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草間彌生回顧展

Tate Modernにて。
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前衛芸術家といわれる草間彌生は1929年3月松本市生まれ、もうすぐ83歳になる人です。子供の頃からスケッチなど絵を描くことが好きだった彼女は長じて洋画と日本画を学び、松本や東京で個展を開くなどの活躍をした人ですが、日本での芸術活動に対する窮屈さを覚えて1957年に米国に渡り、シアトルで個展を開いた後ニューヨークに移動して主にそこで活動していました。
しかしパートナーの死に際して体調を崩し、1973年に帰国、以来東京をベースに創作活動を続けています。大変多作な人で、グーグルで彼女の作品を検索するとたくさんの作品が出てきますが、豊富に展示されている今回の回顧展と重複するものはほとんどありません。作品は絵画、オブジェ、インスタレーションと多彩で、それに加えて過去の写真や新聞記事、手紙のコピーなども展示されているためじっくり展観すると2時間程度はかかってしまいます。全体を通して見て多大な感銘を受けました。凄く多感な人で、また一つのものに執着する人でもありますがあらゆるものに興味を示してどんどん作品をものにしていった人という印象を受けました。ニューヨークでは乱交パーティなども開催して裸の男女にペタペタと色を塗っていくシーンは写真やヴィデオでも披露されています。
私が一番感銘したのは一部屋を全部使って構成するインスタレーションで、彼女の世界に浸れる感じがとても素敵です。今まで多くの他の芸術家のインスタレーションというものを見てきましたが一度も感心したことが無く全く理解できないジャンルの一つでありました。しかし、彼女の作品はまず美しさがあり、それに加えて彼女のメッセージに包まれる感覚に支配されるという優れた芸術作品に接したときに体験する感動を覚えるのです。冒頭の写真はその中の一つ、鏡と光によって作られた空間ですが、これは写真ではなかなか理解できないもので、実際に体験してみるしかありません。ロンドン在住の方は是非テートモダンに行ってみてください。6月5日まで開催されています。
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# by dognorah | 2012-02-14 00:55 | 美術

ドヴォルザークのオペラ「ジャコバン党員」コンサート形式

2012年2月4日、バービカンホールにて。

Dvořák: The Jacobin(チェコ語ではJakobín)


Josef Bend: Count Vilem of Harasov
Svatopluk Sem: Bohus
Dana Burešová: Julie
Jaroslav Březina: Benda
Lucie Fišer Silkenová: Terinka
Aleš Vorček: Jiří
Jozef Benci: Filip
Ales Jenis: Adolf
Rebecca Lodge: Lotinka

BBC Singers
Trinity Boys School children's chorus
BBC Symphony Orchestra
Jiří Bělohlávek: conductor
Kenneth Richardson: director

ビエロフラーヴェクが時たま上演してくれるチェコ語のオペラ、今回は滅多に上演されない演目ですが、音楽的にすばらしくて大変楽しめました。

あらすじ
18世紀末の話。ボヘミア地方のハラソフの伯爵の息子ボーフスは父親の反対を押し切ってジュリーと駆け落ちしてパリに行くが革命で居心地が悪くなり、故郷に帰ってくる。しかし母親はすでに亡くなっており、伯爵はもう彼を息子と見なさず、跡継ぎは甥のアドルフだと公言する。アドルフは宮廷長のフィリップと組んで権勢をふるう。パリ帰りのボーフスはジャコバン党員であるという噂を流されアドルフに投獄される。妻のジュリーは手を尽くして伯爵に近づき、ボーフスが子供の時に母親によく歌って貰ったという子守歌を歌うと伯爵は感動し、息子を許す気になる。ボーフスが投獄されている事実を知って逆にアドルフとフィリップを追放する。

物語は音楽学校校長ベンダの娘テリンカとその恋人イルジ、テリンカに横恋慕するフィリップを絡ませて襞を作っているものの、本質的に単純なストーリーで、オペラとしてあまり上演されない理由はそこにあるのでしょう。

