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バイロイトという街

ヴァーグナーのオペラのために初めて訪れたバイロイト、夕方から始まるオペラまでは時間がたっぷりあるので毎日少しずつあちこち見て回りました。小さい街なのでそれほど見所はありませんが、少しこの街について印象を語りたいと思います。
ウイキペディアによると現在の人口は約74000人だそうです。とてもドイツ的な清潔な街で、住んでいる人は多分ほとんどドイツ人なのでしょう旅行者を入れてもアフリカ系やインド系の人はとても少ないです。オペラが終わってから一人で夜遅く街を歩きましたが大都市に見られる治安の悪さは全く見えませんでした。かなり安全な街と言えそうです。フランクフルトを流れるマイン川の源流の一つが近くにあり、小川と呼べるRoter Main (赤マイン)川が街の中を流れています。ここより北の方の地域を流れるWeissen Main (白マイン)と合流して本流のマイン川になります。なお赤とか白というのは土質の影響を受けた水の色から来ているようです。
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街の中心はバイロイト駅の南数百メートル付近にありショッピング街はほぼ歩行者天国でいつも人で賑わっていますが、旅行者の多い今の時期でもそれほど混んでいるわけではありません。この伝統的な繁華街の延長上にある歩道橋を渡ったところに大きなショッピングモールがあり、買い物好きのドイツ人の需要を満たしているようです。PCをずらっと並べて電話ブースまで設置された本格的インターネットカフェを一軒見つけましたが日本語の書き込みが出来ないので不便です。私はU3に必要な文章を書き込んでから行ってブログにアップしました。PCの持ち込みは出来ません。1ユーロで40分使えます。その他無線LANで無料アクセスさせてくれるカフェやレストランも2-3見つかり、PCを持ち込んでアクセスしてみましたが普通にインターネット出来るのでこちらの方が便利です。駅前にあるBayerischer Hofというホテルは客には無料で無線LANを提供しています。私の泊まったホテル(Arvena Kongress)はケチで1時間10ユーロ、一日22ユーロも取ります。ロビーには無料で使えるPCが置いてあるのですが日本語は表示さえ出来ない代物です。しかしこのホテルは祝祭劇場までチャーターバスの送迎があり、朝食と昼食が付いているなどその他のサーヴィスはとても満足しました。立地的にも街の中心まで徒歩10分足らずで便利ですし。

割と隅から隅まで歩き回りましたが街の中で私が見たものについて少々述べてみましょう。

Spital-Kirche
まあ特にどうということのない普通の教会
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Stadt-Kirche
一番豪壮な外観ですが内外とも修復中で見るに堪えず、Rathausの屋上から撮った写真を掲げます。
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Schloss-Kirche
これは立派な塔を持っているのですが修復中で写真は撮りませんでした。しかし教会本体の内部は一見の価値ある美しさです。
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Christuskirche
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大変モダンな教会。中は見学していません。

Markgräfliches Opernhaus
1748年に建てられたオペラハウスで、当時の領主(Markgraf)の妻(Markgräfin)がいろいろ面倒を見たのでこういう名前が付いているようです。外観は写真に示すように普通の古い建物という目立たない存在ですが、中へ入ると後期バロック様式の装飾がびっくりするくらい華麗な劇場です。バイロイトでは必見でしょう。
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せいぜい3-400人程度の観客しか座れない大きさですが、舞台は奥行きが27mもあって設備もちゃんとオペラが上演できるようになっています。当時としては破格に大きい舞台だったことから自分のオペラを上演する劇場を物色していたヴァーグナーの注目を惹き、かなり詳細に検討したようです。また、1872年にはここで彼自身が指揮してベートーヴェンの第9を演奏しています。しかし、やはり入れ物が小さすぎるという結論に達し、すぐ近くに彼自身のオペラハウスを造ることにしたのです。従って、このオペラハウスがバイロイトに存在していたことがきっかけで現在のヴァーグナーの聖地がバイロイトになったと思われ、そういう意味でも大変興味深い劇場です。

ヴァーグナー博物館であるHaus Wahnfried
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ずいぶん広い館で地下1階地上3階建て。多くの部屋を飾っているのはオペラに関する絵画が多い。後は作曲家や音楽家達の写真や手紙類、役者の衣装など。かなり膨大な資料が保存されていて、見学順路は何回も階段を上り下りさせられる分疲れますが写真を中心に興味深い資料を見ることが出来ました。ドイツ語が読めればもっと面白かったことでしょう。その場でスキャンしてさっと自分の言語に翻訳してくれるガジェットがあれば欧州ではかなり役立つでしょうね。誰か開発してくれないかしら。1階奥のホールにはヴァーグナーが使ったという1873年製のスタインウェーのピアノが置いてあり、今でもここで開催される室内楽コンサートで使用されているようです。常時ヴァーグナーのオペラがスピーカーから流れてきますが、音響の悪さには辟易します。まさかこれが19世紀の音だと言っている訳じゃないでしょうに、もう少しましな装置を使って欲しいものです。部屋の壁沿いには音楽関係の蔵書がぎっしり。裏にある庭園には大きな長方形の石版が埋め込まれたヴァーグナーの墓があります。

