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ハイドンのオペラ「無人島」

2010年10月28日、Linbury Studio Theatreにて。

L'isola dishabitata: Opera in two parts
Music: Joseph Haydn
Libretto: Pietro Metastasio

Director: Rodula Gaitanou
Conductor: Volker Krafft
Southbank Sinfonia

Silvia: Anna Devin
Costanza: Elisabeth Meister
Gernando: Steven Ebel
Enrico: Daniel Grice

ハイドンのオペラを聴くのは初めてです。彼は全部で13曲のオペラを残していますが今日では滅多に演奏されませんね。
今回はロイヤルオペラの研修生たちによって上演されました。演出、指揮、歌手はすべて研修中の人たちです。

あらすじ
ジェルナンドとコンスタンツァ夫妻、それにコンスタンツァの幼い妹シルヴィアの3人は航海中の病気で無人島に一時上陸せざるを得なくなる。3人が寝ている間に夫がどこかの軍隊に誘拐されて奴隷としてこき使われ、結果として姉妹は13年間も無人島に放置されてしまう。夫が誘拐されたことを知らないコンスタンツァは、彼が自分たちを放棄したのだと信じて毎日嘆き悲しむ。その間に幼いシルヴィアは成人している。ようやく軍隊を逃げ出したジェルナンドは友人のエンリーコと一緒に島に捜索に来る。コンスタンツァが石版に遺書めいた言葉を掘っていたのをジェルナンドが見つけ、彼女は死んでしまったものと思いこむ。一方、エンリーコは単独行動中にシルヴィアと出会い、お互いに一目惚れする。ジェルナンドは最後にもう一度石版を見ようとその場所にやってきてコンスタンツァと出会い、彼女の誤解も解けてめでたしめでたし。

登場人物が4人のシンプルなオペラですが、すべての登場人物に1-2曲のアリアが割り当てられています。管弦楽もアリアもなかなか聴き応えのある音楽で、さすがハイドン。Southbank Sinfoniaのメンバーも若い人たちですが、いい音であり、いい演奏でした。

歌手は4人とも大変うまく、大いに楽しめました。特にシルヴィアを歌ったアイルランド人ソプラノ、アナ・デヴィンとエンリーコを歌ったイギリス人バリトン、ダニエル・グライスがよかったと思います。ともに1年生で、この日のランチタイムコンサートで聴いた3人の歌手とともに今年加わった歌手たちはとてもレヴェルが高いです。

演出は、予算の制約があってあまり思うように出来なかった可能性はありますが、石ころや廃材やモクモク出っぱなしの煙などで特段汚らしい舞台にする必然性はあまりなかったように思います。

カーテンコールの写真
Anna Devin, Daniel Grice, Steven Ebel, Volker Krafft and Elisabeth Meister
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by dognorah | 2010-10-30 02:22 | オペラ

グノーのオペラ「ロメオとジュリエット」

2010年10月26日、ROHにて。
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Roméo et Juliette: Opéra in five acts
Music: Charles-François Gounod
Libretto: Jules Barbier and Michel Carré after William Shakespere

Director: Nicolas Joël (Premiere 1994)
Conductor: Daniel Oren
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House

Roméo: Piotr Beczala
Juliette: Nino Machaidze
Mercutio: Stéphane Degout
Tybalt: Alfie Boe
Stéphano: Ketevan Kemoklidze
Duke of Verona: Simon Neal
Count Paris: ZhengZhong Zhou
Frére Laurent: Vitalij Kowaljow
Count Capulet: Darren Jeffery
Gertrude: Diana Montague
Grégorio: James Cleverton

以前このプロダクションのDVDを鑑賞したときに記事にしたことがありますが、実際にこの舞台を見るのは今回が初めてでした。
演出は16年前にプレミエだったものです。古典的で簡素な舞台が美しく、衣装もよくマッチしています。過去に見た他の公演は若い歌手たちによるものヴィーンで見たものの二つですが今回が総合的に見て一番楽しめました。