音楽としては、ジュリーとテリンカがソプラノ、イルジとベンダがテノール、ボーフスとアドルフがバリトン、伯爵とフィリップがバスで、それぞれアリアがいくつか割り当てられているし、管弦楽がドヴォルザークらしい魅力的なメロディがふんだんに使われているため大いに楽しめます。特に二人のソプラノによる歌唱が魅力的で今回の歌手は二人とも美しい声で堪能しました。テリンカ役が素直に伸びる美しい高音が魅力だとすればジュリー役は声に襞が感じられる印象でこれもまた違った魅力があって、歌の度にわくわくしながら聴いていました。
テノールのイルジも高音がよく伸びるよい声で、テリンカとの二重唱も大変楽しめました。
ボーフス役のバリトンも魅力的な声で主要4役はすべてはいレヴェルの歌手でした。
伯爵役のバスもすばらしい声なのですが、もう少し声量があれば言うことなしでした。
他の歌手達はそこそこという感じですが、役柄上出番の多いベンダとフィリップはもう少し声が欲しいところです。今日の歌手はほとんどがチェコ人だと思いますが、登場人物の多彩さを考えればこれだけ揃えばあまり贅沢は言えませんね。
BBC Singersも少年合唱団もよい出来でした。BBC交響楽団も文句のない出来で、ビエロフラーヴェクも満足だったことでしょう

Svatopluk Sem as Bohus & Dana Burešová as Julie
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Lucie Fišer Silkenová as Terinka & Aleš Vorček as Jiří
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Josef Bend as Count Vilem of Harasov & Ales Jenis as Adolf
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Jiří Bělohlávek
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# by dognorah | 2012-02-07 01:05 | オペラ

デイヴィッド・ホックニー展

2012年1月24日、Royal Academy of Artsにて。

David Hockney - A Bigger Picture at Royal Academy of Arts
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1月21日より一般公開されている上記展覧会を見てきました。
ホックニーの展覧会は6年前に見ただけなので随分久しぶりです。その後今日に至るまで彼は精力的に作品を描いています。アメリカでも描いていたのでしょうけれど、毎年のように故郷のYorkshireに戻り、風景画をものにしてきたようです。しかもそれが大作揃いで、今回の副題にあるように思い切り大きな画面に描いています。しかも現場でイーゼルを立てて描くという力の入れようです。下の写真は実際に彼の作業姿を写真に撮ったもので、これはネットから拝借しました。
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彼は以前にもコンピュータを使って作品を仕上げ、それをプリントアウトするということもやっていますが、現在はコンピュータの代わりにiPadを使っています。その様子は会場で写真展示されていましたがあのiPadの小さな画面に実に精緻に風景を描いているのに感嘆しました。その様子をやはりネットで拾った写真でお見せします。
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それを等身大と思える大きな紙にプリントアウトして何十枚も展示していましたが、美しいものです。特に気に入ったものはそこから油彩でキャンヴァスに描き直し32枚のパネルを合成して展示されていましたが、圧巻です。その絵は写真が提供されていないのでここでお見せできませんが、大きいという点では冒頭の油彩画も相当なもので、風景と色に圧倒されます。非常に印象的な絵です。これは恐らく現場でスケッチしてからスタジオで仕上げたものでしょう。大きなパネルを15枚組み合わせたものです。一枚のパネルが目の子で推量してISOのB列とするとそれは1m x 1.4mなので、この絵の大きさは縦3m、横7mということになります。先の最大のものは縦4m、横11.2mということになるでしょうか。
大きさだけでなく、絵画としての完成度も高く、多くの絵から暫く佇まなくてはいられない深い感銘を受けました。絵を見て心が高揚するのにそれらの絵に囲まれていると逆に心が安らかになります。けれども大きなエネルギーも貰えるのです。不思議な体験です。展示されている作品数が多いこともありますが一枚一枚じっくり見ることになるので、最後の作品に到達するまでに2時間半もかかりました。これは私としては近来希に見る長時間です。久しぶりに全精力を傾けて見させて貰いました。
作品の中には同じ風景を季節や時間を変えて何枚も描いたものがありますが、晩年のモネに似た心境に達しているのかも知れません。

