1998年のミュンヘンオペラを記録したものである。
キャストは次の通り。Tristan: Jon Fredric West Isolde: Waltraud Meier King Marke: Kurt Moll Kurvenal: Bernd Weikl Brangane: Marjana Lipovsek 指揮:Zubin Mehta 管弦楽:The Bavarian State Orchestra 演出:Peter Konwitschny トリスタンを歌うWestは終始すばらしい声を聞かせてくれる。 イゾルデのマイヤーもさすがにうまいのだが、時々声がかすれるところがありこの舞台では絶好調とはいえないのが残念である。 マルケ王のモルは文句のつけようがない。堂々たるものだ。もっと歌う場面があればいいのにと思うくらい。 私は2002年にロイヤルオペラで実演に接しているが、イゾルデ(Lisa Gasteen)以外の歌手はすべてこちらの方がいい。あのときのリサ・ガスティーンはちょっと忘れられない名唱だった。 あちこちで話題のコンヴィチュニーによる演出は、すごい軽い乗りで重々しい音楽に対してかなり戸惑うところがあった。第1幕の船は遊覧船みたいだし(左の写真上)、トリスタンが髭を剃るための石鹸の泡をつけたまま長々とイゾルデと愛の交歓をする場面はどういう意味なんだろう。この石鹸を髭につける場面は第3幕でも登場するのでコンヴィチュニーは何か意味を込めているはず。第1幕ではトリスタンはイゾルデを馬鹿にして髭を剃る途中の格好のまま彼女に会いに行って恋愛関係になったことを思い出し、再会直前にまた石鹸を塗ってみたというところか。第2幕ではトリスタンがイゾルデと座るためのソファーを舞台袖口からずるずると引っ張り出してくるのが笑える(写真中)。観客から特に失笑の声は漏れてなかったようだが。 第3幕は現代のアパートの一室みたいな部屋(セントラルヒーティングのラジエーターまである)でトリスタンがオーヴァーヘッドプロジェクターのヒモコンを操作してセピア色のスライドを壁に映している。 トリスタンが死ぬ場面はなく、最後は二つの棺桶の前にマルケ王とブランガーネの二人が祈りを捧げるシーンで幕となる(写真下)。これはトリスタンの死体の前でイゾルデが愛の詩の歌を歌う通常の舞台に比べて新鮮であり唯一感心した場面だ。 メータの指揮はこのオペラにふさわしく濃厚で格調の高いなものであった。
by dognorah
| 2005-08-11 20:55
| DVD
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Comments(17)
TBさせてもらったのですが、またまたYAHOOは不調ですね。私にとってのトリスタンとイゾルデは、マイヤーあってのものでして、95年バイロイト版はシンプルな舞台構成の中に作品本来の素晴らしさが込められていると思います。いずれもNHKのBS2で録画したものです。
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マイヤーは現代の第一人者ですから好調であればすばらしいことでしょう。私は映像ではビルギット・ニルソンがオランジュ音楽祭でベームの指揮下で歌ったものしか知りませんので(音も映像も悪いのですがすごいです)そのうち他の映像も入手してみようと思います。
ところでヤフーはご~けん さんのように戻る人が増えるとサーバーがアップアップするのだと思います。私はもう戻れないと思っています。
私の得意分野(?)のコンヴィチュニー演出!
しかし写真とdognorahさんの解説を読む限りでは、かなり「変」ですね!同じくミュンヘンで見たコンヴィチュニーのパルシファルも相当過激でした。 でも最後にマルケとブランゲーネを映すという手法は良さそうです。シュトゥットガルト演出と同じ(違うかな?)コンセプトのような気がします。TBしますね。
フンメルさん、コンヴィチュニーは一般的に重々しく演じられるこの作品をちょっと茶化してみたかったのかもしれません。イゾルデが愛の死を歌っているときにトリスタンはそばでぴんぴんしていて、歌が終わったら二人で手を繋いで舞台から去るのですから。
フンメルさんの記事を読み返しましたが、そちらの方がコンセプトが一本筋が通っていて、演出としてはまともなようです。
同上演の01年ミュンヘンでの再演を観ました。指揮と主役2人は同一、他もブランゲーネが藤村美穂子さんだった以外同じだったと思います。00年サルツブルクでのマゼール指揮グリューバー演出によるやはり同じ2人が主役を歌った上演での、マイヤーのイゾルデが素晴らしかったので、どうしてももう一度聴きたくて出掛けたのですが、dognorahさんがこの上演について仰っているのと同様、01年の時も彼女の声の状態が今一つで残念でした。と言うわけで今年4月のパリでのサロネン指揮セラーズ演出「トリスタン」でのマイヤーは、文字通り恐る恐るという感じで足を運びましたが、昨年オペラを休んで声の調整を図ったとかで、声そのものも透明な響きが上から下まで美しく伸びて最好調、役作りも凛とした気品から陰影の深さ、焼けるような熱情まで、93年役デビュー(バイロイトで観ました)の時に比べると別物と言える位の見事さでした。余りに素晴らしいのでつい3回観てしまいました。こんなことは最近はめったにやらないのですが。
私はコンヴィチュニー演出はこれともう一つ現代物しか知らず、特に最近のハチャメチャ振りには接していませんが、個人的にはこの「トリスタン」はそれなりに整合性のある演出だと感じました。観たのは3年後の再演ですから、少し崩れていたかも知れませんが。
