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マクヴィカーの新演出「アイーダ」初日

2010年4月27日、ROHにて。

Aida: Opera in four acts
Music: Giuseppe Verdi
Libretto: Antonio Ghislanzoni after a scenario by Auguste Mariette

Director: David McVicar
Conductor: Nicola Luisotti

Aida: Micaela Carosi
Radames: Marcelo Álvarez
Amneris: Marianne Cornetti
Amonasro: Marco Vratogna
Ramfis: Giacomo Prestia
King of Egypt: Robert Lloyd
Priestess: Elisabeth Meister
Messenger: Ji-Min Park

演出に感銘しました。舞台装置や衣装にはエジプトらしさの無い部分が多分にありますが、そういうことを超越した緊張感溢れる演劇空間には最初から最後まで惹きつけられました。合唱隊や俳優の演じる群集処理が秀逸で、歌が無くて音楽が鳴っているだけの時間でも統率の取れた動きで常に舞台に締りを与えて観客の目をそらさない卓越した演出でした。さすがマクヴィカー!彼の演出は数多く見ていますが今まで見た中では最高の出来です。このオペラは歌が無くて伴奏音楽だけが鳴る場面がいくつかあるのですがそこでのダンスや儀式などがとてもユニークで大いに楽しめました。ラダメスを戦場に送り出す場面では10人ぐらいの半裸の女性がダンスをしながらふんどしひとつのやはり10人ぐらいの男性をナイフで刺して出てくる血を自分の胸などの塗りつけた後その血をラダメスにも塗って必勝を祈祷するようにしています。ダンスの振り付けも大したものでダンサーも質の高い踊りを披露してくれました。ただ、衣装やエジプト人の顔のメークにはやや違和感があるし、刀剣がつばの無い日本刀のようで握り方も日本刀そっくりだし軍人の防具も日本の戦国時代に使われたものそっくりでエキゾティシズムの方向がちょっと違うんじゃないのと言いたいところもあります。カーテンコールでの観客の反応はブーもあればブラヴォーもありで分かれましたが、私は断然ブラヴォーです。

そして、指揮のルイゾッティがまた凄くて、その演出にぴたっと合わせたかのような緩み無い音楽作りで劇的効果抜群、唸りました。今回初めて体験したことですが演出とオケがこれだけの高みに達していると歌手の出来に少々瑕があろうとあまり気にならなくなります。凱旋場面での(この演出ではラダメスの凱旋は無いですが)トランペットは左右のバルコニーボックス席に陣取って演奏されましたが、効果もさることながら最高の演奏でした。

第1幕では主役級歌手3人は決して好調ではなく、それぞれに問題を抱えていましたが時間の経過と共によくなりました。女性陣は回復が早くて後半は持ち味を出していたのですが、ラダメスは改善して時折アルバレスらしい輝きのある高音を出してはいたものの最後まで好調な声にはならなかったのが残念です。第1幕の清きアイーダなど拍手する気にも成らなかった。今まで聴いたアルバレスの中では最低の出来でしたね。
アイーダを歌ったミカエラ・カローシは全面的には好きな声ではありませんが結構いい歌唱で、恋人への愛と祖国への愛の板ばさみになった複雑な心境がにじみ出るようなニュアンスが豊かに表現されていました。
アムネリスを歌ったマリアンネ・コルネッティは昨年9月の「ドン・カルロ」でエボリ公女を好演した人ですが、今回も第1幕こそちょっともたもたしたもののどんどん調子を上げて第3幕では絶好調でした。よかったです。
エジプト王を歌ったロバート・ロイドはいつもの芯のある歌唱が役にぴったり、アモナスロを歌ったマルコ・ヴラトーニャはあまり通る声ではないものの上手い歌唱で満足。ラムフィス役は当初クヮングチュル・ヨーンが予定されていたのになぜかキャンセルされてジャコモ・プレスティアが歌いましたが、この人は声量が無いのかマイクのヴォリュームを一杯にあげて歌っていました。見苦しいものです。今回は久しぶりにアンフィシアター最前列に座りましたが、この席は相変わらず歌手のマイク増幅された声が気になるものの、舞台に強く惹きつけられてそれもあまり腹が立たず。
合唱は男女とも感心する出来で大変よかった。

