先般、8泊10日の短い一時帰国をしました。目的は、友人たちと2年ぶりの旧交を温めることと家族に会うことでしたが、ロンドンではなかなか味わえない本当の日本食、それも出来るだけ旬のものをと思っていましたが、ほぼそれは達成出来ました。以下食べ歩記です。
初日:到着直後の時差ぼけと寝不足の体にはおいしい寿司が一番。高輪プリンスホテル内の寿司屋「松風」のカウンターに座って好みの物を飽食。ヒラメ、赤貝、あわび、ミル貝、アナゴ、ネギトロの手巻き、スミイカ、タイ、えびの踊りを清酒2合で。ここのねたは特に新鮮でおいしく、いつも全くはずれがありません。平貝がなかったのは残念でしたが。 2日目:昼食に友人と待ち合わせて「串かつ」を食べに新宿へ行くも、西口東口に数軒あった串かつ屋がすべてなくなっていました。「串の坊」とか「五味八珍」とか昔は行列が出来るぐらい人気があった関西の風味がもう東京では廃れてしまったらしい。残念至極。代わりに食べたものは和食とはいえ、取るに足りない代物でがっかり。 夜は、私がロンドンでやっていたワイン会メンバー(全員帰国してしまっている)と東京の旧職場のワイン好きが10人ばかり集まってくれ、恵比寿ガーデンプレースで久しぶりにワイン会でした。食事の方は和洋混合でしたが、目的がワインをみんなで飲むことでしたのでやむを得ません。ここで8本ばかし飲み干した後2次会はすぐそばのフレンチレストラン「ロブション」のワインバーへ。ここでも数本飲んでホテルへ帰ったときは2時。電車の関係で先に帰った二人はロビーでホリエモン氏に会い、ツーショットを撮らせてもらってご機嫌だったようです。 3日目:前日のアルコールが少し尾を引いていたため、昼はかまゆでうどんで軽く体調を整え、夜に備えました。夜は、友人二人と神楽坂にある京都料理の「桃仙卿」へ。ここは古い民家を改造して作ったすべて個室の会席料理店。やわらかい京言葉で迎えられ、落ち着いた和室でゆったり。料理は湯葉や豆腐をはじめとする京都らしいものを私の大好きな吟醸酒「出羽桜」でいろいろいただきました。サービスがすばらしく心地よいのが印象的でした。こういうすばらしい店に連れて行ってくれたY女史とM氏に感謝。 4日目:大阪へ移動。昼食は羽田空港のレストランでお勧めの牡蠣フライを食べましたが、まずかった。これはロンドンで食べる方がはるかにおいしい。どうも日本ではおいしい牡蠣フライに当ったことがありません。夜は、ホテルと同じ建物である大阪駅上にあるレストラン「つる家石心庵」でセットの和食を取りましたが、これが滅法いけました。コストパフォーマンス大です。左の写真。 5日目:昼は実家で近所の寿司屋のセット。いまいち。握りはやはり東京でしょう。夜は義弟の招待で大阪北新地にある「神田川」本店へ。昔フジTVでやっていた「料理の鉄人」でも時々出演していた神田川俊郎氏の店であります。帰国すれば必ず来る店なので彼とはもう顔なじみです。今回はちょうど出荷が始まった下関のとらふぐをメインにした懐石料理。ふぐはイギリスでは逆立ちしても入手出来ません。日本のレストラン経営者が何度もふぐ解禁を訴えているのですが、イギリス政府が頑として承知しないのです。 今回のふぐはまだ少し時期が早いために白子が小さいのが残念でしたが、刺身の方はふくよかな味わいで絶品です。この店のたれがまたすばらしい。他の料理もいつもながらのおいしさ。おいしい、おいしいと連発している間に満腹です。 ワイン好きの私のために義弟が持ち込んでくれたのが1997年のシャトー・オーブリオン(Chateau Haut-Brion)。97年はヴィンテージとしては弱いので、もう飲み頃です。このボトルは保存があまりよくなかったのか、もうピークを過ぎつつあるという感じでした。それでも最初はやや硬く、シガーの香りがする程度で味わいもあまり印象的ではありませんでしたが、最後の方では十分開いて果実味いっぱいのまろやかで深みのある味に変化していました。ボルドー格付け1級という存在感の大きいワインゆえ、料理に合わせようとは思いませんでしたが、出てきた料理の中で強いて合うものを探すと白子の焼いた物でしょうか。濃いまったり感がワインに負けない味です。しかしいつもながらのすばらしい料理には感嘆です。妹とその夫君にはお世話になりっぱなしでした。左の写真は料理の一つ。柿をくりぬいた中に料理が入っています。 6日目:昼食は再び大阪駅上の別のレストランに行き、盛りだくさんな和食セットを頼みましたがいまいちの味でした。夜は大学時代からの親友と京都に行き、「和久傳」というレストランでコース料理を取りました。内容は純粋の日本料理と言うより、モダン和食という感じでした。おいしかったのですが、神田川の後じゃちょっと比較するのはかわいそう。ここは名物の「若竹酒」といって左の写真のように竹を細工して作った容器に入った清酒があり、これは東京のデパートでも売っていましたが、おいしい酒でした。いい店を紹介してくれたK氏は趣味で作曲もしている文化人。心から感謝です。 7日目:昼食は伊丹空港内レストランで明石焼きです。味はいまいちでしたが、その後取ったデザート「白玉小倉と抹茶のセット」は抜群のうまさ。