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チャイコフスキーのオペラ「イオランタ」公演

2009年7月27日、バーデンバーデン祝祭劇場にて。

Iolantha: Lirische Oper in einem Akt
Music: Peter Tchaikovsky
Libretto: Modest Tchaikovsky

Conductor: Valery Gergiev
Director: Mariusz Trelinski

Iolantha: Anna Netrebko
Graf Vaudémont: Piotr Beczala
René: Mikhail Kit
Robert: Alexei Markov
Ebn-Chakia: Alexander Gergalov
Almerik: Andrei Zorin
Bertran: Fyodor Kuznetsov
Marta: Natalia Evstafieva
Brigitta: Eleonora Vindau
Laura: Ekaterina Sergeeva

あらすじ
プロヴァンスの王、ルネには娘がいるが生まれながらの盲目で、本人はそれが正常な状態と教育し、周りのものにも真実を伝えてはならないと厳命を下している。また娘には自分が王であるとは伝えず、単なる騎士だと偽っている。幼少の頃から貴族のロベルトと婚約させているが、ロベルトの方は彼女を見たこともなく、勝手に好きな人を見つけて結婚するならそちらと思っている。ルネ王も結婚式は彼女の盲目が直らないとと思っているので、モーリシャスから高名な医者を連れてきて盲目を治療しようとしている。彼女の住む屋敷には庭園を通じて裏口があり、そこには何人もここへ立ち入ったものは死刑という警告看板が立てられている。ある日、森を散歩している間に道に迷ったロベルトとその親友であるヴォーデモンはその裏口の付近に来てしまう。警告が気にはなったが好奇心にそそられてヴォーデモンは屋敷の庭に入ってしまう。偶然屋敷から庭に出ていたイオランタを見つけ、その美しさに我を忘れ彼女と会話をするが、彼女も彼の受け答えに心をときめかす。しかし薔薇の花の色に関する会話から彼女が盲目であることが分かってしまう。そして彼女も自分の目が正常でないことを知ってしまう。そこへ医者を連れたルネが現れ、状況に立腹してヴォーデモンに死刑を言い渡す。イオランタの必死の取りなしでやや心を和らげ、もし治療がうまくいって彼女の盲目が直れば許すということになる。本人が直りたいという強い意志を示すことが治療開始の条件と医者が言うのに対して、恋する彼女は是非直して欲しいと希望し、治療が始まる。そしてそれは成功する。自由の身となったヴォーデモンは彼女と結婚したいと申し出るが、既に婚約者がいるので駄目だといわれる。そこへ当の婚約者ロベルトがやってきて、実は自分には他に好きな人がいるので婚約は取り消して欲しいと懇願し、めでたくヴォーデモンとイオランタは結ばれることになる。
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このオペラは100分程度の長さで、以前ロンドンでコンサート形式で聴いたことがあります。そのときは音楽に感動し、是非舞台を見てみたいものだと述べましたが、ネトレプコが主演することが動機となってバーデン・バーデンまで見に来たのでした。しかもゲルギエフ指揮のマリンスキー劇場の引っ越し公演なので、お国もののオペラには期待が持てます。事実、歌手が全てすばらしかったこともあって大変楽しめました。

ネトレプコは期待通り例の美声が満開でしたし歌唱的にも演技的にも納得行くものですが、必要な最高音はやや苦しそうなところがありました。衣装はタイトスカートの時もあり、ウェストはやはり太いままというのがよく分かります。でもここでも人気は絶大でカーテンコールは大拍手歓声でした。
女声陣ではメゾソプラノのナタリア・エフスタフィーワも魅力的な声を持っている人で印象的でした。合唱は女声合唱だけですが、全員メード服でピットに収まって歌っていて、え?と思いましたが最後の場面で舞台上に出る演出だったので納得です。上手かったです。

当初予定されていたビリャソンの代わりに出演したベチャラはもう何度もネトレプコと共演してお馴染みコンビとなっていますが、絶好調で言うことなしの歌唱でした。実はロベルト役のバリトン、アレクセイ・マルコフもすばらしくて、ベチャラより前に歌うアリアで大絶賛を受けたこともあってベチャラも張り切ったのでしょう。こういう相乗効果は良いですね。そのマルコフですがキーンリーサイドのように高音が華やかで声量もありとても魅力的に歌う人です。その他の低音歌手達も立派でした。

