2010年11月26日、ヴィーン国立歌劇場にて。
![]() Alcina: eine Oper in drei Akten Musik: Georg Friedrich Händel Wiener Staatsoper on 26.11.10 * Marc Minkowski | Dirigent * Adrian Noble | Inszenierung * Anthony Ward | Ausstattung * Jean Kalman | Licht * Sue Lefton | Choreographie * * Anja Harteros | Alcina * Veronica Cangemi | Morgana * Vesselina Kasarova | Ruggiero * Kristina Hammarström | Bradamante * Shintaro Nakajima (Wiener Sängerknabe) | Oberto * Benjamin Bruns | Oronte * Adam Plachetka | Melisso Les Musiciens du Louvre - Grenoble 何の気なしに予約したこのオペラですが、いやーエライものを見ちゃいました。 実にすばらしいプロダクションです。 なんといってもイギリス人でロイヤル・シェークスピア・カンパニーの演出家エイドリアン・ノーブルの演出が凄い! 歌手達や俳優達の立ち居振る舞いからセットまですべて美しいのです。 各シーンとも心憎いまでに細部にわたって丁寧に作られ溜息が出るくらいです。 このオペラは間奏曲のようなものが挿入されている箇所が多く、そこにダンスを投入しているのですがこれがまた雰囲気に合って楽しい。 そして多くのアリアのシーンでは舞台上に奏者が数人上がってその演奏をバックに歌います。 これは演出家のアイデアかミンコフスキーのアイデアか知りませんが。 奏者はもちろん舞台上にいる出演者達にマッチするような服装をしていますが、とにかくアリアがより心に迫ってくる印象です。 こういうのを見るとオペラが成功するかどうかということに関して演出がいかに大切かを再認識させられます。 こうなったら歌手は2の次という感じがしないでもないけれど、今夜の歌手も十分すばらしくて感動は倍増しました。 タイトルロールのアンヤ・ハルテロスは歌唱は絶好調というわけじゃなかったと思いますが、ファッションモデルを思わせる端正な容姿が女王らしい威厳と華やかさを発散させているので少々の疵は気になりません。 ヴェッセリーナ・カサロヴァは絶好調でハルテロスよりアリアが多いしアリアの変化にも富んでいるのでいつもやんやの喝采です。 ヴェロニカ・カンジェミは今まで何回か聴いていますがその中では今回は一番出来が悪いです。といってもまあまあというレヴェルですが、声の出方がスムーズじゃなかった。 クリスティーナ・ハンマーストロームはカサロヴァほどではありませんが十分すばらしいメゾでした。 メリッソ役のアダム・プラチェッカは素敵な低音で立派。 特筆すべきはオベルト役の日本人ボーイソプラノ、シンタロー・ナカジマで、今回のプロダクションはヘンデルの指定通りボーイソプラノを採用したので登場する機会があったわけですが、逆に言えば、彼が存在したから女性歌手でなしにちゃんとボーイソプラノで公演できたのじゃないでしょうか。 そう言えるくらい彼の歌唱はすばらしいものでした。 彼のアリアは各幕に一回ずつありますが、すべて結構長いアリアでしかもかなりのアクション付きですが、演技も見事にこなしながら感動させるような歌唱が出来るなんて凄いことです。 まだ14歳だそうですよ。 ヴィーン少年合唱団の一員だそうです。 第1幕では観衆は、結構やるなぁという程度の拍手でしたが、第2幕ではちらほらブラヴォーが出、第3幕では騒然とブラヴォーが飛び交う大拍手喝采でした。 私なんか感動したのと日本人としてうれしいのとで涙が出てきちゃいました。 子供役なのでオネンネの用意をしているんだというわけでしょう、いつも寝間着姿でしたが、なかなかの美少年ですね。 カーテンコールの写真とヴィデオを貼り付けましたのでご覧ください。 年齢からしてもう声変わりしていてもおかしくないので、ボーイソプラノとしてはこれが最後の活躍かもしれません。 大人の声になっても歌手の道を歩んでほしいですね。 ミンコフスキーの指揮する古楽器オケ、最上とは言えないけれどかなりのレヴェルです。 出だしはギスギスした音でしたがだんだんよくなり、いいアンサンブルを聴かせてくれました。 私の席の隣のオーストリア人によると、ここでバロックオペラをやるのはひょっとして50年ぶりぐらいかもとか、外部のオケが演奏するなんて今まで聞いたことがないなどの話をしてくれました。 それがどの程度本当か知りませんが今回はそれぐらいまれな上演だったようです。 ミンコフスキーはいつの間にかひげ面スタイルになっていたんですね。 プレミエ公演なのでDVDになるそうですが入手が待ち遠しいです。 