<   2009年 06月 ( 6 )   > この月の画像一覧

ルネ・フレミング主演「La Traviata」公演

2009年6月25日、ROHにて。

フレミングの歌唱は各フレーズに込める細やかな表現がすばらしい。時折高音が苦しそうではあるが細めの声が美しく、第3幕など絶妙の感情表現でした。ただ、第1幕最後のアリアではやや技巧が目立ち、深味のある声でストレートに感情表現した昨年1月のネトレプコの歌唱の時ほど感動はしませんでした。しかし50代にして若きヴィオレッタを演じれる若々しい体、舞台そばの席で見る彼女のドレス姿は前から見ても横から見てもウエストの細さには感嘆しました。

アルフレードを演じたジョセフ・カレイヤは骨太の美声がよく出ていました。天真爛漫なお坊ちゃんという感じで、ネトレプコの時のヨナス・カウフマンとは対照的な歌唱でしたが充分楽しめる声と演技でした。初日からずっと聴いている人の評では今までの声の固さが取れて今夜が最良だったそうで、ラッキーでした。

ジェルモンを演じたトーマス・ハンプソンはいつもの声でまあまあの演技でしたが、この役はゼリコ・ルチッチの極上の歌唱と演技が私の頭に刷り込まれていて、ハンプソンはちょっと違うんじゃないの?と思い続けながら聴いていました。
指揮はパッパーノでしたが、今日もすばらしい音楽作りでテンポやタイミングもぴったし、大変楽しめる演奏だったと思います。

La Traviata
Opera in three acts
Music: Giuseppe Verdi
Libretto: Francesco Maria Piave after Alexandre Dumas fils’s play La Dame aux camélius

Conductor: Antonio Pappano
Director: Richard Eyre

Violetta: Renée Fleming
Alfredo Germont: Joseph Calleja
Giorgio Germont: Thomas Hampson
Baron Douphol: Eddie Wade
Doctor Grenvil: Richard Wiegold
Flora: Monika-Evelin Liiv
Marquis D'Obigny: Kostas Smoriginas
Gastone: Haoyin Xue
Annina: Sarah Pring
Servant: Jonathan Coad
Giuseppe: Neil Gillespie
Messenger: Charbel Mattar

Renée Fleming(第1幕終了後のカーテンコール)
c0057725_2315153.jpg

Joseph Calleja(終演後のカーテンコール)
c0057725_22591747.jpg

Thomas Hampson(終演後のカーテンコール)
c0057725_22595712.jpg

Renée Fleming and Antonio Pappano(終演後のカーテンコール)
c0057725_2303351.jpg

[PR]
by dognorah | 2009-06-26 23:02 | オペラ

クルト・ヴァイルの「三文オペラ」コンサート形式

2009年6月13日、バービカンホールにて。

Die Dreigroschenoper
Music: Kurt Weill
Libretto: Bertolt Brecht adapted from John Gay’s “The Beggar’s Opera”
Klangforum Wien
Chorus Sine Nomine
H K Gruber: conductor

Dorothea Röschmann: Polly
Angelika Kirchschlager: Jenny
Ian Bostridge: MacHeath
Hannah Schwarz: Ceclia Peachum
Cora Burggraaf: Lucy Brown
Christoph Bantzer: Narrator
H K Gruber: Jonathan Jeremiah Peachum
Florian Boesch: Tiger Brown

有名ながら初めて聴く作品ですが、軽い音楽としては楽しめます。出演者が豪華なので満席だったようです。オケは弦楽器がチェロとバスとギターだけという変わった構成で、ジャズ的要素もたっぷり。ただ、今回の公演はナレーターを入れて全体の筋を端折っているらしく、正味上演時間は1時間半ぐらい。有名アリアは全て入っているのでしょうけれど、どうせならちゃんとやって欲しいものです。
歌手は有名な人は全てすばらしい。こういう顔ぶれにしないと切符が売れないと思ったのでしょう。Cora Burggraaf は久し振りで、2005年にティペットのオペラ「真夏の結婚」で聴いたのと2006年にリサイタルを聴いて以来ですが、相変わらずすばらしい声でした。
アリアで印象的なのは、マックヒースとジェニーの二重唱、ポリーとルーシーのさや当て二重唱など。これらはアンコールでも歌われました。
なお、乞食王ピーチャムは指揮者によって歌われましたが、彼だけはマイクを装着していました。子供の頃はヴィーン少年合唱団の一員だったそうです。

終演後4人の女声歌手が揃ったところ。左から、Hannah Schwarz、Cora Burggraaf、Dorothea Röschmann、Angelika Kirchschlager
c0057725_2234132.jpg