いくつか感銘を受けた作品の写真を掲げます。すべてネットで拾ったものです。
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余談ですが、彼がゲイであることは広く知られています。その彼と親しい友人関係にあった英国下院議員のエピソードを紹介しましょう。まだ英国ではゲイが一般に認知されていないときの話ですが、その下院議員がある時、議場でゲイを攻撃する演説をぶったのです。それを聞いたホックニーが激怒し、抗議の手紙をその議員に送りつけました。「友達面していたのは何だ!この裏切り者!云々・・・」手紙を開封した秘書(私の友人)がそれをボスに見せたところ直ちに破棄するように指示されたので彼女はそれに従ったのですが、現在は大いに後悔しているそうです。指示を無視して保存しておけば大きな価値が付いたであろうにと。
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# by dognorah | 2012-01-31 09:17 | 美術

またまたLPOの定期演奏会

2012年1月25日、RFHにて。

Sergey Prokofiev: Chout - excerpts
Sergey Prokofiev: Piano Concerto No.4 (Left Hand)
Interval
Sergey Prokofiev: Cinderella - excerpts

London Philharmonic Orchestra
Vladimir Jurowski conductor
Leon Fleisher piano

ユーロフスキーファンの友人につきあって先週に引き続いてLPOのコンサートを聴きました。
今回もプロコフィエフづくしです。そして再び大変楽しめたコンサートでした。最初の曲はバレー音楽(邦題「道化師」、英語での発音はシュートだそうです)ですが作品名はもちろん音楽を聴くのも初めてです。彼のバレー音楽は「ロミオとジュリエット」とこの後演奏される「シンデレラ」がポピュラーな曲ですが、この作品も音楽としてはとても新鮮でなかなか楽しめる曲です。バレーとしてはさほど人気が無くても管弦楽曲はもっと演奏されてもいいのではないかと思います。

2曲目のピアノ協奏曲第4番は左手のためのもので、ピアニストは右手が不自由なレオン・フライシャーです。1928年生まれですから今年84歳になります。昔から名前を聞いていたピアニストで、その人の生演奏を聴けるのは望外の喜びです。1960年代からジストマという病気のために右手での演奏が出来なくなり、もっぱら左手用の曲を弾いていたそうです。2004年になって投薬によって右手が復活したとのことですが、現在の詳細はわかりません。
曲は派手派手しさがあまりないものですがフライシャーの演奏はしっかりしたもので美しく、とても84歳には見えません。ステージに出てくるときの歩き方もかくしゃくとしたもので、両手の演奏を聴きたかったなぁと思わせる元気さです。

最後の曲はロイヤルオペラハウスでバレーとして一度だけ見たことがあります。2年前の吉田都さんの引退公演でした。
しかし音楽単独で聴くのはこれが初めてで、バレーのシーンを思い出しながら聴きましたが、迫力ある大音量の演奏は圧巻で、例の12時の時計の音のシーンなどバレーで見たときよりも印象的で、こういう音のする時計を作ると売れるんじゃないかとか思ってしまいました。
いずれの曲もユーロフスキー並びにLPOの演奏は好調で、オケの各パートとも絶妙の音でした。

Leon Fleisher
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Vladimir Jurowski
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# by dognorah | 2012-01-31 02:06 | コンサート

Bobby Chen のピアノリサイタル

2012年1月22日、Westminster Cathedral Hallにて。

プログラム
ショパン: 幻想曲ヘ短調 作品49
ショパン: 夜想曲 作品27の第1番と第2番
プロコフィエフ: ソナタ第2番ニ短調 作品14
リスト: バラード第2番ロ短調 S.171
ストラヴィンスキー: ペトルーシュカから3つの楽章
アンコール: プロコフィエフのトッカータ