歌手ですが、ロメオ役のピョートル・ベチャラが大変すばらしく大いに楽しめました。中低音では時たま声に汚れが出ることがありましたが輝かしい高音部は力強く完璧でした。この人は過去に何度も聴いていますが私の聴くときはいつも好調で、安定した実力の持ち主という印象を強くしました。

ジュリエット役はROHデビューのニーノ・マチャイゼですが1983年グルジア生まれなのでまだ27歳です。2008年にザルツブルグでネトレプコの代役でこの役を歌って評判になったそうで(そのDVDを持っていますが未聴です)ジュリエット役にふさわしい若さですね。でも大体において歌うときはやや表情が硬く、あまり少女らしさはありません。声は全音域きれいに出るし声量もありますが、すべてに渡って好きな声というわけではないです。もう少し潤いが豊かな声の方が好きなのです。といっても歌唱的にはすばらしいものがあり、ドラマを盛り上げてくれました。

脇役陣もすべてしっかりした声と歌唱で感心しました。特に印象に残ったのは坊主役のウクライナ人バス、ヴィタリー・コヴァリョーフ(と発音するのでしょうか? 私は2007年にヴィーンで聴いていますが)、カプレット役のダレン・ジェフリー、ティボー役のアルフィー・ボウなどです。

ダニエル・オーレンの指揮もいつものようにすばらしく、オケからいい音を引き出し感情のこもった演奏でした。オケピットの横で聴いていたので時折彼のかけ声がうるさく感じることもありましたが。それにしても2回のインターヴァルを入れて4時間の長い公演でしたがすばらしい歌手たちと管弦楽のおかげでちっとも長いとは感じませんでした。

カーテンコールの写真
Piotr Beczala
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Nino Machaidze
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Vitalij Kowaljow and Diana Montague
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Ketevan Kemoklidze
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Alfie Boe
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Conductor: Daniel Oren
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by dognorah | 2010-10-28 03:18 | オペラ

ロッシーニのオペラ「パルミラのアウレリアーノ」コンサート形式

2010年10月23日、RFHにて。

Aureliano in Palmira: an operatic dramma serio in two act
Music: Gioachino Rossini
Libretto: Giovanni Francesco Romanelli

Conductor: Maurizio Benini
Zenobia: Catriona Smith
Arsace: Silvia Tro Santafé
Aureliano: Kenneth Tarver
Publia: Ezgi Kutlu
Oraspe: Julian Alexander Smith
Gran Sacerdote: Andrew Foster-Williams
Licinio: Vuyani Mlinde
Geoffrey Mitchell Choir
London Philharmonic Orchestra

Opera Raraとの共同制作。このオペラのストーリーは昨日ENOで見た「ラダミスト」と同様美人の女王ゼノビアを中心に展開するもので、場面も酷似しています。偶然のことですが、二日続けて同じようなテーマを扱ったオペラを経験したのでストーリーや登場人物がちょっと混乱するところがありました。

あらすじ
パルミラの女王ゼノビアはペルシアの王子アルサーチェと恋仲で彼らがパルミラの城にいるときにローマの皇帝アウレリアーノが軍勢を率いて攻めてくる。ペルシアの王子はペルシア軍を率いて迎え撃つがあえなく敗退し、捕われる。ゼノビアはアウレリアーノに対して休戦を申し入れ、アルサーチェと面会するがアウレリアーノはアルサーチェに対してゼノビアをあきらめれば彼を解放するという条件を出す。アルサーチェは拒否し、死刑を宣告される。ゼノビアはパルミラ軍を指揮して最後の戦いを挑むがやはり敗戦し、城は完全に占拠される。その間、アルサーチェは夜陰に紛れてパルミラ軍に助け出され、羊飼いたちに匿われる。軍を整え再び戦いを挑むがそれも鎮圧される。ローマ軍の将軍の娘プブリアはアルサーチェに思いを寄せているので皇帝に対して慈悲を請うが拒否される。しかしパルミラの多くの廷臣や僧侶たちから繰り返し慈悲を請われ、さらにゼノビアとアルサーチェの強い愛情に心を打たれた皇帝はローマに忠誠を尽くすことを条件に二人がパルミラを治めることを容認する。