今日はチャールズ皇太子夫妻もロイヤルボックスで鑑賞されていましたが、いい演目をご覧になったと思います。

カーテンコールの写真は例によってクリックで拡大します。
Marianne Cornetti、Marcelo Álvarez and Micaela Carosi
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Marco Vratogna, Robert Lloyd and Ji-Min Park
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Nicola Luisotti
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David McVicar
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いつもはTシャツにジーンズというマクヴィカーも今日は終演後のディナーに出席するためかブラックタイです。このディナーに出席する人が大勢いて大変着飾った人たちで一杯でした。ROHのFund Raisingを兼ねているので1000ポンド単位の代金で私にはまったく縁がありません。
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by dognorah | 2010-04-29 10:21 | オペラ

吉田都さんロンドン最終公演「シンデレラ」

2010年4月23日、ROHにて。
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CINDERELLA: Ballet in three acts
Music: Sergey Prokofiev
Choreography: Frederick Ashton
Conductor: Pavel Sorokin
Orchestra of the Royal Opera House

CAST
CINDERELLA: MIYAKO YOSHIDA
THE PRINCE: STEVEN McRAE
CINDERELLA'S STEP-SISTERS: LUKE HEYDON, WAYNE SLEEP
CINDERELLA'S FATHER: CHRISTOPHER SAUNDERS
FAIRY GODMOTHER: LAURA MORERA

ACT 1 SCENE 1
DANCING-MASTER: JOSE MARTiN
TWO FIDDLERS: MARK GREENSILL, DAVID HANESWORTH
A TAILOR ERNST MEISNER DRESSMAKERS: CELlSA DIUANA, DEMELZA PARISH
SHOEMAKER: MICHAEL STOJKO
HAIRDRESSER: JONATHAN WATKINS
A JEWELLER: LUDOVIC ONDIVIELA

ACT I SCENE 2
FAIRY SPRING: IOHNA LOOTS
FAIRY SUMMER: HIKARU KOBAYASHI
FAIRY AUTUMN: AKANE TAKADA
FAIRY WINTER: CLAIRE CALVERT

ACT ll
JESTER: PAUL KAY
THE PRINCE'S FRIENDS: RYOICHI HIRANO, VALERI HRISTOV, JOHANNES STEPANEK, ANDREJ USPENSKI
SUITORS: GARY AVIS, MICHAEL STOJKO

ACTIII
THE ENTIRE CAST

ロイヤルバレーで長年プリンシパルダンサーとして活躍してきた吉田都さんが今年夏に退団することが発表されたのが昨年で、いよいよ今日がコヴェントガーデンで踊る最後の日となった。演目のシンデレラというバレーは初めて見たが、それほど感銘すべきプロダクションではなく、それが彼女の最後というのはちょっと残念かもしれない。夏のロイヤルバレー日本公演では彼女はロメオとジュリエットを最終公演とするのでそちらの方が魅力的かも。そうは言っても彼女の踊りや立ち居振る舞いは素敵で極められた芸という感じがする。ロイヤルバレーの最高齢ダンサーとは言え、見た目には年齢的に衰えているわけではないのに退団してしまうのは勿体ない気がする。
相手役のスティーヴン・マクレは昨年11月のくるみ割り人形に続いてのお勤めであるが、今回も爽やかな踊りとサポートで楽しめた。
他の役では日本人ダンサーが3人も出演して見るのに大忙しといったところ。
振り付けはたいしたことが無いけれど、音楽はすばらしく、指揮も大変よくていい音が楽しめた。
特別な公演なのでカーテンコールの模様をヴィデオでお見せするとともに写真をたっぷりとアップしました。トップの写真も含めてすべてクリックで拡大します。



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ジョナサン・コープも花束を持って駆けつけた。
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春夏秋冬の精を踊った女性たちと、王子の友人たち。
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床が花だらけなので足の踏み場を慎重に選ぶ吉田さん
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by dognorah | 2010-04-28 00:21 | バレー

BBC交響楽団マルティヌー連続演奏会第5回目

2010年4月17日、バービカンホールにて。

Stravinsky: Symphony in Three Movements
Prokofiev: Piano Concerto No 2 in G minor
Martinů: Symphony No 3

