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ロッシーニのオペラ「エルミオーネ」コンサート形式

2009年3月28日、RFHにて。

Opera Rara主催の公演です。
オペラの内容は悲劇ながらロッシーニ節満載の楽しい音楽です。指揮のパリーはいつものように活き活きとしたテンポ運びで歌手との呼吸もよく合っています。

歌手ではタイトルロールのイタリア人ソプラノ、カルメン・ジアンナッタシオはフォルテの高音で声が割れがちになることを除けば水準の高い歌唱でした。恋敵役のアンドロマカを歌ったアイルランド人メゾソプラノ、パトリシア・バードン共に最高の歌唱ではなかったにしろ充分楽しめる歌唱でした。男声陣はテノール4名とバス一人という布陣ですがこちらもなかなかのものです。ただ、重要な役であるピロを歌ったポール・ニロンという人はちょっと不調のようで声があまり魅力的ではなく一人凹んでいました。凄くよかったのはオレステ役のコリン・リーで、最初のアリアでは大ブラヴォーが出てオケもびっくりする騒ぎでした。彼は7月にROHで公演される「セビリアの理髪師」の最終日でフローレスに代わってアルマヴィーヴァ伯爵を歌うことになっていますが、フローレスに比べられるとちょっとという感じではあります。それはともかく今夜はかなり聴衆を興奮させてくれました。南アフリカ人です。フランス人テノール、ロイク・フェリックスとトルコ人テノール、ビュレント・ベジューズも脇役ながらいい声だなぁと感心する出来です。ピロの友人フェニチオ役をやったグレアム・ブロードベントはロンドンではお馴染みのバスですが、とても魅力的な低音を聴かせてくれました。クレオーネ役を歌ったレベッカ・ボトンはイギリス人ソプラノですがこの人もリリックな声が印象的でした。

ということで、今夜もまたとても楽しめたコンサートでした。
最初の写真はエルミオーネを歌ったカルメン・ジアンナッタシオです。
Carmen Giannattasio
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次は、パトリシア・バードンとコリン・リーです。
Patricia Bardon and Colin Lee
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Ermione (1819)
Azione tragica in two acts
Music: Gioachino Rossini (1792 – 1868)
Libretto: Andrea Leone Tottola

Conductor: David Parry
Geoffrey Mitchell Choir
London Philharmonic Orchestra
Opera Rara

Ermione: Carmen Giannattasio, soprano
Andromaca: Patricia Bardon, mezzo-soprano
Pirro: Paul Nilon, tenor
Attala: Loïc Félix, tenor
Oreste: Colin Lee, tenor
Pilade: Bülent Bezdüz, tenor
Fenicio: Graeme Broadbent, bass
Cleone: Rebecca Bottone, soprano
Cefisa: Victoria Simmonds, mezzo-soprano

あらすじ
トロイ戦争後の話。トロイ王ヘクトールの妻アンドロマカと息子はアキレスの息子ピロの奴隷となってエピルスに連れてこられる。ピロはアンドロマカに惚れ込み、婚約していたエルミオーネ(メネラウスとヘレンの娘)を無視する。怒り心頭のエルミオーネは仕返しを誓う。アガメムノンの息子オレステは全ギリシャの総意であるトロイの末裔の抹殺をするようピロを説得に来る。実はオレステはエルミオーネに惚れており、エルミオーネはその立場を利用して復習を画策する。アンドロマカがピロに靡かなかったら子供を殺すというピロの脅しを受けてアンドロマカは渋々結婚を承諾する。エルミオーネはそれを聞いて、オレステにピロを殺すよう強く迫る。オレステは実行するがエルミオーネはなぜ私のいうことを真に受けて殺したのか!と矛盾したことを言ってオレステを狼狽させる。彼は領民の攻撃の手を逃れるために大急ぎで船に戻り出帆する。エルミオーネはそれを見て絶望のあまり死ぬ。
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by dognorah | 2009-03-30 01:21 | オペラ