舞台は一面だけ壁とドアのある直方体の部屋が中央に置かれ、それが随時回転して壁が手前に来たときは庭の描写になると共に、壁の向こうで部屋の配置を換えたり衣装を替えたりする機能も果たすシンプルなものです。服装はかなり現代的で、ベチャラなどジャンパー姿です。演出家はなぜかオオカミが鹿などを狩るイメージを重ねたいらしく、オペラハウスのロビーには大きな3匹のオオカミが戯れている様を表現した剥製が置かれていたり、序曲の間中そういう関連のビデオが写されているし、部屋の壁には鹿など角を持った動物の頭蓋骨が一杯飾られていたり、劇の進行中に上から血だらけの大きな鹿の死体が落ちてきたり、と訳の分からないことが一杯。人間の動きには特に不自然さはなく、オペラの邪魔にはなりませんが。

ゲルギエフ指揮のマリンスキー管弦楽団は緻密な表現ですばらしい演奏でした。彼等はこの後中一日おいてロンドンで「ニーベルンクの指輪」を4夜連続で演奏するというタフさ。もちろん私もその中一日の間にロンドンに帰ってそれにつきあうわけですが。

カーテンコール時の舞台
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Piotr Beczala and Anna Netrebko
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Mikhail Kit(ルネ王)、この人は3日後にはロンドンでヴォータンを歌います。
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Alexei Markov(ロベルト)
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by dognorah | 2009-07-31 21:43 | オペラ

ラフマニノフのオペラ「アレコ」公演

2009年7月27日、バーデンバーデン祝祭劇場にて。

Aleko:Opera in one act
Music: Sergei Raphmaninov
Libretto: Vladimir Ivanovich Nemirovich-Danchenko

Conductor: Valery Gergiev
Director: Mariusz Trelinski
Chor und Orchester des Mariinsky-Theaters St. Petersburg

Aleko: John Relyea
Zemfira: Irina Mataeva
Zemfiraの父:Sergey Aleksashkin
若いジプシー(Zemfiraの恋人):Sergey Skorokhodov
老ジプシー女:Elena Vitman

約1時間の短いオペラなので、本日の公演はチャイコフスキーのオペラ「イオランタ」との二本立てです。

あらすじ
砂漠にキャンプを張りながら移動するジプシー集団の中の物語。オペラはあるカップルの結婚式で始まるが、その祝宴の最中でのアレコとゼムフィラ夫婦の挙動はあまり協調的ではなく、夫への当てつけで乱暴に振る舞うゼムフィラのお陰で男達の乱闘へ発展してしまうくらい夫婦の間は冷め切ったものであることが分かる。場面変わって深夜にデートしているゼムフィラと若いジプシー男は次回のデートの約束を交わす。ところがその次回のデートの最中に夫のアレコが現れ、嫉妬のあまり若い男を刺殺してしまう。彼の死を嘆き、夫をなじる彼女に逆上したアレコは彼女も刺殺してしまう。皆が騒ぎを聞きつけて集まった場でゼムフィラの父親が、我々は法律というものを定めていないので例え殺人を犯したとしても罰を与えることは出来ないが、我々はもう殺人者とは共同生活できないので出ていって欲しいと、アレコを追放する。