昨年5月以来の彼のコンサートです。
今回はイギリスのショパン協会の主催でした。
相変わらず彼のピアノはすばらしくてすぐに想像力をかき立てるような音楽の世界に彷徨わせてくれます。プロコフィエフもよかったけれど、とりわけ今回はリストのバラードが渾身の演奏で、完璧に私の心を捉えてくれました。力強い低音が表現するデモーニッシュな一面が特に印象的です。
ストラヴィンスキーはテクニックの冴えを見せるためのものでしょうか。楽しめるもののそれほど熱心に聴こうという作品でもありません。
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# by dognorah | 2012-01-30 22:13 | コンサート

ドン・ジョヴァンニ

2012年1月21日、ROHにて。

Wolfgang Amadeus Mozart: Don Giovanni

Director: Francesca Zambello
Conductor: Constantinos Carydis

Don Giovanni: Gerald Finley
Leporello: Lorenzo Regazzo
Donna Anna: Hibla Gerzmava
Donna Elvira: Katarina Karnéus
Don Ottavio: Matthew Polenzani
Zerlina: Irini Kyriakidou
Masetto: Adam Plachetka
Commendatore: Marco Spotti
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House

これが今年見る最初のオペラとなりました。
このプロダクションを見るのは2008年以来です。もう5-6回は見たでしょうか。
今回の歌手陣は名前的にはやや地味かも知れませんが、なかなか上手くて、特に女声陣は大変よかったと言えます。
まず、ドンナ・アンナを歌ったグルジアのソプラノ、ヒブラ・ゲルツマワは2008年の「エフゲニー・オネーギン」ですばらしいタチアナを披露してくれた人ですが、今回もかなり満足できる歌唱でした。時折高音部がほんの少し金属的な響きになることを除けば柔らかい美声が心地よく伸びて大いに楽しめました。
ドンナ・エルヴィーラを歌ったスエーデン人メゾのカタリーナ・カルネウスは初めて聴く人だと思いますがスムーズで美しい声がよく響いて文句なし。この人は演技もなかなか上手い。
ゼルリーナ(舞台ではこう発音していました)役のギリシャ人ソプラノ、イリーニ・キリアキドウも愛らしい姿と初々しい歌唱がこの役にぴったりと思わせるもので、初見参ながら印象に残る人です。この役は当初Lucy Crowが歌うことになっていましたがいつの間にか交代していました。
男声陣の方では、タイトルロールのジェラルド・フィンリーが相変わらず安定した歌唱でこれも文句なし。髭をつけていつもの顔が隠れているのもよかった。
対して、レポレロ役のロレンツォ・レガッツォがやや元気が無く、声があまり出ていない印象です。カタログの歌も退屈そのもの。この人の過去の印象からするとかなり不満ですが、どこか調子が悪かったのでしょうか。
ドン・オッタヴィオ役のアメリカ人テノール、マシュー・ポレンザーニはお馴染みの歌手ですが相変わらず柔らかいタッチのよく伸びる高音がすばらしく、ブラヴォーです。
マゼット役のチェコ人バスバリトン、アダム・プラチェッカはこれまで何度も経験していますが相変わらず安定していて上手い歌唱でした。割とハンサムなのでゼルリーナ役とはお似合いのコンビでした。
騎士長役も声がよく出ていて満足。
ギリシャ人指揮者コンスタンティノス・カリディスは以前ROHで「カルメン」を振ったことがありますが、そのときはろくに聴いていなかったので今回がほとんど初めて経験したことになります。まだ40歳にもなっていない若い人ですが颯爽としたモーツァルトがなかなか心地よく、指揮者としてはなかなか出来る人という印象です。
ということで歌手、管弦楽と総体的にすばらしい音楽を堪能いたしました。