マルティヌーのオペラ「ジュリエット」コンサート形式

2009年3月27日、バービカンホールにて。

マルティヌーのオペラを聴くのはこれが初めてですが、いやーすばらしい音楽ですね。BBC交響楽団の魅力的な音色にも驚きました。常任として結構長く振ってきたビエロフラーヴェクは少なくともチェコ音楽に関しては完全に手兵として育て上げたと思わせる掌握の仕方でした。本日第一のブラヴォーです。こんなすばらしい演奏を聴くと来期に予定されているマルティヌーの交響曲全曲演奏も大いに興味をそそられます。

歌手陣も充実していていました。中でも初めて聴いたアメリカ人テノール、ウイリアム・バーデンは出ずっぱりながら終始美声を保ってすばらしい歌唱を披露してくれました。ルックスもなかなかいいし、注目すべきテノールです。
タイトルロールのマグダレーナ・コジェナーも相変わらずいい声でしたが今日はやや霞がかかったような感じの時もあり、絶好調ではなかったです。
代役出演で二役をこなしたプローライトもいつものように張りのある安定した歌唱でした。

オペラのストーリーは夢を扱った不条理で非日常的な内容ですが面白い発想で、手塚治虫が漫画化していそうなSF的要素たっぷりのおもしろいものです。演出は衣装も凝っている部分があって分かりやすいものでした。

あらすじ
ある港町に着いたミシェルは3年前に2階の窓から歌を歌っていた女性を思い出し、また会いたいものだと思っていたら3年前と同じシチュエーションで彼女と再会。森の外れにある交差点でランデヴーということになる。女性の名前はジュリエット。話をしていると「記憶」を売りに来る男がいて彼女が商品をいろいろ漁ってミシェルと二人でスペインに旅行に行った話などを始めるが、全てミシェルには経験のないことで戸惑っていると彼女は去ってしまう。去って欲しくないミシェルは引き止めるが行こうとするのでピストルで彼女を撃つ。彼女が死んだのかどうかはっきりしないが現場には彼女が付けていたショールが落ちている。そのショールを彼女のいたアパートに行って届けようとするが、老婦人が出てきてここには若い女性は住んでいないという。
ふと気がつくとミシェルは「夢斡旋所」にいて、係員が次々と寝に来る人に夢を売っている。その中の何人かはまたジュリエットが出てくる夢を希望している。ミシェルは係員から、そろそろ起きて夢から覚醒しないと大変なことになる、と警告を受ける。そのときドアの外からジュリエットの声がして「ミシェル、ミシェル」と呼びかける。しかしドアはロックされていて開けない。警告を無視してそのまま夢の世界にいようと決心したらドアが開いて元の森のはずれに出るが、ジュリエットは見あたらない。

Julietta
Lyric opera in three acts (1936-7, rev.1959)
Music: Buhuslav Martinů (1890 – 1959)
Libretto by the composer after the play by Georges Neveux
フランス語では、Juliette, ou la clé des songes
英語では、Juliette, or The Key to Dreams
元々はチェコ語のテキストに作曲されたが、作曲者自身によってフランス語版も作られ、今回の演奏はフランス語によって歌われました。

写真はコジェナー、ビエロフラーヴェク、バーデンです。
Magdalena Kožena, Jiří Bělohlávek, William Burden
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BBC Symphony Orchestra
BBC Singers
Conductor: Jiří Bělohlávek
Concert staging: Kenneth Richardson

Juliette: Magdalena Kožena, mezzo-soprano
Michel: William Burden, tenor
Bird-Seller/Fortune-Teller: Rosalind Plowright, soprano
Fish-Seller/Grandmother/Old Lady: Jean Rigby, mezzo-soprano
Little Arab/1st Man/Bellhop: Anna Stéphany, mezzo-soprano
Old Arab/Old Sailer: Zdenek Plech, bass
Police Chief/Postman/Clerk: Andreas Jäggi, tenor
Man in Hat/Seller of Memories/Blind Begger/Nightwatchman: Roderick Williams, baritone
Man in Chapska/Father Youth/Convict: Frédéric Goncalvès, bass-baritone
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by dognorah | 2009-03-29 21:19 | オペラ

蜷川歌舞伎ロンドン公演

2009年3月25日、バービカンシアターにて。

シェイクスピアの戯曲Twelfth Nightをアレンジして歌舞伎役者が演じた公演。
演出:蜷川幸雄
脚本:今井豊茂 (小田島雄志の翻訳に基づく)

