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「カプレティ家とモンテッキ家」リハーサル

2009年2月27日、ROHにて。

カーテンコールのAnna NetrebkoとElina Garanča
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ネトレプコとガランチャが共演するベリーニのオペラは3月2日に初日を迎えますが、それに先だってリハーサルが今日演じられ、見に行ってきました。二人とも大変好調で、仕上がりもよく、歌唱は大いに楽しめます。加えてガランチャの凛々しくもかっこいいロメオ姿は胸キュンもので、もう宝塚ファンの心境です。昨年6月にパリでネトレプコ出演のこのオペラを聴いていますが、そのときのロメオ役はディドナートでした。歌はすばらしかったもののネトレプコより背が低くてズボン役にはちょっと違和感がありましたが、ガランチャだとその点も理想的です。

プロダクションは20数年前のものらしいですが、舞台セットも衣装も美しく、オペラの内容に即した抵抗のないものです。照明が最初から最後まで暗めなのがちょっと残念ですが。

マーク・エルダーの指揮は序曲こそモタモタしていましたがカーテンが上がるとまともな音楽になりました。本番では最初から気を抜かないで演奏して欲しいです。
それにしてもオペラは感動的で、グノーの「ロメオとジュリエット」よりもこちらの方が出来がいいのでは、と思えてきました。

I Capuleti e I Montecchi: Opera in two acts
Music: Vincenzo Bellini
Libretto: Feliche Romani

Director: Pier Luigi Pizzi
Conductor: Mark Elder
Giulietta: Anna Netrebko
Romeo: Elina Garanča
Tebaldo: Dario Schmunck
Capellio: Eric Owens
Lorenzo: Giovanni Battista Parodi
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by dognorah | 2009-02-28 08:59 | オペラ

レオ・ヌッチのリゴレット公演

2009年2月25日、ROHにて。

Rigoletto:Opera in three acts
Music: Giuseppe Verdi
Libretto: Francesco Maria Piave after Victor Hugo’s play Le Roi s’amuse
Director: David McVicar
Conductor: Daniel Oren

CAST
Duke of Mantua: Francesco Meli
Rigoletto: Leo Nucci
Gilda: Ekaterina Siurina
Maddalena: Sara Fulgoni
Sparafucile: Kurt Rydl
Giovanna: Elizabeth Sikora
Count Monterone: Iain Paterson
Marullo: Changhan Lim
Matteo Borsa: Daniel Norman
Count Ceprano: Vuyani Mlinde
Countess Ceprano: Louise Armit

歌手が全ていい出来で、とても満足できる公演でした。例によってPAを多用し、天井だけでなく私の席からは舞台袖の正面客からは見えない位置に大きなスピーカーが置いてあるのが見えましたが、これだけ質の高い歌唱だとそれもどうでもよくなりました。
フランチェスコ・メリのマントヴァ公は声の抜けが非常に良く、上手い演技と共にすばらしい出来です。昨年2月に聴いたヴィーンのCosì fan tutteでのFerrando役もよかったので、このところ安定して調子がいいのでしょう。
レオ・ヌッチのリゴレットはさすがという歌唱で、第2幕の有名なアリアCortigiani, vil razza dannataは感動的でした。万雷の拍手喝采中に舞台に跪いていたヌッチは指揮のダニエル・オーレンに会釈し、次いでピットの楽員を2-3名指さして起立させ一緒に拍手を受けるシーンがありましたが、歌手がこういうことをするのは初めて見る光景です。
ジルダを歌ったエカテリーナ・シューリーナがまたすばらしく、美しい声と丁寧に感情表現を込めた歌唱には感心しました。当たり役という感じです。
殺し屋スパラフチレを歌ったクルト・リドゥルも上手い歌唱と演技です。マッダレーナを歌ったサラ・フルゴーニもよいので第3幕の四重唱に期待しましたが、ちょっとアンサンブル的に合っていなかったような。
研修生新人の韓国人バリトン、チャンガム・リムも立派な歌唱で頑張っていましたが、表情や演技でもう少し磨きを掛けて欲しいと思いました。

指揮のオーレンはいつものように情熱的な指揮姿ですが、気の入れ方がちょっと違うというくらいの集中力を感じました。そのせいでしょう、オケは引き締まったヴェルディらしい音を美しく演奏してくれてブラヴォーでした。