ちゃんとした茶碗に抹茶が入っています。これぞ日本のデザート、感激もんです。夜は新高輪プリンスホテル内にある和食の「清水」で、寿司がメインとなったコース料理をいただきましたが、これもすばらしい味でした。寿司もおいしかったし。ここもコストパフォーマンスから言えば注目すべきもの。 8日目:東京での旧職場の親しい人たち5人が集まってくれて、品川にあるちょっと高級な飲み屋さんで会食でした。それぞれ好きな飲み物でやっていましたが私はここでも日本酒です。上に述べた和久傳と同じ竹製の徳利が出てきたのにはびっくりしましたが。コース料理はすべて独特の工夫を凝らしたおいしいものでした。5年前に彼らの職場を捨てて転職した私を未だにこうして歓迎してくれる厚情に心がいっぱいになりました。幹事役を勤めてくれた二人の女性が両方ともいまや統括課長としてバリバリ働いている姿を見てとてもうれしく頼もしく思えました。 ということで短い間にずいぶんいろいろ食べたものです。今回食べられなかった素材としては、ちょっと時期が遅かったマツタケ、少しいただいたもののちょっと食べ足りなかったカニ、などでしょうか。カニはイギリスでも少ない種類がありますがすべてまずいものです。やはり寒流と暖流が流れている日本付近のものは種類も味も豊富ですね。 上記のお店の中では、味だけを比較すれば「神田川」が抜群です。味以外でも、素材、料理のアイデア、盛り付け、器、サービスなどどれをとっても一流です。 もう一度行きたい他の店は、神楽坂の「桃仙卿」と新高輪プリンスホテルの「清水」でしょうか。コストパフォーマンスの首位は大阪駅上大丸の中の「つる家石心庵」でしょう。 食べている間以外は何をしていたかと言うと、もっぱら買いものです(^^) 東京でも大阪でもヨドバシカメラにはずいぶんお世話になりました。何でも1箇所で揃うというのは時間の無いものにはほんとに便利です。イギリスでは入手出来ない商品がいっぱいですし。もうスーツケースがいっぱいであきらめましたが大容量のHDDにUSB2をつけたものも格安でした。本当は1TBぐらいのものがひとつほしかったのです。 デパートなどどの階を見てもため息が出るくらい商品が豊富で安い。デパ地下などへ行くとこれまた垂涎の的ばっかり。買って帰れはしないけれど。 さて、今度はいつ帰りましょうか。
by dognorah
| 2005-12-05 10:28
| 旅行
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Comments(9)
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Sardanapalus
at 2005-12-06 09:22
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一時帰国楽しまれたようですね!正に食べ歩きでしょうか?私も帰ると家族で行きつけのお店を巡ることにしてますが、やっぱり魚とお米の美味しさには毎回ビックリします。あーネギトロ食べたいなぁ~。それから美味しい貝と、マグロと、蟹!!イギリスの蟹は一度で充分です(^_^;)寿司、天ぷら、ラーメン、うどん、旬の食材など、想像すると帰りたくなりますね~。
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dognorah at 2005-12-06 19:10
今回いろいろ食べてみて思ったのですが、日本料理というのは素材そのものの味を大切にするせいか、味の幅と深みが西洋料理や中華料理とはぜんぜん違うということです。その点では世界一ではないでしょうか。フレンチやイタリアンもとてもおいしいのですが、素材のうまみを引き出すよりソースで味付けしてしまう分、しばらく食べ続けると飽きが来るようなところがありますね。中華料理も然り。しかし今回は贅沢してしまいました(^^)
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助六
at 2005-12-07 09:59
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お正月を前に帰国10日だけとは「もったいな~い」気がしましたが、これだけ集中的な美食攻めなら、超充実ですね。おまけに泰西美術展にも足を運び、帰英翌日にはコンサートとは!すごいです。今回はこちらでは食べられない本格的和食を堪能されたようで何とも羨ましいッです。眼・耳の毒なので後半は流し読みに留めましたよ!小生は日本では串カツとかさらに下世話なトンカツとか親子丼とかが食べたくなる方です。
短期のご帰国でこれだけお仲間が馳せ参じるのは、dognorahさんのお人柄ですね。わが身を省みて耳が痛いです。
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YOKO
at 2005-12-07 20:28