Franz-Liszt-Museum
リストは1886年にバイロイトで「トリスタンとイゾルデ」を見た直後に亡くなったので墓があるそうですが、従ってこの博物館もあるのでしょう。ごく普通のアパートの一室のような家です。資料数はあまり豊富ではなく写真を中心にごく短時間で見ることが出来ました。

Kunstmuseum Bayreuth
常設展示品はほとんど無く、企画展が主でしょう。私が行ったときは現代作家の釘を多用した作品が並んでいましたが私に言わせれば「がらくた」です。もう一つ、1979年にバイロイトでプレミエだった「ローエングリン」のDVDが演奏されていました。ペーター・ホフマン主演のもので、モニター画面を見ている限りは楽しめる公演でしたが、プレミエだったので当時の各国の新聞評が多数出ておりコピーが壁に貼ってありました。日本の「音楽通信」というのも張ってあり、読んでみたらこれがメチャメチャ貶しているものでした。貶しているのは演出についてなのですがかなり激しい言葉使いです。しかし理路整然とその理由を箇条書きで記していてなかなか読み応えがありました。

Neues Schloss
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1753年に建てられた領主の居城。各部屋はよく保存されたお城で、オランダ派の絵画と陶器類も多数あります。それほど感嘆すべき見ものはなかったもののまあ悪くはなかったです。庭園(Hofgarten)は公園になっていますがこちらもよく整備されています。
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Neues Rathaus
13階建ての近代ビルですが、その屋上は開放されており、バイロイトの町並みや祝祭劇場(遠くの山の中腹にあります)を一望できます。周囲は結構低い山並みが豊富であることも分かります。
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バイロイト大学付属植物園
最初はバスの情報を持っていなかったので歩いていきましたが、中心から30分以上かかります。街の南端にバイロイト大学がありますが更にその南側にあってかなり広い敷地を使っています。入り口近くにはかなり規模の大きい温室があり熱帯植物たちがこれも地域ごとに区切られて多種類見ることが出来ます。ここでバナナの花というものを初めて見ました。
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動物が上るのを拒否するかのように幹がトゲだらけの木もおもしろい。
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さらに進むと湿度100%近い熱帯を模した部屋があり各種興味深い植物がありました。湿度が不愉快で早々に退散しましたが個人的にはこの温室が見応えがあってお気に入りです。温室を出ると世界の大陸別に様々な植物が植えられています。アジア地域では日本の一角もあって多数の木や草花を見ることが出来ますが、時期的には他地域も含めて全般に花が少ないときなので地味でした。中心付近には池もあり、ベンチに座って観察すると大小様々なトンボが沢山飛んでいます。赤とんぼやシオカラトンボに似たやつとか全体に青色のイメージでヤンマ級の大きなやつなども。バイロイト大学のキャンパスを縦断しましたが夏休みなのでほとんど無人でした。

Eremitage(Altes Schloss)
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郊外にありますのでバス(2番)に乗っていきました。因みにバイロイトのバスはバスセンターから四方八方に出ており、道路渋滞もほとんど無いので時刻表も正確に運用されています。大体が10分から20分間隔で運行。私は回数券を買ったので片道運賃は知りませんが、往復券4枚で10ユーロでした。これだと片道1.25ユーロですね。
雨の中をわざわざ行ったのに、内部は修復中で見れませんでした。完成は来年6月とのことで「来年またおいで」と言われてしまった。残念だったけれど、広大な自然を利用した庭園はなかなか美しく、そばをマイン川の上流が流れていたりして起伏もあり散歩するにはもってこいの気持ちのいい場所です。雨でなかったらもっと長時間滞在したのですが、早めにバス停に移動。

祝祭劇場そばの彫刻
日本人彫刻家、松阪節三氏のDer Traum(夢)という名の1996年の作品。碑文には松阪氏のサインと共にリヒャルト・ヴァーグナーの自筆文章のコピーが彫ってあります。
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10日間も滞在したのでもっと見ようと思えば見ることは可能でしたが、オペラ(4時開始)がある日はホテル発3時15分の送迎バスを利用することを考えると、午前中ぐらいしか余裕を持って見ることが出来ません。日本人のレピーターと食事時に話した結果皆さんはオペラのために体力を温存しているのかあまり見学はしておられないようで、私などこれでも沢山見た方でしょう。
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by dognorah | 2008-08-26 10:08 | 観光

BBC交響楽団のチェコ音楽:Prom 47

2008年8月21日、ロイヤルアルバートホールにて。
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このところロンドンは気温20度ぐらいで暑くもなく寒くもない快適な気候です。この時期のPROMSで上着を着たまま鑑賞できるなんてちょっと珍しい。
さて、今日は今月行く唯一のPROMSで、プログラムと演奏者は次のとおりです。

Dvořák: Slavonic Dances, Op. 46
Janáček: Osud (concert performonce; sung in Czech)