演出は細かいところで少し以前とは変えていて、例えばリゴレットの松葉杖はなしとか、女官達との猥褻なおふざけもリゴレットでなく衛兵達にやらせるなど。この汚らしいセットももう見飽きたので、舞台装置だけでももう少しましなものにして欲しいところです。
私はこのプロダクションを見るのは3回目で、毎回異なる出演歌手の特徴が楽しめましたが、それにしても音楽といいリブレットといいよくできたオペラだなぁと改めて感心しました。

下の写真はカーテンコールから。左から、Ekaterina Siurina、Leo Nucci、Francesco Meli、Sara Fulgoniです。
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次はKurt RydlとEkaterina Siurina。
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最後は指揮のDaniel Oren。
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by dognorah | 2009-02-28 06:30 | オペラ

Martynovのオペラ「La Vita Nuova」コンサート形式

2009年2月18日、RFHにて。

La Vita Nuova (New life) - opera in 3 acts (world premiere)
Music: Vladimir Martynov (b1946)
Libretto: Based on “La vita nuova” by Dante Aligheri, adapted by Vladimir Martynov and Edward Boyakov

出演
Vladimir Jurowski
London Philharmonic Orchestra
Europa Chor Akademie

Beatrice: Tatiana Monogarova (soprano)
Dante: Mark Padmore (tenor)
Amor: Marianna Tarasova (mezzo-soprano)
Donna: Joan Rodgers (soprano)
Spirit: James Cameron (treble)
Spirit: Llewellyn Cross (treble)
Spirit: Felix Zadek-Ewing (treble)

13世紀にフィレンツェで生まれたイタリア最大の詩人といわれるダンテは「神曲」で有名ですが、今回のオペラの元になった詩集「新生」は1293年頃に執筆されたもので、内容は片思いの相手ベアトリーチェに対する恋情と賛美で綴られたものらしい。現代ロシアの作曲家マルティノフがそれをもとにリブレットを書き、2008年に作曲したものです。全体を通して演奏するのは今回が初めてなので世界初演としていますが、リブレットに使われている原語はラテン語、イタリア語、ロシア語で、少なくともロシア語は英語に翻訳されて歌われました。英語字幕付きですがラテン語やイタリア語部分は英語をイタリックにして観客にそれと分かるようにしてあります。

オペラということで聴きに行きましたが、内容はオラトリオと呼ぶ方が適切でしょう。ダンテやベアトリーチェの動きはほとんど無く、ダンテは歌唱よりもモノローグを長々としゃべり続ける場面が多いです。3人のボーイソプラノと合唱の出番が多く、ベアトリーチェの歌はそれほど多くはありませんし、他の女声歌手も出番は非常に少ないです。内容は極めて宗教色が強く、夭折したベアトリーチェに絡めて神やキリストに言及する場面が多いです。非キリスト教者にとっては台詞についていくのがやや辛い面もありますが、音楽は古典的で大変美しいのが救いです。そういう中でもベアトリーチェのテーマをピアノの高音部を使って表現したり、チェレスタや打楽器の使い方などにまごう事なき現代音楽を感じるものです。特に第2幕以降はどんどん現代音楽的になり、より面白く感じられます。

コンサート形式ながらRFHのステージで出来る目一杯の工夫はしている感じで、照明装置は各色ふんだんに使い、ステージ後方のスライドドアを開けてパイプオルガンの右側にあるスクリーンに雲の動きを投射したり、煙をもくもく吹き出させたり。オペラも白い衣装の精霊を表す3人のボーイソプラノが客席前方で歌い始めて開始、そのときはユーロフスキーはまだ指揮台横に座っていて、暫くして指揮台に上がるという演出です。従って開始の拍手はなし。また第1幕終了後も暗転してすぐに指揮者も歌手も挨拶なしで引っ込みます。ダンテ以外の歌手は舞台上と合唱席の間を行ったり来たり、合唱隊も左右に動いたり編成を替えたりとしょっちゅう動いています。変わっているのは第3幕終了の時で、独唱者が退出したあと合唱隊が左右に分かれて歌いながら少しずつ歩を進め客席側に移動し客が使うメインのドアから退出していきます。当然歌声はだんだん遠のいて行き、最後は消えるわけです。そして管弦楽もまるでハイドンの告別交響曲のように各自楽器を抱えてちょっとずつ出ていくことで、最後はチェレスタ奏者と打楽器奏者が残り、チェレスタが演奏を終えると一人残った打楽器奏者がシロフォンをちょっと叩いて終わるというもの。