>重々しく演じられるこの作品をちょっと茶化してみたかったのかも 基本的にその通りだと思います。重厚な古典を卑近な事物から考えてみるというのは、現代の各国演出家に広く認められる傾向だと思います。1幕など完全に三角関係ソープ・オペラのパロディでしょう。フンメルさんの仰るようにマルケとブランゲーネを俗人の視点と考えることも充分可能と思います。
>石鹸を髭につける場面
仏人に訊いてみても、彼等・彼女等は朝、鏡の前で髭を剃ったり、お化粧をする時、一瞬「自分は何者で、何をしようとしているのか」自問するものなのだそうです。小生など「もう少しマシな面構えに生まれなかったものかな」とか、「またフケたな」とかしか考えませんが、まあそれも自分の存在について問うということかも知れませんが。何れにせよ西洋人にとってどうやら「髭を剃る」行為は「自分の存在について問う」イメージと結び付いているようです。コンヴィチュニーもインタビューで全く同じ意味のことを言っています。トリスタンは、自己の存在やイゾルデとの関係に「卑近な仕方で」思いを巡らしているということのようです。
髭を剃ることがそのような意味を持つとはビックリしました。マイヤーの出来不出来についてはあまり感じなかったのですが、確かに95バイロイトと比べると親しみはあるものの、張り詰めたものを感じにくかったような気がします。トリスタン役のイエルザレムも素晴らしかったせいがあるかもしれませんが・・。
助六さんはこれをご覧になっていたのですか!マイヤーについてはいいときも悪いときもずいぶん聴いていらっしゃるのですね。声を聴くために3回も通われるとはよほどすごかったと推察致します。先月のロイヤルオペラでジークムント役のドミンゴと組んでジークリンデを歌ったワルキューレを見れなかったのは返す返すも残念です。
>重厚な古典を卑近な事物から考えてみるというのは、現代の各国演出家に広く認められる・・・ なるほど、現代の傾向ということですか。その視点で行けば、好きかどうかは別にして確かにconsistencyはありますね。
>「髭を剃る」行為は・・・
私も ご~けん さんと同様考えても見なかったことでした。コンヴィチュニーがインタヴューで解説しているなら間違いなくそういう意味を盛り込んだのですね。これから新演出を見るときはそういう「卑近な仕方」を頭に入れておくことにします。
ご~けん さん、同じ歌手でも時と場所、相手役、指揮者等が代わればまた違った歌い方になるのでしょうね。そういうことを考えると、これと思う歌手は機会を逃さずいろいろなシーンで聴きたいものです。
はじめまして。マイヤ-のことが話題となっていますので、のこのこ、寝苦しい夜、出てきました。dognorahさん、私は先月、ロンドンでマイヤ-を見ました。モ--、凄い、あらゆる面で完成されていて、パリ、ウィ-ンと絶好調とは聞いていましたが、これほどとは、、、今、彼女は確か49歳、この状態があとどれほど、続くか、解りませんが、、、帰国して、マイヤ-のイゾルデの
日程を確かめたぐらいです。私はこのDVDのマイヤ-が好きになれなくて 彼女を誤解していたか、、、それとも、年月が彼女を変えたのか、傲慢さが消え、新たな心境を迎えているような気がしました。 私は今年中、彼女のイゾルデが見れるか、まだ解りませんが、dognorahさん、ぜひ、ご覧下さいませ。 さすがですね---、助六さん、3回とか、ア-、私はインタ-ネットでした。 あのパリ公演を見られた方は幸せな方と思っていました。 ぜひ、追っかけてください。
Yokoさん、はじめまして。ようこそ。フンメルさんのところでよくお見かけしておりました。かなり深くオペラの経験がおありのようですね。マイヤーがそれほどよかったとは、ほんとに先月聴けなかったことが悔やまれます。助六さんとYOKOさんが絶賛されていることを肝に銘じて次の機会を逃さないようにせいぜい努力するつもりです。すばらしいコメントをありがとうございました。
この DVD のこと、買ってかえろうと思っていながら、忘れていました。インターネットで注文しようかしら。でも、たしか、 PAL なので、新しいプレイヤーがほしくなっちゃうだろうし・・・。
kalosさん、このDVDはNTSCでも出ていますよ。日本で出ていなければアメリカから取り寄せると安いですよ。
欧州は基本的にPALでもNTSCでも問題なく映るし、リージョンフリーのDVDプレーヤーを入手しておけば、世界中のDVDが見れますね。我が家のDVDもPALとNTSCが入り混じっていて、普段は全く意識せずに再生しています。この点は日本やアメリカに住んでいると不便ですよね。
そうなんですか。いいことをうかがいました。さっそく、アメリカのサイトを見てみます。
帰国まえに、一度、Nationaltheater 脇のショップで、この DVD を見かけて、買いかけたのですが、レジに誰もいなくて、そのときは買わなかったんですよ。
dognorahさん、TB&コメント、ありがとうございます。
コンヴィチュニーの演出はいろんな意味でサプライズの連続ですが、時折ドキッとさせられるところがあったりするのが侮り難いですね。 TB返しさせていただきます。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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