ゼノビア役は当初Annick Massisが歌うことになっていましたが降板し、代役として初めて名前を聞くアメリカ人ソプラノ、カトリオーナ・スミスが出演しました。この交代は歓迎すべきもので、彼女の歌唱は癖のない伸び伸びとした声とともにすばらしいものでした。アニック・マシスは以前「ロメオとジュリエット」のジュリエット役で聴いたことがありますがあまり好きな声ではないのです。

アルサーチェ役のシルビア・トロ・サンタフェは今年の春「ノルマ」のアダルジーサ役で聴いてなかなかよかったのですが、今日は声自体が震えている、言葉を換えれば細かく音程が振れている感じの歌唱でやや気になりました。しかし役どころにふさわしい抑揚感を伴った歌唱で大方の大拍手を浴びていました。

タイトルロールを歌ったテノール、ケネス・ターヴァーはやはり今春「イドメネオ」のアルバーチェ役で聴きましたが、なかなか迫力あるいい歌唱でした。

将軍の娘役のエズギ・クトゥリュには1曲だけアリアがあてがわれていますが、まあまあのメゾソプラノさんです。珍しくトルコ人歌手でかわいい顔立ちの人です。

合唱は特別うまいというわけではないものの、まあまあの出来。

ベニーニ指揮するオケはさすがにイタリアものでいつも感心させられる彼の棒のもと、生き生きとしたロッシーニでした。序曲からしてひと味違います。このオペラの序曲をロッシーニは「セビリアの理髪師」にも転用したんですね。第2幕では序曲中で使われているテーマが鳴ります。

ということで、初めて聴くこのオペラも音楽的には大変楽しめるものであることがわかりました。上演が少ないのはストーリーがあまり魅力的じゃないからでしょうか。

カーテンコールの写真
Kenneth Tarver as Aureliano
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Catriona Smith as Zenobia
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Silvia Tro Santafé as Arsace
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Ezgi Kutlu as Publia
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Conductor: Maurizio Benini
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by dognorah | 2010-10-27 23:01 | オペラ

ヘンデルのオペラ「ラダミスト」

2010年10月22日、ENOにて。

イタリア語リブレットを英語に翻訳しているので本来は行かないつもりでしたが切符の大幅バーゲンにつられて見に行きました。

Radamisto by George Friedrich Handel
Libretto adapted from Domenico Lalli's L'amor tirannico, o Zenobia
English translation by Christopher Cowell

Director: David Alden
Conductor: Laurence Cummings

Radamisto: Lawrence Zazzo
Zenobia: Christine Rice
Polissena: Sophie Bevan
Tigrane: Ailish Tynan
Tiridate: Ryan McKinny
Farasmane: Henry Waddington

母音で終わるイタリア語の歌を子音で終わる英語で歌うというのはどうしても無理があると思いますが、管弦楽も歌手もすばらしいし舞台装置はともかく衣装も美しくて大変楽しめたオペラでした。

まず、管弦楽が実にすばらしい音でヘンデルの雰囲気を盛り上げてくれます。明記されている奏者はコンチニュオの人たちだけで、オケについてはは何も書かれていませんが、おそらくここの専属オケが古楽器を弾いていたのでしょう。


歌手もすべて大変よく、各アリアを十分楽しめました。ローレンス・ザゾやクリスティン・ライスはもとより、主役ではないのに歌う場面がとても多いポリッセナ役を歌ったソフィー・ビヴァンもいい声でしたし、ティリダーテ役のアメリカ人テノール、ライアン・マッキニーも力強い歌唱でした。この人はハンサムな容姿もこの役にふさわしいですね。ころころとお太りになったアイリッシュ・タイナンもいつものように軽々と出る最高音部がきれいです。

舞台は例によって簡素な屏風式の装置ですが、衣装はなかなかきれいでドラマの内容に即したものとなっています。ただ、一人ティグラーネ役だけがよれよれの背広にネクタイという出で立ちですが。
ストーリーは他愛ないものですが音楽的には大変楽しめるオペラです。