歌手ですが、ダンテ役のマーク・パドモアは長丁場を美しい声で完投、ソプラノのタチアナ・モノガロワもいつもの美声が調子よく、共に楽しめました。他の歌手や合唱もまあまあ。管弦楽は、もうちょっとチェロが頑張って欲しいという場面はありましたが全体的に健闘。こういう作品を敢えて演奏し、ある程度楽しませてくれたユーロフスキーに拍手です。

写真はダンテ役を好演したMark Padmore。いつの間にか坊主頭になっていました。
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次はベアトリーチェ役のTatiana Monogarova
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指揮者Vladimir Jurowskiはちょんまげをやめたみたいです。
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世界初演なのでロンドンにやってきた作曲家Vladimir Martynov
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by dognorah | 2009-02-21 04:02 | オペラ

チレアのオペラ「アドリアーナ・ルクヴルール」コンサート形式

2009年2月15日、QEHにて。

Adriana Lecouvreur: Opera in four acts
Music: Francesco Cilea
Libretto: Arturo Colautti

出演
Conductor: Andrew Greenwood
Chelsea Opera Group

Adriana Lecouvreur: Nelly Miricioiu (soprano)
Maurizio, Count of Saxony: Peter Auty (tenor)
Princesse de Bouillon: Rosalinde Plowright (mezzo-soprano)
Prince de Bouillon: Daniel Grice (bass)
Abbé de Chazeuil: Andrew Mackenzie-Wicks (tenor)
Michonnet: Craig Smith (baritone)
Mlle Jouvenot: Victoria Joyce (soprano)
Poisson: Hubert Francis (tenor)
Mlle Dangeville: Alison Kettlewell (mezzo-soprano)
Quinault: Simon Lobelson (bass)

チェルシーオペラグループの公演というのは初めて行きましたが、なかなか質の高い上演で、歌手に何と先日初めて聴いたばかりのネリー・ミリチョーやロザリンデ・プローライトのような著名な人達が出ているのを当日会場で知ってびっくりしました。

チレアの最も有名なこのオペラを聴くのは初めてでしたが、いくつかあるアリアが聴き応えのある美しいもので管弦楽もすばらしいものです。なぜあまり上演されないのか不思議なくらい。
主役のミリチョーは貫禄もので、このオペラで要求される地の台詞は太い地声で鼻っ柱の高い女優を表現し、アリアではリリックな表現で立派に歌い上げて楽しませてくれました。Wikipediaの解説ではこの役は往年の大歌手にふさわしいそうですが、ミリチョーはそういう条件にぴったり。彼女とロザリンデ・プローライトだけはすべて暗譜で歌っていました。そのプローライトもさすがに歌唱はすばらしく、恐らく本日の出演者の中では一番の出来でしょう。
相手役マウリツィオを歌ったテノールのピーター・オーティは前半ちょっと荒い歌唱でしたが後半は持ち直し、よく声が出ていたこともあって拍手喝采でした。他の歌手達もなかなか頑張っており、特にミショネを歌ったバリトンのクレーグ・スミスは質の高い歌唱が印象的です。
管弦楽は頻繁に公演するわけではないでしょうにとてもこなれた演奏で充分すばらしい音楽を伝えていました。
このグループは年間3回オペラ公演を行うそうですが、今後珍しい演目があればまた行ってみようという気になりました。
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by dognorah | 2009-02-20 10:00 | オペラ