Hibla Gerzmava & Matthew Polenzani
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Katarina Karnéus
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Irini Kyriakidou & Adam Plachetka
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Gerald Finley & Constantinos Carydis
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Marco Spotti & Matthew Polenzani
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Lorenzo Regazzo
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# by dognorah | 2012-01-23 20:19 | オペラ

LPO定期演奏会

2012年1月18日、RFHにて。

Sergey Prokofiev: Symphonic Song, Op.57
Sergey Prokofiev: Piano Concerto No.5
Interval
Sergey Prokofiev: Symphony No.6

London Philharmonic Orchestra
Vladimir Jurowski conductor
Steven Osborne piano

自分でも驚くぐらい遅いのですがやっとコンサートに行ったので今年初めての記事です。
本当は昨日ROHでLa traviataを見る予定でしたが目的のネトレプコがキャンセルしたので切符を手放したのです。代わりに行ってくれた人の情報だと代役のエルモネラ・ヤオは特に第1幕がひどい出来だったそうで、日本公演での惨状も合わせて考えると彼女は結局この役には向いていないような気がします。
年始早々ネトレプコに振られて惨めな気持ちですが、追い打ちをかけるように2月22日に行われるバービカンでの「皇帝ティートの慈悲」で出演予定だったガランチャがキャンセルとのことで私の2大歌手に振られる羽目になり、今年もいろいろお目当ての歌手に振られることになるのでしょうか。

それはともかく今日のコンサートはすべて初めて実演に接する曲ばかりでしたが、すばらしい音楽を間近に聴ける幸せをしみじみと感じることが出来ました。
すべての音楽が豊富な楽想とゴージャスな音で奏でられ、あまり好きでもなかったプロコフィエフを見直すことが出来ました。
まず最初の曲ですが短い曲にもかかわらず大編成の管弦楽が醸す音が新鮮で、調子のよい金管と弦が興味の尽きない競演を繰り広げてくれます。一緒に行った友人達の一人は退屈だといっていましたがなんのなんの私は大変楽しめました。
2曲目のピアノ協奏曲は5楽章編成という変わった構成ですがプロコフィエフらしい達者な腕が求められる部分と叙情的な部分が織りなす豊かな音楽がすばらしく、これも大いに楽しめました。独奏者は協奏曲では珍しく譜面めくりを使っていましたが演奏は美しいピアノが特に印象的で大いに楽しませてくれました。
最後の交響曲第6番はよく聴く初期の古典交響曲とは随分違う印象で、ゆったり構えた大曲という趣です。この辺はユーロフスキーの解釈にもよるのでしょう。これに限らず今日の彼は細部にわたって充実した解釈を披露してくれたと思います。バックに何となく不安感が感じられるのは晩年の健康状態のためか。第2楽章の美しさは特筆もので、LPOの弦はとてもよく表現できていました。第3楽章はスケールが大きく、心底この曲を楽しめました。
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# by dognorah | 2012-01-20 08:39 | コンサート

ドニゼッティのオペラ「シャモニーのリンダ」

2011年12月23日、バルセロナのLiceuにて。

Linda di Chamounix : Melodramma semiserio en tres actes
Música: Gaetano Donizetti
Llibret: Gaetano Rossi
Part I (preludi i acte 1): 65 mino . Entreacte: 30 mino . Part 11 (acte 11 i 111): 110 mino
Durada total aprox: 3 h i 35 mino
Divendres, 23 de desembre de 2011

Direcció musical : Marco Armiliato
Direcció d'escena : Emilio Sagi

Marques de Boisfleury : Bruno de Simone
Carlo : Juan Diego Flórez
Prefecte : Simón Orfila
Antonio : Pietro Spagnoli
Pierotto : Silvia Tro Santafé
Intendent : Jordl Casanova
Maddalena : María José Suárez
Linda : Diana Damrau