あらすじ
トラキアの王ファラスマーネの息子ラダミストは愛妻ゼノビアと幸せな結婚生活を送っていたが、隣国アルメニアの王ティリダーテの軍事侵攻を受けて父王とともに囚われの身となってしまう。ティリダーテはラダミストの妹ポリッセナを妻としているにもかかわらず、彼女を追い出してゼノビアを奪おうとする。しかしゼノビアはラダミストを愛しているので靡かず、死を選ぶ決意をする。軍事侵攻ではティリダーテ側についていた(実はポリッセナを愛している)ポントゥスの王子ティグラーネはとてもまともな人で、ラダミストたちを不憫に思って逃亡の手助けをしたり最後には軍事行動でティリダーテを諫める。ラダミストとゼノビアの愛の深さに感動し、またティグラーネの諫めもあって彼は遂に改悛し、トラキアを軍事侵攻前の状態に戻し、妻のポリッセナとも仲直りする。独りティグラーネだけは恋が叶わず。

カーテンコールの写真
Lawrence Zazzo as Radamisto
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Christine Rice as Zenobia and Ailish Tynan as Tigrane
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Ryan McKinny as Tiridate and Sophie Bevan as Polissena
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Lawrence Zazzo and Conductor: Laurence Cummings
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by dognorah | 2010-10-26 20:13 | オペラ

ヴィルヘルム弦楽四重奏団演奏会

2010年10月14日、St Peter's Church at Eaton Square

Mozart: String Quartet No.22 in B flat, K.589 (Prussian)
Bethoven: String Quartet No.11 in F minor, Op.95 (Serioso)
Brahms: String Quartet in C minor, Op.51 No.1

The Wilhelm Quartet
Marciana Buta - violin
Margaret Dziekonsky - violin
Glen Donnelly - viola
Hetty Snell - cello
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ヴィルヘルム弦楽四重奏団は2006年にRoyal Academy of Musicで結成された団体で、すでにいくつかの賞を取り、昨年4月にはウィグモアホールでのデビューも果たしている。
最初のモーツァルトの音を聞いただけで直ちにその高貴なアンサンブルに惹かれた。とても魅力的な演奏をする団体だ。このPrussianシリーズはプロシア王フリートリッヒ・ヴィルヘルム2世の依頼した6曲のうち死ぬまでに完成した3曲を指し、今日演奏されたのはその2曲目の作品である。コンサート前の解説によるとこの団体の名前はこのプロシア王から取ったようだ。なかなか聴き応えのある曲である。王がチェロを弾く人なのでチェロのパートは特段高貴な響きを発するように書かれているとかで、事実チェロの音色はとてもすてきだった。
次に演奏されたベートーヴェンの曲は昔よくLPで聴いたので馴染みの曲であるが、今日の演奏は音が豊かで新鮮な感動を呼び起こしてくれた。
最後のブラームスは私的にはあまり馴染みのない曲で、演奏を聴いてもいまいちイメージの浮かんでこないものだった。

この教会に来たのは初めてだが、かなりモダンな内装で、スペース的には天井の高い直方体である。少し多めの残響が弦楽にはプラスに作用していると思われ、音響的には豊で聴きやすい。教会にしては暖房がよく効いている。
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by dognorah | 2010-10-19 04:48 | コンサート

リセウ劇場の「カルメン」ライヴ中継

2010年10月13日、Empire Cinemaにて。

Live from Gran Teatre del Liceu, Barcelona
Carmen: Opéra-comique in four acts
Music: Georges Bizet
Libretto: Henri Meilhac and Ludovic Halévy based on the novel by Prosper Mérimée

Stage director: Calixto Bieito
Conductor: Marc Piollet
Carmen: Béatrice Uria-Monzon
Don José: Roberto Alagna
Micaela: Marina Poplavskaya
Escamillo: Erwin Schrott
Frasquita: Eliana Bayón
Mercédès: Itxaro Mentxaka
Le Dancaire: Marc Canturri
Le Remendado: Francisco Vas
Moralès: Alex Sanmartí
Zuñiga: Josep Ribot