ミラノ徒然

ミラノは今まで結構な回数行っているがそれは全てビジネスだったので、自前で行くのは今回が初めてである。空港はリナーテ(Linate)とマルペンサ(Malpensa)があって今まで両方とも使ったことがあるが、今回は当然近い方のリナーテに到着する便を選んだ。空港から市内のホテルまでタクシーで16ユーロ程度、4人で乗れば一人4ユーロとお手軽である。公共交通は確かバスしかなかったと思うが未だかつて使った経験はない。何度か市内をタクシーで走ったが、路面電車が縦横に走っているし道は入り組んでいるし一方通行が多いし、ここを自分で運転して目的地に行く自信はないなぁと思った。タクシーの運転手だって有名なサンタ・マリア・デレ・グラーチエ教会に行くのに地図と首っ引きだった。いつまで経ってもDuomoのまわりをぐるぐる回っているので、予約時間に間に合うのか不安になる。降ろされた地点も教会の裏側だったので走って教会内部を突っ切りようやく間に合った。帰りは徒歩でDuomoまで戻ってみたが、なーんだ大した距離じゃなかった(^^;
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レオナルドの「最後の晩餐」は20年以上前の国際会議の合間にふらっと行って見学できたが修復後は完全予約制で、15分ずつ区切られたタイムスロットを選ぶ形式になっており、今回は昨年12月に予約したが既に残っているタイムスロットは極限られたものだった。見た日は金曜だったが翌土曜は12月時点でも予約は完全に埋まっていた。シーズンオフなのに凄い人気だ。入場は全てコンピュータで制御されており誤魔化す余地はなさそう。一回の定員は25人だが、私たちの時は21-2名だった。半分ぐらいは日本人だったからこれも驚くほどの人気だ。
ホールは明るくて光線の具合もほどよく、大変鑑賞しやすい環境が整えられている。絵を見て驚いたのは以前見たイメージとは違って絵自体が非常に明るい色ですっきりしていることだ。洗浄と修復の効果がはっきり現れている。絵の具は随分剥落しているがこれ以上の再現は望むべくもないだろう。何度も複製画で見た絵ながら、実物の色合いは複製では得られない純粋さがあり感銘を覚える。
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洗浄といえば、ミラノ大聖堂(Duomo)も綺麗に洗浄されておりびっくりした。磨き上げられた大理石の美しいこと!ブルー系統の色のものが特に目を引かれる。以前と同様今回も上まで上ってみたが雪を頂いた山並みが美しく見える。
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博物館の類はスカラ座博物館とアンブロジアーナ美術館を見た。両方とも取り立てていうほどの内容ではないが、美術館ではレオナルドなどよりベルナルディノ・ルイーニ(Bernardino Luini)の絵画に惹かれた。
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by dognorah | 2009-02-19 00:44 | 旅行

バレンボイムの弾き振りコンサート

2009年2月13日、ミラノスカラ座にて。

Daniel Barenboim
Filarmonica della Scala

Programme
Ludwig van Beethoven
Concerto No 1 in C maj. Op. 15 for piano and orchestra

Arnold Schönberg
Pelleas und Melisande Op. 5, symphonic poem

トリスタンとイゾルデの翌日にこれをやってくれたのでついでに聴きました。余談ですが、トリスタンとイゾルデの切符は予約後すぐにロンドンまで郵送されてきたのですが、このコンサートの切符は遂に届かず(一緒に購入した友人の方はちゃんと届いていた)郵便事故だったようです。しかし当日Box Officeに行って事情を説明するとその場で紙にさらさらと席の詳細を書いてサインしたものをくれました。これを見せるだけで問題なく席に着けました。今回の席は正面天井桟敷の上から2番目の2列目でした。目の前に柱があるので売れ残っていたんですね(初めての私にはそんなことは分かりませんでした)。それでも前列の人がきちんと背もたれに身を預けて座っていると隙間からピアノもオケも見えます。しかし前の人が身を乗り出したりすると全く見えなくなります。オペラなら文句を言ってきちんと座って貰いますがコンサートは音が聞こえればいいのでそのまま与えられた条件で聴いていました。因みに私の後ろに通路があって更にその後ろに3列目の席があります。そこは当然全く舞台が見えないので、演奏中は客は私の後ろに立っていました。要するに休憩場所付きの立ち見席なんですね。
オケピットは無かったかのようにきちんと舞台がピットのエッジまでせり出してオケはかなり客席に近づいて演奏されます。音は非常によかったです。前日も感じましたがこのオケの実力はなかなかのものです。

