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ヘンツェのオペラ「フェドラ」コンサート形式

2010年1月17日、バービカンホールにて。

Hans Werner Henze: Phaedra (UK premiere)
An opera in two acts
Christian Lehnert: libretto (ドイツ語)

Ensemble Modern
Michael Boder: conductor

Maria Riccarda Wesseling: Phaedra (mezzo-soprano)
Marlis Petersen: Aphrodite (soprano)
Axel Köhler: Artemis (counter-tenor)
John Mark Ainsley: Hippolytus (tenor)
Lauri Vasar: Minotaur (bass)

ギリシャ神話をネタにした演奏時間75分の短いオペラです。

あらすじ
ミノタウルスがテセウスに退治された後のクレタ島が舞台で、第2幕は場所がイタリアのネミ(Nemi)というところに移る(ヘンツェが住んでいる場所の近く)。
テセウスの妻フェドラは何故か義理の息子のヒッポリトゥスと一緒に住んでおり、彼のことが好きでたまらない。彼はモテる男らしく既に狩りの女神アルテミスと相思相愛の仲。それだけではなく愛の女神アフロディテも彼に思いを寄せている。ある日フェドラはヒッポリトゥスに愛を告白するが邪険にあしらわれる。その仕打ちに怒り狂った彼女はテセウスに手紙を書き、あなたの息子にレイプされたと嘘をつく。怒ったテセウスは息子を殺すことにし、ポセイドンに協力するよう要請する。ヒッポリトゥスが馬車に乗って海岸沿いを走っているときにポセイドンに蘇させられたミノタウルスが突然馬の前に現れ、驚いた馬のために彼は岩場に投げ出されて死ぬ。
アルテミスは彼をネミに運び、そこで蘇生させ、新しくヴィルビウスという名前を与えて鳥かごの中でペットとして飼う。それにフェドラとアフロディテがちょっかいを出すがアルテミスは今度は彼を洞窟の中に移す。そのうちに彼は森の王として君臨することになり、その後は何が起こるのかと登場人物たちがダンスを踊っておしまい。

ヘンツェはこのオペラの第1幕をほぼ完成した後2005年に原因不明の病に倒れ、昏睡状態に陥る。家族や友人たちはこれでもうヘンツェの命は終わりだと思ったそうで、世界中から友人たちが彼にお別れの挨拶をしにきたそう。しかし程なく彼は突然起き上がり、また作曲を始めた。そういう経緯から一度死んだヒッポリトゥスに自身を重ねあわせて第2幕を作曲したようだ。

音楽は結構聴きごたえがある。打楽器と管楽器が主役になっているが時折奏でられる弦(4人)の響きが魅力的で効果的だ。スピーカーで電子音楽もふんだんに鳴らされる。アンサンブルは総勢23人だが一つ一つの楽器の扱いが効率的で豊かな音楽が流れる。それにしてもこのEnsemble Modernという団体は凄い。演奏が非常に緻密だ。フランクフルトをホームにしているが多国籍メンバーで日本人も二人名前を連ねている。
歌手は女性歌手二人とテノールのエインズリーは十分素晴らしい。カウンターテノールはいまいち。バスは短い時間の歌唱ながら文句なし。

会場にいるヘンツェ氏に拍手する出演者達。写真はいずれもクリックすると拡大します。
Michael Boder, Lauri Vasar, John Mark Ainsley, Axel Köhler, Maria Riccarda Wesseling and Marlis Petersen
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こちらは聴衆からの拍手に答えるヘンツェ。
Hans Werner Henze in the audience.
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Ensemble Modern
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by dognorah | 2010-01-19 09:32 | オペラ | Comments(2)
Commented by zerbinetta at 2010-01-20 05:54
あけましておめでとうございます。
うとうと聴いている身で大きな声では言えないのですが、この演奏会良かったですね。おっしゃるとおり、オーケストラも歌手もとってもステキでした。それにしてもバスの人、最後にちょっと出てきておいしいとこ全部もってっちゃったって感じでした。
今年もよろしくお願いします。
Commented by dognorah at 2010-01-20 07:25
zerbinettaさん、こちらこそ新年のご挨拶を遅ればせながら申し上げます。今年もよろしく。過去に聴いたヘンツェはそれほどいいとは思わなかったのですが、これは良かったですね。
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