今日と明日の二日間はロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団(Royal Concertgebouw)がPROMSで演奏します。このオケを聴くのは久しぶりなので両日とも切符を買いました。
指揮は主席指揮者のマリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)です。演奏曲目は大曲なのでこの第6番だけです。 ラトヴィヤ生まれのこの指揮者(左の写真)を聴くのは2年振りでそのときは当時の常任をしていたピッツバーグ管弦楽団を指揮してのショスタコーヴィッチの第10番でした。さすがとうならせる名演であったことを覚えています。この人のお父さんはアルウィッド・ヤンソンスといって、よく東京交響楽団(と思う)に客演していましたが、いつもいい音楽を聴かせてくれるすばらしい指揮者でした。でも、息子は既に父を超えた大物になっていると思います。 ロイヤルコンセルトヘボーも古くからの思い出があります。以前はアムステルダムコンセルトヘボーという名前でしたが、創立100年記念の1988年にロイヤルという名前をつけることを許されたようです。その実力は維持されていると思いますが、音色は相当変わりました。昔は弦の音が燻したようなというかくすんだ独特の厚みのある音色でとても魅力的でした。昔のLPで聞いてもそれははっきりと他の楽団と区別が付いたものです。初来日のときにヨッフム指揮の実演を聴いて「レコードと同じ音がする!」と感激したのを覚えています。 しかし、その音はもうありません。90年代前半にロンドンで聴いたときにはもうありませんでした。メンバーが全部入れ替わって継承されることなく消えてしまったのでしょう。残念なことです。その分、よりインターナショナルなオケになったのでしょうが、昔からの名店が消えて国際ブランドの店ばっかりになっていく最近の欧州各都市のハイストリートを見る思いです。 前置きが長くなりましたが、今日の演奏はほぼ完璧だったと思います。第1楽章の最初から乗りに乗った演奏でした。最後まで緊張は緩むことなく濃い密度を持続。金管が音をはずしかけたようなところは何箇所かあるにしても実演ではみんなやること、たいしたことではない。曲の組み立て、音楽の流れ、厚みのある美しい弦や木管など、いつまでも続いてほしいと思う音楽空間に浸れました。この第6番はCD(マゼール指揮ウイーンフィル)を聴くだけでは理解できない音楽でしたが、初めての実演を経験してかなり曲の本質が見えてきたような気がします。一昨日ヴェルザー・メスト指揮のクリーブランドによる第3番を聴いて感激したばかりですが、また新たなマーラーの世界を垣間見ました。これで私が実演で聴いていないマーラーの交響曲は、第2番と第9番だけになりました。第2番は来月聴く予定ですが、第9番はまだ予定が立ちません。 今日もオケのメンバーをチェックすると日本人女性の弦楽器奏者が4人もいました。先日から数え始めただけですが既に十数人に達しています。すごいですね、日本の女性の活躍ぶりは。これに比べると男性奏者の活躍が寂しい気がします。テニスの世界も同じ傾向ですが、なぜなんでしょう?
by dognorah
| 2005-09-02 08:26
| コンサート
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Comments(11)
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Sardanapalus
at 2005-09-02 09:56
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レポート書いていただけると思って待ってました☆私は中継をラジオで聞きましたが、しっかり満足できる演奏でしたね。終演後の拍手と歓声が凄かったです!アンコールはありませんでしたか?私はマーラーの交響曲はまだ本格的に聞いたことが無いのですが(今日もながら聞き)、CDを買ってみようかという気にさせられました。dognorahさんはクリーヴランドに続いてのマーラー週間ですね(笑)CDと限られた生演奏の体験から、勝手なイメージとしてはヤンソンスのマーラーの方が私好みのようです。それにしても、ヤンソンスのお父さんも指揮者とは知りませんでした。
>日本の女性の活躍ぶり 各地オぺラハウスのオケでも日本人女性を良く見かけますね。本当に、男性が少ないのは何故なんでしょう??