出演
尾上菊五郎
尾上菊之助
中村時蔵
中村翫雀
中村錦之介
市川亀治郎
板東亀三郎
尾上松也 
河原崎権十郎
板東秀調
市川団蔵
市川段四郎
市川左團次

舞台は大きな鏡とアールデコ調のセットと日本風が入り交じった感じのもので、伝統的歌舞伎のイメージではない。舞台転換はスマートでスムーズであった。台詞は歌舞伎調に現代言葉を時々挟む物。シェークスピアの原作は読んだことがないが、演劇としては全体に冗長感が否めず、ストーリーの先も読めてしまうのでやや退屈で、蜷川の手腕はあまり感じられない。脚本はもっと練るべきだろう。
各役者はさすがに上手くて台詞は時々とちることがあったもののすばらしい発声を楽しめた。菊五郎が二役を、また菊之助が三役を早変わりしたが見事な早さであった。声音の使い分けもさすが。亀治郎と時蔵の女形はこれもさすがのうまさ。特に亀治郎。
久し振りに一流の歌舞伎役者を見ることが出来たのは幸せだが、蜷川でなしにやはり本格的な歌舞伎を持ってきて欲しかった。

写真はカーテンコールのもの。左から尾上菊之助、蜷川幸雄、尾上菊五郎。
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(文中、亀治郎の漢字を間違えていましたので修正しました。)
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by dognorah | 2009-03-27 09:02 | 観劇

アルフォンス・ミュシャ展

ヴィーン滞在中にベルヴェデーレ下宮でミュシャ展を開催していました。昔から好ましいと感じていた画家なので早速入場しました。ポスターはもちろん、挿絵や装丁、工芸品、ステンドグラスから教会や市庁舎のために描いた大きな油絵など多岐に渡る作品が展示されています。一通り見て、やはりポスターが一番魅力的だと思いました。一枚のポスターに描かれた魅力的な女性像を見ているだけで様々な妄想が頭の中を駆けめぐり暫し別世界にワープするような感覚に襲われます。それぞれ表情や意味深な背景などが丁寧に描かれていて飽きないですね。
1860年にモラヴィアで生まれ、1939年にナチスに逮捕されたことがきっかけでプラハで死亡。美術はミュンヘンとパリで学んだ。パリでサラ・ベルナールのポスターを手がけることで成功し、1910年にはプラハに帰って民族主義的な油彩作品を多く制作したが、この時期もポスターを沢山描いている。下の写真は、モラヴィア教師合唱団のコンサート用ポスターで、今回展示してあった中で一番気に入りました。絵の下の余白にはコンサートの日付や曲目が書いてあるのですが、写真ではカットされています。

Moravian Teachers' Choir (1911)
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Alfons Mucha
12.2 – 1.6.2009
Unteres Belvedere
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by dognorah | 2009-03-25 03:41 | 美術

ENOのイェヌーファ

2009年3月19日、The London Coliseumにて。

English National Operaの英語翻訳のものは基本的に行かないのですが、今回は入場料大幅値引きのオファーがあることをいつも読んでいるブログ Intermezzo で知り、アクセスしたところ切符を入手できたので行ったわけです。£76が£20になったのでした。席は平土間最前列の端。第1幕は右手前に切符売り場のような小屋が置いてある舞台だったので、その後ろでのアクションは見えませんでしたが、それ以外は問題なしでした。
見に行ってとても良かったと思います。以前、コンサート形式で第2幕だけ経験していますが、今回全幕を舞台で見て、やはり音楽的には第2幕が秀逸であることを思い知りました。その舞台をすばらしいものにしたのは継母コステルニチカ役を演じたアメリカ人メゾソプラノ、ミカエラ・マーテンスです。この役は往年の名ソプラノが演じることが多いようですがこの人はまだそれほど年じゃないです。そしてこれがUKデビューとのこと。強烈で峻烈な歌唱でした。声も高音までよく伸びる美声です。タイトルロールのアマンダ・ルークロフトも立派な歌唱でしたがカーテンコールでは圧倒的にマーテンスが人気でした。ラツァとシュテヴァの二人のテノールはまあまあの出来。
指揮のイェンセンはノルウェー人で、現在ハノーヴァーのNDRフィルの常任だそうです。オペラの経験もそこそこあるようで、今回もなかなかしなやかな音楽で充分すばらしいヤナーチェクでした。
舞台は簡素であまり凝ってはいませんが、第3幕ではコステルニチカの家の一角が破壊的に開いて村人達が侵入する作りとなっています。全体にグレーな感じですがオペラの内容に即したものでしょう。
見る価値のある公演で、保証されている返金要求はせずに済みそうです(^^)

