2009年3月7日、ROHにて。
Elina Garanča, Mark Elder and Eri Nakamura 今日は「カプレティ家とモンテッキ家」の第3回公演で行く予定じゃなかったのですが、急遽行く気になる「事件」が起きてしまいました。一昨日の公演から中一日だったのがきつかったのかネトレプコがスタミナ切れで降板してしまいました。産後でまだ万全の体調じゃないということです。そして代役は何と中村恵理。恐らくこのプロダクションのアンダーをやっていたのでしょう。普通はネトレプコが降板の場合は見合った代役を捜すのですが急なこと故、アンダーがそのまま歌うことになったのでしょう。しかし音楽監督側からすれば自信の代役選定じゃなかったでしょうか。そのように想像できるくらい中村さんの歌唱と演技は堂に入ったものでした。第1幕第2場で望まない結婚をさせられることを悲しむくだり、アリアの開始を固唾をのんで待ちました。ややスローテンポながらあがっている様子もなく表現力豊かでクリアなイタリア語が美しく響きます。高音が苦もなく出るし、ニュアンスに複雑な襞も感じられ、これってもしかしてネトレプコよりもちゃんと歌えているんじゃない?という印象です。感動しました。長いアリアは彼女がベッドに俯して終わりますが、大拍手が長く続きました。その後もアリア毎にどんどん聴衆の熱気は上がっていきます。ガランチャは今日も非の打ち所のない完璧な歌唱で、二人の二重唱もすばらしいものでネトレプコとの二重唱よりもよく合っていると思いました。 ネトレプコ目当てに来られたお客さんはがっかりしたでしょうけれど、歌唱的には同等またはそれ以上でしたよとお慰めしたいです。これで前半の公演は終わり、後半は3月30日より開始です。私は後半も行く予定ですが、ネトレプコには出演して貰いたいものの、例え降板してもこういう強力な代役がいるので安心です。 それにしても中村さんの今夜の衣装はネトレプコの衣装とはデザインが違うし、何よりも細めの体と背丈にぴったりだし、短い時間にどうやって調達したのでしょうね。 Eri Nakamura as Giulietta カーテンコールでも万雷の拍手と歓声で、ガランチャも自分は挨拶しないで彼女を讃える拍手をしていました。舞台裏のマネージメントとしては、してやったりというところでしょう。それにしてもまあこれだけの力のある日本人歌手が実力を思う存分発揮して感無量です。既にリサイタルや「エレクトラ」の端役でその実力は知っていましたが、主役としてこれだけの感銘を与えることが出来るとは!もうYoung Artist Programmeなどにいる必要はないぐらいに実力者ですが、知名度がないし東洋人だし普通のオペラ劇場から呼ばれるということはなかなかないでしょう。こうしたチャンスを生かして少しずつ注目を浴びる以外にはないのかもしれません。 日本人歌手がこの大舞台で主役を歌うのは2005年に「イタリアのトルコ人」でチェチリア・バルトリの代役を務めた中嶋彰子さん以来これで二人目と思います。私がROHに行くようになってからの話なので古い記録は知りませんが。 他の歌手ではテノールのダリオ・シュムンクがこれまでのベストの歌唱で、これだけ歌えるとガランチャとのやりとりの場面も楽しくなります。他の男性歌手は前回とほぼ同じ調子でした。管弦楽も一番油が乗った演奏で、序曲もリハーサルでのずっこけた演奏からは段違いで、拍手する気になりました。 Today's Elina Garanča as Romeo I Capuleti e I Montecchi: Opera in two acts Music: Vincenzo Bellini Libretto: Feliche Romani Director: Pier Luigi Pizzi Conductor: Mark Elder Giulietta: Eri Nakamura Romeo: Elina Garanča Tebaldo: Dario Schmunck Capelio: Eric Owens Lorenzo: Giovanni Battista Parodi 下の写真は終了直後の舞台です。中央に自殺したロメオとジュリエットが横たわっています。
by dognorah
| 2009-03-08 20:39
| オペラ
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Comments(13)
ほんとうに恵理さん素晴らしかったですね。
dognorahさんがいらしたあちら側の立見席からはカーテンコールの写真が撮れなかったでしょうが、後半は運よく前にお座りになれたとのこと、ラッキーでしたね。お陰でいつものクリアな写真を拝見できます。 dognorahさんが撮れないのであれば私が頑張らねばと思ってたくさん撮りましたが、なんせ私のはご存知の通りピンボケばかりですので。 後半に恵理さんがまた出てくれるといいですね。私の側からはベッドが見えなかったし、近くでちゃんと見たいです。
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Sardanapalus
at 2009-03-09 00:45
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興味津々でレポートをお待ちしていました!素晴らしい主役デビューだったのですね。綺麗で細くて歌えて演技のできる歌手は大歓迎ですので、今後も中村さんには大きく期待していきたいと思います。多分、私はネトレプコよりも中村さんの方が好みじゃないかと思っているので、どこかで主役を歌うのを聴きたいです。今回も素敵な写真を沢山ありがとうございます☆
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YOKO
at 2009-03-09 01:49
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また、今日も寝付かれずに、ここに、お邪魔したら。。。出ましたね~~~~~~~~~~~~~~~中村恵理さんって、もちろん、初耳ですが
あのドレスからして、彼女をデビューさせる手筈は、整ってましたね!ネトレBuKo,裏方では、嫌われていたんですよ!!!(笑) ワタクシの勘では、彼女、これから、オオバケしますよ!!!この美しさと 実力では。。。大体、トスカニーニをはじめとして、(笑)大物になる方は、こんなケースが、多いみたいですね。。。。。日本人として、初の対等な ソプラノになること、心から、お祈りいたします。 メゾで、対等な日本人、いるって?今、日本リサイタル中だけど。。。彼女、 もう、だめでしょうね。。。リートはうまく歌えても、私生活は。。。。。。。。 そもそも、日本でリサイタルをすることすら~~~~~~~~~~~dognorahさん、いつかお会いできることがあったら、こそっと、お教えしますね。。。。。(笑)楽しみにしてくださいまし。。。きっと、仰け反りますわよ!(笑)
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YOKO
at 2009-03-09 02:01
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最後に、ガランチャ、ホンとに、女にしとくのには、もったいないぐらい、美貌だけではない、ご性格も素晴らしいですね。。。人間って、チョッとしたところで、人柄がでてしまうんですよねえ~~~~~~~~~、ネトレ部子に、彼女のつめの垢でも、飲ませてやりたい!(笑)
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dognorah at 2009-03-09 06:56
ロンドンの椿姫さん、お互いこの公演を見れて本当によかったですね。今回撮られたお写真はあの距離からすれば全てすばらしいじゃありませんか!