左からH K Gruber、Florian Boesch、Ian Bostridge、Cora Burggraaf
c0057725_22343150.jpg

Dorothea Röschmann and Angelika Kirchschlager
c0057725_2235375.jpg

Cora Burggraaf and Dorothea Röschmann
c0057725_22352812.jpg

[PR]
by dognorah | 2009-06-17 22:38 | オペラ

平井丈一郎チェロリサイタル

2009年6月8日、ウィグモアホールにて。

* Takeichiro Hirai: cello
* Motoki Hirai: piano

プログラム
* Caix d’Hervelois: Suite No. 2 in D minor
* Beethoven: Cello Sonata No. 5 in D Op. 102 No. 2
* Schumann: Fantasiestücke Op. 73
* Takeichiro Hirai: Fantasy for cello solo ‘Hokusai’
* Bach: Arioso from Cantata BWV156
* Granados: Andaluza from 12 Spanish Dances Op. 37 No. 5
* Casals: Song of the birds (Catalan Folk Song)
* Kozaburo Hirai: Narayama from ‘Lieder’
* Davïdov: At the fountain

親子共演の演奏会。まるでCDを聴くような完璧な演奏だったが実演としての興奮度は少なく、プログラミング的には特に前半がやや退屈だった。アンコールはそれぞれの独奏と共演が一曲づつの3曲。

Motoki Hirai (left) and Takeichiro Hirai
c0057725_21193143.jpg

[PR]
by dognorah | 2009-06-17 21:20 | コンサート

ドニゼッティのオペラ「ロベルト・デヴリュー」公演

2009年6月6日、Holland Parkにて。

Roberto Devereax: Opera in three acts
Music: Gaetano Donizetti
Libretto by Salvatore Cammarano after François Ancelot’s Elisabeth d’Angleterre

Conductor Richard Bonynge
Director Lindsay Posner
City of London Sinfonia

Roberto Devereux: Leonardo Capalbo
Elisabetta: Majella Cullagh
Sara: Yvonne Howard
Duca di Nottingham: Julian Hubbard
Sir Gualtiero Raleigh: Graeme Broadbent

毎年夏にケンジントンにあるオランダ公園で開催される野外オペラ(Opera Holland Park)に初めて行きました。今までも行きたいと思っていたのですがすぐ切符が売りきれる人気イヴェントなので気付いたときは切符が入手できなかったのです。今年は切符発売のメールを受け取ってすぐにアクセスして入手できたのでした。
今年は好天が続いていたロンドンですがとうとうそれも終わり、もう夏は去ったかという涼しい雨模様の天気になってしまいました。舞台はもちろん客席もテントが張ってあって雨の心配はしなくて済むのですが、風通しが良いので寒さ対策は欠かせません。席に着くと客達は自分の寒さ対策を自慢し合っているという有様で、私もダウンジャンパーを着ていき念のためにマフラーも持参しました。マフラーを使うほどではなかったのですがオーケストラの女性奏者などは実際マフラーを巻いて演奏していました。

さて、オペラの方ですが、これがすばらしい公演でドニゼッティ節を大いに楽しみました。歌手が全てよい出来で、特にエリザベッタ(エリザベス1世)を歌ったアイルランド人ソプラノ、マジェラ・カラハは歌といい演技といいとても水準が高くて感心しました。タイトルはロベルト・デヴリューになっているものの実際の主役はこのエリザベッタで、アリアも多いのです。実際カーテンコールでは最後に出てきました。そのタイトルロールを歌ったレオナルド・カバルボはイタリア人かと思ったらアメリカ人らしいのですが、大根役者ながら若くてハンサムないいテノールです。
舞台の方ですが、場面転換できる構造ではないものの豪華な衣装と時代物の小道具を使って雰囲気十分で感心しました。大勢の登場人物にエリザベス朝らしい服装をさせるのは随分お金がかかったことでしょう。演出もよくできていたと思います。
オーケストラも第1ヴァイオリンが6人という小編成ながらいい音を出しているし、ボニングの指揮も文句の付け所のないすばらしい演奏でした。リチャード・ボニングはCDやDVDではお馴染みの指揮者ですが実演に接するのは恐らく初めてと思います。間近で見ることが出来ましたが全身から上品さを漂わせた人で、オケメンバーも尊敬の態度ありありといった雰囲気でした。今年79歳のオーストラリア人で奥さんは往年の名ソプラノ、ジョーン・サザーランドです。この公演の初日には彼女も客席に座っていたらしく、記事をいつも読ませて貰っているブログIntermezzoに載っています。
とにかくこのようにレヴェルの高い公演なので切符がすぐ売りきれるんですね。来年も忘れずに買わなくちゃと思いました。なおこのオランダ公園には孔雀が放し飼いにされていますが、音楽に反応して公演中に何度も鳴き声を上げるという余興まであって悲劇の最中に笑いを誘っていました。まるで猫が大声を上げているのかと思うような声です。