Jenůfa
Opera in three acts by Leoš Janáček
Libretto by the composer after Gabriela Preissová's play, Her Stepdaughter (Její pastorkyna) English translation by Otakar Kraus and Edward Downes
Performed in the Brno version edited by Sir Charles Mackerras and Dr John Tyrell

Conductor: Eivind Gullberg Jensen
Director: David Alden

CAST
Grandmother Buryja: Susan Gorton
Kostelnička Buryja: Michaela Martens
Jenůfa: Amanda Roocroft
Laca Klemen: Robed Brubaker
Števa Buryja: Tom Randle
Foreman: lain Paterson
Jano: Julia Sporsen
Barena: Claire Mitcher
Mayor: Peter Kestner
Mayor's wife: Susanna Tudor-Thomas
Karolka: Mairead Buicke
Neighbour: Morag Boyle
Villager: Lyn Cook
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by dognorah | 2009-03-21 03:03 | オペラ

ランメルモールのルチア

2009年3月17日、ヴィーン国立歌劇場にて。
Anna Netrebko as Lucia
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主演のアンナ・ネトレプコは3月7日までコヴェントガーデンでジュリエッタを歌い(7日はキャンセルしましたが)、その後14日から24日までヴィーンでルチアを歌い、30日から再びコヴェントガーデンに戻ってジュリエッタを歌うという変則的なスケジュールとなっています。そして彼女のスケジュールに合わせて私もヴィーンにやってきたのでした。

結論から言うとネトレプコは絶好調で大変楽しめました。同じオペラを2月に指揮のアルミリアートと共にMETで練習して調子を整えた上、ROHでもベルカントオペラをこなしたのが効いたのでしょう、調子はすっかり以前の好調時に戻った感じです。7日のROHの公演をキャンセルしてヴィーンの自宅でゆっくりできたのもよかったのでしょう。写真では余りよく分からないですが、実物を見た限りではこの2週間で心持ち顔が細くなった気がします。狂乱の場は声といい歌唱といい絶品で、落涙の感動を得ました。ブラヴォーです。
エンリーコ役のペテアンも好調で、朗々と響く低めのバリトンが耳に心地よい。キーンリーサイドとは違うタイプではあるが二日間にわたってすばらしいバリトンを聴かせて貰いました。
George Petean as Enrico and Anna Netrebko as Lucia
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しかしテノールは今日もあまりよくないです。フィリアノーティはヴァルガス同様声が悪く、第1部第1幕第2場など絶叫気味でせっかくのネトレプコの美声を汚して二重唱も楽しめません。しかしこの人は昨日のヴァルガスと違って時間と共に少しずつよくなり、第2部第2幕第3場の自殺前のアリアは美声もよく出てなかなかの出来でした。ブラヴォーも沢山出ました。
Giuseppe Filianoti as Edgardo and Anna Netrebko as Lucia
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ライモンド役のコーカンという人、歌は上手いもののバスの声が硬めで私の好みではありません。

オケは今日も主力抜きながらアンサンブルがいいし、躍動感たっぷりでテンポも小気味よく、イタリア人指揮者の特徴がよく出ていました。第2部第2幕第2場の狂乱の場でルチアのアリアはグラスに水を入れたものを多数並べて指で音を出す楽器(正確な名前は知りませんが、写真を撮りました)の音をバックに歌われるのですが、私の席からはその楽器を演奏する様が見えたこともあって小さめの音量ながらはっきりと聞くことが出来ました。ネトレプコの歌もその音に呼吸がぴったりと合っていて、より感動を高めてくれたと思います。直後のカーテンコールではネトレプコがその奏者に対して拍手していました。
special instrument used for the mad scene
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演出は古典的伝統的で衣装もまあまあでした。各場で舞台をこまめに変えるという懲りようで大変楽しめます。また、カーテンコールが各幕でなしに各場毎に行われるのも初めて見ました。観客は昨日と違って日本人はあまりいませんでした。
Anna Netrebko and Marco Armiliato
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Lucia di Lammermoor
Dramma tragico in zwei Teilen
Music: Gaetano Donizetti
Libretto: Salvadore Cammarano nach dem Roman “Die Braut von Lammermoor” von Sir Walter Scott