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dognorah at 2009-03-09 07:00
Sardanapalusさん、来年か再来年辺りにダブルキャストでいいから正式に彼女の主演をROHが企画してくれることを願っています。彼女の高音の肌理の細かさはネトレプコ以上ですからきっとあなたの好きなタイプと思いますよ。
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dognorah at 2009-03-09 07:11
YOKOさん、中村恵理さんは東京の新国立劇場ではスザンナなど結構大きな役をやって来た人らしいです。ROHでもまだ研修生ですからここ1年はまだまだこういう役はハプニングがないと貰えないでしょうけれど、将来に大いに期待したい人です。
メゾの人。。。YOKOさんはどこでそういう情報を入手されるんでしょうか。 ガランチャはとても優しい人であることを実感しました。カーテンコールの時は終始中村さんに気を使って立てていましたから。31歳にして世界的大スターの余裕かもしれませんが。
この公演、ロメオのガランチャは、新国でも大人気だったし、舞台も2002年に日本でデヴィーアとガナッシで上演したのと同じプロダクションみたいだし.....と注目していましたが、まさか中村恵理さんが代役でジュリエッタを歌うとは.....ということで、私もブログで取り上げました。
Sardanapalus から >ロンドン在住のブログ友達の皆さんが口をそろえて大成功だったと述べているほど、素晴らしい歌唱だったようです..... とのコメントを頂きまして、dognorahさんか、ロンドンの椿姫さんだな...と思いましたが、お二人ともわざわざ行かれたんですね。なにしろ新国育ちの中村恵理さんですから、新国ファンとしては嬉しいニュースです。リンクさせて頂きましたので、よろしくお願いします。
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dognorah at 2009-03-09 21:31
keyakiさん、お久しぶりです。恵理さんのすばらしいパフォーマンスに関する記事をお書きになり当ブログにリンクを張って下さってありがとうございます。このような嬉しいニュースはなるべく多くの方に知って貰いたいですよね。新国での彼女の過去の出演に関するコメントを読ませていただきましたが、やはり以前から皆さんの注目を浴びる歌唱だったのですね。カーディフでは是非優勝して欲しいです。
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げすと
at 2009-03-15 06:57
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また日本人のソプラノとしてHAYoung Leeとおなじようなオペラ・ハウスの首脳陣の妾が登場してしまいました。
おそらく、風邪などひいたといって、2年のところをYoung Artistに3年在籍し、ビザの都合でドイツの歌劇場にトレードされるのでしょう。 アムステルダム時代から男をつかって、いろいろな役をもらっていたといううわさがありましたが、カーディフのコンペといい、オペラハウスの’あの方’の妾になるとこうも違うのかと、痛々しいですね。 1幕は見ていてひやひやものだったので、この絶賛が不思議です。 オペラで活躍するには、このような手段をつかえる女性でなければならないことが大変悲しいです。 アナ・ネトレプコのように容姿も美しくなければ、そのような手段をつかわなければならないのが残念です。 アナでさえ、ゲルギエフと。。。。 でしたからね。
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dognorah at 2009-03-15 09:29
ゲストさん、あちこちに同じコメントを残されていますが、中傷的コメントはあまり歓迎できません。どの程度裏を掴んでいらっしゃるのか知りませんが、例えそうして役を取っても実力を発揮して観客を熱狂させることが出来たのなら立派なものです。
中村恵理さん、新国立劇場でも「イドメネオ」のイリアを堂にいった歌唱、演技を披露していましたよ。
ネトレプコはNYでジルダを観ましたけれど、高音が出ずに野太い声でジルダを歌っていて私はミスキャストだと思いましたけれど・・・。 中村さんには大きな拍手を送りたいです(*^_^*)
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dognorah at 2009-09-23 05:59
えーちゃんさん、こんにちは。新潟で東響のコーラス部員とは凄いですね。また、グルベローヴァの出演するコンサートがガラガラだったとは驚きました。
中村さんはROHの合間を縫って新国立に帰って歌っているんですね。さぞかし成長したであろう彼女の歌唱を堪能されたことでしょう。 実はROHのリゴレットでジルダを歌うネトレプコを聴いて一目惚れしました(^^; それ以来彼女を追いかけています。
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