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バルトークのオペラ「青髭公の城」

2011年9月9日、ハンガリー国立オペラ劇場にて。

このブログは約1ヶ月の夏休みを取ってしまいました。8月はプロムスなどいくつかのコンサートに行ったのですが記事が書けないままとうとう9月の新シーズンに入ってしまいました。心を入れ替えてまた少しずつアップしていこうと思います。
今シーズンはまずブダペストに行きました。その後ROHのシーズン幕開けにも参加しましたが、ブダペストの分からレポートしていきます。

A Kékszakállú herceg vára(Duke Bluebeard's Castle)
Music: Béla Bartók

Concept: Ildikó Komlósi
Director: Caterina Vianello
3D effects: Andrew Quinn
Light Designer, Cinematographer: Alessandro Chiodo
Sets: Gian Marco Campanino, Marcella Gallotta
Conductor: György Gyorivanyi-Rath
Orchestra of the Hungarian State Opera

Duke Bluebeard: István Kovács
Judit: Ildikó Komlósi

この公演は世界初の3D舞台と宣伝されていましたが内容についての説明はあまりなく、実際に座席に座って鑑賞してやっと意味がわかりました。要するに実際の舞台セットの代わりに3D映像を使うということで、観客は支給された3D用の偏光眼鏡を装着して舞台を見るということでした。従って舞台上は簡単な台座が置かれている程度でバックには幅高さとも舞台一杯の白いスクリーンがセットされているだけです。
さて、効果の程はというとこれがなかなか行けます。主に城の巨大な内部構造が場面に応じて投影されますが効果的でした。しかし技術的な問題があるのか映像はモノクロで、色といえば歌手の衣装にしかありません。あと、やはり偏光眼鏡をかけるのは煩わしいです。特に私のように近視用眼鏡をすでにかけている者には。

ハンガリー人の歌手は二人ともとてもよかった。青髭公を歌ったコヴァーチは声に艶があってよく通る魅力的な声の持ち主です。引き締まったスマートな体もこの焼くにふさわしいと思いました。表現的には大変な迫力が感じられ、ぞくぞくします。

ジュディット役のコムロジはロンドンでもお馴染みの国際的メゾソプラノですが、声の調子がよくてすばらしい歌唱でした。

指揮者もハンガリー人ですが、まあ水準の演奏というところでしょうか。もう少し切れのいい透明な表現が出来ないものかとは思いましたが。この曲を聴くのはこれが3回目で、最初は2006年のペトレンコ指揮のROHの舞台。次いでブーレーズ指揮のコンサート形式でした。どちらも指揮は今回より遙かにすばらしいものでバルトーク音楽の凄さ、美しさをもっと豊かに表現していたという印象を持っています。

なお、ハンガリー人によるハンガリー語上演だからハンガリー語字幕は必要なしと判断されたのか、舞台上の字幕は英語でした。
この劇場は座席数が1260とのことで、オペラ鑑賞にはほどよい大きさですね。フォイヤーやメインの階段などは小さいスケールながらパリのガルニエと似た感じでした。床は木で出来ており、音響的には不満のないホールです。今回は平戸間最前列の右側通路脇に座りましたが、シーズン幕開けの特別価格のせいかこの劇場にしては切符は高めの18,500フォリント(切符購入時で約60ポンド)でした。これでもロンドンよりは遙かに安いですが。

István Kovács and Ildikó Komlósi
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István Kovács
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Ildikó Komlósi
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György Gyorivanyi-Rath
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なおご存じのようにこのオペラは上演時間が約1時間と短いので大抵の公演は他の出し物と組み合わせて上演されます。今回は随分毛色の変わった組み合わせで、ラヴェルの「ボレロ」に振り付けたダンスでした。
今までヴィデオでジョルジュ・ドンとかシルヴィ・ギエムのダンスを見たことがありますが、実演を見るのはこれが初めてです。ドンやギエムのはモーリス・ベジャールの振り付けと思いますが今回のは全く異なるもので、このスペイン音楽らしくフラメンコの形式を取り入れたもので、事実今回のダンサーはすべてフラメンコダンサーです。これを3D映像を背景にやろうというわけで、実はオペラの前に上演されました。

Bolero
Music: Maurice Ravel
Concept: Francesco Stochino Weiss
Choreography: Lola Greco
Scene: Claudia Magoga
3D effects: Nima Gazestani
Light Designer, Cinematographer: Alessandro Chiodo
Costume Designer: Carmen Sanchez

