2011年2月18日、バルセロナ、リセウ劇場にて。
At Gran Teatre del Liceu ![]() Anna Bolena by Gaetano Donizetti Libretto: Felice Romani Direcció musical : Andriy Yurkevych Direcció d'escena : Rafel Duran Enrico VIII : Simón Orfila (Calro Colombaraの代役) Anna Bolena : Edita Gruberova Giovanna Seymour : Elina Garanča Lord Rochefort : Marc Pujol (Simón Orfilaの代役) Lord Riccardo Percy : José Bros Smeton : Sonia Prina Sir Hervey : Jon Plazaola 今回のバルセロナ遠征は、ロンドンの椿姫さんやkametaro7さんなどオペラファンで構成されたグループ5人で行ったのでした。そのためオペラ以外の時間も楽しく過ごすことが出来、充実した旅になりました。 ドニゼッティの有名なオペラとして名前だけ知っていましたが、実際に舞台を見るのは今回が初めてです。そして噂通り、非常によくできた音楽で(ストーリーはあまりいいものではありませんが)確かにドニゼッティの最上級の傑作という印象を受けました。それはやはり歌手たちが揃ってすばらしかったことと、管弦楽も非常に優れた出来だったからでしょう。新演出も悪くはなかったですし。 歌手ですが、グルベローヴァもガランチャも絶好調でした。 グルベローヴァは昨年からの好調をしっかり維持していて、高音もとても美しいものでした。ガランチャとの二重唱Sul suo capo aggravi un Dioは非の打ち所もなく、すばらしい出来に長い拍手が続きました。あまりに長いのでグルベローヴァが舞台に再登場し、ガランチャにも手で合図して出てくるように促しましたが彼女は遠慮して出てきませんでした。第2幕の錯乱の場面で歌われるアリアChi può vederla a ciglio asciutto?とAl dolce guidami castel natìoの弱々しくも美しい襞のような表現は絶品で、涙が出てきます。こういう歌唱を聴けただけでもバルセロナまで来た甲斐があったというものです。 一方のガランチャも2006年に初めて聴いたガルニエでのセスト役以来かという位すばらしい歌唱で、姿形も美しく(同行した他の方々はちょっとふっくらしたとの感想だった)、今日はいつになく色気が感じられました。美しく深みのある彼女独特の声が朗々と響く声量の大きさにも改めて感心しました。 アンナの恋人役Lord Riccardo Percyを歌ったホセ・ブロスもいつものように素敵な声で私は大いに満足。ところが第2幕のアリアでちょっと盛り上げ方にしくじった小さな疵にブーが浴びせられてリセウの厳しい聴衆にびっくりしました。カーテンコールでもしつこくブーを飛ばす人がいて、本人も大変不機嫌でした。ブーするほどの不出来とも思えず、このバルセロナ出身のすばらしい歌手に何か恨みでもあるのかしらと訝ったぐらいです。 エンリコ8世を歌ったシモン・オルフィラはもともとLord Rochefortを歌うはずでしたが、カルロ・コロンバラが降りたために急遽エンリコ8世を歌うことになったのですが、Bキャストで最初からこの役を歌うことになっていたのでスムーズに代役をこなしていました。とてもよいバスで歌唱も堂々たるものでこの人にも満足しました。 スメトン役のソニア・プリナはロンドンで何度か聴いている人ですが、今日ももなかなかいい声が出ていて好ましいズボン役でした。アルトにしてはちょっと背丈が低いですが。 Lord Roshefortを代役で歌ったマーク・プジョルは第1幕ではあまりよくなく、一人凹んでいましたが第2幕では持ち直し、本来の実力を発揮したようです。それでも特段印象に残る声ではないですが。 ヘルヴェイ役のテノールも悪くはない声でした。 管弦楽がまたすばらしく、弦はとても美しい演奏です。指揮はアリアの部分では丁寧に歌手に合わせ、そうでない部分は緩急自在に演奏してドラマを盛り上げるツボを心得たもので、若い人ながらなかなか優れた指揮者です。 演出は一部ヴィデオを使ったりしてちょっと意味不明の部分もありましたが、全体としてはまあよくできた方でしょう。服装は現代物で、最初から最後まで舞台にはカラスの頭をかぶった男女がたくさん出てきて、合唱隊に混じったり、セットの家具を運ぶ役をやったり大活躍。友人も言っていましたがロンドン塔を暗示するものでしょうか。舞台は階段を多用するものの(時には3階建てにもなる)シンプルなもので場面転換もスムーズ、機能的なものでした。 カーテンコールではグルベローヴァ登場の時に上方から色とりどりのビラがたくさん降ってきました。最前列に座っていたkametaro7さんが拾って後で見せてくれましたが、グルベローヴァ出演の最終日に合わせて「また来てくれてありがとう、エディータ」という文章と彼女の写真が印刷されたものでした。仲間の皆さんに誘われて出待ちをしてその紙に彼女のサインをもらいました。ガランチャのサインはキャスト表にしてもらいました。大勢が取り囲むので彼らと話をすることが出来なかったのが心残りです。ガランチャには何で今夏のバーデンバーデンをキャンセルしたんだ?と問い詰めたかったのですが。 Edita Gruberova ![]() ビラに驚くグルベローヴァ ![]() ビラを掲げて ![]() Elina Garanča ![]() ![]() ![]() José Bros ![]() Marc Pujol, Simón Orfila and Elina Garanča ![]()
by dognorah
| 2011-02-23 23:43
| オペラ
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Comments(4)
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大変お世話になりました。
グルベローヴァとガランチャ、二人が揃ったということで出待ちは大変な人でしたね。 それでもサインをもらえただけで幸せでした。 ガランチャがバーデンバーデンをキャンセルしたのは残念でしたが、来シーズンもROHで活躍してくれることでしょう。 ブロスへのブーは本当に納得できませんね。 今までこの人に欠けるものがあるとしたら力強さかな?と思っていたのですが、今回は充分に力強くたくましい歌唱でした。 もっと評価されていい人です。 お写真はさすが! グルベローヴァがとってもきれいに撮れていてご本人がご覧になったらさぞかし喜ばれることでしょう。 私のバカチョンは最前列にもかかわらず、役立たずでした^^;
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これは豪華なキャストですね。未見のこのオペラ、カラスの有名な録音を聴きながらいま書いています。ロンドン塔でこのオペラをやると聞いたのが、今調べてみると2005年。安い席のない公演でしたので諦めました。後日メトロ紙の小コラムが酷評していたのを思い出します。安くないといっても数十ポンド、何といっても所縁の場所での上演、やっぱり行っておけばよかったなと、いまは日本の僻地で後悔です。
kametaro07さん、偶然日本からいらしたスケジュールが私たちと一致して思いの外楽しい日々を過ごすことが出来たことを感謝します。時差ぼけでお疲れのところいろいろつきあってくださってありがとうございました。
amaoさん、このオペラは英国王室に関連するものなのに当地での公演はほとんどありませんね。配役に適任者を得られないせいかもしれませんがこういう名オペラはコヴェントガーデンで是非上演してもらいたいものです。2005年のロンドン塔での公演は私も宣伝を見た記憶がありますが行きそびれてしまいました。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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