次の写真はカーテンコールのもので、エリザベッタを歌ったMajella Cullaghです。第2幕までは豪華な女王の衣装でしたが第3幕は寝室の場面なのでネグリジェ姿です。後列は左から、Julian Hubbard、Leonardo Capalbo、Yvonne Howard、Graeme Broadbentです。
c0057725_20505811.jpg

次は指揮者のRichard BonyngeとMajella Cullaghです。
c0057725_20513555.jpg

あらすじ
エリザベッタとノッティンガム公爵夫人サラが共にロベルト・デヴリューを愛しており、ロベルトはサラを愛している。自分の愛を受け入れないロベルトには密かな愛人がいることを察したエリザベッタは激情のあまりロベルトをロンドン塔に幽閉した上、死刑判決文に署名してしまう。愛人の名前を明かせば命は助けてやるといわれ、ロベルトは密書をサラに送り、彼が彼女のスカーフと交換して渡した指輪(以前エリザベッタから下賜されたもの)を証拠としてエリザベッタに届けるよう依頼するが、夫のノッティンガム公爵が妻の不実に気づいてそれを阻止する。なんとかサラが抜け出してエリザベッタに指輪を届けたときには既に遅く、ロベルトの死刑が執行される瞬間だった。狂乱状態に陥ったエリザベッタは王位をジェームズに譲ると宣言する。
[PR]
by dognorah | 2009-06-08 20:58 | オペラ

ベルクのオペラ「ルル」新演出初日

2009年6月4日、ROHにて。

Lulu: Opera in a prologue and three acts
Music: Alban Berg, with Act III realized by Friedrich Cerha
Libretto: Alban Berg, after the plays “Erdgeist” and “Die Büchse der Pandora” by Frank Wedekind

ロイヤルオペラでこれを上演するのは1983年以来26年ぶりなので新演出となりましたが、モノクロの世界で無感情に物語を進めていく意図は理解できるものの演劇としては酷い舞台です。同じクリストフ・ロイの演出で公演された2003年の「ランメルモールのルチア」を思い出させる何もない白と黒の舞台で、出演者の服装も白と黒しか使わないもの。演技も表情も淡泊で、コンサート形式とほぼ同じ。これのDVDはBechtolf演出のチューリッヒ歌劇場版を持っていますが、濃厚なエロティシズムを織り交ぜた美しい舞台で、私にはそういう方が遙かに納得できる演出です。
レアルマドリードとの共同制作だから予算はあるはずなのにこういう作りということは、次に上演するのは数十年先だからセットを保存する手間が省けるとでも考えたか。こんなことをするならコンサート形式で上演して欲しいです。演出家達に支払う費用を節約できるから入場料も安くなるし。初日なので演出家も舞台に出てきましたが舞台そばから思い切り「ブー」を浴びせてあげました。場内からももちろんブーや野次が飛んでいました。この人が来期の「トリスタンとイゾルデ」を演出することになっているとはがっかりです。コンサート形式を聴きに行く覚悟をしておいた方が良いかもしれません。しかし「ナキソス島のアリアドネ」ではかなりまともな演出もしているので一縷の望みはありますが。
なお、台詞の部分ではマイクを通してスピーカーを響かせる手法を取っていました。歌の部分も含めて会話のテンポが速く、私の英語力では字幕を読み切れないです。そのせいか、音楽はとてもすばらしいのですが舞台進行の方はやや退屈でした。

演出はそういう次第ですが、歌手はすばらしい。
まずタイトルロールを歌ったスェーデン人ソプラノ、アグネータ・アイヒェンホルツですがリリカルでよく伸びる高音が美しい。細身の美人ながらニヒルな表情が演出家の意図に合っているともいえます。そういえば彼女はロイの演出するオペラにあちこちで出演しているので彼のお気に入りなのかもしれません。
ゲシュヴィッツ伯爵夫人を歌ったアメリカ人メゾソプラノ、ジェニファー・ラーモアもリリカルな声でよい歌唱でした。
シェーン博士を歌ったドイツ人バリトン、ミヒャエル・フォレもいつものように愛想のない表情ですが高水準の歌唱で立派。
ROH初登場のクラウス・フローリアン・フォークトはこの人を初めて聴いたヴィーンでの「ローエングリン」のときの声とほぼ同じで気持ちよく透明な高音が出ていました。
他の歌手も概ね良かったのですが、ピーター・ローズはあまり好みじゃないです。