Dirigent: Marco Armiliato
Inszenierung: Boleslaw Barlog

Enrico (Lord Henry Ashton): George Petean
Lucia, seine Schwester: Anna Netrebko
Edgardo (Sir Edgar Ravenswood):Giuseppe Filianoti
Arturo: Marian Talaba
Raimondo, Erzieher Lucias: Stefan Kocán
Alisa, Vertaute Lucias: Juliette Mars
Normanno, Vertrauter Enricos: Peter Jelosits
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by dognorah | 2009-03-20 10:01 | オペラ

小澤征爾指揮の「エフゲニー・オネーギン」

2009年3月16日、ヴィーン国立歌劇場にて。
Maestro Seiji Ozawa
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Eugen Onegin
Lyrische Szenen in drei Akten
Text von Peter Iljitsch Tschaikowski und Konstantin Schilowski nach dem Verstroman von Alexander Puschkin
Musik von Peter Iljitsch Tschaikowski

舞台は簡素で象徴的、衣装もやや現代的ですが、特に読替もなくわかりやすい演出でした。しかし第3幕の図書室がなぜ屋外の大階段のままなのかよく分かりません。各場面で下りる幕はいつものえんじ色のものではなく白布にして時には筆記体でOneginと投射してみたり、手紙の内容を投射したりしていますが特に意味深長というわけではありません。また合唱団や俳優を多く使って賑やかでアクロバット好きではありますが人物の動きや配置は分かりやすいものです。

歌手ではキーンリーサイドとイヴェリが好調で、ラモン・バルガスは絶不調でした。
キーンリーサイドはバリトンながらテノールを思わせる伸びやかで艶のある美声がよく出てアリアでもカーテンコールでも今夜の一番人気でした。
タマル・イヴェリは最初はごく普通の声でしたがだんだん調子が上がっていって、第3幕では絶品ともいうべき歌唱で大感動。声のコントロールが凄くて消え入るようなピアニッシモでも掠れることなく美声が続きました。この場面はキーンリーサイドの必死で哀願する様が伝わる歌唱と小澤指揮のオケの流麗さも相俟って類い希な叙情性が感じられました。
バルガスは美声の持ち主で以前何回か聴いたときはいつもよかった印象を持っているのですが、今回は遂にその美声が聴けず、残念です。喉の調子が悪かったのでしょう。
(修正とお詫び:最初に書いた文章では彼がMETのガラに出演したためにNYからとんぼ返りの強行スケジュール云々と書いてしまいましたが、NY在住の友人から彼は出演していなかったとの情報を得て、その件を削除しました。125周年とオープニングガラを取り違えて出演者を見ていたというミスでした。)
その他の歌手ではオルガを歌ったナディア・クラステワは歌でも演技でもお転婆娘を好演していました。プリンス・グレミンを歌ったアイン・アンガーもまずまず。タチアナの誕生パーティで歌うフランス人、Triquet役もなかなか上手い。

指揮の小澤は暗譜で、指揮棒なしでした。旋律をよく歌わせた流麗な演奏で大変自然です。オケはヴィーン・フィルが海外遠征中なので主力がいなかったのですが、充分美しいアンサンブルでした。しかし弦のしなやかさなどはやはりいつもほどではなかった気がします。

今日の観客は日本人だらけと言っていいくらい大勢の日本人がいました。こんなに多いのは初めて見ました。小澤さんが指揮するというだけでこんなに集まるとは凄いですね。
トップの写真は滅多に観客に顔を向けない小澤さんが正面を向いたところ。
下の写真は第2幕終了後帰宅してしまったバルガスとクラステワです。
Ramón Vargas as Lenski and Nadia Krasteva as Olga
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次は第2幕終了後のキーンリーサイドとイヴェリです。
Simon Keenlyside as Onegin and Tamar Iveri as Tatjana
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その次は終演後のカーテンコールで小澤さんを挟んで。イヴェリが持っている花束は小澤さん宛に投げられたものですが、さっさと彼女に渡してしまったもの。
Tamar Iveri, Seiji Ozawa and Simon Keenlyside
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Dirigent: Seiji Ozawa
Inszenierung: Falk Richter