Étoile: Lola Greco
First dancer: Francisco Velasco
Soloists: Peneope Sanchez, Miriam Manso, Miriam Perez

映像は星空が主なもので音楽リズムに応じていろいろなシーンが出てきます。映像だけで楽しめるようにしたのでしょう、空の彼方から何かもやもやとしたものがだんだん近づいてくるシーンでは途中からそれが真っ赤なバラであることがわかり、最終的には目の前1mぐらいに大写しされ、花弁の細部まではっきり見て取れます。また、付きの場合も目の前で大きくなるとクレーターの様子が明瞭になるし、大がかりな構造物が水平線下から現れたりします。しかし、オペラと違ってダンスではこのような映像は不要だと感じました。ダンサーの動きを注視しているときには他の映像は邪魔です。

ダンスはまず暗闇の中にヌード女性が現れ、背景の大スクリーンの効果でまるでシルエットのように見えます。そのそばで男性ダンサーが踊り、床には他の女性ダンサーが横たわっていますが、男性ダンサーが彼女たちを一人ずつ立ち上がらせながらソロやデュエットダンスを継続していきます。そのうちにヌードダンサーは舞台下に沈み、時間が経ってから彼女も他のダンサーと同じような衣装で舞台に復帰。照明も明るくなります。フラメンコと同様なタップを交えながらクライマックスに向けて動きを激しくしていっておしまい。まあ楽しめました。実演を見ればギエムの踊りの方が感動は大きいかも知れません。

Lola Greco and Francisco Velasco
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by dognorah | 2011-09-13 23:15 | オペラ | Comments(4)
Commented by レイネ at 2011-09-14 03:11 x
本場でバルトークのオペラを鑑賞されたんですね。なるほど、3Dのオペラ舞台というのは斬新かも。しかも、このコンセプトが歌手のコムロジによるもの、というのが新しい時代を感じさせます。
前座のオペラも3Dだったんですね。
わたしも、ダンス映画『ピナ』を3Dで観ました。映画の場合、スクリーンからダンサーが飛び出す感じで、なかなかいいのですが、生の舞台で3Dにする意義は???どうなんでしょう。
今後、ROHの映像も3Dが出るようですし、映画もどんどん3Dで製作されてますが、本当に演出上または舞台効果として必要不可欠なのか、と考えると適用範囲は限られるのでは、と思えます。

ところで、10月のマレーナ様『セルセ』@アン・デア・ウィーンは、昨年の『アルチーナ』@ウィーン国立歌劇場のと同様にエイドリアン・ノーブルによる演出です。ご都合が付いてなおかつチケットがまだ取れるようなら、ぜひ観賞されては。。。
Commented by dognorah at 2011-09-14 23:13
レイネさん、オペラの背景を3Dにする意味は多分経費節約が主な動機じゃないでしょうか。実際の舞台装置を作る必要が無く、再演も手間いらずですから。3Dを使う必然性はほとんど感じられません。また今回珍しいからあまり抵抗なく眼鏡をかけましたが、これが毎回だとうんざりするでしょう。
10月はもう日程的にウィーン行き設定は無理です。またの機会にレイネさんとご一緒できればと思います。
Commented by Miklos at 2011-09-15 09:30 x
これ、行かれたんですね。私も何とか旅行を入れて見に行こうかと思っていたんですが、結局無理でした。同じ歌手の取り合わせで今年1月にドルトムントで聴いた際(オケはフィッシャー/祝祭管)、両者とも素晴らしい歌唱だったので、さぞかし良いステージになるだろうとは思っていました。ただ、YouTubeでこのプロダクションを宣伝用ビデオを見たときは、舞台はけっこうしょぼいかも、と思ってしまって熱意は薄れてしまっていました。実際の3D映像はそれなりに立派なものだったんですね。ちなみにKovacs(およびKovats)のカタカナ表記は「コヴァーチ」がよいと思います。それにしてもオペラ座のチケットは今や18500フォリントですか。私のいたころは最高席も1万超えることはなかったので(私が普段買うのはもっと下)、インフレ著しいですね。
Commented by dognorah at 2011-09-16 00:28
Miklosさんも注目されていたんですね。しかしすでにドルトムントで聴かれていたとは。オペラの性格上3Dといっても実際のセットにはかなわないので、コンサート形式で十分かなと思います。
コヴァーチという読み方のご教示ありがとうございます。本文を訂正いたします。
チケット代ですが今でも通常公演は10000フォリント以下だと思います。今回のは特別な値段設定でした。理由はわかりませんが。
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