尤も、演出はDVDでは別物という印象になるでしょうけれど。 公演が終わってホテルに帰ろうと外に出たら雪がちらついていましたが、心の中はぽかぽか。 国立歌劇場のサイトからの写真 BradamanteとMelissoは気球でAlcinaの島に到着 ![]() ラヴシーンを演じるAlcinaとRuggiero ![]() 以下はカーテンコールの写真(クリックで拡大)とヴィデオ Anja Harteros ![]() ![]() Vesselina Kasarova ![]() Shintaro Nakajima, Veronica Cangemi and Anja Harteros ![]() Adam Plachetka and Shintaro Nakajima ![]() Shintaro Nakajima ![]() Veronica Cangemi ![]() Kristina Hammarström and Benjamin Bruns ![]() Marc Minkowski ![]()
by dognorah
| 2010-11-29 10:03
| オペラ
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Comments(18)
この公演、ブログ仲間(バロック・オペラ・ファン)の間ではかなり話題になってましたが、ウィーンでご覧になったんですね!カーテン・コールのヴィデオまで投稿されてることで、dognorahさんの感激度の高さがわかります。何気なしに予約したのに、いいのに当たりましたね。これから、国立歌劇場でもアン・デア・ウィーンにだけバロック・オペラを独占させないで取り上げるようになっていくんでしょうか。
シンタロウ君の歌は皆さん絶賛してますが、カンジェミがどうも不調だったようで残念。この面子で12月にロンドンでも演奏会形式で公演するようですが、また行かれます?いいなあ、12月のロンドンは、すごいコンサートが目白押しで。
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最初の写真を見た瞬間に「わっ、この舞台キレイ!」と思いました。
その印象そのままの、すばらしいオペラだったみたいですね。 dognorahさんのレビューはすごく空気感が伝わって来て、私も感動しました。ああ、本物が見てみたい。
レイネさん、国立歌劇場でバロックを続けるとなるとオケをどうするかという問題が出てきますね。だから当分はこういう例外的な扱いになるんじゃないでしょうか。
この後パリ、ロンドンと回るようですね。私は切符を買っていたのですがバービカンに返却してしまいました。これだけ感動したのでイメージを壊したくないし、記事中にも書きましたがこの演出あっての感動ですし。
べっこうねこさん、1幕から3幕まで基本的に舞台装置はあまり変わらず、後ろの円弧状の壁が開いて青空の広がる草原が出現したり、水平線が見えたり、夜の星明かりの草原になったりします。掲載した写真は第2幕途中のもので、ミンコフスキーは第2幕の途中でインターヴァルを入れたのでこの写真を撮ることが出来ました。少しは空気が伝わったということで私もうれしいです。
こんにちわっ。dognorahさんはウィーンに頻繁にいらっしゃるのですね!お仕事絡みでしょうか。国立劇場の「アルチーナ」について当地に新聞やラジオでも大絶賛のレビューをさんざん読まされ(聞かされ)てきましたが・・・それを生体験できたなんて羨望の眼差しです!しかもこれまた大絶賛の記事。感動を壊したくないからバービカンのコンサート形式チケットを返却されるなんて・・・素晴らしかったのですね。
私は先週一週間ORFのライブストリーミングを途切れ途切れで聞いたのみだけど、どうやらDVD化されるとのことで美しい衣装や色鮮やかな舞台今からとても楽しみです。
いえいえ私はオペラを見るためだけにヴィーンへ飛んでいます(^^;
これのDVD、早く発売してほしいですよね。
最初の写真を見て、ファンタジックで素敵!と思いました。
アルチーナのヘアスタイル、すごい! 日本人ボーイソプラノの活躍もあるなんて、本当に嬉しいですね。 ルッジェーロが男性でないのがちょっと残念ですけど、このDVDは絶対買います! もう予約です!(笑・・・ここで言ってもしょうがないですけど)
こういう公演があるから、劇場通いはやめられませんね~(^^)ノーブルの演出、本当に素敵ですね!METのマクベスはあまりピンときませんでしたが、これは見逃せないということで、私もDVD予約します!!(笑)
REIKOさん、そう全編にわたってファンタジックなんですよね。ストーリーなんかあまり気にしないでひたすら舞台を見ながら歌を聴いていました。
Sardanapalusさん、METのマクベスもノーブルだったのですか。シェークスピアそのものだから思い入れもあり、あまりうまく行かなかったのかも知れませんね。
こんばんわ。どうしてイギリス人よるそれほど素晴らしい舞台が、イギリスに来ないのでしょうか?