オペラとしてはあまり面白くない筋ですが、音楽はラフマニノフらしい美しいもので、時には普段よく聴くピアノ協奏曲などではあまり聴かない激しい表現もあってなかなかのものです。歌手は全て聴き応えのある声で、ゼムフィラの父とアレコ役の二人のバスとバスバリトンは大変すばらしいものです。カナダ人のジョン・リライアはロンドンでもお馴染みで過去に何度も聴いていますが、最近では昨年7月の「The Rake’s Progress」のNick Shadow役です。ソプラノのゼムフィラ役はまあまあながら特に優れた歌唱ではありませんが、大根役者振りにはちょっと驚きました。恋人役のテノールもまあまあというところ。
舞台はすさんだ雰囲気を出すためか金網を使った醜いもの(下の写真参照)。
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Irina Mataeva, John Relyea and Sergey Skorokhodov
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余談
この劇場は初めて来ましたが、よく写真やDVDで見る味わい深い正面の建物は事務所とレストランに使われているだけで、劇場自体はその奥にある四角い箱です。
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箱としかいいようがないくらい味気ない建物で、内部もほとんど飾り気のない四角い空間で座席はコの字型に配置されています。天井のシャンデリアはちょっと華やかな気がしますが、これとてよく見ると素っ気ない作りです。
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3層になっていて収容人員は役2500人とのこと。今回私が座った席は3階の正面前から2列目でしたが、ROHでいえばAmphitheatreの前から10列目ぐらいでしょうか、舞台からはとても遠い席です。これで181ユーロは非常に高い。州立劇場ではないので補助金が出ていないのでしょう。
なお、オペラの字幕はドイツ語と英語が2行になって舞台上方に出てきますので知らないオペラでも筋はしっかりと追えます。パリなども見習って欲しいものです。
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by dognorah | 2009-07-30 22:08 | オペラ

準・メルクル指揮リヨン国立管弦楽団演奏会 (PROM10)

2009年7月24日、RAHにて。

* Takemitsu(武満徹): Ceremonial: An Autumn Ode (8 mins)
* Debussy, orch. Caplet: Estampes - Pagodes (8 mins)
* Ravel: Rhapsodie espagnole (16 mins)

* interval

* Takemitsu: Green (6 mins)
* Sarasate: 'Carmen' Fantasy (12 mins)
* Ravel: Tzigane (10 mins)

* interval

* Toshio Hosokawa(細川俊夫): Cloud and Light (UK premiere) (17 mins)
* Debussy: La mer (25 mins)

* Akiko Suwanai(諏訪内晶子): violin
* Mayumi Miyata(宮田まゆみ): shō(笙)

* Orchestre National de Lyon
* Jun Märkl: conductor

東洋と西洋、フランスとスペイン間の文化交流の結果生まれた音楽作品を集めた演奏会という趣旨らしい。私にとって今日の演奏者は全て初めて聴く人達なので、それも楽しみ。
プログラムは指揮者の好みなのか全て静かに始まる曲ばかり。
武満の最初の曲と細川の曲で笙を使う。宮田まゆみさんが白い衣装に裸足で登場。この楽器の音を聴くのも初めてであるが、雅楽の音らしい繊細な響きながら、普通には西洋の楽器と一緒に演奏するには音の大きさや音色の調和という点で作曲者がしっかりとケアをする必要がある。この武満のものにしろ後の細川のものにしろその点はぬかりない。曲としても繊細で緻密な仕上がりである。しかしこれらの曲を演奏する場合、必ず日本から笙の奏者を呼ばなくてはいけないから、自ずと演奏機会は限られるだろう。
今日のプログラムでは日本の作曲家の作品が断然密度の高い内容で、より楽しめた。サラサーテの曲はさすがに魅力的なもので、諏訪内さんのテクニックもあって会場内が一番湧いた作品だった。チガーヌは奏者のテクニックを披露する趣旨なのかも知れないがあまり魅力的な曲とも思えない。
管弦楽はこのホールで演奏するにはスケールが小さすぎる。特にヴァイオリン群の音が小さめで、曲に期待するダイナミックな響きが出にくい嫌いがある。私の聴取位置(オケの真横)や指揮者の技量のせいかもしれないが。指揮者についてはちゃんとしたホールで他の管弦楽団でもう一度聴いてみたいものだ。

Akiko Suwanai
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Akiko Suwanai and Jun Märkl
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by dognorah | 2009-07-29 23:29 | コンサート