Jiří Bělohlávek: conductor
Barry Douglas: piano

ストラヴィンスキーの「3楽章の交響曲」は結構充実しているときの作品かリズムやメロディに春の祭典的なエネルギーを感じる。いい演奏でした。

プロコフィエフの協奏曲第2番は第3番のような派手派手しいピアノ演奏はあまり無いようで、その分叙情的な印象をを感じることも多いです。でもテクニック的には難しいところもあるようで、いつもはサラっと弾き飛ばす感じのダグラスが真剣な面持ちで鍵盤を注視しながら弾いていました。硬質な音がこの曲に合っているかちょっとわかりませんが。ここでもオケの演奏はがっしりした骨格を与えるよい伴奏でした。

Jiří Bělohlávek and Barry Douglas
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マルティヌーは今迄で一番好きといえる交響曲で、第1楽章が始まってすぐにこの連続演奏を聴く気になったオペラ「ジュリエッタ」で感じたすばらしい音楽に再び出会った気分になりました。第2楽章がまた美しい楽章で起伏にも富んでいます。第3楽章は戦争終結の開放感があふれる明るい色彩が気分を高揚させてくれます。その終結部分はピアノと減のユニゾンで、まるでこれから新しい時代が始まるぞ、と言いたげな決意を新たにするような終わり方をするのが印象的です。聴いてよかったと思える作品でした。
これで来月の第6番を残すだけとなりましたが、残念ながら私は里帰りを予定しているためそれは聴くことができません。第2番は遅刻して聴き逃していますので全部で4曲を聴いただけとなります。2番と6番はまたの機会に聴けることを念じています。
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by dognorah | 2010-04-23 23:42 | コンサート

ConTempo Quartet演奏会

2010年4月1日、ルーマニア文化協会にて。

とてもいい演奏会だったのに翌日からの旅行のために記事アップを忘れていました。
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コンテンポ弦楽四重奏団は1995年にブカレストの音楽大学で結成されました。第1ヴァイオリンとチェロが男性で、現在は夫婦二組での構成となっています。国際的にかなり有名でウイグモアホール、カーネギーホールなど世界中で活躍しています。(写真はIrishTimes.comより借用)

プログラム
R. Schumann: Quartet No.3, Op.41
G. Enescu: Quartet No.2, Op.22
L. van Beethoven: Quartet Op.132

3曲ともとても重厚な曲目でメインディッシュを3皿頂いたような気分です。演奏は美しさと緊張感が織り成される深遠なもので密度が高かったです。最初の二曲は初めて聴く作品ですが最後のベートーヴェンのものは若いころからよくレコードで聴いていた好みの曲です。それもあってか、この曲の第4楽章は自分が持っているイメージとは少し違う演奏であることがよくわかり、全面的には賛同できるものではありませんでした。私はもっと魂の奥深いところを揺さぶるようなエネルギーを欲していますが、今回の演奏はやや軽いと思いました。そのために深刻な悩みから解放されて明るい気分になる第5楽章との対比が少し弱いものになっています。
とはいっても3曲とも大変楽しめたいい演奏会でした。ここで開催されるコンサートはこういった国際的に活躍しているレヴェルの高い人たちが出演するのではずせません。
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by dognorah | 2010-04-12 02:34 | コンサート

ベルリオーズ「トロイ人」公演

2010年4月4日、Het Muziektheater (Amsterdam)にて。

Les Troyens: Grand opéra en cinq actes
I. La prise de Troie
II. Les Troyens à Carthage
Music and libretto: Hector Berlioz

muzikale leiding: John Nelson
regie: Pierre Audi
orkest: Nederlands Philharmonisch Orkest
koor: Koor van De Nederlandse Opera

Énée: Bryan Hymel
Chorèbe: Jean-François Lapointe
Panthée: Nicolas Testé
Narbal: Alastair Miles
lopas: Greg Warren
Ascagne: Valérie Gabail
Cassandre: Eva-Maria Westbroek
Didon: Yvonne Naef
Anna: Charlotte Hellekant
Hélénus/Hylas: Sébastien Droy
Priam: Christian Tréguier
Un chef grec/1 ère sentinelle: Alexander Vassiliev
Un soldat: Peter Arink
2ème sentinelle: Patrick Schramm
L'ombre d'Hector/Le dieu Mercure: Philippe Fourcade
Sinon: Christopher Gillett
Polyxène: Michaëla Karadjian
Hécube: Danielle Bouthillon
Andromaque: Jennifer Hanna
Astyanax: Steven Fluit, Stijn Koene
Hector /Iarbas: Standish de Vries