Živný: Štefan Margita tenor
Míla Válková: Amanda Roocroft soprano
Míla's Mother: Rosalind Plowright mezzo-soprano
Dr Suda/Hrázda: Aleš Briscein tenor
Lhotský/Verva: Aleš Jenis baritone
Konečný: Owen Gilhooly baritone
Miss Stuhlá: Ailish Tynan soprano
Miss Pocovská/Součková: Martina Bauerová soprano
Doubek (as a boy): George Longworth treble

BBC Symphony Orchestra (Stephen Bryant leader)
BBC Singers (Stephen Betteridge chorus-master)
Jiří Bělohlávek conductor

ドヴォルザークのスラヴ舞曲は全8曲をコンサートで聴くのは恐らく初めての経験です。この曲はブラームスのハンガリー舞曲のように沢山あるのかと思っていたら8曲しかないんですね。全て演奏すると約40分かかります。最初と最後の曲が一番馴染みがあって華やかです。楽しい曲でたまにはいいでしょう。ビエロフラーヴェクの指揮はよくアンコールで聴くような派手なものではなく淡々と緻密に演奏する印象でした。

ヤナーチェクのオペラは80分ぐらいの演奏時間ながら全3幕で構成されています。Osudというのは宿命とか運命とかいう意味だそうです。ストーリーはちょっと暗いもので、母親の意向を無視して好きな作曲家と結婚した娘が子供を産んで4年後に、発狂した母親の身投げ自殺の巻き添えで一緒に死んでしまい、残された作曲家がオペラの最後の幕を完成させるのに困難を来す、というようなストーリーです。リブレットを参照しながら劇の進行をイメージしていきましたが、舞台化するほどの内容じゃなさそうな印象でした。しかしその音楽は背中がぞくぞくするほど美しく、主役の作曲家を歌ったテノールもこんなすばらしい歌手が居たんだと感嘆するぐらい美しい声と歌唱でさすが母国語での言い回しは堂に入っています。相手役のルークロフトもよく声が出ていたし、母親役のプローライトもうるさい母親を上手く表現していました。この人はROHのヴァルキューレで夫であるヴォータンをうるさく責め立てるフリッカ役でのすばらしい歌唱が印象に残っていますがこういう類の役にはうってつけですね。
他の歌手達もチェコやスロヴァキアの歌手を中心に文句ない出来で、音楽的にはとても満足した公演となりました。ビエロフラーヴェクがBBC交響楽団の首席指揮者に在任中にもっとROHは彼にオペラを振らせて欲しいものです。当然チェコものを期待していますが。

下の写真は左からAmanda Roocroft、Štefan Margita 、Rosalind Plowrightです。
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by dognorah | 2008-08-22 21:50 | コンサート

「パルジファル」公演

2008年8月16日、バイロイト祝祭劇場にて。
第3幕終了後の舞台
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Parsifal
Musicalische Leitung: Daniele Gatti(イタリア人)
Inszenierung: Stefan Herheim(ノルウエー人)
Bühnenbild: Heike Scheele

CAST
Amfortas: Detlef Roth(ドイツ人)
Titurel: Diógenes Randes(ブラジル人)
Gurnemanz: Kwangchul Youn(韓国人)
Parsifal: Christopher Ventris(イギリス人)
Klingsor: Thomas Jesatko(ドイツ人)
Kundry: Mihoko Fujimura(日本人)
Gralstritter 1: Arnold Bezuyen
Gralstritter 2: Friedemann Röhlig
Knappe 1: Julia Borchert
Knappe 2: Ulrike Helzel
Knappe 3: Clemens Bieber
Knappe 4: Timothy Oliver
Klingsols Zaubermädchen: Julia Borchert, Martina Rüping, Carola Guber, Anna Korondi, Jutta Maria Böhnert, Ulrike Helzel
Altsolo: Simone Schröder

国際色豊かなキャストながらすばらしいとしか言いようのない感動的名演でした。今年の新演出であり、目玉だったこのプロダクションは演出と指揮と歌手に最高クラスの人材を投入したのでしょう、瑕のない立派な公演となりました。

まず筆頭にあげたいのはバイロイト初登場のダニエレ・ガッティの名指揮。これまでの6公演を聴いてきてほぼ最後列の席から聞こえる音というのは把握していたつもりですが、それらを更に凌ぐ響きが聞こえてきたのです。前奏曲から最後まできちっとオケを把握した音楽作りで、終始遅めのテンポを緊張感を失わずに持続していました。どのシーンでもまず音楽が主張し、それがかなり不可解な演出にしても舞台とちゃんとマッチしているのです。
そして歌手達。第1幕でまずヨーンの歌唱に圧倒されます。第2幕では出てくる歌手が次から次と持てる力を発揮。タイトルロールのヴェントリスはコヴェントガーデンで聴いたときよりちょっと太っており、それが良かったのか圧倒的な声量と美声で、今までで最高の歌唱でした。藤村はヴィーンで聴いたクンドリーの時の方がより純度の高い声でしたが、声量は今回の方があります。アンフォルタスを歌ったロトは初めて聴く歌手ですが声もよく苦悩が十分感じられる表現でした。第3幕での歌唱も立派。クリングゾルを歌ったトーマス・イェサトコも初めて聴いたと思いますが、脇役にしては立派な声です。