シャンゼリゼ劇場の演奏会形式上演を聞きました。話題の舞台をご覧になれ羨ましいです。ノーブル演出にはパリのオペラ・コミックで02年のクリスティー指揮「ウリッセ」と昨年のガーディナー指揮「カルメン」で接しましたが、二度とも眼を見張らされる出来でした。一見オーソドックスだけど、あれほど音楽に密着して緊密に人を動かし、音楽・ドラマを共に的確に分節していく力量のある演劇人はストレーレル、シュタインの後には私は彼以外には一人も出会った記憶がありません。彼のグラインドボーンの「魔笛」やリヨンの「ジョヴァンニ」なんかは評判あまり芳しくないみたいですから、毎回大当たりではないんでしょうが、私は2回の経験だけで現役オペラ演出家ベスト10に入れたい位評価してます。
でもこういうオーソドックスなタイプはレジーテアーターに馴れた独墺批評家には生温く映るようで「ウリッセ」のヴィデオも独フォノフォールム誌で「コンヴェンショナルで平凡」とかいった評を見ましたし、今回の「アルチーナ」にも墺デア・スタンダード紙なんかは「コンヴェンショナル、装飾的で退屈」みたいな意味の評を出してましたね。
パリ上演も大変楽しめましたが、歌手陣は個人的には色々保留ありでした。ハーテロスは声・技術・感情表現とも実に立派でしたが、モッソリしたアジリタなどやっぱりヘンデル・ベルカントとはちょっと異質。これは99年のクリスティー指揮カーセン演出のガルニエ上演で歌ったフレミングも似たようなもんでした。カサロヴァは音程は定まらず、各声域は無残に分離、胸声へのシステマティックな逃避を余儀なくされ、声楽的困難を誇張された劇的強調だけで補う様は聞いてて辛かった。07年のガルニエ再演でもその兆候は耳についたんですが、今や決定的に下り坂の印象は否めず残念。カンジェーミはいつもの通りでびっくりするような出来ではないにしても十分合格点。このモルガーナ役は99年ガルニエで歌ったドゥセが今聞くとやっぱり素敵でヴィデオも残ってます。天邪鬼の小生は当時は結構「保留」を付けたりもしてたもんですが(笑)。私はオベルト役はボーイ・ソプラノより成人女声が好みですが、初演時の選択に従ってボーイ・ソプラノに歌わせるとこの無正確な役がオペラ全体に色調の変化と緩急リズムを与える効果を持つことはよく分かりました。
ボーイ・ソプラノとして卓越したテクニックで、パリでも聴衆の大歓呼を受けてましたね。ハンマーストレームよりプロジェクションがあるなんて意見まであった位。
ミンコウスキ苦手の小生も今回は降参。20数年前パンチ力一辺倒だった彼が、こうも奥行きのある音楽を聞かせてくれるようになろうとは! 1幕2場のバレエは舞台上演でもカットですよね?長くなりすぎますしね。 シャンゼリゼ劇場監督から9月にヴィーンに転出したメイエ監督は、パリ時代もヘンデル上演を重ね、ヴィーンでもバロックと現代へのレパートリー拡張を柱に掲げていて、チューリッヒを手本にヴィーンでも国立歌劇場オケの希望メンバーからなる古楽器オケ立ち上げに言及してましたが、今回は実現できなかったようですね。ヴィーン・フィルは11月10日まで日本公演、23-28日はティーレマン指揮でシャンゼリゼでベートヴェン全曲チクルスでしたから、古楽器弾くより金儲けを取ったのかも。シュターツオーパーでは確かに50年来バロック・オペラが上演されたことはなかったようですね。饒舌お赦しを。 http://www.youtube.com/watch?v=bnb3m90nl-E&feature=related
守屋さん、私も同じ疑問を持ちました。NY、パリ、ヴィーンで仕事しているのに何でイギリスじゃオペラ演出をしないんでしょうね。ROHは評価していないのでしょうかね。
助六さん、ノーブルに対する批評をいろいろ教えていただきありがとうございます。ところ違えば評価も違うということですね。でも、今回のような密度の高い演出を貶すというのはちょっと理解できません。
パリのコンサートでの各歌手の評論、興味深く拝読しました。私もそういうことが理解できるようになればいいのですが。ドゥセのヴィデオの紹介ありがとうございます。なるほど上手いもんですね。 ヴィーンの舞台ではバレーはたっぷりありました。第1幕でもカットはなかったと思います。 そうですか、今度のかんとくは古楽器集団を創設してまでもバロックオペラを上演していく考えを持っているんですね。そのうち実現するかも知れませんね。レイネさんの仰るようにアン・デア・ヴィーンと対抗するようになると面白いですね。
今夜、行ってきました。舞台はありませんが、音楽をとっても楽しむことができました。リンクを貼らせて頂きましたので、よろしくお願いたします。
かんとくさん、リンクありがとうございます。演奏会形式とはいえ楽しまれたようで何よりです。Shintoro Nakajimaくんの歌唱もよかったようでおそらくヴィーンと同じ出来だったのでしょう。彼の第1幕のアリアではチェンバロ、チェロと日本人奏者によるテオルボが舞台上で演奏する音楽に合わせて歌われたのですが、これがもう雰囲気も音楽も場面にぴったりで心から感動する出来でした。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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