最初に演奏されたベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番、バレンボイムは背中を聴衆に向けた標準的な姿勢で弾き振りです。演奏はピアノもオケも非の打ち所のない立派なもので感嘆しました。ピアノの音は力強くクリアで、特に奇をてらうこともなくひたすら正統的な演奏で格調の高さを感じさせます。前日にあの長いオペラを指揮して翌日にこれというのも凄いことだと彼の超人的能力にただただ感心するばかりです。

2曲目のシェーンベルクは1903年に作曲されたもので、こういう曲の存在さえ初めて知りました。リヒャルト・シュトラウスばりのロマンティシズムに溢れた叙情的なパートが多い曲です。演奏時間は約45分で、気持ちよく音の饗宴を楽しめますがやや退屈感も感じました。バレンボイムは今日のコンサートもすべて暗譜で指揮していました。
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by dognorah | 2009-02-17 23:46 | コンサート

バレンボイム指揮「トリスタンとイゾルデ」公演

2009年2月12日、ミラノ・スカラ座にて。
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Wagner: Tristan und Isolde

指揮:Daniel Barenboim
演出:Patrice Chéreau
Cast
Tristan:Ian Storey
Isolde:Waltraud Meier
Brangäne:Lioba Braun
Kurwenal:Gerd Grochowski
König Marke:Matti Salminen
Melot:Will Hartmann
Ein junger Seemann:Alfredo Nigro
Ein Steuermann:Ernesto Panariello
Ein Hirt:Ryland Davies

初のスカラ座訪問でやっとマイヤーのイゾルデを3幕通して聴くことが出来ました。彼女の調子は完璧ではないにしてもかなりよかったのではと思います。第1幕と第2幕の歌唱は昨年11月のパリの時の方がややよかったという気がしますが。
第3幕は今にも倒れそうによろよろとしながら歌うという演出ですが、それがかなり迫真の演技で、本当に歌の途中で倒れてしまうのじゃないかと気になって歌に集中できませんでした。普通に突っ立って歌って欲しかった。

ウェールズ人テノール、イアン・ストーリーのトリスタンは悪くはないけれど、非常に感心したということもないです。昨年パリで聴いたクリフトン・フォービスの方が好みです。特に第3幕でそう思ってしまいました。声量的にはマイヤーに押され気味。

ブランゲーネを歌ったドイツ人メゾソプラノ、リオバ・ブラウンはなかなかの歌唱でした。ちょっと細めながらよく響く声です。舞台上では老けたメーキャップでしたが40代後半でしょうか。2年前にプロムスでベートーヴェンの第9に出演していましたが、そのときもよい印象を与えてくれました。
クルヴェナールを歌ったドイツ人バリトン、ゲルト・グロチョフスキーもいい声をしていて不満のない歌唱でした。
マルケ王を演じたフィンランド人バス、マッティ・サルミネンは相変わらずすばらしく、貫禄のマルケ王でした。
また、ドイツのテノール、ヴィル・ハートマンの声もよかった。

バレンボイムの指揮するスカラ座管弦楽団の音のすばらしいこと。今回はオーケストラピットが見渡せる3階の席で聴きましたが、9本ものベースが入った大編成のオケは本当に重厚で美しい音色です。上手いオケと思いました。バレンボイムは暗譜で指揮していましたが、普段は椅子に座って指揮し、盛り上げるべきところは椅子から降りて激しい動きでオケを煽っていました。地下の深いところから情念が盛り上がってくるよう情熱的なトリスタンとイゾルデだと思います。

演出は、見たこともないような人間的恋情の発露があってとても納得できるものです。第1幕終盤で二人が狂おしく抱き合い、熱情的なキスを交わし、ほっておけばそのままセックスをしてしまうのではと心配した周りの人達があわてて二人を引き離すシーンなど、とても新鮮です。俳優を沢山使って舞台が賑やかなのもあまり見たことがない演出ですが、それも自然です。ただ全般に舞台装置はオペラの内容に沿っているとも思えずあまり感心できませんが。

(追記)余談ですが、当日平土間の席を見渡すと結構空席があり、インターネット予約解禁日のあの騒ぎはいったい何だったんだろうと思いました。第1幕の休憩が終わって席に戻ると後ろの席の人達は戻ってこず、友人達も2列目で見えないとこぼしていたのが第2幕終了後に聞くと、前列の人が戻ってこなかったので最前列に座ってラッキーと喜んでいました。みんな上から見て狙い定めた空席に移動したのでしょうか。しかし第3幕が始まって驚いたのは、平土間に大量の空席が生じていたこと。イゾルデの愛の死の場面を見ずに帰宅してしまうとは!