Nicolas Costaninouピアノリサイタル

2009年7月22日、ウイグモアホールにて。

ドビュッシー:プレリュード第1巻
モーツァルト:ソナタ第13番変ロ長調、K333
ショパン:幻想曲、Op.49

キプロスのピアニストで、見たところ40歳ぐらいかと思ったが現在RCMでドクターコースにいるということからもっと若いのかも知れない。

最初の曲は何か具合が悪かったのか前半は、エーッ?と思うぐらいの出来の悪さで、ウイグモアでもこんな演奏をする人がいるんだと思ったが、後半は調子が上がってドビュッシーの音楽として楽しめるまでに回復した。
しかしインターヴァル後はまるで別人のような演奏を聴かせてくれた。最初のモーツァルトは活き活きとした表現がすばらしく楽しくて楽しくて仕方がないという喜びが大いに感じられるもの。音もまろやかにつぶらだって心地よい。これは秀演。
次のショパンもこの曲の題名らしい幻想的な世界を美しい音で表現してこれもとても楽しめる演奏だった。
一体最初の状態はどうしたのだろう。ウイグモアで演奏するのは初めてじゃないし、既に欧米で広く演奏活動をしているという人があんなに硬くなるなんて。ドビュッシーは好きな作曲家のようで、アンコールでも「亜麻色の髪の乙女」を再演していたくらい。
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by dognorah | 2009-07-24 00:06 | コンサート

The Fairy Queen (PROM 7)

2009年7月21日、RAHにて。

毎年恒例のグラインドボーン上演演目をセミステージ形式でPROMSに持ってくるもの。出演者はほぼオリジナル通り。歌手(一部合唱団員が兼任)が15人、俳優が16人、ダンサーが8人、それに合唱団とオーケストラという大勢の出演者でした。

純粋のオペラかと思ったら違っていて、まずシェークスピアの「真夏の夜の夢」という演劇があり、その一部にパーセルが付けた音楽が演奏されるというものでした。上演時間は途中20分のインターヴァルを入れて4時間という長さでそのうち音楽が入るのは4割程度でしたが、演出もまあまあでダンスも入るし、純粋の芝居があまり好きでない私でも結構楽しめました。笑いを取る場面も多く、会場は大いに沸いていましたね。後半だったか、ディズニー風のぬいぐるみを着たウサギたちが音楽に合わせて踊る場面があるのですが、すぐに数組のカップルになってそれぞれが多様なラーゲで擬似性交動作をして大受けでした。バニーは出てくるけれど子供向けの演しものじゃないよというところでしょうか。また最後の方で登場したアダムとイヴ(原作ではChinese ManとChinese Woman)がリンゴを与えられて食べたらはっとして服を着てしまう場面とか、Hymen役の俳優が指揮者にちょっかいを出して二人で殴り合いの真似をするとか、もありました。

音楽は合唱団の実力がすばらしく、非常に美しいハーモニーだったのが印象的です。アリアでは第2幕のNight (Carolyn Sampson独唱)、Mystery (Claire Debono独唱)、Secrecy (Ed Lyon独唱)、Sleep (Andrew Foster-Williams独唱)と続くところのしっとりとした静けさの表現が秀逸で一番好きな部分でした。
ウイリアム・クリスティはさすがに上手く、軽やかで美しい演奏です。彼がよくやるようにカーテンコールでは歌手全員で多分このオペラのどこかの部分を歌っていました。

The Fairy Queen : Semi-opera in a prologue and five acts
Music by Henry Purcell
Text anonymously adapted from William Shakespeare’s “A Midsummer Night’s Dream”

The Glyndebourne Chorus
Orchestra of the Age of Enlightenment
William Christie : conductor
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by dognorah | 2009-07-23 22:19 | オペラ

ROHの今期最終イヴェント

2009年7月19日、ROHにて。

例年のようにROHの研修生達によるオペラの抜粋が、全ての公式公演が終わった後の本日開催されました。出演者は研修生全員ですが、卒業生も必要に応じて出演する場合もあります。