Tatjana, Tochter von Larina: Tamar Iveri
Olga, Tochter von Larina: Nadia Krasteva
Eugen Onegin: Simon Keenlyside
Lensky, Dichter: Ramón Vargas
Fürst Gremin: Ain Anger
Larina: Aura Twarowska
Filipjewna: Margareta Hintermeier
Ein Hauptmann: Hans Peter Kammerer
Saretzki: Marcus Pelz
Triquet: Alexander Kaimbacher
Ein Vorsänger: Wolfram Igor Derntl
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by dognorah | 2009-03-19 09:47 | オペラ

ハイティンク指揮コンセルトヘボー演奏会

2009年3月15日、バービカンホールにて。

出演
ピアノ:Murray Perahia
指揮:Bernard Haitink
管弦楽:Royal Concertgebouw Orchestra

プログラム
シューマン:ピアノ協奏曲イ短調
ブルックナー:交響曲第9番

シューマンにおけるマリー・ペライアのピアノは、フォルテはそれほど強いものではないけれど一音一音がピュアーな響きで、弱音フレーズの美しさはとても魅力的です。バックのオケがまたすばらしく、古典的な曲に合わせて編成は小さめなのに厚みと深みのある弦には溜息が出ます。ピアノとのタイミングもぴったりで、名ピアニストと名オーケストラががっちり手を組むとこういう質の高い演奏になるという見本みたいなものでした。
下の写真は歓声に応えて挨拶するペライアとハイティンクです。
Bernard Haitink and Murray Perahia with Royal Concertgebouw Orchestra
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ブルックナーの9番は元来あまり好きな曲じゃありませんが、今日も大編成のコンセルトヘボーの各パートが非の打つどころのないアンサンブルを聴かせてくれているのに、第1,第2楽章はいまいちのめり込めずでした。先ほど私の心をとろとろにしてくれた弦も第1楽章では低弦を除いて金管の陰で存在感が希薄です。ようやく第3楽章で魅力的なメロディや音が出てきますが、オケのアンサンブルの妙には舌を巻きます。コーダの部分ではヴァーグナーのパルジファルで聴くようなメロディが出てきてその部分は非常に魅力的な音楽になっていると思いますが、演奏はとても美しく、終わってしまうのが惜しいくらいでした。
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by dognorah | 2009-03-16 07:20 | コンサート

パッパーノ指揮「ヴェルディのレクイエム」

2009年3月13日、ROHにて。

出演
ソプラノ:Micaela Carosi(Barbara Frittoliの代役)
メゾソプラノ:Olga Borodina
テノール:Piotr Beczala
バス:Ildar Abdrazakov
合唱:The Royal Opera Chorus
管弦楽:The Orchestra of the Royal Opera House
指揮:Antonio Pappano

パッパーノ入魂の演奏でした。もっといい音をこのオケから引き出す指揮者はいますが、今日はパッパーノの指揮下ではベストの音でした。トランペットの一部をバルコニーボックス席に配置した効果もなかなかのものです。ムーティユーロフスキーのようにダイナミックな効果を強調するものではなく旋律を美しく歌わせるスタイルでした。それはそれで魅力的です。
ソリストも全て立派な歌唱で、特にバスのアブドラザコフの柔らかい魅力的な声と繊細なニュアンス表現が印象的です。ソプラノのミカエラ・カローシはフリットリ似のとてもいい声ですが、弱音部で掠れる傾向にありフリットリだったらなぁと思わせる点がなきにしもあらず。テノールのベチャラは眼鏡をかけて登場したので一瞬誰だろうと思っちゃいました。ボロディナと共に文句のない歌唱でした。
合唱もアンサンブルがよくて肌理の細かい表現がとても楽しめました。
下の写真はパッパーノとカローシ。
Antonio Pappano and Micaela Carosi
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次は4人の独唱者です。
Micaela Carosi, Olga Borodina, Piotr Beczala and Ildar Abdrazakov
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by dognorah | 2009-03-15 01:34 | コンサート

