今回の最後のシャトー訪問は、私がリクエストしたシャトー・マルゴー(Ch. Margaux)だ。第1級格付けシャトーの中でも特に好きなシャトーなのだ。最初の写真はシャトーへのアプローチ。奥に見える白い建物がシャトー。次の写真はシャトー本館の門のところから撮ったもの。
見学者受付に行くと50代と思しき女性が待っていてくれた。今日はパリからもう一組の日本人カップルが来るという。定刻になっても現れないがしばらく辛抱する。15分ぐらい経ってようやく彼らが到着したのでツアー開始。このガイドさん、アメリカ英語だ。訊くと、もともと東欧の人間でかなり長い間アメリカにいたという。 ここも発酵槽は木樽であった。工場内では未だ収穫したブドウをプレスして果汁を抽出している部分もあった。山積みの絞りかすを従業員が処理している。彼女の解説によると、あのかすは業者に売るという。引き取った業者は他のシャトーから引き取ったものと混ぜてさらに果汁を絞ってワインを作る。いわゆるプレスワインというやつで、品質が落ちるので一流のシャトーでは商品化しない。 次の写真は2002年と2003年物が眠っている樽を保存した貯蔵庫。ここにも私のワインが一部居るはずだ。彼女によると2002年物は平年の出来だが2003年は近来経験したことのないよい出来であることが最近のチェックでわかったとちょっと興奮気味に話してくれた。あのとてつもない暑い夏がここではうまく行ったようだ。 ツアーの最後に展示室のようなレセプションのような部屋に来た。そこに分厚いハードカバーのノートブックが置いてあって、よければサインしていってください、といわれて記念にサインする。見ると午前中に多くの日本人が訪れていることがわかった。 そして試飲。2001年もの(写真)だ。 じっくり味わうが、やはり未だ硬い。過去には私は十分熟成したものを飲んでいるがまるで印象は違う。 もう一組のカップルはグラスに注がれたワインをちょっと口につけただけで惜しげもなく残りを捨ててすぐに帰ってしまった。 私は貧乏性である上、これほどのワインを捨てるのは失礼かなと思ってすべて飲み干す。 先に帰ったカップルはかなりアロガントな人たちで、遅刻の侘びもせず、礼儀知らずという印象を受けた。ガイドさんも同じ思いの顔をしていたので同国人として残念に思うとコメントしたら、彼女、ちょっと待っててね、と奥に引っ込み別のワインをグラスに入れて持ってきてくれた。 なんとさっき彼女が興奮して話していた2003年のものを樽から汲んできたのだ。 早速飲んでみる。 しかし残念ながら私の舌のレベルではものすごいよい出来かどうかわからなかった。色も果実の濃縮度も2001年のものとさして違いがないように思えた。 このワインが瓶詰めされるのは来年(2006年)の夏である。そこまで熟成が進めばあるいは私にも比較できるかもしれない。 彼女とはワイン以外のこともいろいろおしゃべりした。アメリカの作家ヘミングウエーがここのシャトーに滞在して毎日のようにシャトー・マルゴーを飲んでいたんだってね、それで孫娘が生まれたという知らせを受けて、Margauxという名前にしなさいと電報を打ったらしいね、と話したら彼女曰く、その人がこの近くに住んでよくシャトーを訪れていたという話は聞いたことがあるけど、孫娘の話は知らない、とのこと。 とにかくすっかり彼女と仲良くなってしまった。この次ぎ来たらまた連絡してね、とプライベートな名刺まで渡してくれた。 これで予定した5箇所のシャトー巡りは終わった。それぞれワイン作りには違ったポリシーをもっていかによいワインを作るか一生懸命やっている。気候に左右される点は一般の農作物と変わらないが、設備投資が大変なだけにリスクはより大きいなぁと思う。ワインが高価なのは仕方ないか。 それにしてもムートン以外のシャトーは無料でガイドしてくれた上試飲までさせてくれて結構鷹揚だという印象を持った。毎年大勢の見学者に試飲させる量だけでも大変なものだろうに。 メドックのワインは大昔からボルドー市に拠点のある限られた数のネゴシアンが取り仕切るルールになっており、お土産を除いてはシャトーが直接ワイン業者や消費者に販売することはない。イギリスのBerry & Brosでも直接は買えないのだ。見学したすべてのシャトーがこのシステムを歓迎と言っていた。毎年値付けをするのはネゴシアンであるが、それでも販売に煩わされることなく生産に没頭できるのでそれでいいんだという。安定したシステムでの運用がいいということだろう。 夜はまたポイヤックの川べりのレストラン街に行った。もう平日だから沢山開いているかと思うと相変わらず閉じている店も多い。どうやらシーズンオフで来年の春まで閉店している雰囲気だ。フランスではよくあること。ブイヤベースで有名な南仏のカシスという町に行ったときもそうだった。 かといって遠くのレストランまで食べに行く気はしない。酔払い運転する距離が長くなるから。ちょっとでもリスクは少なくしたい。 それで選んだレストランが川べりにあるホテル付属のもの。食べている客を観察するとほとんどがそこに宿泊しているビジネス客だ。 例によって前菜に生牡蠣を頼む。メインは、メニューにダックがあったが品切れということでステーキを頼む。もっとフランス料理らしいものを頼みたかったがあまりチョイスはなかった。 ふと気付いたのだが1ダース頼んだカキが11個しかない。クレームをつけると恐縮して4個追加してくれた。(続く)