演出は、前奏曲開始とともに舞台上で無言の劇が進行します。子供時代のパルジファルと臨終のお母さんなどが登場するシーンは後にクンドリーによって語られる内容に基づいているように思えます。登場人物は、パルジファル、クンドリー、アンフォルタスなど一部を除いて全員背中に天使のように羽をつけていますが意味はよくわかりません。終幕に至るまで時代背景が交錯していますがそれも意図はよくわかりません。アンフォルタスの最後の儀式では大会社のプレゼンテーションルームみたいで全員背広姿です。外国人演出家だから出来たことだろうと思いますがナチスが堂々と出てきます。もっとも、クリングゾル側なのでパルジファルによって壊滅させられますが。パルジファルは第2幕までは終始セーラー服と半ズボンの子供姿でずっと子供時代に使った木馬が舞台の片隅に置かれ、クンドリーとの葛藤を経てようやく大人に脱皮します。彼に関するドラマは折に触れ子供俳優を使って丁寧に演じられその意味するところを推測させるのもおもしろい演出です。最後はクンドリーは死なずグルネマンツと抱擁して幕となるのも新鮮。なんだかんだとアイデア盛り沢山で消化不良気味ですが、不思議と音楽とともにそのまま受け入れてしまうような感じで、是非もう一度見たい演出です。舞台装置がまたすごくて、豪華な上に機能的によく設計された秀逸なものです。舞台のズームアップなんて初めて見ました。鏡を多用して視覚的な多様性も狙っていましたが、その鏡にガッティ指揮するオーケストラが映ったのは普段見えないだけにいいサーヴィスでした。解釈的には考えさせられる余地が多いものですが第一印象としては良くできた演出だと思いました。

第2幕終了後のMihoko FujumuraとChristopher Ventris
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珍奇な格好をしたクリングゾルのThomas Jesatko
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第3幕終了後。左からChristopher Ventris、Mihoko Fujumura、Kwangchul Youn、Detlef Roth
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Daniele Gatti
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by dognorah | 2008-08-18 09:00 | オペラ

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」公演

2008年8月15日、バイロイト祝祭劇場にて。
終了直後の舞台
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Die Meistersinger von Nürnberg
Musicalische Leitung: Sebastian Weigle
Inszenierung: Kathalina Wagner

CAST
Hans Sachs: Franz Hawlata
Veit Pogner: Artur Korn
Kunz Vogelgesang: Charles Reid
Konrad Nachtigall: Rainer Zaun
Sixtus Beckmesser: Michael Volle
Fritz Kothner: Markus Eiche
Balthasar Zorn: Edward Randall
Ulrich Eisslinger: Hans-Jürgen Lazar
Augustin Moser: Stefan Heibach
Hermann Ortel: Martin Snell
Hans Schwarz: Andreas Macco
Hans Foltz: Diógenes Randes
Walther von Stolzing: Klaus Florian Vogt
David: Norbert Ernst
Eva: Michaela Kaune
Magdalene: Carola Guber
Ein Nachtwächter: Friedemann Röhlig

朝から午後3時頃まで雨でかなり涼しい一日だった。2回目の幕間など外にいると寒いくらい。

さて、昨年のプレミエで物議を醸したカタリーナ・ヴァーグナーの演出ですが、確かにひどい。ストーリーとリブレット訂正:ドイツ語のわかる人からの情報によるとリブレットは変えていないそうです。舞台上のアクションと歌っている内容が異なるまま続けているということ。ドイツ人をつかまえてそのことを追求したら、あれはあれこれはこれと、いうような答えが返ってきたそうで要するにあまり気にすること無いんじゃないというスタンス)を全く別のものに変えている。(9月26日修正)特に第1幕と第2幕でペンキを塗りたくったりぶちまけたりするシーンがあって嫌悪感を催した。第3幕はその点ましで、カタリーナの豊富なアイデアと才能を感じさせるものではあった。最後の合唱の盛り上がりも大したものだし、全体に舞台セットはなかなか良くできている。ワーグナーのオペラでなしに全く新しいオペラで演出すれば良かろうに。これだけストーリーが変わっていると字幕なしでは劇の進行がよくわからない嫌いがある。隣の席に昨年も見たという人がいてしゃべってくれたが演出はかなり手直ししているようだ。それでも終演後はブーばかり。

歌手はヴァルターを歌ったクラウス・フローリアン・フォークトとダヴィッドを歌ったノーベルト・エルンストは同じテノールながら全く声質が違うのに両方ともすばらしい出来だった。フォークトは以前ヴィーンで聴いたローエングリンの時よりちょっと透明感が劣っていたが瑞々しさは相変わらず十分だし声量もある。エルンストはベルカント的な美声でこれまた聴いていて幸せになるような歌唱だ。ベックメッサーを歌ったミヒャエル・フォレも魅力的な声がよく出ていて、やはり安定した歌手だ。これ以外の歌手は水準以下の人がほとんどで、重要な役のハンス・ザックスを歌ったフランツ・ハヴラータには予想通りがっかり。第1幕ではまるで声に艶がなかった。第2幕ではかなり改善されて、この調子ならいいかと思ったら、第3幕では声量もなくなってしまった。皆さんと同様私もブーを進呈した。昨年はもっと激しいブーだったそう。
合唱はとてもすばらしかった。