・第1部:モーツァルトのドン・ジョヴァンニ第1幕抜粋
・第2部:マスネーのヴェルテルとマノンのそれぞれ第3幕抜粋

結論から言うと、オールキャスト的な第1部は各歌手とも不満が感じられ、まあ学芸会的な出来。このメンバーの現在の実力じゃお客を集める公演は無理です。
しかし第2部はなかなかの出来で、指名された歌手はやはり優等生的な人達で聴き応えがありました。最初のヴェルテルは、タイトルロールをバリトンが歌う1902年版の作品を使ったもの。ヴェルテルを歌った韓国人バリトンChanghan LimとエストニアのメゾソプラノMonika-Evelin Liivの歌唱は惚れ惚れするすばらしさで、共にフランス語のディクションも秀逸です。Limはそのはずで、フランスで歌を学んでいたんですね。この二人は本日随一という印象でした。後半のマノンは中村恵理と韓国人テノールのJi-Min Parkで、歌唱はいつものように両者とも揺るぎない安定感と美声でした。しかし両者ともフランス語は上記のChanghan Limに比べると足元にも及ばないぼやけ方でちょっと残念。

写真はカーンコールから
Monika-Evelin Liiv and Eri Nakamura
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by dognorah | 2009-07-21 07:00 | オペラ

ゲオルギュー主演の「トスカ」公演

2009年7月14日、ROHにて。

Tosca

先日はリハーサルでネリー・ミリチョウ主演のものを見ましたが、今日はアンジェラ・ゲオルギュー主演です。カヴァラドッシ役のマルチェロ・ジョルダーニが病気で降板になり、似た名前のマッシモ・ジョルダーノが代役となったので今回はヴァラエティに富んだ配役でこのプロダクションを楽しめることになりました。

Director: Jonathan Kent
Conductor: Jacques Lacombe

Tosca: Angela Gheorghiu
Cavaradossi: Massimo Giordano
Scarpia: Bryn Terfel
Spoletta: Martyn Hill
Angelotti: Kostas Smoriginas
Sacristan: Jeremy White
Sciarrone: Matthew Hargreaves
Gaoler: John Morrissey

ゲオルギューはこのプロダクションの初演時にトスカを歌い、ROH登場はそれ以来ですが、声は好調で相変わらずの美声でした。体型も細さを保っているのでよりトスカらしい雰囲気です。第2幕のアリア「歌に生き恋に生き」は特上の出来とはいえなくてもかなりの水準で満足しました。ゲオルギューの衣装はミリチョウのものとは生地も微妙に違い、細部のデザインも異なっています。2-3mの至近距離で彼女を見ることが出来ましたので、顔は年相応ながら胸は大きく開けて色気がたっぷり。ブリン・ターフェルにテーブルの上に押さえつけられて抵抗する場面では乳首がこぼれるんじゃないかと期待心配するほどでした。

マッシモ・ジョルダーノは昨年LPOの定期で公演されたヴェルディのレクイエムに出演したのを聴いたことがありますがオペラでは初めて聞きました。今回は当時と違って髭を生やしていました。第1幕はちょっと緊張していたようで声はやや硬く、マルチェロ・ジョルダーニの方が上手だったかという出来。第3幕は緊張も解けたのかテノールらしい魅力的な高音が遺憾なく出て大変よい出来でした。リハーサルの時と同様拍手が湧き起こり、私からはブラヴォーも。
他の歌手はリハーサル時とほとんど変わらずよい出来です。

オケですが、リハーサルの時も感じたようにアンサンブルよく大音量で鳴るすばらしいもの。今回の公演で初めて聴く人ですがオケのコントロールでそういう特徴を持った指揮者なのでしょう。まだ若そうだけど力のある人だと思います。ただ、もう少し音量を下げた方が良いのじゃないかと思う場面もかなりありました。尤もそれは私の席が指揮者と舞台の間という点も響いているかも知れませんが。

とにかくこのオペラはゲオルギュー並みのスマートな人が歌ってこそトスカらしい雰囲気が出るので、ミリチョウじゃやはり歌唱的にもスタイル的にも不満が残ります。デボラ・ヴォイトは痩せたとはいえまだまだで、本番の切符を買う気になれなかったのはそういうところにあります。今後もこのプロダクションでは魅力を感じる人が歌わない限り切符を買うことはないでしょう。

Angela Gheorghiu
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Massimo Giordano
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Bryn Terfel
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Conductor, Jacques Lacombe
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by dognorah | 2009-07-16 07:54 | オペラ

ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」公演

2009年7月10日、ROHにて。
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Il barbiere di Siviglia: Melodramma buffa in two acts
Music: Gioachino Rossini
Libretto: Cesare Sterbini after Pierre-Augustin Caron de Beaumarchais’ “Le Barbier de Séville”

Director: Patrice Caurier and Moshe Leiser
Conductor: Antonio Pappano

Figaro: Pietro Spagnoli
Rosina: Joyce DiDonato
Count Almaviva: Juan Diego Flórez
Doctor Bartolo: Alessandro Corbelli
Don Basilio: Ferruccio Furlanetto
Fiorello: Changhan Lim
Berta: Jennifer Rhys-Davies

サイモン・キーンリーサイドが題名役を降りてピエトロ・スパニョーリに変わったり、ジョイス・ディドナートが初日に舞台上で右足首を骨折してその後の公演を車椅子に座って歌うなど話題の多い舞台となりましたが、そのディドナートを含めて歌手は全て好調で大変楽しめました。特に前回スキップされたアルマヴィーヴァ伯爵の第2幕後半の大アリアCessa di più resistere(もう逆らうのはやめろ)は本当にすばらしく、フローレスは絶好調でした。初日の観客の騒ぎ方は伝え聞いていましたが、今夜もまさしくそういう状況で一つのアリアに対してROHでこんなに長く拍手が続いたのは見たことがありません。共演のアレッサンドロ・コルベリが懐中時計を取りだして一体何分続くんだと呆れるお茶目ぶりを発揮していたのも面白いシーンでした。

骨折のロジーナは舞台の前面に造られた通路を車椅子で左右に行き来して演技に参加するという変則舞台ですが、歌唱は前回と同じくらい調子よく、そういう状況でよく頑張ったということもあって彼女も歌う度に大拍手を受けていました。

フィガロを歌ったスパニョーリも大変上手く、前回のペテアンよりやや明るめの声ですが全く文句なしです。

バルトロを歌ったアレッサンドロ・コルベリは充分上手いのですが、この役に関しては前回のブルーノ・プラティコの方が線が太くて良い味を出していたと思います。しかしドン・バジリオを歌ったフェルッチオ・フルラネットは演技も含めて前回のライモンド・アチェートより遙かに上手かった。

オケに関しては前回も今回もそれほど優劣はなく、楽しめる演奏でしたが特筆するほどの出来ともいえません。
演出はこうして2回目に見ると軽くて浅いという印象はぬぐえず、第1幕などもともと冗長なこともあってかなり退屈です。舞台装置としてはヴィーンで見たものが遙かにすばらしい。

Juan Diego Flórez & Pietro Spagnoli
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Joyce DiDonato
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Alessandro Corbelli
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Ferruccio Furlanetto
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by dognorah | 2009-07-13 09:00 | オペラ

トスカのドレスリハーサル

2009年7月7日、ROHにて。

Tosca: Melodramma in three acts
Music: Giacomo Puccini
Libretto: Giuseppe Giacosa and Luigi Illica after the play “La Tosca” by Victorien Sardou

Director: Jonathan Kent
Conductor: Jacques Lacombe

Tosca: Nelly Miricioiu
Cavaradossi: Marcello Giordani
Scarpia: Bryn Terfel
Spoletta: Martyn Hill
Angelotti: Kostas Smoriginas
Sacristan: Jeremy White
Sciarrone: Matthew Hargreaves
Gaoler: John Morrissey

