<   2010年 01月 ( 3 )   > この月の画像一覧

ストラヴィンスキーのオペラ「The Rake’s Progress」再演

2010年1月22日、ROHにて。

1年半前にプレミエだった作品の再演です。歌手は主役のTom Rakewellにしろその相手役のAnne Trueloveにしろ今回の方が優れているのですが、オペラとしては初めて見た前回のほうが満足感が大きかったというのはどういう事か。ストーリーが完全にわかっている状態で同じ演出というのは飽きるということでしょうか。オペラとして底が浅いし、ストラヴィンスキーの音楽もそれほど魅力的ではないし。このオペラは何か違った観点で興味をそそられない限りもう見る必要はないと思った次第です。

Composer: Igor Stravinsky
Director: Robert Lepage
Revival Director: Sybille Wilson
Conductor: Ingo Metzmacher

Trulove: Jeremy White
Anne Trulove: Rosemary Joshua
Tom Rakewell: Toby Spence
Nick Shadow: Kyle Ketelsen
Mother Goose: Frances McCafferty
Baba the Turk: Patricia Bardon
Sellem: Graham Clark

歌手では久しぶりに聴くローズマリー・ジョシュアが大変素晴らしい歌唱で、これも好調なトビー・スペンスとともに大いに楽しめました。カイル・ケテルセンの演じるニック・シャドウもうまかったのですが、前回の悪魔の恐怖感を与えるような歌唱をしたジョン・リライヤのには及びません。
メッツマッハーの指揮は平凡というしかなく、これは前回のトーマス・アデスの方が遥かにいいです。今回退屈したのはあるいは指揮の方にも責任の一端があるかもしれません。それと、演出は別の人がちょっといじっているようなのでそれも原因かもしれないと思いました。見ていて何となく前回と舞台から受ける印象と異なっていたのです。

写真は左からRosemary Joshua, Ingo Metzmacher and Toby Spence
c0057725_8491016.jpg

[PR]
by dognorah | 2010-01-29 08:50 | オペラ

ヘンツェのオペラ「フェドラ」コンサート形式

2010年1月17日、バービカンホールにて。

Hans Werner Henze: Phaedra (UK premiere)
An opera in two acts
Christian Lehnert: libretto (ドイツ語)

Ensemble Modern
Michael Boder: conductor

Maria Riccarda Wesseling: Phaedra (mezzo-soprano)
Marlis Petersen: Aphrodite (soprano)
Axel Köhler: Artemis (counter-tenor)
John Mark Ainsley: Hippolytus (tenor)
Lauri Vasar: Minotaur (bass)

ギリシャ神話をネタにした演奏時間75分の短いオペラです。

あらすじ
ミノタウルスがテセウスに退治された後のクレタ島が舞台で、第2幕は場所がイタリアのネミ(Nemi)というところに移る(ヘンツェが住んでいる場所の近く)。
テセウスの妻フェドラは何故か義理の息子のヒッポリトゥスと一緒に住んでおり、彼のことが好きでたまらない。彼はモテる男らしく既に狩りの女神アルテミスと相思相愛の仲。それだけではなく愛の女神アフロディテも彼に思いを寄せている。ある日フェドラはヒッポリトゥスに愛を告白するが邪険にあしらわれる。その仕打ちに怒り狂った彼女はテセウスに手紙を書き、あなたの息子にレイプされたと嘘をつく。怒ったテセウスは息子を殺すことにし、ポセイドンに協力するよう要請する。ヒッポリトゥスが馬車に乗って海岸沿いを走っているときにポセイドンに蘇させられたミノタウルスが突然馬の前に現れ、驚いた馬のために彼は岩場に投げ出されて死ぬ。
アルテミスは彼をネミに運び、そこで蘇生させ、新しくヴィルビウスという名前を与えて鳥かごの中でペットとして飼う。それにフェドラとアフロディテがちょっかいを出すがアルテミスは今度は彼を洞窟の中に移す。そのうちに彼は森の王として君臨することになり、その後は何が起こるのかと登場人物たちがダンスを踊っておしまい。

