荒木経惟写真展

c0057725_040527.jpgNobuyoshi Arakiによる「self.life.death」という題の写真展がバービカン・アート・ギャラリーで開催中なので見てきた。日本では有名な写真家らしいが、写真そのものにはあまり関心が無かった私には初めて聞く名前である。左の写真は、荒木氏と今回の写真展のポスターで使われた作品である。

彼は1940年に東京で生まれた。下町を愛し、若いころからその周辺に題材を見つけて写真を撮ってきたという。対象は人間が圧倒的に多く、その他に、花、食べ物、下町風景などがある。彼は言う「人間の顔は体の中で最も露出された部分で、その人の人格がすべて表れている。それを写真に収めたい。」若いころから取り続けた人物像はプリント時にすべて背景を剥ぎ取り、真っ白にして顔が際立つようにして、いかにその人となりを表現するかに研究時間を割いてきたようだ。恐らく何千枚と撮ってきたのであろう。展示してある人物の顔には一種の迫力が感じられる。
ある展示室には4000枚に及ぶポーラロイド写真が天井から床まで壁3面を使ってびっしりと並べられているが、あのちゃちなカメラでもこういう人が撮ると実にきちんと写真になっているのに驚く。
彼を有名にしたのは女性モデルの露な肢体とか緊縛写真とからしいが、それもテーマ別に展示されている。こういう写真自体からはほのかなエロティシズムも感じられるが、特殊なポーズでもやはりその人物の内面を探ろうという意図がよく見える。
展示スペースに掲げられた英文の解説によると、日本ではヘアが写っていると発禁になるので彼は苦労したみたいなことが書いてある。何度も猥褻物陳列容疑で逮捕されているらしい。出版物は従って日本向けと海外向けの2種類を出している。会場でも何種類か販売されていたが、今回のために用意されたものは本の厚さが6-7cmにも及ぶ大部で、値段は8000円であった。

今回の作品では性器そのものが写っているものが多数あるので、このままでは日本では展示出来ないだろう。日本の現状を揶揄するがごとく、こちらではこの写真展は12歳未満は入場禁止となっている。日本のお上の精神年齢は12歳未満ということか。確かにそういう面は無きにしも非ず。

会場の一室で彼を紹介するドキュメンタリービデオが放映されている。1時間以上に及ぶ長いものなので、上映は2時間に一回である。しかしこのビデオはよく出来ていてとても面白い。中味は、彼自身のコメントや日常の仕事の現場、女性モデルのコメント多数、北野武や有名評論家のコメントなどで構成されているが、彼の仕事に対する思想や姿勢がよくわかる。モデルはほとんど彼が個人的に知り合った、あるいは、志願して来たアマチュアであるが、彼に写真を撮ってもらうのが無上の喜びであるような感じがよく出ている。ほとんど日本語で、英語字幕付であるが他の観客も熱心に最後まで見ていた。これからご覧になる方はぜひこれも見ることをお勧めする。展示は来年の1月22日まで。
[PR]
by dognorah | 2005-11-12 00:43 | 美術
<< ダスティン・グレドヒルのピアノ... ラフマニノフとバーンスタイン(... >>