中村恵理さん、コヴェントガーデンで主役デビュー大成功

2009年3月7日、ROHにて。

Elina Garanča, Mark Elder and Eri Nakamura
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今日は「カプレティ家とモンテッキ家」の第3回公演で行く予定じゃなかったのですが、急遽行く気になる「事件」が起きてしまいました。一昨日の公演から中一日だったのがきつかったのかネトレプコがスタミナ切れで降板してしまいました。産後でまだ万全の体調じゃないということです。そして代役は何と中村恵理。恐らくこのプロダクションのアンダーをやっていたのでしょう。普通はネトレプコが降板の場合は見合った代役を捜すのですが急なこと故、アンダーがそのまま歌うことになったのでしょう。しかし音楽監督側からすれば自信の代役選定じゃなかったでしょうか。そのように想像できるくらい中村さんの歌唱と演技は堂に入ったものでした。第1幕第2場で望まない結婚をさせられることを悲しむくだり、アリアの開始を固唾をのんで待ちました。ややスローテンポながらあがっている様子もなく表現力豊かでクリアなイタリア語が美しく響きます。高音が苦もなく出るし、ニュアンスに複雑な襞も感じられ、これってもしかしてネトレプコよりもちゃんと歌えているんじゃない?という印象です。感動しました。長いアリアは彼女がベッドに俯して終わりますが、大拍手が長く続きました。その後もアリア毎にどんどん聴衆の熱気は上がっていきます。ガランチャは今日も非の打ち所のない完璧な歌唱で、二人の二重唱もすばらしいものでネトレプコとの二重唱よりもよく合っていると思いました。
ネトレプコ目当てに来られたお客さんはがっかりしたでしょうけれど、歌唱的には同等またはそれ以上でしたよとお慰めしたいです。これで前半の公演は終わり、後半は3月30日より開始です。私は後半も行く予定ですが、ネトレプコには出演して貰いたいものの、例え降板してもこういう強力な代役がいるので安心です。
それにしても中村さんの今夜の衣装はネトレプコの衣装とはデザインが違うし、何よりも細めの体と背丈にぴったりだし、短い時間にどうやって調達したのでしょうね。

Eri Nakamura as Giulietta
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カーテンコールでも万雷の拍手と歓声で、ガランチャも自分は挨拶しないで彼女を讃える拍手をしていました。舞台裏のマネージメントとしては、してやったりというところでしょう。それにしてもまあこれだけの力のある日本人歌手が実力を思う存分発揮して感無量です。既にリサイタルや「エレクトラ」の端役でその実力は知っていましたが、主役としてこれだけの感銘を与えることが出来るとは!もうYoung Artist Programmeなどにいる必要はないぐらいに実力者ですが、知名度がないし東洋人だし普通のオペラ劇場から呼ばれるということはなかなかないでしょう。こうしたチャンスを生かして少しずつ注目を浴びる以外にはないのかもしれません。

日本人歌手がこの大舞台で主役を歌うのは2005年に「イタリアのトルコ人」でチェチリア・バルトリの代役を務めた中嶋彰子さん以来これで二人目と思います。私がROHに行くようになってからの話なので古い記録は知りませんが。

他の歌手ではテノールのダリオ・シュムンクがこれまでのベストの歌唱で、これだけ歌えるとガランチャとのやりとりの場面も楽しくなります。他の男性歌手は前回とほぼ同じ調子でした。管弦楽も一番油が乗った演奏で、序曲もリハーサルでのずっこけた演奏からは段違いで、拍手する気になりました。

Today's Elina Garanča as Romeo
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I Capuleti e I Montecchi: Opera in two acts
Music: Vincenzo Bellini
Libretto: Feliche Romani

Director: Pier Luigi Pizzi
Conductor: Mark Elder
Giulietta: Eri Nakamura
Romeo: Elina Garanča
Tebaldo: Dario Schmunck
Capelio: Eric Owens
Lorenzo: Giovanni Battista Parodi

下の写真は終了直後の舞台です。中央に自殺したロメオとジュリエットが横たわっています。
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by dognorah | 2009-03-08 20:39 | オペラ