トップの写真は第2幕終了後のカーテンコール時のもので、左からIan Storey、Waltraud Meier、Matti Salminen、Lioba Braunです。
次いで、終演時のカーテンコールから、Waltraud Meier。
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Ian Storey。
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Matti Salminen。
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Daniel Barenboim。
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by dognorah | 2009-02-15 20:59 | オペラ

ハイドンのオラトリオ「トビアの帰還」

2009年02月10日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにて。

Joseph Haydn:Il ritorno di Tobia

Sir Roger Norrington
Orchestra of the Age of Enlightenment
Joyful Company of Singers Choir
Lucy Crowe:Sara (soprano)
Rachel Nicholls:Raphaelle (soprano)
Ann Hallenberg: Anna (mezzo-soprano)
Andrew Kennedy:Tobia (tenor)
Christopher Maltman:Tobit (baritone)

滅多に演奏されない作品だそうですが、さすがにハイドンイヤーにはそういうものも上演されます。
音楽はハイドンの交響曲で聞き慣れたようなメロディと音で彼らしい素敵な音楽です。各歌手の歌うアリアもすばらしく、正味2時間半のオラトリオを心から楽しめました。

ノリントン指揮のOAEは序曲からしてすばらしいアンサンブルで、全編レヴェルの高い演奏です。ノリントンは結構動作も大きくBBC 3がラジオ録音しているというのに飛び上がってばたんばたんとノイズを出す気の入れようでした。
独唱者はLucy Crowe以外は全て過去に聴いたことがある人達です。まず最初にアンナ役のアン・ハレンベルク(ハレンベリー)とトビト役のクリストファー・マルトマンが歌うわけですが、二人とも圧倒的名唱で感動もの、のっけから参ったーという感じでした。ラファエレを歌ったレイチェル・ニコルズも惚れ惚れする声でした。サラを歌ったルーシー・クロウは第1部ではちょっと弱いなぁという印象でしたが、第2部になって俄然持ち直し、レイチェルと張り合う歌唱となっていました。トビア役のアンドリュー・ケネディはいつもの通り声はまあまあなのですがもう少し力強さが欲しいところです。
合唱は特段凄いというわけではありませんが充分上手い歌唱でした。
下の最初の写真は女声陣で、左からAnn Hallenberg、Rachel Nicholls、Lucy Croweです。
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次は男声で、左がChristopher Maltman、右がAndrew Kennedyです。
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by dognorah | 2009-02-12 07:05 | コンサート

ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」METライヴ中継

2009年2月7日、BFI IMAXにて。

以前からWaterloo駅近くにあるIMAXは気になる存在ではあったが入るのは初めてである。上映する部屋はたった一つしかないのだが、入って、ヒェー、でかいスクリーン!とびっくり。後ろから4番目の席を選んだが、最後列で充分。前席との段差が充分あるので前にイギリスの大男が座っていても邪魔されることはない。天井は高いし座席数も450とあまり多くないので気持ちよく鑑賞できる映画館だ。

METライヴを見るのも初めてだが、さすがHDというだけあってこの大画面なのに通常の映画並みの緻密な映像で美しい。音は映画館の音響装置に依存するが、ここはまあまあの音質であった。オペラが始まってしばらくはちょっと映像と音声のズレがあったが暫くして直った。インターヴァルには舞台裏の模様替え大忙しの場面を背景にナタリー・ドゥセがインタヴュアになって歌手達をインタヴューするのだが、今日の出演者は英語のnative speakerが誰もいず、訊く方も答える方もあまり突っ込んだ話はなく、とんちんかんなやりとりもあってイギリス人観客達の失笑を買っていた。私でさえ笑ってしまったぞ。せめてインタヴュアぐらいアメリカ人を使うべきだろう。ナタリーは失格。