劇場からのライヴ中継というのは最近の流行ですが、バルセロナのリセウ劇場からというのは珍しい(今まで知らなかっただけかな?)ので見に行きました。情報はIntermezzoさんのブログで知ったものです。場所はレスタースクエアのエンパイアという映画館で、中は8つの映画が同時に上映されている規模の大きい映画館です。その中の座席数100程度の小さいスペースでこの映像中継が供されました。観客数は20人足らずでガラガラでした。現地劇場の座席もかなり空席はありましたがそれでも8割は埋まっていたと思います。
入場料は20ポンドなので、20人入っていたとしても映画館の合計収入は400ポンド(約5万2千円)にしかならず、きっと赤字でしょう。ご丁寧にキャストやあらすじを印刷した2ページの紙も用意してくれていました。

演出ですが、近現代の時代設定で、ミカエラが最初に出てくるところでは彼女はカメラ(デジカメではなくフィルムカメラ)を持っていて兵隊などを撮ったりします。そのそばに電話ボックスがあったり。また酒場のシーンでは酒場の代わりにメルセデスベンツの車が舞台に進入して来てその周りで騒ぐ設定です。更にあまり音楽に影響を与えない範囲でシーンのカットが色々あります。たとえば冒頭シーンで衛兵の交代場面はなく、ドン・ジョゼはいつの間にか紛れて登場しているとか、酒場のシーンでもう時間だから出て行ってくれというせりふのところもかっと、第3幕でミカエラを案内する男も登場せずいきなり彼女が舞台に出てきたりします。ジョゼとエスカミーリョのナイフによる決闘はジョゼだけがナイフを持ってエスカミーリョを追い掛け回し、捕まえて刺そうというところでみんなが帰ってくる設定で、ちょっと端折っています。これとは逆に最初から変なおっさんが登場して序曲の終わりごろに「愛は死のようなものだ」みたいな台詞を吐いたりという創作が入っていたりします。このおっさんはこれ以降も各シーンで登場し、更に12-3歳の女の子もしょっちゅう一緒に出てきます。この意味はよく分かりません。また、冒頭のおっさんの台詞の時から舞台をトラックよろしくパンツ一枚の男が銃を捧げ持ちながらぐるぐる走っています。その男は兵隊たちがミカエラをからかっている最中に力尽きてばたっと倒れるのですが、これも意味不明。カルメンとジョゼの絡みシーンはかなりエロティックで、逮捕して柱に縛った状態の彼女の足を撫で回しながら唇を這わせたり、彼のために酒場でダンスするシーンでは後半にパンティを脱いで彼のズボンのジッパーを下げて体を重ね合わせる動作など。また第3幕冒頭の間奏曲の時に舞台に出てきた一人の兵士は全裸になって闘牛士の様式を表現した短いダンスを踊ります。この演出家もゲイかもと思いました。しかし全般的に見て元のストーリーには忠実で結構楽しめる舞台でした。

歌手ではカルメン役のベアトリス・ユリア=モンゾンは好演、歌もなかなかよかったです。1963年生まれなのでカルメンにしてはちょっと歳を食っていますが。
また、ロベルト・アラーニャは絶好調、声が輝いていました。カルメンにシャツを脱がされて上半身裸になりましたがおなかはやはりちょっとタプタプという感じです。
エスカミーリョを歌ったエルウィン・シュロットは背広に帽子姿は格好いいのですが、歌の方はいまいち声の豊かさが感じられないもので、あまり感銘しませんでした。
ミカエラ役はマリーナ・ポプラフスカヤ、まあまあですがいつもの通り余りいい歌唱とは思えず。
その他の歌手および合唱はよかったと思います。
管弦楽はまあ水準で、非常に感心したところもありません。
映像としては十分楽しめたので、今後もこういう企画は是非やってほしいのですが、今日の客の入りからするともうないかもしれません。
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by dognorah | 2010-10-15 01:34 | オペラ

