな成功を収めてますね。 結局成功した「異種参入」というと、リザネック、ユリナッチ、ロス・アンヘレスあたりでしょうかね。
助六さん、ガーディナーはそういう事情だったのですか。シャトレではもうやらないということも初めて知りました。ということは当分オペラをやる場がないわけですね。演出もやりたがる指揮者というのはますます招聘を困難にするでしょうし。
イギリスの公的資金というのは宝くじの収益金だけなんですよね。小さなプロダクションも配分を受けていますが、オペラを独自にやるほどの大金はROHやENOなど有名どころ以外はなかなかもらえないのでしょう。 独系歌手というのはドイツ語と言語体系が似ている北欧などの国々の人たちにはより容易なのでしょうね。その分イタリアオペラの発声がより困難になるのでしょうか。現在イタリアオペラで活躍している歌手たちは東欧の人たちが多いですが、あの辺はもともとラテン系の言語ですものね。どこの世界でも(私の昔の職場でも)外国語の達人というのはいますが割合からするとごく少数で、ほとんどの人が母国語の呪縛から抜け出せないでいます。ことはそんなに単純ではないかもしれませんが、歌手の中でも外国語発音を自在に操れる能力を持った少数の人たちがドイツものとイタリアものの両方で成功できるのではないかと思っています。
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