二日続けてトロイ関連のオペラを見ることになってしまいました。

運河沿いに建つアムステルダムのオペラ劇場Het Muziektheater
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ネーデルランド・オペラが上演されるMuziektheaterは1988年に建てられたモダンな劇場で、座席数は約1600とのことです。ここもモネ劇場同様今回が初めての訪問です。内部は機能的なつくりで、天井はあまり高くなく星のようにちりばめられた小さな電球による照明です。座席は足の長いオランダ人がゆったりと座れるように前後の間隔がたっぷりと取られていて座ったままでも奥の客が出入りできます。座席配列は直線ではなくゆるい円弧状になっています。今回私が座った席はストールの前から3列目右寄りでしたが円弧状のため前2列は私の前にはなく、ほぼ舞台かぶりつき状態でした。オケピットの仕切りが無く客席フロアからプールのようにストンとピットになっています。転落防止のためか細いロープが上下2本張ってありますが、そのため演奏中はピットの中の様子がよく見えます。私の席からはヴィオラ奏者の譜面が読めてしまいます。インターヴァルに上階の方も見て回りましたが、ほぼ見切り席は無い設計になっていました。
音響はとてもよかったと思いますが、このスケールのオケをフルに鳴らすと歌手の声が霞んでしまう場面が頻繁にありました。余りにもピットに近い私の席の問題かもしれませんが。
舞台は幅も高さも巨大で、パリのバスティーユよりも一回り大きいと思いました。したがってピットの幅も十分あって、このオペラに要求されるハープ5丁などの大編成のオケが悠々と収まっていました。この大きな舞台を生かし切るような舞台装置ならさぞかし見ごたえがあるでしょうが、今回の演出家が使ったものは矩形の巨大柱を何本か横にしたり縦にしたりしただけなのでちょっと寂しいものがありました。横や斜めにしたときは登場人物がその上を歩いて二階建て三階建てのようにして上下の空間を使ってはいましたが必然性はあまり感じられません。ついでに述べると、演出自体のインパクトはあまり無く、やや散漫で、2006年にパリで見たヴェルニッケの演出の方がはるかにすばらしいです。ヴェルニッケはかなりカットしており、今回はほとんどカットなしだったにもかかわらずです。指定されたバレーも挿入されていましたが、この振り付けがヒョットコ踊りとでも形容したくなるような噴飯もので、退屈極まりなくいらいらさせられるものでした。これじゃカットしてくれた方が遥かにいいです。音楽もそれほど素敵じゃないし。ステージ奥の巨大スクリーンには星雲をちりばめたような映像が投射されており、場面に応じて明るさや色が変わって雰囲気を出しているのはなかなかいいです。登場人物の衣装などは古典的でいいのですが、カサンドラ役はアフリカかアメリカインディアンの預言者かと思わせる派手な顔のメークでまったくいただけない。ギリシャ時代にこんなメークをするかねぇと問いたくなります。衣装もダサいし。

歌手ですが、エファ=マリア・ウェストブルックはほぼ期待通りながら、いつもよりはインパクトが少ない気がしました。もともと第1部のカサンドラには印象的な歌唱は用意されていないからかもしれません。第2部のディドンを歌ったイヴォンヌ・ネフは前半ヴィブラートが目立つ美しくない声でがっかりでしたが、だんだんよくなり、第5幕の長大なアリアは大変すばらしいものでした。でも、パリで聴いたポラスキーには及びません。ディドンの妹であるアンナを歌ったシャルロッテ・ヘレカントはあまりよくなく、レヴェル的に一段落ちる印象です。男性歌手では、第1部でコレブを歌ったジャン=フランソワ・ラポイントはよく声が出ていました。第1部、第2部を通じてエネー役を歌ったブライアン・ハイメルはレヴェルの高いテノールでした。歌う時間は短いけれど、イオパス役を歌ったグレッグ・ウオーレンは魅力的な声を持ったいいテノールです。ロンドンでお馴染みのアラステア・マイルズが歌うナルバル役は非常に印象的ではないけれどまあまあというところ。合唱はなかなか上手でした。

