人気ブログランキング | 話題のタグを見る

あるイタリア料理店にて

ウインブルドンは駅から北の方に向かって上り坂になっており、そこをバスで2-3駅行くとウインブルドンヴィレッジという昔から商店やレストランなどが固まっているところがある。レストランはあらかた試したのだが、最近また新しくイタリア料理店が開店したというので行ってみた。7時前なので客はちらほら。楽勝だと思っていたら、マネージャー氏、予約表を見ながら思案顔。そうか今日は土曜日だったか。「テーブルに案内するけど8時45分までに終わってください」とのこと。

奥に細長い店内は可能な限りテーブルを並べてあるので結構窮屈である。クリーム色を基調にした壁と明るいこげ茶色のテーブルとそれにマッチした椅子、グラスや食器類はなかなか高級感のあるデザインのものを使っていて、雰囲気はよろしい。壁にかかっている絵もモダンな油絵で、色使いも新鮮なもの。ウエーター、ウエートレスもみんなフレンドリーだ。アペリティフと共にサーブされるオリーブもパンもなかなかおいしい。

本日のスープをスターターにしてパートナーは海鮮タリアテレ、私はホタテのパルマハム巻きをメインにオーダー。スープは一見コーンスープ風だがコーンと見えたのはそうではなく、何か豆を煮て固めたような食感で、よく素材はわからないがとろっとしたスープとよく合っておいしい。ここまでは、なかなかいけるじゃん、という感想。

次に出てきたメインは、モヤシを軽く炒めたもののベッドにホタテのパルマハム巻きを載せたもの。見たところおいしそうである。しかし味付けはというと、主にパルマハムの塩気のみで、後は新鮮なホタテの天然の味に頼ったもの。ベッドのモヤシに至ってはほとんど味がない。パルマハムのお陰でかろうじて赤ワインと合わせられるものの、あまりイタリア料理らしくないなぁ。これでは私が田崎真也さんのレシピで作るホタテのベーコン巻きの方が料理らしい料理だぜ。その料理では、ソースとしてベーコン巻きホタテを焼いて香りがついたフライパンでブイヨンを赤ワインで煮詰めてバターを入れたものを作り、さらにバルサミコ酢でアクセントをつけてベーコンを巻いたホタテの上からかける。ただし、ベーコンが物によってはちょっと強すぎる感が無きにしも非ずなので、このレストランのようにパルマハムを代わりに使うことでそのあたりをマイルドにできるかもしれない。

パートナーが頼んだタリアテレはちょっと見物で、料理全体が紙に包まれた状態で出てくる。ウエーターが皿を置いた後マネージャーが徐に登場し、ナイフとフォークで紙に切れ目を入れ、紙を上に引っ張ると貝類や手長えびなどと絡められたタリアテレが皿の上にどばっとサーブされるというパフォーマンスで、周りのテーブルの客たちも固唾を呑んで見守る。その瞬間、皿からは湯気がもわーっと立ち上っていかにもおいしそうだ。しかし彼女のコメントではトマトソースの味がちょっと甘口で、好みではないとのこと。

ということでメインは共に料理の見栄えはいいのだが肝心の味そのものがいまいちという結果であった。

最後にデザートとしてペアのワイン煮を頼んだ。これも出てきたときには、ウーンというかっこいい仕上げで、皮を剥いて扇状に切れ目を入れたペアが大きくかっこいい皿の真ん中に鎮座し、赤ワイン色のソースを全体にかけられ、皿の淵の部分にはもちろん粉砂糖などが散りばめられて見栄えはとても豪華である。ところがこのペアがまだ熟しておらず、しかもあまり煮なかったと見えてゴリゴリ。あてがわれたスプーンとフォークでは切り分けるのも難しいのでナイフを持ってくるように頼む始末。しかしそれでも口に入れて食べ始めるとソースの味も滲み込んでいない状態で、ゴリゴリと噛むのにも飽きて遂に放棄。いぶかったウエーターが声をかけたので正直にクレーム。マネージャー氏が飛んできて、代わりの物を出そうかというが断った。喧嘩はしたくないので、「これはほんのちょっと硬いだけだけれど、もうおなかがいっぱいで食べられないんだよ、ところで君の眼鏡のフレームはかっこいいねぇ」というと相好を崩して、「この前2週間ほどイタリアに里帰りして買ってきたんですよ、イギリスじゃろくなデザインはないものね」。勘定書きを見るとさすがにデザートの分はチャージされていなかった。約束の時間を20分も過ぎて席を立ったが、予約客を含めて入り口付近はごった返していた。土曜日だし、新規開店と内装がかっこいいということで客が集まっているのだろう。イギリス人にとっては味は二の次でいいから。私たちはもう来ることはないだろうな。ちなみに店の名前は、Zero Quattro。
by dognorah | 2005-10-25 09:47 | グルメ | Comments(12)
Commented by Fake BJ at 2005-10-25 19:27
新しいお店が出来たんですね?前菜は満足されたようですがその他がいまいちだったようで。あのあたりは時々行くので今度いってみようかな?しばらくたてばお料理もちょっと変わるかも知れませんよね?肝心のお値段はいかがだったのでしょうか?また、食事でも行きましょう。
Commented by stmargarets at 2005-10-25 20:03
今日の記事、臨場感が面白くて笑いながら読みました。ちょっとだけでも期待しちゃった後のガッカリ感ともう二度とこないだろうなと思ってお店を出る瞬間・・・(笑)。うちの近所はそれ程高くなくておいしいイタリアンが何件かあるので興味があったらお教えしますよー。私自身は最近あまり行っていませんが。
Commented by dognorah at 2005-10-25 23:39
Fake BJさんもぜひ試してみてください。人によって感想は違うでしょうから。値段は、サン・ロレンツォより安いですが、Est!Est!Est!よりは高いです。
Commented by dognorah at 2005-10-25 23:44
stmargaretsさんはサウス・ケンジントンのくるくる寿司の隣の隣にあるピッツェリアは行ったことがありますか?そこは安くておいしいですよ。料理が出てくるスピードがメチャ速いので今年のコンサート前によく使いました。
Commented by Sardanapalus at 2005-10-26 03:27
見栄えばかり良くても味が駄目じゃ駄目なんだよ!という良い例だったのですね。イタリアンらしくないイタリアン、甘いトマトソース…イギリス人の味覚に合わせているんでしょうか?