管弦楽は文句なし。序曲の最初の音で感激する位よかった。ところで、複数の人のコメントによるとこの劇場は前の方の席より最後列の席の方がずっと音響がいいそう。

Klaus Florian Vogt
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Norbert Ernst
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Michael Volle
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Sebastian Weigle
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by dognorah | 2008-08-16 17:43 | オペラ

「トリスタンとイゾルデ」公演

8月14日、バイロイト祝祭劇場にて。

Tristan und Isolde

Dirigent: Peter Schneider
Inszenierung: Christoph Marthaler
Kostume & Buhnebild: Anna Viebrock

CAST
Tristan: Robert Dean Smith
König Marke: Robert Holl
Isolde: Iréne Theorin
Kurvenal: Jukka Rasilainen
Melot: Ralf Lukas
Brangene: Michelle Breedt
Junger Seemann: Clemens Bieber
Ein Hirt: Arnold Bezuyen
Ein Steuermann: Martin Snell

バイロイトの今週は秋風を感じさせる気候で、相変わらず雲が多く最高気温22℃ぐらい。安全のため傘はいつも携帯。雲の多いせいかやや湿度が高いものの祝祭劇場の中は先週に比べるとちょっと過ごしやすい。

今日の歌手について。イゾルデの声のすばらしさにまず感嘆。必要な高音は問題なく出るし、声量ある瑞々しい声は気持ちがいい。調子が良かったトリスタンとの第2幕での二重唱は今回の白眉だった。マルケ王達の乱入が恨めしかったぐらい。しかし第3幕での愛の死はやや絶叫しすぎで細やかなニュアンスに乏しくちょっといただけない。それに比べるとベッドに横たわるトリスタンの歌唱は味わいが深かった。クルヴェナールはよくこれだけ声が出るなあと感心するくらい迫力のある声で丸。マルケ王も負けじと深みのある低音で存在感十分。もう少し声に艶があるとルネ・パーペに拮抗できるだろう。ブランゲーネは「ラインの黄金」で不調だったフリッカを歌った人だが今日は体調が戻ったのかまあまあの歌唱。メロットその他も不満のない歌唱だった。

シュナイダー指揮のオケは、第1幕の前奏曲では普通の出来という感じだったが進行とともに良くなり、第2幕では絶好調。第3幕への前奏曲でも美しい演奏だった。

演出が問題で、あまり音楽の足を引っ張るものではなかったにしろ無くてもいいような演出で、全体としてはコンサート形式に毛が生えた程度。第3幕ではイゾルデが部屋に入ってきたときは既にトリスタンは死んでいるし、その後マルケ王の部下達とトリスタンの部下達との乱闘シーンもなく、メロットはクルヴェナールに殺されないなどかなり状況を変えている。歌い終わった人はみんな壁と対峙するがその壁には円形やU字形の蛍光管がぶら下げてあって意味不明。この演出にブーが出なかったのはちょっと意外だ。(ここの記述は当初アップした文章にひどい間違いがありましたので修正しました)

今日の聴衆は指輪の時に比べるとノイズを出す人も多いし、音楽がまだ鳴っているのに拍手をする人がいたりでレヴェルが低くなった。

Iréne TheorinとRobert Dean Smith
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Michelle BreedtとRobert Holl
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Peter Schneider
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Jukka Rasilainen
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by dognorah | 2008-08-16 17:27 | オペラ

「神々の黄昏」公演

2008年8月13日、バイロイト祝祭劇場にて。

Götterdämmerung (ニーベルンクの指輪第3日)

Cast
Siegfried: Stephen Gould
Gunther: Ralf Lukas
Hagen: Hans-Peter König
Alberich: Andrew Shore
Brünnhilde: Linda Watson
Gutrune: Edith Haller
Waltraute: Christa Mayer
Norn 1: Simone Schröder
Norn 2: Martina Dike
Norn 3: Edith Haller
Woglinde: Fionnuala McCarthy
Wellgunde: Ulrike Helzel
Flosshilde: Simone Schröder

歌手は相変わらずスティーヴン・グールドとリンダ・ワトソンがすばらしい。ハーゲンを歌ったハンス=ペーター・ケーニヒもかなりのうまさだがジョン・トムリンソンほどではない。ヴァルトラウテを歌ったクリスタ・マイヤーもなかなかしっかりした歌唱。後はまあ標準的か。終演後の個別の歌手に対する反応では、なんとグールドとワトソンに対して大きな拍手とブラヴォーに混じってブーも飛んでいた。歌唱的にはそれはないだろうというのが私の率直な感想。ドイツ人から見てディクションに不満があったか、あるいはアメリカ人に対するやっかみか。他の歌手(大方はドイツ人)に対してはすべて暖かい拍手と歓声。