今年のトスカ公演は予定されていたデボラ・ヴォイトがキャンセルとなったため、アンジェラ・ゲオルギューとネリー・ミリチョーのダブルキャストで公演されることになった。本日のリハーサルはネリー・ミリチョーの担当である。彼女がROHに出演するのはかなり久し振りらしく、守屋さんに教えていただいた彼女のインタヴュー記事でも本人は降って湧いた幸運に殊のほか喜んでいる様が読み取れる。今年57歳の彼女はMagda OliveroというソプラノがMETでトスカデビューを果たしたのは57歳のときであることを引き合いに出して抱負を語っている。
彼女の声は大変すばらしく、充分楽しめる出来であったが「歌に生き、愛に生き」ではもう少し声の抑揚とスケール感が欲しかった。それにしても太い体で、ヴォイトも負けそうなくらい。リハーサル時間が余り取れなかったのか、昨年見た公演時と違って第2幕のスカルピアへの殺意を抱くにいたる演技がややなおざりだった。
カヴァラドッシを歌ったマルチェロ・ジョルダーニは大変すばらしい声で、1幕と3幕のアリアも大いに楽しめた。この人は過去に一度だけ聴いたことがあり、そのときはやや暗めの声と思ったが本日は特にそういう印象ではなかった。
スカルピアを歌ったブリン・ターフェルは好調でよく通る声ですばらしい歌唱だった。

下の写真は左から指揮者のJacques Lacombe、Nelly Miricioiu、Bryn Terfel
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次はMarcello Giordani
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by dognorah | 2009-07-10 01:27 | オペラ

ヴェルディのオペラ「アイーダ」公演

2009年7月4日、アレーナ・ディ・ヴェローナにて。
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深夜のひどい雷騒ぎにも拘わらず熟睡して爽やかな目覚め、外を見ると快晴。毎日深夜に降ってくれるとオペラも日中の観光も万歳なのですが、今日はそうはいかなかった。昨日と同様6時過ぎから早めの夕食をあらかじめ目星を付けておいたレストランで取ったまではよかったのですが、レストランを出るとあれだけ快晴だったのに雨が降っている!
オペラ開始までに止んでくれと祈りながら傘をさしてアレーナに向かいました。中に入ると昨日と違って客がぎっしり。そして開始時刻になっても雨は止まず、止むまで開始を遅らせる旨のアナウンス。同行の友人に貰ったスーパーの袋を下に敷いて座り、待つこと50分、やっと雨が上がりました。舞台の拭き掃除などを経てオペラが始まったのは10時をとっくに過ぎた時刻。空ではまだ雷がごろごろと鳴っています。いつ中断してもおかしくない空模様なので、心の準備だけしてとりあえずオペラに集中しました。途中一度軽い降雨があり20分程度中断しましたが第3幕終了までなんとか公演は続けられました。しかしその後再び雨が降り始め、止む気配がなかったのでとうとう中止となってしまいました。第4幕が全く見られなかったのは残念ですが、主要な場面は見たということもあってあきらめがつきました。
舞台はオペラの性格から当然ですが昨日のトゥーランドットよりも遙かにスペクタキュラーで見応えがありました。槍を持った兵士達も石段の中段はもとより最上段にまで配置されてスケールの大きさを誇示しています。ただ、凱旋の場面は大昔のDVDでパヴァロッティがラダメスを演じたスカラ座のものほどの迫力はありません。

歌手では期待通りダニエラ・デッシーとファビオ・アルミリアートが標準イタリアオペラ的な歌唱でとても楽しめました。二人とも声が良いです。デッシーが1957年生まれ、アルミリアートが1958年生まれだそうで今が歌手としてのピークかも知れません。なお、二人は現在私生活上のパートナーだそうです。
アムネリスを歌ったティチナ・ヴォーンも高域の美しいメゾソプラノです。この人はアメリカ人ですね。かなり太っています。他の登場人物ではアモナスロ役のシルヴァーノ・カロリが印象的です。この人は昨年のROHの「西部の娘」でジャック・ランスを歌った人ですね。あのときは酷い歌手を連れてきたものだと思いましたが、今回はかなり調子がよかったようです。

Conductor: Daniel Oren
Director: Gianfranco de Bosio

The King: Carlo Striuli
Amneris: Tichina Vaughn
Aida: Daniela Dessi
Radames: Fabio Armiliato
Ramfis: Orlin Anastassov
Amonasro: Silvano Carroli
A messenger: Angelo Casertano
High Priestess: Nicoletta Curiel

Fabio Armiliato & Tichina Vaughn
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Fabio Armiliato & Carlo Striuli
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Silvano Carroli, Daniela Dessi & Fabio Armiliato
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by dognorah | 2009-07-08 02:42 | オペラ