指揮者ジョン・ネルソンはアメリカ人で、指揮棒は使いませんが作る音楽はすばらしくて納得のいくものでした。でも全体としては演出と音楽の整合性があまり感じられなくて、オペラから受ける感動は残念ながらあまりありませんでした。

以下、カーテンコールの写真です。初日なので出演者全員が花束をもらっていました。ROHと違って男性にも花束が渡されるんですね。

Énée: Bryan Hymel and Didon: Yvonne Naef
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Anna: Charlotte Hellekant and Cassandre: Eva-Maria Westbroek
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Chorèbe: Jean-François Lapointe
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conductor: John Nelson
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director: Pierre Audi
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by dognorah | 2010-04-11 07:54 | オペラ

モネ劇場の「イドメネオ」公演

2010年4月3日、La Monnaie, Brusselにて。

Idomeneo, re di Creta: Dramma per musica in tre atti, KV.366
Music: Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto: Giambattista Varesco

Direction musicale: Jérémie Rhorer
Mise en scène: Ivo Van Hove

Idomeneo: Tom Randle
Idamante: Malena Ernman
Ilia: Simona Šaturová
Elettra: Alexandrina Pendatchanska
Arbace: Kenneth Tarver
Gran Sacerdote di Nettuno: Nigel Robson
La Voce: Peteris Eglitis
Orchestre symphonique et chœurs de la Monnaie

パリに続いて今年2度目の「イドメネオ」ですが今回も大変楽しめました。歌手も合唱もレヴェルが高いです。でも、各アリアはイドメネオを除いてそれほど印象的ではないです。タイトルロールのトム・ランドルというアメリカ人テノールはスピント系の太い声で声量もあり迫力がありました。上手いです。
イダマンテを歌ったマレーナ・エルンマンは時々中低音で潤いがなくなる声でしたが概ね良好。声量的にはあまり響かず、エレットラにはかないません。それにしても男っぽいメーキャップですね。ぱっと見にはとても女性とは思えません。鬢をつけたりしているし。
イリア役のシモーナ・サチュロヴァはモーツァルトにふさわしいきれいな声で大変よかったと思います。
エレットラ役のアレクサンドリーナ・ペンダチャンスカは以前ドンナ・エルヴィーラ役で聴いたことがあり、そのときも好印象を得ましたが、今回もスピント系のいい声でした。2月にパリで聴いたタマル・イヴェリには及びませんが。

指揮は37歳の若手ながら生き生きとしたモーツァルトらしい音楽を作り出して大満足です。上手い人だと思います。オケの音は昨日と違って大変よかった。ホールが違うから単純に比較はできませんが音響的には満足です。なお、私の席はストール最前列のやや左寄りです。指揮者の横顔がよく見えます。今回が私のモネ劇場デビューですが、。内装もロビーも結構豪華だしかなり気に入りました。座席数は1170とのことで私がこれまで行ったことのあるオペラ劇場の中では最小かも。

天井
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客席
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舞台は第1幕では奥に行くほど幅が狭くなる形の部屋になっており、壁には古代らしい雰囲気の風景に全裸男女が描かれていたので、古典的コスチュームかと思ったものの始まってみれば全くの現代風でした。登場人物はすべて現代オフィスに勤める人たちの服装で、ダーク系の背広にOLらしい黒いスーツ姿です。一番奥にスクリーンがあってヴィデオが多用されます。序曲の間はイダマンテの子供時代と思われる坊やとお父さんの映像。その後は戦争にかかわる映像が多数。その映像はストーリーを説明する目的に使われているようで、それはよく理解できます。しかしそれに加えて室内に用意された小型スクリーンに舞台上の登場人物がアップで映されたりします。そのため、舞台上と客席にヴィデオカメラマンがずっといます。時にはそのカメラマンと登場人物が絡んだりします。その辺の意味があまりよくわかりません。そのときに歌われている台詞の意味がちゃんとわかっていればあるいは理解できるのかもしれませんが、英語字幕はないのでお手上げです。ただ、演出が音楽を邪魔することはなく、オペラ自体は大変楽しめました。ネプチューンの送り込んだ蛇と戦って仕留めたイダマンテは鼻血を出してシャツも血で汚して登場しますが、美形のエルンマンになんて格好をさせるんだ!とちょっと不愉快でしたが。カーテンコールの写真が美しくないのです(笑)
なお、パリのときと同様この公演でも第2幕のアルバーチェのアリアはカットされていました。どうもカットする方が普通なのでしょうか。