今年の2月に続いてまたバルセロナに来ました。今回のお目当てはフローレスとダムラウの共演です。
このオペラは2年前にROHでコンサート形式を見ただけで、実舞台を見るのはこれが初めてです。
舞台は原作の18世紀ではなく現代に置き換えています。第1幕は林立する白い円柱が恐らく林を表しているのでしょう、村人達も白を基調にした衣装で、円柱の間間に造花の花がばらまかれて美しい村の様子を描いています。侯爵が現れる場面では円柱はすべて上に引き上げられ、自動車が走ってきて彼は後部座席から降りてくる設定です。第2幕のパリのアパートは室内の美しくデザインされた階段が正面に据えられた素敵なものです。第3幕への休憩無しの場面転換ではそれがそっくり丈夫に引き上げられて一瞬のうちにシャモニー村の広場になります。それはごく普通の村の広場に白いテーブルがいくつも置かれて正気を失ったリンダがその上を歩き回る設定です。演出的には、第2幕のパリでの豪華な生活はボアフレリー侯爵のお金で成り立っているのかそれともカルロのお金なのかあまりはっきりしません。以前読んだあらすじではカルロの援助で生活とありましたが、ボアフレリー侯爵もその家にやってきてまるで自分の家でくつろぐような仕草でしたから。

フローレスは相変わらず旨い歌唱で、久しぶりに彼の声を堪能しました。各アリアでの会場の興奮も凄いものがありました。
ダムラウはこの7月にバーデンバーデンで見て以来ですが、かなり痩せてほぼ元通りの体型になったのではないでしょうか。歌唱はこちらも相変わらずのうまさで、コロラトゥーラもころころとよく転がってすばらしいものでした。ほとんど疵のない歌唱はROHのコンサート形式で聴いたグティエレスより遙かに楽しめます。
ピエロット役のシルヴィア・トゥロ・サンタフェはこれで3回目の経験ですが、今までの中では最も上出来で、いつでもこれぐらい歌ってくれたらいい歌手だなぁと思うのですが。
リンダの母親役マッダレーナを歌ったマリア・ホセ・スアレスも美しい声でした。
リンダの父親アントニオ役のピエトロ・スパニョーリは2年前のROHでの「セビリアの理髪師」のフィガロ以来ですがこの人も相変わらずと形容できる安定した歌唱で大変楽しめました。
司祭役を歌ったバスのシモン・オルフィラの声も深みと迫力があって大変楽しめました。
ボアフレリー侯爵を歌ったブルーノ・デ・シモーネはまあまあの出来。演出的にもあまり笑いを取る出来ではなかったです。コルベッリだったらよかったのに。
合唱は第1幕第3幕とも美しい出来でした。
ドニゼッティが得意な指揮者マルコ・アルミリアートの演奏は今回もすばらしく、英語字幕が無くて音楽に集中するしかない当方としては至福の時でした。
ということで今回のリセウも本当に来てよかった、という思いでした。

余談ですが、翌日夜にホテルでTVを見ていたらROHの「セビリアの理髪師」の録画を流していました。そこではスパニョーリのフィガロとフローレスのアルマヴィーヴァ伯爵が映っており、この二人を実舞台とTVで続けて見たことになります。

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Simón Orfila & Pietro Spagnoli
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Bruno de Simone & María José Suárez
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Silvia Tro Santafé
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# by dognorah | 2012-01-01 08:25 | オペラ

ニュルンベルクのマイスタージンガー

2011年12月19日、ROHにて。

Die Meistersinger von Nürnberg
Music & Libretto: Richard Wagner

Director: Graham Vick
Conductor: Antonio Pappano
Hans Sachs: Wolfgang Koch
Walter von Stolzing: Simon O'Neill
Eva: Emma Bell
Sixtus Beckmesser: Peter Coleman-Wright
Veit Pogner: John Tomlinson
David: Toby Spence
Magdalene: Heather Shipp
Kunz Vogelgesang: Colin Judson
Konrad Nachtigall: Nicholas Folwell
Fritz Kothner: Donald Maxwell
Hermann Ortel: Jihoon Kim
Balthazar Zorn: Martyn Hill
Augustin Moser: Pablo Bemsch
Eisslinger: Andrew Rees
Hans Foltz: Jeremy White
Hans Schwarz: Richard Wiegold
Nightwatchman: Robert Lloyd
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House