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dognorah at 2005-09-02 20:25
ほんとに昨日の盛り上がりはすごかったです。アリーナもぎっしりのほぼ満席状態でしたし。85分の大曲を演奏した後なのでアンコールを求めるのは酷でしょう。ヤンソンスは5回目ぐらいの挨拶でオケを促して退場させました。3番と6番では曲の性格がかなり違いますので一回の公演だけで好みを判断するのも難しいかなと思います。私はむしろ指揮者を違えてその多様性を楽しみたいと思っています。
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YOKO
at 2005-09-02 23:08
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毎日、dognorahさんに、こうして、書くのが癖になりそうで恐ろしいやら。
でも、私をそういう気にさせてくれるこの、Thamesに感謝。さて、きょうは、ファン気質について、いままでに、感動したある、おふたりについて、書かせてもらおうかな、と思っていましたが。。。これは、また、時機を見て書かせてもらいましょう。 代わりに、論文でさぞ、お苦しみの、?・?、Sardanapalusさんのために、フンメル門下生のおひとり、TAROさんの、プラグのなかの、ニュ-スの落ち穂ひろい、を覗かれる事、オススメシマス。見てのお楽しみ------------。 dognorahさん、やっぱり、あのテノ-ルと思いますよ。ゲルギエフは超モテ人生をおくってきたのだから、ラトルのような不覚はないでしょう。 ちなみに、ゲルギエフは45歳の時、同郷のソプラノと結婚したはずです。彼女の年は知りません。
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らぷそでぃ
at 2005-09-03 01:14
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こんにちは。時々覗かせていただいてます。コメントを置かなくてごめんなさいね。いつもながら、こんなにも演奏会にいけるなんて心底羨ましい。。。
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stmargarets
at 2005-09-03 05:31
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dognorahさん、お久しぶりです!
私も昨日行きましたよ。というわけで待ってました(笑)。 またいつものごとくdognorahさん記事をTBさせて頂きます。 ところで質問があるのです。 昨日途中でオケでないところから、何度もカランコロンカランコロンという音が聴こえてきたのですが、あれはとても音楽にあってるとは思えなかったけれど、そういう曲だったんですか? どこから聞こえてきたかちっとも分からなくて、すごく気持ち悪かったのです・・・。 でも誰も騒いでなかったからそういうものだったのかな?と思って・・・。 そうそう、私は2公演ある日の1公演目はアンコールをしないものだと思っていたのですが、そういう訳でもないのですか?
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dognorah at 2005-09-03 08:52
YOKO産、どうぞ気にせず毎日書き込んでください。
手乗る産の方が一件落着で好ましいと思います。とにかく早く舞台に復帰してほしいです。
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dognorah at 2005-09-03 08:55
ラプソディさん、練習の息抜きに来てこちらのコンサートでも聴いていってください。HTML遊びも飽きられたようですし。今度のプログラムはなかなか意欲的ですね。詩情あふれる演奏を想像しちゃいます。
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dognorah at 2005-09-03 09:11
stmargaretsさん、しっかり合宿されたようで成果のほどが楽しみですね。そうですか昨日は一緒に聴いていたんですね。あのホールじゃ出会いは難しいです。
あの音は私もどこから聞こえるのか必死で探しましたよ。打楽器奏者は誰も動いていなかったし。実はあれと、もうひとつ鐘の音がありましたが両方とも舞台裏だったのです。指揮者の正面のオルガン席に小型カメラが置いてありましたがあれで舞台裏に指揮者の映像を映しています。わけのわからない金属音はcowbellです。買ったプログラムの解説によりますと、オーストリアの高山のすがすがしい空気を象徴するために、遠くの方で鳴らすようにとの作曲者の指定があるのです。鐘の音も同じくです。共に第1楽章と第4楽章で使われていましたが、打楽器奏者が舞台から出たり入ったりしていたのに気付きましたか? アンコールについてですが、そういうしきたりがあるのですか?知りませんでした。何しろ今まで連続で参加したことがありませんので。でも今回は2夜目はこの後の記事に書きましたがアンコールがありました。
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KEN@London
at 2005-09-03 09:50
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コメントありがとうございます。
詳しいご説明を頂き、漸く理解できました。 カラクリを聞いても尚、僕にはあの金属音、Cowbellが合っていたとは思えません。。どうしても、どうしてもあれだけは納得行かないんですよねぇ。。 しかし、それ以外、特に第一楽章はホントに良かったです。 かーなり僕にとっては忘れられない良い思い出になりました。
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stmargarets
at 2005-09-03 19:47
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あぁ、そういうことだったんですか。全然気がつかなかった。
でもKenさんのいうように私もちょっと気持ち悪く感じました。 私たちの席が下手によってたからかもしれませんが、 遠くから聞こえるというより、むしろあの音の方がよく聞こえてきたので、特にオケがピアノで鳴ってる時には、「ちょっと邪魔!」と感じました(笑)
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dognorah at 2005-09-04 02:00
Kenさん、 stmargarets さん、あのホールは音響的には欠点だらけなので共振も結構あります。私の席(サークルの最前列)からはあまり違和感はありませんでした。それでも、舞台裏で鳴らしている割には大きく聞こえましたけれど。マーラーはこの手の音が好きで、ほとんどの交響曲に何らかの珍しい音を響かせますね。先日聴いた第4番でも、冒頭からしゃんしゃんという金属音が奏でられるのですが、鈴のようなものをブドウの房状に沢山並べた楽器を左手でぶら下げて右手で左手の甲をたたいて鳴らしていました。実演に行くとこういう情報が得られるのも楽しいですね。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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