今日のオケは弦に関しては文句なし。金管が「ラインの黄金」の調子がまた戻ったのかやや危なっかしく薄っぺらで、全体としては「ヴァルキューレ」や「ジークフリート」ほどの出来ではなかった。しかしドラマの表現に関しては今日もさすがの出来。ジークフリートの旅立ちの音楽はすばらしかったが、ジークフリートの死は上記金管のせいでやや物足りない。終演後舞台に上ったオケとティーレマンに対しては惜しみない拍手と足踏みだった。

演出は冒頭のノルンの時間糸の紡ぎの場面が美しく今回の白眉であった。それ以降はまあ普通の出来。しかし最終場面は細かい描写を省いてブリュンヒルデとハーゲンの死も想像に任せられる。その代わりなのか自転車押しながら登場した現代の恋人同士が抱擁することで幕となる(当初アップした記事では音楽がカットされていると書きましたが間違いとの指摘があり、修正しました)。ぱらぱらと拍手が起こったと思ったら激しいブーイング。完全燃焼しない不満の残る演出だったから当然か。ジークフリートまでは終演後は万雷の拍手だったが、きっちりと見極めて反応する観客だ。どうもこの「神々の黄昏」は今まで感動したことがないのでヴァーグナーの音楽とドラマ自体がやや弱いのかもしれない。

第2幕終了後の舞台と合唱隊
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ヴァルトラウテを歌ったChrista Mayer
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左からRalf Lukas、Edith Haller、Stephen Gould、Linda Watson、Hans-Peter König
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by dognorah | 2008-08-14 17:35 | オペラ

「ジークフリート」公演

2008年8月11日、バイロイト祝祭劇場にて。

Siegfried(ニーベルンクの指輪、第2日)

CAST
Siegfried: Stephen Gould
Mime: Gerhard Siegel
Der Wanderer: Albert Dohmen
Alberich: Andrew Shore
Fafner: Hans-Peter König
Erda: Christa Mayer
Brünhilde: Linda Watson
Stimme des Waldvogels: Robin Johannsen

歌手
ジークフリートを歌ったアメリカ人スティーヴン・グールドは全くもってすばらしい。朗々とした美声がホール中に響き渡る。強靱な喉を持っている感じ。いいヘルデンテノールを引っ張ってきたものだ。第1幕のミーメもそれと渡り合う歌唱で文句なし。さすらい人のアルベルト・ドーメンもミーメの質問に答える場面は大迫力で、聴いている方がどきどきするすばらしさ。アルベリッヒ役のイギリス人アンドリュー・ショアーは「ラインの黄金」の時より今日の方がずっと良い。ファフナー役のハンス・ピーター・ケーニッヒも抜けの良い低音が相変わらずよく出ていた。エルダも悪くないがまあ普通のできか。リンダ・ワトソンのブリュンヒルデは今日も「ヴァルキューレ」の時と同様のすばらしさ。

オケ
「ヴァルキューレ」と同様、今日も絶好調で本当に美しい音楽が演奏された。すごくレヴェルの高いオーケストラだ。各シーンとも絶妙なタイミングで美しいメロディが奏でられ、歌手も完全に融け込んだ歌い方で溜息が出るような完成度の高さだった。各幕の最初の前奏曲的な部分の劇的な展開はピアニッシモでもしっかりと各パートの音が拡がってくるし、フォルティッシモは刺激的ではなくこれから始まるドラマに胸高鳴る響きだ。ティーレマン、ますます株を上げるというところ。

演出
第1幕は汚らしいミーメの工房という感じ。美しさのかけらもない舞台装置だ。もう少しアーティスティックにやってほしいものだ。第2幕は高速道路が途中までできあがっている工事現場のようなところ。例によって道路建設関係者が出入りしている。しかし地面が割れるファフナーの登場シーンはなかなか良くできていて感心した。第3幕は当然ながら「ヴァルキューレ」の最終シーンと同じ。最後にブリュンヒルデとジークフリートが抱き合う場面は円形に満天の星が現われ、ジークリンデとジークムントの時と同様とてもロマンティックで、そういう心を持った演出家は好きだ。

今日は早朝に雨が降り、日中は天気が持ったものの第2幕終了時には土砂降りになっていた。長い休憩で雨というのは不便なものだ。終了後もかなり降っていた。
そういう天気でも、これだけすばらしい公演だと心は晴れる。

タイトルロールを歌ったStephen Gould
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左からHans-Peter König、Gerhard Siegel、Robin Johannsen、Andrew Shore
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左からChrista Mayer、Stephen Gould、Linda Watson、Albert Dohmen
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by dognorah | 2008-08-12 22:12 | オペラ