カーテンコールの写真はクリックで拡大します。
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Tom Randle as Idomeneo
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Malena Ernman as Idamante
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Simona Šaturová as Ilia
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Alexandrina Pendatchanska as Elettra
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Kenneth Tarver as Abace
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Conductor, Jérémie Rhorer
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by dognorah | 2010-04-10 02:30 | オペラ

再びグルベローヴァの「ノルマ」公演(コンサート形式)

2010年4月2日、Palais des Beaux-Arts (BOZAR)にて。

Vincenzo Bellini: Norma
Direction musicale: Julian Reynolds
Norma: Edita Gruberova
Pollione: Zoran Todorovich
Adalgisa: Silvia Tro Santafé
Oroveso: Giorgio Giuseppini
Clotilde: Carole Wilson
Flavio: Carlo Bosi
Orchestre symphonique et chœurs de la Monnaie

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モネ劇場主催で、3月27日の公演はモネ劇場でされたのになぜか今回の分はボザールでの開催です。奥行きと幅がほぼ同じ印象ですが座席数は2200とのこと、結構大きいですね。今回はストールの右寄り前から5列目ぐらいに座りましたが、音響的にはよかったです。このホールに来てみて、80年代終わり頃にここでラーザリ・ベルマンというソ連のピアニストのリサイタルに来たことを思い出しました。

実はグルベローヴァのノルマコンサート形式は3年前にヴィーン国立歌劇場で聴いているので、レイネさんからリターンチケットが出ているとの情報を頂いた時、ちょっと迷いましたがどうせ2日の夜はブリュッセルにいるんだし、3年後のグルベローヴァがどういう状態なのかにも興味が湧いて切符を抑えたのでした。そして、聴いたのは正解で、行って本当によかったと思いました。3年前よりはるかに調子がよく、この年齢だと調子を維持するだけでも大変な努力が必要でしょうに、以前よりよいというのはすごいことだと驚嘆しました。今年64歳ですよ。高温が苦しそうなところもほとんどなく、終始声に潤いがあり声量も衰えていません。各場面のニュアンスの表現は襞の一枚一枚を紡ぐようで気品に満ち満ちています。ピアニッシモでの美しさにも感嘆しました。心から感動しました。

アダルジーサ役を歌ったシルヴィア・トロ・サンタフェは素直な発生と美声で第一印象はなかなかよかったです。声を張り上げすぎて金属音になったり、中低音が汚れることもありましたが、全体としてはかなりいい線を行っていたと思います。
ポリオーネ役のゾラン・トドロヴィッチはどこかで名前は聞いたことがあるものの実際に声を聴くのはこれが初めてです。声は太目の力強いものでドラマティックで迫力があります。声も艶があって美しく表現力ある歌唱もすばらしいものです。舞台に出てすぐ歌われるアリア"Svanir le voci"は、これを聴けただけでも来た甲斐があったというぐらいの印象を与えてくれるすばらしさで、思わずブラヴォーと叫んでしまいました。
オロヴェソ役のジョルジオ・ジュゼッピーニもいいバスで、音程はしっかりしているし艶のある声も魅力的です。
指揮のジュリアン・レイノルズはなんとイギリスの指揮者ながらこれまで聞いたことがありませんでした。活動の場がラニクルズと同様欧州中心のせいでしょう。この人、とても上手いです。歌手もとても歌いやすそうです。オケは時にショボイ音を出しますが演奏はきわめてまともでオペラを十分に楽しめます。

とにかく感動できる公演を聴けて大満足です。情報を下さったレイネさんに感謝します。
公演後はほぼ全員がスタンディングオヴェイションの大喝采のため、ストール席では非常に写真が撮りにくかったです。
Edita Gruberova
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Zoran Todorovich
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Edita Gruberova with Giorgio Giuseppini
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Edita Gruberova with Silvia Tro Santafé

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Julian Reynolds
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by dognorah | 2010-04-09 21:57 | オペラ

ロッシーニのオペラ「イタリアのトルコ人」ドレスリハーサル

2010年3月31日、ROHにて。

Il Truco in Italia: Dramma buffo in two acts
Music: Gioachino Rossini
Libretto: Felice Romani