ROHでは9年ぶりに上演された楽劇「マイスタージンガー」の初日です。9年前は事前に飲んだワインのために半分寝ているような状態で見たことを思い出しますが、今回は素面を維持して臨んだもののあまりにも美しい音楽は時々睡魔に襲わせてくれます。
それはともかく、ヴォルフガング・コッホのハンス・ザックスとサイモン・オニールのヴァルターが秀逸な出来で、それに加えてパッパーノの指揮がとてつもなくすばらしく、感激しっぱなしです。他の歌手も相当な出来で、音楽的には非常に満足した一夜でした。
ドイツ人バスバリトン、コッホは揺るぎのないしっかりとした歌唱に加えて堂々とした体躯にものを言わせて演技的にも立派なハンス・ザックスでした。この人が説得したら他の親方も賛成せざるを得ない雰囲気を出しています。
ROHではお馴染みのニュージーランドのテノール、サイモン・オニールはようやく太るのが止まった印象のそれでもコッホをしのぐ体躯による堂々とした演技で美声を朗々と響かせます。高音の伸びや美しさはヨハン・ボータの方がやや上でしょうが迫力と見てくれの点では断然オニールです。
エファ役のエマ・ベルは第2幕まではとてもすばらしい歌唱でしたが第3幕は惜しくも声がかすれ気味でちょっとミソをつけました。ファイト・ポグナーを歌ったお馴染みのジョン・トムリンソンは相変わらず低音はよく出るもののお年のせいかちょっと声の輪郭がぼやけ気味で両手を挙げて満足とは行かなかったです。
ダフィット役のトビー・スペンスは声も演技も少年らしさがよく表現されていて文句なしです。

演出は古典的なものを予算の関係でやや簡略にした感じの舞台ですが、ハンス・ザックスの性格付けが過去に見た他のプロダクションのもの(といってもコンサート形式以外ではヴィーンのものバイロイトのものしか見ていませんが、バイロイトのものは比較のしようがありません)に比べて本を机からたたき落としたりストールを机の脚辺りに投げつけるなどかなり激しいものになっています。優しいだけのおじさんじゃなくて感情の起伏が激しいという解釈なんでしょう。
第2幕の喧嘩のシーンでは地上の乱闘だけじゃなくて天井の穴から人がぶら下がったり等猥雑さを強調しています。

Antonio Pappano
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Simon O'Neill & Wolfgang Koch
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Emma Bell & Toby Spence
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John Tomlinson
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# by dognorah | 2011-12-21 03:22 | オペラ

アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団演奏会

2011年10月11日、RFHにて。

過去の演奏会の記事がまだ続きます。
Claudio Abbado: conductor
Lzerne Festival Orchestra
Mozart – Symphony no.35 in D major, KV 385, ‘Haffner’
Bruckner – Symphony no.5 in B-flat major

この組み合わせの演奏会を聴くのは4年ぶりで、そのときはRAHでマーラーの3番でした。

モーツァルトの自然な響きとかつ深みのある表現はこの音楽を堪能するにふさわしい名演でした。音響はうっとりと聴き惚れるすばらしさです。このホールでもとてつもなく大きいRAHよりは遙かによい音がします。

ブルックナーの5番は実演ではあまり聴いていない気がします。最初の3楽章はさすがの演奏で大いに楽しめました。しかし第4楽章はCDなどで聴いたときの印象と同じでどうも苦手です。金管を中心にがんがん鳴っているだけと感じてしまいます。アバドの指揮を持ってしても好きになれないのはこの楽章とは相性が合わないということでしょう。

終演後のClaudio Abbado
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# by dognorah | 2011-12-15 01:43 | コンサート