ヘンツェはこのオペラの第1幕をほぼ完成した後2005年に原因不明の病に倒れ、昏睡状態に陥る。家族や友人たちはこれでもうヘンツェの命は終わりだと思ったそうで、世界中から友人たちが彼にお別れの挨拶をしにきたそう。しかし程なく彼は突然起き上がり、また作曲を始めた。そういう経緯から一度死んだヒッポリトゥスに自身を重ねあわせて第2幕を作曲したようだ。

音楽は結構聴きごたえがある。打楽器と管楽器が主役になっているが時折奏でられる弦(4人)の響きが魅力的で効果的だ。スピーカーで電子音楽もふんだんに鳴らされる。アンサンブルは総勢23人だが一つ一つの楽器の扱いが効率的で豊かな音楽が流れる。それにしてもこのEnsemble Modernという団体は凄い。演奏が非常に緻密だ。フランクフルトをホームにしているが多国籍メンバーで日本人も二人名前を連ねている。
歌手は女性歌手二人とテノールのエインズリーは十分素晴らしい。カウンターテノールはいまいち。バスは短い時間の歌唱ながら文句なし。

会場にいるヘンツェ氏に拍手する出演者達。写真はいずれもクリックすると拡大します。
Michael Boder, Lauri Vasar, John Mark Ainsley, Axel Köhler, Maria Riccarda Wesseling and Marlis Petersen
c0057725_9194064.jpg

こちらは聴衆からの拍手に答えるヘンツェ。
Hans Werner Henze in the audience.
c0057725_9201719.jpg

Ensemble Modern
c0057725_9312656.jpg

[PR]
by dognorah | 2010-01-19 09:32 | オペラ

シュトラウスのオペラ「エレクトラ」コンサート形式

2010年1月14日、バービカンホールにて。

Richard Strauss: Elektra

London Symphony Orchestra
Valery Gergiev conductor
Jeanne-Michèle Charbonnet Elektra
Angela Denoke Chrysothemis
Felicity Palmer Clytemnestra
Matthias Goerne Orestes
Ian Storey Aegisthus
London Symphony Chrous

年末年始は魅力的なイヴェントがなく、約4週間振りに行ったこれが今年の初コンサートです。
LSOによるオペラのコンサート形式は昨年の「オテロ」に次ぐものですが、今回も壮麗な音を響かせるオケの実力に唸るものでした。前回も思いましたがこのオケがピットに入った舞台を見たいものです。ゲルギエフの指揮は鳴らしすぎという印象があり、もう少し流れに淀みがあってもいいじゃないかと思いましたが、まあ楽しめました。

タイトルロールのジャンヌ=ミシェル・シャルボネを聴くのは丁度2年ぶりですが、前回のイゾルデとは衣装も全く違うし、髪を短く切ってしまったので舞台に出てきたときは別人かと思ったくらい前の印象は裏切られました。ちょっと痩せたような気がします。顔の皺も結構見えて、想像していたほど若くはないんだということもわかりました。
声の方は前と同様スムーズで、高音が苦しくなることもなく声量も十分で、歌う時間の多いエレクトラ役を難なく全うしました。非常に素晴らしいということはなくても十分な出来です。まるで舞台に出ているかのように表情や動作をちょっと過多気味というくらいたっぷり混ぜて熱演。腰を折り曲げて歌うことがあるのは癖のようです。

クリソテミス役のアンゲラ・デノーケも好調で声がよく出ていました。二人で歌うソプラノの競演はなかなか聴きごたえがあります。これに加えてクリテムネストラ役のメゾソプラノ、フェリシティ・パーマーも絶好調でエレクトラとの対話の部分は大迫力で、ここでも唸ってしまいました。
だいたいこのオペラは男声部分が非常に少ないので女声の出来が重要ですが今日の出演者はすべて文句なしでした。
しかし、オレステ役のマティアス・ゲルネというバリトンは余り感心しません。声に柔軟性がなく聴いている方まで堅苦しくなるような発声です。
エギスト役のイアン・ストーリーは流石に文句なし。トリスタンを歌う人がこんなチョイ役でお気の毒。

写真は終演後のもの。クリックすると拡大します。
Felicity Palmer, Angela Denoke and Jeanne-Michèle Charbonnet
c0057725_2304616.jpg

Matthias Goerne and Ian Storey
c0057725_2312467.jpg

[PR]
by dognorah | 2010-01-16 02:33 | オペラ