バイロイト歌劇場について

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座った席はParkett(平土間)の最後列(前から30番目)。音響はややデッド気味で歌手の声が聞き取りやすい。耳障りな共振も感じられなかった。かなりよい音で響く。ホールは奥行きもあるけれどそれ以上に横に広い印象でびっくりした。席数は1910で意外と大きい。字幕は一切出ない。幸い今回の演目(ニーベルンクの指輪、トリスタンとイゾルデ、ニュルンベルクのマイスタージンガー、パルシファル)はすべてここ1年以内にどこかで見ているので筋的には問題はないが。
開始時間15分前、10分前、5分前の3回建物外側のバルコニーでトランペットのファンファーレが演奏される。(次の写真)
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ホールの中は非常に暑い。聞くところによると自動車のラジエーターみたいに水を循環させて冷やすシステムはあるものの現代的なエアコンというものはないそうだ。扇子を持って行って正解だった。夏なんだからタキシードというのはどうもね。その点女性はうらやましい。男性はほとんどタキシードまたはディナージャケットだが普通の背広姿も結構いる。中にはセーター姿、シャツ姿というのもいた。件のイギリス婦人なんかロンドンの街を普通に歩くような気軽な普段着だ。道理で彼女のスーツケースが小さかったわけだ。日本人男性でも何回も来ている人ほど服装はラフな気がする。座席は背もたれが低い上にクッションなしの木製なのでまず背中が痛くなる。私はおしりの部分にクッションがないと誤解していたので分厚いクッションを持参したが、背が低いので座高を高くするのにちょっとは役立った。
私のホテルからは劇場までバスサーヴィスがあった。行きは無料だがなぜか帰りは3.5ユーロ払うシステム。駐車場は劇場の裏手にありバスを降りてから2-3分歩かなければならない。帰りは各ホテルのバスが客を待っているが高級なところはバスに乗る前にスパークリングワインやビールをサーヴィスしている。かなりうらやましかった。我がホテルは出発前にロビーでそれをしているのだが暑い思いをして劇場から出てきたときの方がありがたいだろう。「ラインの黄金」は短いのでホテルへ帰ったらちょうど夕食時の9時。みんなレストランに殺到したので私はあぶれてしまった。仕方がないので町へ食べに行った。歩いて5-6分のところにある日本食レストランが一番近い。ウェートレスに「今日のヴァーグナーは早く終わったんですね」と言われた。彼女は結構日本語をしゃべるしオーナーシェフらしき男も「いらっしゃいませー」と流暢にしゃべるが味付けにあまりだしがきいていないので多分日本料理の基本を知らない朝鮮人か中国人夫妻の経営だろう。
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by dognorah | 2008-08-11 03:25 | オペラ

ロンドンからバイロイトへ

オペラの記事と前後してしまいますが、旅行記を。

バイロイトに行くにはまずニュルンベルクに着陸する。ロンドンからそこまで飛んでいる航空会社はAir Berlinというドイツの格安航空会社だけであるが、我が家から3時間近くかかるStansted空港から朝7時55分に出る便しかない。仕方がないので空港ホテルに宿泊した。
当日5時半に起床し、前日に買い込んでおいた朝食をゆっくり取る。チェックアウトしてホテルを出たのは6時50分。その5分後にはチェックイン完了。セキュリティゲートは長蛇の列だったが大して時間もかからずすでにアナウンスされたゲートに向かう。ニュルンベルクに到着してから必要な書類を整理していたら待合室の隣に座っていた老婦人から「バイロイトに行くの?」と話しかけられる。私の書類を横目で見たらしい。聞けば彼女もバイロイトだという。毎年行っているんだと。どうやって切符を手当てするの?イギリスのヴァーグナー協会のメンバーなんだよ。初めて行ったのはいつ?20年前。あのときのRingはクプファー演出でバレンボイム指揮だったわ。最近のバイロイトは世代交代期だわね。という調子でバイロイト駅到着までずっとヴァーグナーオペラに関するおしゃべりを続けた。彼女は85歳でたった一人で旅行している。その年でPCを自由に扱うようでニュルンベルクからバイロイトまでの列車の切符もインターネットで購入済みでプリントアウトした紙を見せてくれた。私はその年まで一人でオペラ行脚ができるだろうか?いい目標ができた。彼女は今回はRingだけを見るそうだ。ホテルが違うのでオペラハウスでの再会を約してバイロイト駅で別れた。
定刻よりやや遅れてAir Berlin機はスタンステッド空港を飛び立つ。途中かなり気流の悪いところがある、最善の努力はするけど覚悟召されよ、とのアナウンスが機長よりあったが努力が功を奏したのか大した揺れではなかった。ニュルンベルク空港は快晴で予報通り30度を超えそうな暑さだ。そこから地下鉄U2でニュルンベルク中央駅へ行く。1.9ユーロだった。中央駅でSバーン乗り場へ行き自動販売機でバイロイトまでの切符を購入。16.1ユーロ也。ここはミュンヘンやドレスデンと違って自動販売機の英語表示ボタンがちゃんと働くので助かる。プラットフォームに着いたらドレスデン行きと連結して途中まで一緒に行くらしいことがわかった。前の方に乗ればいいのか後ろの方がいいのか全くわからない。一般乗客に訊いても要領を得ないので駅員らしい男を見つけて訊くと後ろだという。ここからバイロイトまで結構山のある地形らしくトンネルが多い。外はかんかん照りで、車内はエアコンが効いていてよかった。この辺の線路は電気軌道も架線もなく列車はディーゼルエンジンだ。やや騒音が大きい。バイロイト駅からホテルまで800mぐらいだそうだが荷物があるのでタクシーを使う。チップ込みで5ユーロ払った。到着したのは1時過ぎだったが快くチェックインさせてくれた。一通り荷物をアンパックしたところで空腹感が募ってきたので出かけることにする。フロントで地図をもらい、さてどこへ行こうかと考えていたらロビーでワインを飲みながらカナッペを食べている連中がいる。聞けば自由に飲食していいそうなのでこれ幸いと少しお腹を満たす。食べながら町の中心まで1km足らずで行けることを地図で確かめ歩き出す。
町の中心は歩行者専用のHigh StreetであるMaximillianstrasseがあり店やビアホールが一杯で結構賑わっている。古そうな教会も少なくとも3つは見つかった。外見、内部ともそれほど印象的ではない。内外部とも修復中のところが2カ所。
あまりにも暑いのでいったんホテルに帰る。4時から始まる本日のオペラに行く人たちがロビーにいて、軽食をほおばっている。自分もまた少しつまむ。
夕食はホテルのレストランを試す意味もあって8時前に入る。ダックを頼んだが味はまあまあ。グラスで赤ワインを頼んだがフランケンワインだった。まるで良質のピノノワールのような芳しさに驚く。色は薄め。おいしいワインだ。ウエーターがフランコニア(Franconia)のワインだといったのでそれはどこ?と訊くとこの辺だという。フランケンワインというのは昔から聞いて知っていたがそれがどの地域かなんて知らなかった。
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by dognorah | 2008-08-11 03:12 | 旅行