ドニゼッティのオペラ「ルクレチア・ボルジア」(コンサート形式)

2010年10月6日、ヴィーン国立歌劇場にて。

Lucrezia Borgia: Oper in einem Prolog und zwei Akten
Musik: Gaetano Donizetti
Libretto: Felice Romani nach dem Drama Lucrèce Borgia von Victor Hugo

* Friedrich Haider | Dirigent
* Michele Pertusi | Don Alfonso I.
* Edita Gruberova | Lucrezia Borgia
* José Bros | Gennaro
* Laura Polverelli | Maffio Orsini
* Gergely Németi | Jeppo Liverotto
* Adam Plachetka | Don Apostolo Gazella
* Dan Paul Dumitrescu | Ascanio Petrucci
* Benedikt Kobel | Oloferno Vitellozzo
* Hans Peter Kammerer | Gubetta
* Peter Jelosits | Rustighello
* Marcus Pelz | Astolfo

グルベローヴァは最初の方は高音がややかすれ気味で、この春ブリュッセルで聴いた時の好調さは感じられなかったけれど、ドラマの進行と共に調子が出てきて高音もきれいに出るようになりました。第2幕最後で死ぬ間際のアリアでは大きな声量で絶叫するような高音は大迫力でもう参りました。聴衆も大喜びの大歓声でした。

ゲンナロ役のホセ・ブロスは相変わらずの美声で上手い歌唱、言うことなしです。私が聴く限りこの人はいつも好調で、安定した実力の持ち主です。

ズボン役のオルシーニを歌ったラウラ・ポルヴェレッリは初めて聴く人ですがなかなか上手く、美しい声は大変魅力的です。ズボン役としては身長があまりないのが残念でしょう。

ドン・アルフォンソ役のミケレ・ペルトゥージも初めて聴く人でまあまあの歌唱ですが、バス・バリトンとしてもう少し低音の迫力がほしいところです。

他の歌手も大方すばらしい声でしたし、合唱も非常に上手かった。

今日はコンサート形式でオケが舞台上にいるせいか、音がことのほか魅力的でこのオケの実力を堪能しました。指揮のハイダーは、奥さんのグルベローヴァのおかげで指揮させてもらえるなど言われることもありますが、これだけの音楽を作ってすばらしい音を弾きだしているということはそれ相応の実力の持ち主だと思いました。音楽的には大変楽しめました。

ところで、このオペラは初めて聴くものなので事前にDVDで予習しました。聴いたものは1980年録画のROHのもので、奇しくもこの日曜日に亡くなったジョーン・サザーランドがタイトルロールを歌っているものです。このDVDの出来はすばらしく、サザーランドは言うに及ばず、テノールのアルフレッド・クラウス、メゾソプラノのアン・ハウエルズ、バスのスタッフォード・ディーンも美しくも迫力ある歌唱で、演技も堂にいったもの、舞台は古典的なつくりと衣装が美しいし、ボニングの指揮もこれぞドニゼッティといわんばかりの心に迫る演奏、30年前の録音にしては音質もすばらしく、お勧めのDVDです。このドン・アルフォンソの迫力ある歌唱を聴いてしまったら他の歌手で満足するのは稀だろうと思います。

コンサート終了後の写真
主要役4人
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José Bros and Edita Gruberova
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Edita Gruberova, 後ろはコンサートマスターのRainer Küchlさん
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José Bros
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Edita Gruberova and Michele Pertusi
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Laura Polverelli
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Friedrich Haider
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おまけ。Kさんこと第1ヴァイオリン奏者のWilfried Kazuki Hedenborgさん
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by dognorah | 2010-10-12 20:35 | オペラ