by dognorah
| 2005-03-22 08:30
| 旅行
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Comments(6)
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hummel_hummel at 2005-03-23 03:32
こちらのシャトー巡り記事、私もワイナリー訪問が好きなので楽しく読ませてもらっています。ボルドーは地理的にちょっと遠いのでまだ行ったことがないですが、いつかは訪れてみたい土地です。ワイナリーの方との語らいながらの試飲ほど楽しい事はないですよね。私もやはりもったいなくてグラスに注がれた分は(美味しければ)全部飲んでしまうので、大体一軒目でフラフラ状態になってしまいますが(笑。ワインの美味しい土地は食事も美味しいので、そっちの楽しみもありますね。
p.s. 上の並木道の写真とても綺麗です。クリムトにそっくりな絵があります。
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dognorah at 2005-03-23 10:08
クリムトは好きですが、妻はもっと好きでウイーンで買ったKissという絵の大きなコピーがベッドの上に飾ってあったりします。
並木道といえば、Avenue in Schloß Kammer Parkという題名の絵のことでしょうか。
その通りです、カンマー城前の並木道の絵です。この古城は普段は一般公開されていませんが、ザルツブルク音楽祭の時期には著名な演奏家達もついでにここでコンサートを開いてくれます。KISSについて少し書いた記事があるのでTBさせていただきます。(記事に直接関係ないのにすいません!)
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dognorah at 2005-03-24 07:57
TBありがとうございます。ウイーンでは暑い中をずいぶんクリムトを見て回った気がします。フンメルさんの記事はどれもすばらしいですね。内容が濃いのですべてを読むのに覚悟が必要でなかなか進みませんが。
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newyork0630
at 2005-03-25 07:19
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dognorahさん
はじめまして。NY在住のNewyork0630です。 昨年秋に訪問したボルドーの記事書いたのですが、どなたかいかれた方いないかな、と思って検索したところ、このような素晴らしいBlogを見つけた次第です。 仕事でのボルドー滞在だったため、シャトー巡りはほとんど出来ず、dognorahさんのブログを読んでまた行きたくなりました!
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dognorah at 2005-03-25 08:18
Newyork0630さん、検索で訪ねてこられたとは遠い道のりご苦労様です。ワイン好きの方に見ていただいてとてもうれしいです。ボルドーの記事読ませていただきました。おいしいレストランのあるホテルとのこと、とてもうらやましい。私は食べる方ではちょっと苦労しましたので。今後ともよろしくお願いします。
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ロンドンに在住です。オペラ、バレー、コンサート、美術展などで体験した感動の記憶を記事にし、同好の方と意見を交わしたいと思っています。最新の記事はもちろん、過去の記事でもコメントは大歓迎です。メールはここにお願いします。
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