「ヴァルキューレ」公演

2008年8月9日、バイロイト祝祭劇場にて。
出演者情報に誤りがあり、8月12日に修正しました。
Die Warküre(ニーベルンクの指輪、第1夜)
CAST
Siegmund: Endrik Wottrich
Hunding: Kwangchul Youn
Wotan: Albert Dohmen
Sieglinde: Eva-Maria Westbroek
Brünnhilde: Linda Watson
Fricka: Martina Dike (Michelle Breedtの代役)
Gerhilde: Sonja Mühleck
Ortlinde: Anna Gabler
Waltraute: Martina Dike
Schwertletie: Simone Schröder
Helmwige: Edith Haller
Siegrune: Wilke te Brummelstroete
Grimgelde: Annette Küttenbaum
Rossweisse: Alexandra Petersamer

歌手はすべて二重丸の出来。昨日は迫力のない歌唱でがっかりさせられたフリッカは今日は美声とものすごい迫力ある歌唱で、びっくり。Michelle Breedtは病気降板でヴァルキューレ役の一人Martina Dikeが代役で出演したのだった(下の写真)。恐らくMichelle Breedtは昨日から体調が悪かったのだろう。何しろカーテンコールにも全く出てこなかったぐらいだから。それにしてもヴァルキューレなんかの端役に出ている人がこんな実力者とはさすがバイロイト、恐れ入りました。
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ブリュンヒルデを歌ったリンダ・ワトソンはフェスティヴァル開始直前に降りたAdrienne Duggerに代わって起用された人で、初めて聴いたがすばらしい歌唱で文句なし。ROHで聴いたリサ・ガスティーンより遙かに良い(下の写真)。
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クワングチュル・ヨーンもあの体であの迫力ある声量、言うことなし。演技もうまい。もう少し上背があれば舞台映えもするのだが惜しい。ジークリンデとジークムントもすばらしい歌唱だったがROHで聴いたときの方がより印象は強かった。ヴォータンは昨日と変わらず安心して聴いていられる。

管弦楽はまるで昨日とは別のオケのようにすばらしい音であり演奏だった。金管も全くミスが無く柔らかい音色で、美しい弦とともにうっとりさせられた。演奏自体も昨日とは打って変わって最初から緊張感が持続するような密度の高いもの。ドラマが盛り上がる部分での心に響き渡る音楽のなんとすばらしいこと。これがティーレマンか。

演出と舞台は今回もなかなかよく出来ている。第1幕でのフンディンクの家では室内になぜか折れた電柱が電線や瓦礫とともに横たわっている。ジークリンデの抑圧された心を表現しているのか。兄妹であることがわかった二人の喜びを表現する仕掛けもすばらしい。また第2幕冒頭でヴォータンが岩の上からたなびく雲を見渡す場面は雄大さと天上に住む神の威厳がよく表現されていて素敵だ。その岩にブリュンヒルデが寄りかかるように寝転がって二人の親密な関係を表現している。「ラインの黄金」のライン娘と同様アクセントにヴァルキューレの赤いコスチュームが効果的だ。二人の長い対話の場面ではヴォータンが踏んでいた岩が回転して左目がつぶれた彼自身の顔が現われて過去を見せたりヴォータンの影と思しき男が折れた槍をもって現われ、未来を暗示したりなかなか凝ったこともやっている。相変わらず現代の普通の人がちょこちょこ舞台に出てくるシーンが時々挿入されるが。

ともかく、とても質の高い「ヴァルキューレ」で大変満足した公演であった。

前半の立役者3人。左からSiegmund: Endrik Wottrich、Sieglinde: Eva-Maria Westbroek、Hunding: Kwangchul Youn。
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終了直後の舞台と出演者達。
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今日のChristian Thielemann。
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by dognorah | 2008-08-11 01:48 | オペラ