Conductor: Maurizio Benini
Directors: Moshe Leiser and Patrice Caurier
Royal Opera Chorus
Orchestra of the Royal Opera House

Zaida: Lean-Marian Jones
Albazal: Steven Ebel
Prosdocimo: Thomas Allen
Don Geronio: Alessandro Corbelli
Fiorilla: Aleksandra Kurzak
Selim: Ildebrando D'Arcangelo
Don Narciso: Colin Lee

5年前に初演されたオペラの再演です。今回のキャストのうちアレン、コルベッリ、ダルカンジェロの3人は初演時と同じ配役です。

クルザクは歌唱はうまいものの声にやや潤いがなく、5年前のバルトリとは比べるべくもないです。演技的にはうまく、全体としてはまあまあ楽しめましたが。
アレンはやはり5年前の面影はなく老けましたね。そろそろ引退してほしいです。
コルベッリは相変わらずすばらしい。歌もさることながら演技的には2回目のせいか非常にこなれていて、前回よりも盛大に笑わせてくれました。毎度のことながら逸材ですね。
ダルカンジェロも前回と同様のすばらしさで、声に余裕のあるのがいいです。演技的にも前回より楽しめました。
Zaida役のジョーンズは新顔ですが、声はよいし歌もなかなかうまいです。
コリン・リーも相変わらずいい声で楽しませてくれました。

指揮は職人ベニーニ、淀みないロッシーニ節、すばらしいものでした。

それにしても久しぶりに見たこのプロダクション、演出のうまさに改めて感心しました。コルベッリがその演出をさらに洗練されたものにしている感じです。

写真はクリックで拡大します。
タイトルロールの Ildebrando D'Arcangeloと左にコルベッリとアレン
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Alessandro Corbelli
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Aleksandra Kurzak
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Colin Lee and Lean-Marian Jones
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Maurizio Benini
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by dognorah | 2010-04-08 00:09 | オペラ

ムーティ指揮フィルハーモニア管

2010年3月30日、RFHにて。

Riccardo Muti: conductor
Joshua Bell: violin
Philharmonia Orchestra

Beethoven: Violin Concerto in D, Op.61
Beethoven: Symphony No.3 in E flat, Op.55, Eroica

ベルのヴァイオリンはTVの中継放送で聴いたことがありますが、実演は初めて経験しました。繊細で優美な音です。あくまでも滑らかに丁寧に弾きます。ムーティ指揮フィルハーモニア管の演奏は序奏部こそスケールが大きく力強い演奏ですが独奏が入るとヴァイオリンにピタッと合わせてきます。弦楽器群の響きが殊の外美しいものでした。それもあって時にハッとする美しさに満ちた演奏でした。
今日は珍しくコーラス席に座って聴きました。木管群は全て奏者の背中しか見えないし、すぐそばで鳴らされるティンパニーがうるさい席ですが、ヴァイオリン群は楽器がこちらに向いているせいで、ちょっと遠くても非常に良く響いてきます。またバスは近くなのでとてもクリアに聞こえます。ということで音のバランスの悪い席ですがすばらしい演奏であることは充分感じることが出来ました。
ベルがどういうカデンツァを弾くのか興味があったのですが、過去に全く聴いたことがないユニークなもので、とても新鮮です。基本的にベートーヴェンの作曲したフレーズを変奏して敷衍していく感じでした。あとでフィルハーモニア管に尋ねたらジョシュア・ベル自身が作曲したものだそうです。若いのにいいですねこういう心意気。

交響曲第3番がまた名演で、何ら奇をてらわないオーソドックスな演奏ながら格調が高いものでした。ここでも弦楽器群は快調ですばらしい響きです。特に第2楽章は厳粛さが極致に達したかのようなテンションの高い演奏で感動しました。この楽章の演奏はムーティも大満足だったようで、終了後はオケに礼をするような仕草をしていました。こういうのが見て取れるのもコーラス席ならではですね。

写真はこの席ではなかなか顔が撮れませんが、青い上っ張りのような上着を着たJoshua Bellと、
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拍手に応えるベルを遠くから見守るRiccardo Mutiの姿です。
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by dognorah | 2010-04-01 04:17 | コンサート