プッチーニのオペラ「トスカ」

2010年10月5日、ヴィーン国立歌劇場にて。
Tosca: Melodramma in three acts by Giacomo Puccini

* Keri-Lynn Wilson | Dirigent
* Margarethe Wallmann | Inszenierung

* Catherine Naglestad | Floria Tosca
* Massimo Giordano | Mario Cavaradossi
* Falk Struckmann | Baron Scarpia
* Janusz Monarcha | Cesare Angelotti
* Wolfgang Bankl | Mesner
* Wolfram Igor Derntl | Spoletta
* Clemens Unterreiner | Sciarrone
* Alexandru Moisiuc | Ein Schließer

トスカを歌ったキャサリン・ネイグルステッドは2004年9月にROHの「コジ・ファン・トゥッテ」でフィオルディリージを歌ったのを聴いたのが最初の経験で、次は2006年9月にパリの「サロメ」でタイトルロールを歌ったのを聴いたことがあります。フィオルディリージのことはあまりよく覚えていませんが、サロメは大変好印象を持っています。また2006年6月にはROHでトスカを歌ったのですが私は聴いていません。友人たちの間では彼女の歌唱は賛否両論ありました。
でも、今回のトスカで聴かせた彼女の歌唱はあまり評価できません。声はきれいな高音が出る場合もあるのですが全音域に渡ってすばらしいというわけではなく、かなりむらがありました。第2幕の有名なアリア「歌に生き、愛に生き」もよくなく、観衆の拍手もまばらでした。舞台上の姿はゲオルギューに匹敵するスタイルのよさで十分美しいのですが。

カヴァラドッシ役のマッシモ・ジョルダーノはすでにROHで聴いたことがありよい印象を持っていますが、今回は昨年よりかなり痩せていて、最初は別人かと思いました。歌唱の方は相手役と同様あまり好調とは言えず、高音はいいのに中低音が魅力に欠ける印象です。痩せたのが災いしている可能性はありますね。

スカルピアを歌ったファルク・シュトルックマンは演技も歌唱も迫力十分でよかったのですが、声の方は最初やや濁りが気になりました。それはだんだんよくなっていきましたが記憶にあるあのすばらしいシュトルックマンには及びません。時たま音をはずすこともあり好調とは言えない出来でした。

アメリカ人女性指揮者ケリ=リン・ウイルソンはまあまあの出来だけど、オケの音はあまり魅力的とは言えません。しかし歌手に要求する歌唱はちょっと新鮮さを感じました。特に脇役陣が目立つ歌い方など。

演出は古典的でオーソドックス。よく出来ていると思いました。
いつも思うことですが、ここの英語字幕はかなりまじめに翻訳されていて、ROHのようなごまかしがなく、せりふの細部までよく理解できます。こんな内容をしゃべっているのかー、と思うことがしばしば。

第1幕終了後のカーテンコール
Massimo Giordano, Catherine Naglestad and Falk Struckmann
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第2幕終了後のカーテンコール
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Falk Struckmann
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第3幕終了後のカーテンコール
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Keri-Lynn Wilson
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by dognorah | 2010-10-12 01:30 | オペラ

ビゼーのオペラ「真珠採り」(コンサート形式)

2010年10月4日、ROHにて。
Les pêcheurs de perles: Opéra in three acts
Music: Georges Bizet
Libretto: Eugène Cormon and Michel Carré

Conductor: Antonio Pappano
Orchestra of the Royal Opera House
Léïla: Nicole Cabell
Nadir: John Osborn
Zurga: Gerald Finley
Nourabad: Raymond Aceto

セイロン島を舞台にバラモン教徒たちが主役のお話です。

レイラ役を歌ったアメリカ人ソプラノ、ニコル・カベルは2006年9月の「ユダヤの女」でPrincess Eudoxieを歌ったのを聴いたことがありますが、その時と同様ビロードのように滑らかな美声でとてもよい歌唱でした。

ナディール役のジョン・オズボーンもアメリカ人で初めて聴くテノールですが、伸びのある華やかな美声が気持ちよく響き、レイラといいコンビでした。

ズルガ役のジェラルド・フィンリーはいつも通り安定したバリトンで迫力がありました。

ヌラバッド役のアメリカ人バスも不満のない歌唱で、今夜は歌手すべてが調子よかったことになります。この人は過去に「セビリアの理髪師」のドン・バジリオ役で聴いたことがあります。しかしカナダ人一人にアメリカ人3人という布陣でフランスオペラをやるというのも少し不思議な感じがします。フィンリーはネイティヴのフランス語でしょうけれど。