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やはり、お忙しかったようですね。チョコ好きなdognorahさんに、日本みやげに、私のス-パ―のチョコ新製品のオススメ品をご紹介しようかと迷っていたのですが。。。しなくてよかったです。ちょうど、狂っていた時、たまたまですが、godivaのチョコ頂いたのですが、ソレ、2,3個食べたきり、ホッタらかしています。味がどうのこうのより、日本の安いパッケ-
ジのほうが、味がおもしろいというか。。。私がご紹介するつもりだったチョコは、なんと、名前がショパン。。 私もあの美術館に行きました。人が込んでるので、朝一番。。あ-、消化不良になりました、たいした絵があまりになくて。。。これにどのくらいの税金を投入されたのか、アホらしくなりました。欲求不満になり、帰ってオルセ―美術館の本を開ける始末。。しょうがないですね、本場の美術館は凄いですから。。。 私はつくづく、19世紀のパリのオペラ時代が異常に好きなことも再発見。 こんど、パリに行ったら、古本屋巡りして、その頃の紳士、淑女の資料、手に入れたいと思いました。 助六さん、ちなみに、きょうのお昼、私、たまたま、カツ丼作って食べました。私も大好物です。
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dognorah at 2005-12-07 21:53
助六さん、コメントありがとうございます。私が日本に行く時期は非常に限られてしまいます。目的の大きな部分を占めるのが友人たちと会うことなので、彼らが不在になりがちなお正月前後は避けます。いい料理屋も休業のところが多いですし。後、春は花粉症がつらいので避けます。夏の気候がいやなのでこちらに逃げている面もありますので、夏は絶対避けたいです。それに、長い滞在はホテルに泊まらなければならない身には財政的にきついです(^^; 勢い、短期集中型になります。今回はコンサートの予定に挟まれた10日間を選びましたが、帰英翌日にコンサートに行ったのはそういう事情です。幸い、会いたい人の70%ぐらいは網羅できました。友人は財産なので大事にしたいと思っています。
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dognorah at 2005-12-07 22:02
YOKOさん、日本人の舌は肥えているので本当においしいものはチョコレートでも日本にあると思いますよ。私が昔ワイン会で時々ご一緒させていただいたある婦人は、本当においしいチョコレートが入手できないから自分で原料から工夫して作っておられました。食べさせていただきましたが本当においしいものでした。口コミで固定ファンが出来、商売が成り立つまでになっているようですが、日本にはそういう方がたくさんいますね。
確かにプーシキン美術館展は本文に控えめに書きましたが名作揃いとはいえませんでした。友人からもそういうのが多くて・・・とこぼされましたよ。
dognorahさん、こんにちは。久しぶりの帰国で日本食三昧ですか。たっぷり楽しまれたようで、なによりです。私も海外にしばらく行って帰国すると、たいていは真っ先にさんまでも塩焼きにして、ご飯をたらふく食べちゃうクチですね(・・・すいません、低俗で)。やっぱり日本人だなあ、と実感する瞬間です(笑)。
逆に伺いたいのですが、ロンドンのレストラン事情というのは最近どうなんでしょう?私なんかはいつもきまってインド料理か中華料理に逃げてしまうんですけど・・・。最後に行ったのはなにせ前世紀なもんで(笑)、少しは変化があるんですかね?
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dognorah at 2005-12-08 23:59
Orfeoさん、こんにちは。ロンドンのレストラン事情はすべてを把握しているわけではありませんが、最近の傾向としましては、インターナショナル料理と分類されるものやモダンブリティッシュと称して従来の料理に国際的雰囲気を持たせたものが多くなっているように思います。中華やインドは私はめったに行かないので知りませんがあまり変わっていないでしょう。和食に関しては最近ずいぶん増えたなぁと言う印象です。客も日本人だけじゃなくなっているし、ヘルシーな食事というのが定着しているような気がします。その逆手を取って中華料理屋とか韓国料理屋が和食を前面に出して営業しているものもあり、その意味でも日本食というのはかなりインターナショナルになっています。伝統的料理から見ると、フレンチは衰退、イタリアンは相変わらず人気という面があります。私も外食ではイタリアンが最も多いです。
dognorahさん、ご丁寧に返答いただき、ありがとうございます。やはり随分変わってきているようですね。日本料理屋も増えているようだし、心強い(?)です。フレンチ、駄目ですかあ・・・。ま、私も手軽なイタリアンのほうが好きですけどね(笑)。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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