>イギリス人にとっては味は二の次
自慢じゃないですけど、ロンドンのイタリアンで美味しいところに入ったことがありません(^_^;)あ、この前初めて「いけるじゃん」というところへ行きましたっけ。でも、イギリス人は味よりヘルシーさ(塩やバターの量など)に重点を置いているようですからね~。
Commented by stmargarets at 2005-10-26 07:14
dognorahさんのおっしゃるピッツェリア、行ったことないです。実はあっちの方はあまり行かないのでくるくる寿司すらどこにあるか分からないのですが、駅の近くですか?安くて美味しいのなら、早速探して行ってみたいと思います♪
Commented by 助六 at 2005-10-26 09:38
これは名エントリですね。楽しく巧みな文章も踊っていて、情景眼に浮かぶようです。思わず田崎レシピ教授に及んだり、パーフォーマンス後のマネージャーの得意顔、堅物デザートとの格闘の場など爆笑、すかさずメガネ話題で雰囲気を和らげるセンスにも脱帽です!でもウェイターの応対と言い、ノー・チャージと言い良心的な店だと思います。何だか行ってみたくなりましたよ。一般にパリに比べて(仏の地方は親切だけれど、パリの一部はひどい。これは地方出身の仏人も怒っています。)、ロンドンのレストランは、旨くて卒倒ということはなくても、フレンドリーで親切な印象を持っています。
英でも、伊人経営の店でもやはりパスタはprimo piattoとしてではなく
メイン・ディッシュとしてとるのですね。仏でも一般的店でも高級店でも大抵そうです。ミシュラン星付高級店で通気取りで、パスタとメイン両方注文したら、「量が多いしパスタはメインとして…」などと言われてしまいました。伊では下手クソな伊語で注文したら、「あなたはスパゲティにスプーンは要りませんよね」などと言われ満悦でしたが。
Commented by dognorah at 2005-10-27 05:19
Sardanapalusさん、そうそういいシェフはいないということでしょうね。特に安いという条件では。お金を気にしなければ、ハロッズのちょっと西側にあるサン・ロレンツォはおいしいですよ。故ダイアナ妃ご贔屓の店でした。私はその系列でウインブルドンにあるやつで十分ですけどね。
Commented by dognorah at 2005-10-27 05:25
stmargaretsさん、駅前からインペリアルカレッジに向かっているExhibition Roadをご存知ですよね?それとCromwell Road(A4)との交差点から駅の方に20mぐらい行った角にタイ料理店があり、そこから西側に4軒レストランが並んでいます。その4軒目がイタリアンです。ここは昼ごろから真夜中までずっと開いています。
Commented by dognorah at 2005-10-27 05:39
助六さん、暖かいコメントありがとうございます。ロンドンのレストランは一般にフレンドリーでウイットに富んだ従業員のいる店が多いですね。おそらくイギリス人のユーモアを好む性質とマッチして、そういう店がもてるということを自覚しているんだろうと思います。

イタリア料理店はここに限らずどこでもパスタ類はprimo piattoのところに書いてあるのですが、それをメインとして頼むのはまったく問題がないです。店によっては、前菜で食べる場合とメインで食べる場合で量を(もちろん値段も)違えて表示してあるところもあります。

ところで通はスパゲティをスプーンなしで食べるものなんですか?
Commented by 助六 at 2005-10-27 07:43
イタリア人はフォーク一本で食べ、スプーンを頼むのは外国人観光客、これ絶対です!以前他人のカネでフィレンツェの2ツ星レストランで食べた時、primo piattoで平たいスプーンが出てきました。出てきた料理を見たら大変繊細なラヴィオリ状のものだったので納得でしたが、念のため訊いてみました。「パスタはフォーク一本で食べるのが習慣だが、高級店としての差異化の意識もあり、これは料理の性格上、この方がエレガントに見えると思うのでそうした。外国人はやっぱりスプーン頼む方が多いですね。」との返事でした。
Commented by dognorah at 2005-10-27 09:49
はー、なるほど。外国人だけですか!しかしなぜ外国人がスプーンを使うようになったかという疑問も出てきますね。日本じゃ、高級店は必ずスプーンですものね。あ、ロンドンのイタリア料理店もたいていスプーンがついてきますよ。
<< クラリネット3重奏演奏会 -1... アダム・クーパー主演の「Wal... >>