パッパーノ指揮の管弦楽は舞台に乗っているせいか響きがよく、ビゼーの美しい音楽を堪能しました。パッパーノは例によって結構うるさく声を出しながら指揮していましたが、いい音楽を作ってくれました。
ということで、音楽的に堪能するすばらしい出来で、私の手持ちのDVD(ヴィオッティ指揮フェニーチェ劇場)よりはるかに楽しめました。ROHではこれでこの曲をやるのは15回目なのに、どうして今回舞台上演をしないのでしょう。残念です。

終演後の写真
Raymond Aceto, Gerald Finley, John Osborn and Nicole Cabell
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Nicole Cabell and Antonio Pappano
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Nicole Cabell
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John Osborn
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Gerald Finley
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Raymond Aceto
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by dognorah | 2010-10-10 22:38 | オペラ

バレー「オネーギン」(リハーサル)

2010年9月29日、ROHにて。
ONEGIN: BALLET IN THREE ACTS
MUSIC: KURT-HEINZ STOLZE AFTER PYOTR IL'YICH TCHAIKOVSKY
CHOREOGRAPHY: JOHN CRANKO
DESIGNS: JURGEN ROSE AFTER ORIGINAL 1969 DESIGNS FOR STUTTGART BALLET
CONDUCTOR: VALERIY OVSYANIKOV
ORCHESTRA OF THE ROYAL OPERA HOUSE

EUGENE ONEGIN: THIAGO SOARES
LENSKY: JOHANNES STEPANEK
MADAME LARINA: GENESIA ROSATO
TATIANA: ROBERTA MARQUEZ
OLGA: YUHUI CHOE
NURSE: FRANCESCA FILPI
PRINCE GREMIN: THOMAS WHITEHEAD

このバレーは2007年に一度見ています。その時はタチアナが手紙を書く場面でのコジョカルとコボーグのダンスに感動しましたが、今回の同じ場面、悪くはないもののそれほどの感動はありませんでした。ソアレスはニヒルなオネーギン役にはぴったりの風貌ですね。マルケスはオネーギンへの感情の綾や起伏がとても上手く表現していました。デュエットでは第1幕のオルガとレンスキーによるものが見ごたえありました。Yuhui Choeの踊りは大変魅力的です。
指揮者は前回見た時と同じ人でした。この演目の時はこの人が振ることになっているのでしょう。とてもこなれた演奏で音楽的にも楽しめました。ところで、この音楽のことは今まであまり深く考えなかったのですが、チャイコフスキーに基づいてシュトルツェという人が作曲したという経緯を調べたら、オペラ「エフゲニー・オネーギン」の音楽は全く入っていないんですね。詳しいことはWikiに述べられていますが、振り付けのクランコは南アフリカ出身ながらイギリスで振付家として名を成した人で、「エフゲニー・オネーギン」のバレエ化を決意した時、音楽はオペラと同じものを編曲して使うことを考えていたそうです。そしてロイヤルバレーでヌレエフとフォンテインを主役として上演する話が進んでいたけれど、オペラの音楽を使うことにロイヤルオペラハウスが難色を示し、更にクランコが芸術監督をしていたシュトゥットゥガルトバレーも同じ考えだったので、仕方なしにシュトルツェに作曲を依頼したそうです。彼はチャイコフスキーのピアノ曲などを寄せ集めて編曲したのでチャイコフスキーの名前は表記されているけれど音楽はオペラのものとは違うものになったのでした。

カーテンコールの写真
ROBERTA MARQUEZ and THIAGO SOARES
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THIAGO SOARES
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ROBERTA MARQUEZ
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YUHUI CHOE
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YUHUI CHOE and JOHANNES STEPANEK
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VALERIY OVSYANIKOV
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by dognorah | 2010-10-02 07:59 | バレー