パッパーノ指揮するROH管弦楽団はベルクの濃厚な音楽を美しく響かせていました。

以下の写真はカーテンコールのものです。
Agneta Eichenholz as Lulu
c0057725_0412190.jpg

Klaus Florian Vogt as Alwa (right) and Will Hartmann
c0057725_0415540.jpg

Michael Volle as Dr Schön/Jack the Ripper and Jennifer Larmore as Countess Geschwitz
c0057725_0423177.jpg

Christof Loy and Antonio Pappano
c0057725_0431817.jpg

出演
Conductor: Antonio Pappano
Director: Christof Loy
Lulu: Agneta Eichenholz
Countess Geschwitz: Jennifer Larmore
Dr Schön / Jack the Ripper: Michael Volle
Alwa: Klaus Florian Vogt
Schigolch: Gwynne Howell
Animal Trainer / Athlete: Peter Rose
Dresser / Schoolboy / Groom: Heather Shipp
Prince / Manservant / Marquis: Philip Langridge
Mother: Frances McCafferty
Painter / Negro: Will Hartmann
Professor of Medicine: Jeremy White
15 year-old Girl: Simona Mihai
Lady Artist: Monika-Evelin Liiv
Journalist: Kostas Smoriginas
Manservant: Vuyani Mlinde
[PR]
by dognorah | 2009-06-06 00:49 | オペラ

ルネ・パーペとロンドンフィル演奏会

2009年5月31日、RFHにて。

プログラム
メンデルスゾーン:交響曲第5番(宗教改革)
マーラー:Totenfeier(葬礼)
トルシュテン・ラーシュ:Mein Herz brennt(私の心は燃えている)

出演
René Pape (bass)
Katharina Thalbach (reciter)
Elisabeth Meister (soprano)
Vladimir Jurowski (conductor)
London Philharmonic Orchestra

珍しくルネ・パーペがロンドンに来るというので行ってみましたが、ラーシュの現代曲に出演でしかも作曲家の指示でマイクを使うという設定でがっかりでした。
そのTorsten Raschは1965年ドレスデン生まれの人で、2002年に作曲したこの作品で名を成したようです。Carl Maria von Weber Universityで学んだあと1990年になぜか日本に移住して15年間住み、そこで主にTVや映画のための音楽を作曲していたらしい。日本へ行った目的とかそこで何を得たのかはあまり記述がなく謎です。
この作品はドイツの過激なことで知られるロックバンドRammstein(ラムシュタイン)の歌詞を使って作曲されたもので、バスとナレーションはスピーカーから大音量で鳴らされます。ルネ・パーペは本来声量のある人なのにそれを増幅するものだから耳を覆いたくなるような音量となっていました。ソプラノは一つの楽章でバックコーラス的な役割があるのみで、こちらは生の声です。またオリジナルでは一部でコーラスが使われていますが今夜の公演では作曲家の了承の下にシンセサイザーで代用されました。なお独唱者は全員ドイツでの初演時のメンバーだそうです。オーケストラは大編成で、特に打楽器が多く、ステージだけでは乗せきれないので後ろのコーラス席をつぶして太鼓達を並べていました。
オーケストラの奏でる音楽は意外に伝統的な音響が多く、ドイツロマン派の影響を色濃く漂わせたものということで、前座にメンデルスゾーンとマーラーが演奏されたようです。そのため音楽としては魅力的な部分も多いです。歌詞も最初はやや過激であまり訳が分からない感じでしたが後半は叙情的な詩という印象も持ちました。ナレーションはともかくバス歌手の歌は増幅しなくても良いのじゃないかとも思いましたが、打楽器と共にラムシュタインの雰囲気を再現したかったのでしょう。
独唱の3人、左からElisabeth Meister、René Pape、Katharina Thalbach
c0057725_28311.jpg

UK初演なのでステージに呼ばれた作曲家Torsten Raschと指揮のVladimir Jurowski
c0057725_2151362.jpg

最初のメンデルスゾーンの第5番はいつものユーロフスキーのように緻密でよく練れた音が心の琴線に響く感じでまたまたこの人の振るLPOの魅力を感じさせる好演でした。
また、2曲目のマーラーの葬礼は交響曲第2番の第1楽章とほぼ同じながら細部ではあちこち異なったものですが、珍しいものを聴かせて貰いました。面白かったです。来シーズンの幕開けはこの第2番なので練習の意味もあったのかもしれません。
[PR]
by dognorah | 2009-06-04 02:16 | コンサート