さてオペラだが、充分楽しめた。歌手は全て良かった。
注目のネトレプコは衣装の関係であまりはっきり分からないものの、下半身デブになったかなという体型ながら顔はそれほどふくよかではなく、以前のイメージそのまま。声も以前と同じく美声のまま。これに先立つ公演のレヴューを読んでみると、ルチアという役に求められている歌唱は最高音も含めて実現されず、技術的にはかなりごまかしがあるとのこと。私にはそういう技術的なことは分からないけれど(ロンドンの新聞Financial Timesによると、昨年の同じ公演で歌ったダムラウの方が遙かに技術的にしっかりした歌唱だったらしい)、大好きな彼女のあの歌い方と声の出し方が健在で安心したのであります。役柄に必要な細やかな表情や演技などはほとんど無かったけれど。

ロランド・ビリャソンは不調で3日の公演から降板し、3日はジュゼッペ・フィリアノーティが代役を務め、今日はピョートル・ベチャラが代役だった。ショートノーティスでしかも2日前にMETでレンスキーを歌ったばかりというのにとても立派なエドガルドだった。風貌もビリャソンよりは見栄えがするし、これはなかなかいい。ただ、弱音でちょっと声が汚れる感じがしたが。

エンリーコを歌ったマリウス・キーチェンは利己主義の兄としての演技も声も文句なし。迫力ある歌唱だった。
ライモンド役のバス、イルダール・アブドラザコフもいい歌手だ。

マルコ・アルミリアートの指揮は非常にこなれたものでこれも文句なし。
演出は、スコットランドの幽霊の出る古城にヒントを得たとかで、ルチアも最後は幽霊になってエドガルドの自殺を幇助する場面もあるが、全体的にはよくできた伝統的なもの。舞台セットはなかなか凝っていて、第1幕のスコットランドのヒースを模したという草の生えた地面はとても良くできている。インターヴァルに分解するところを映していたが作る人は大変だったろうなと思わせるもの。大がかりな舞台装置なので各幕の転換にはかなり時間を費やしていたが、第3幕の螺旋階段がある屋敷の部屋から墓場への転換は見事に早かった。

ということで舞台も歌手も大変感銘を受けた公演でした。入場料がちょっと高いのが難点だが、座席はかなり埋まっていた。

Lutia di Lammermoor
Music: Gaetano Donizetti
Libretto: Salvadore Cammarano

Conductor: Marco Armiliato
Director: Mary Zimmerman
Lucia: Anna Netrebko
Edgardo: Piotr Beczala
Enrico: Mariusz Kwiecien
Raimondo: Ildar Abdrazakov
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by dognorah | 2009-02-09 03:16 | オペラ

ヴィオラリサイタル

2009年2月5日、ルーマニア文化協会にて。

演奏
ヴィオラ:Yuko Inoue
ピアノ:Kathron Sturrock

プログラム
J. S. Bach (1685 – 1750): Viola da Gamba Sonata No.2
Bruch (1838 – 1920): Romanze
George Enescu (1881 – 1955): Concert Piece
J. Hawkins (b 1949): Urizen
Brahms (1833 – 1897): Sonata Op.120 No.2

今月のエネスコ協会主催のコンサートです。
ヴィオラの井上さんは浜松生まれ、マンチェスターで今井信子さんに学び、第17回ブダペスト国際ヴィオラコンクールで優勝。現在はRoyal Academy of Musicの教授。

今日のプログラムはバッハで始まり、3人の比較的新しい作曲家を挟み、ブラームスのソナタで締めくくるというよゴージャスなもの。演奏は大変質の高い音楽を聴かせるすばらしいもので、ヴィオラでも幅広い音域で豊かな表現を提示できるんだということがよく分かりました。プログラムの中ではバッハはあまり好きではなかったのですが、ブルッフの近代的な美しい響きに感嘆し、エネスコの作品にスケールの大きい情熱的激しさと緻密さの対照に妙が感じられ、会場にもいらしたホーキンスの魅力的なメロディに嬉しくなり、最後のブラームスでどっしりとした本格的ソナタにヴィオラを堪能した感じです。特にエネスコの作品が印象的でした。

インターヴァルには例によってワインが供され、100人そこそこの聴衆同士で会話は弾みます。普通のコンサートホールでは知り合いと話すことがあるくらいですが、ワインがあって少人数だと初対面でも気軽に話せるので大好きです。
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by dognorah | 2009-02-08 09:08 | コンサート