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Quartet de Baugéを中心としたリサイタル(1月30日)

2003年にフランスのロワール川沿いの町Baugéにある古城で開催されたブリテンのオペラ公演で演奏したメンバーの中から生れたのがボージュ弦楽四重奏団で、今日はそれが中心となり仲間を集めて五重奏曲と八重奏曲が演奏された。メンバーは全員イギリス人でロイヤルオペラ管弦楽団の現あるいは前楽団員が多い。

曲目
George Onslow (1784-1853): 五重奏曲 作品74
Louis Spohr (1784-1859): 八重奏曲 作品32

この作曲家たちは初めて聞く名前なので20世紀の作曲家かと期待していたが、残念ながら19世紀だった。
オンスローはイギリス人の末裔であるが生れも育ちもフランスのオーヴェルニュー地方の都市クレルモン-フェラン(Clermont-Ferrand)で、フランスの作曲家とされている。生前はかなりポピュラーであったらしく、ベルリオーズは彼のことをベートーベン亡き後の器楽曲の王とまで言ったという。

一方、スポールはドイツのブラウンシュヴァイク(Braunschweig)生れの作曲家およびヴァイオリニストで、この人も生前はかなりもてはやされたという。作品は交響曲、協奏曲、オペラ、オラトリオなど多岐にわたっており、Jessonda (1823)というオペラなどはロイヤルオペラの前身である劇場でも上演されたそうである。今日の音楽界への貢献として著名なものは、指揮する際に指揮棒を使うこととヴァイオリンに取り付ける顎乗せ台で、彼の発明ということである。

さて、曲の方であるが、五重奏曲は確かにベートーベン的響きでロマン派の音楽を髣髴とさせるもの。まるで馴染の曲のように何の違和感もなくすっと耳に入ってくる。第4楽章は楽想が才気煥発にほとばしるユニークなものでなかなか面白い。

八重奏曲は楽器構成がちょっと変わっていて、ヴァイオリン1、ヴィオラ2、チェロ1、コントラバス1、ホルン2、クラリネット1というものである。こういうユニークさがめったに演奏されない一つの理由であろうが、発表された当時はシューベルト的フレッシュさという評判を取っていたという。曲はじっくり聴くとなかなか味のあるもので、弦と管のバランスがよく、ホルンとクラリネットが実にうまく弦楽器と溶け合った響きを出す。演奏者たちもかなり楽しめる曲であろう。今回の管楽器奏者たちはロイヤルオペラ管弦楽団のヴェテランたちで、まろやかでやわらかい音色がほんとに心地よい。

(追記)
かつてポピュラーではあったものの、その後人気をなくした作曲家というのは数多く存在するという。近年の商業主義というか、何か目新しい曲や演奏を録音する傾向にあるのであるいはこういう曲も再び日の目を見るときが来るのかもしれない。最近のモーツァルトのように。
by dognorah | 2006-01-31 08:52 | コンサート | Comments(4)
Commented by Bowles at 2006-01-31 12:32 x
dognorahさんは結構いろいろなジャンルの曲をお聴きになるのですね。それにしてもちょっとレアなプログラム。

私も去年オンスロウの弦楽四重奏曲を聴きました。
なんとその曲は途中の楽章が英国国歌をテーマにした一種の変奏曲なんです。ほとんどハイドン、といったところでした。シュポアーは室内楽の分野では結構いろいろな曲が録音されていますが、私は「声もの」が好きなので、彼の曲というと、フィッシャー=ディスカウがヴァラディと録音した歌曲を思い出します。



Commented by dognorah at 2006-01-31 21:28
Bowlesさん、お久しぶりです。こういうものでもちゃんとCDが出ているのですね。そうですか、日本ではシュポアーと呼ぶんですね。
私はCDだと多分こういうジャンルは積極的に聴くことはないと思いますが、実演だと何でも聴いてみようという気になります。生の音というのがなんといっても最大の魅力ですが、視覚的な効果や他の聴衆と一緒というのもひとつの理由になっているのでしょうね。
Commented by Bowles at 2006-02-01 02:47 x
>実演だと何でも聴いてみようという気になります。

私の場合は現代音楽がまさにこのパターンにあてはまります。
実際の音の空間に身を置いてナンボ、というところでしょうか。
Commented by dognorah at 2006-02-01 07:13
以前の記事でも書いたのですが、現代音楽でスピーカーからはなかなか響かせるのがはばかられる不協和音でも、実演空間では指定のヴォリュームいっぱいの響きで結構必然性が感じられたりして理解が深まる気がします。
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