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BBCプロムス – メシアンの大作

2008年7月27日、RAHにてPROM 14。

Messiaen: La Transfiguration de Notre Seigneur Jésus-Christ

指揮: Thierry Fischer
BBC National Orchestra of Wales
BBC Symphony Chorus
BBC National Chorus of Wales

ピアノ、フルート、クラリネット、チェロ、サイロフォン、マリンバ、ヴァイブラフォンという7人の独奏者と大合唱団、それに多種類の打楽器を擁した大編成管弦楽で演奏時間が約100分という大曲です。
金属系の打楽器が各種打ち鳴らされた後グレゴリア聖歌を思わせる男声合唱が導入されます。その後各種独奏者やオケが多彩な音を響かせますが、終始打楽器奏者は忙しい曲です。舞台を見ながら聴くと演奏される楽器を目で追うので全く退屈しません。合唱は男女とも大変上手く、質の高いアンサンブルを響かせます。非常に宗教的な曲であるせいかもしれないし、またあまりにも多彩な楽器構成のせいかもしれませんが、曲全体から受ける印象はちょっとぼんやりして感動というのはなかったです。
恐らく大編成であるが故に滅多に演奏されることはなく、生誕100年だからこそ聴けたのでしょう。最初にして最後の経験であることは間違いなし。
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by dognorah | 2008-07-31 02:01 | コンサート

モーツァルト「皇帝ティートの慈悲」コンサート形式

2008年7月26日、バービカンホールにて。

La clemenza di Tito, K621 (1791)
Opera seria in two acts
Music: Wolfgang Amadeus Mazart (1756 – 91)
Libretto: Caterino Mazzolà, after Pietro Metastasio

Conductor: Edward Gardner
Orchestra of the Age of Enlightenment
Coir of Clare College, Cambridge

Cast
Titus Vespasianus: Toby Spence
Vitellia: Hillevi Martinpelto
Sextus: Alice Coote
Servilia: Sarah Tynan
Annius: Fiona Murphy
Publius: Matthew Rose

イギリスではあまり上演されないこのオペラ、聴くのは一昨年パリで見て以来です。
まず、指揮のエドワード・ガードナーに感心。序曲はちょっと張り切り過ぎじゃないかと心配するくらい力の籠もったものでしたが、出てくる音はすばらしく古楽器とは思えない美しいものです。全体としても流麗でこの作品の音楽的すばらしさを十分に伝えてくれました。
歌手ではティートを歌ったトビー・スペンスの歌唱はすばらしく、先日聴いたキャンディードの喜劇とは打って変わってきりりとした表情は改めてハンサムな人だなぁと認識しました。レシタティーヴォで怒鳴るところではびっくりするくらいの大声を出すなど迫力もありました。プブリオ役のマシュー・ローズもよく声が出ていて好演。
女声ではセスト役のアリス・クートが奥行きのある声と上手い歌唱で目立っていましたが、時々聞き苦しい声も出ていて完璧とは言えません。もう一人のメゾでアンニオを歌ったフィオナ・マーフィーは気品のある声で好感が持てましたが、クートに比べると表現の幅がやや狭いようです。ヴィテリアを歌ったスェーデンのソプラノ、ヒレヴィ・マルティンペルトとセルヴィリア役のセーラ・タイナンは太った体つきと痩せた体つきという違いがあるにしても共に歌はまあまあというレヴェル。
オペラとしてはとても楽しめた公演で、この作品はもっと舞台で取り上げられてもいいのじゃないかと思いました。

最初の写真は左から、Matthew Rose、Toby Spence、Edward Gardnerです。
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次の写真は左から、Sarah Tynan、Fiona Murphy、Alice Coote、Hillevi Martinpeltoです。
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by dognorah | 2008-07-28 08:52 | オペラ

チョン指揮フランス放送フィルハーモニー管弦楽団

2008年7月21日、RAHにて。今年のPROMS 6日目のコンサートでした。今月はこれを含めて3回しか行きません。8月は全く切符を買ってなくて、9月は5回行きます。

パイプオルガン: Olivier Latry
指揮: Myun Whun Chung
管弦楽: Orchstre Philharmonique de Radio France

プログラム
メシアン: L’Ascension (for organ)
メシアン: Et exspecto resurrectionem mortuorum
サンサーンス: 交響曲第3番

Olivier Messiaen (1908 – 1992)の生誕100年ということで今年はPROMSでも多数演奏されます。

最初の曲はオルガン独奏で、全4部で構成されている。第1部は中高音の不協和音の後低音で心地よい和音が奏でられるスタイルが繰り返されます。パイプオルガンでの不協和音はかなり顔をしかめたくなるようなエネルギーですが厳粛な気分にさせられます。第2部は中高音のおとなしい和音が響き、瞑想的。第3部は大音量の強い調子で演奏された後高音の弱い音で返答するような形式。最後は朗々と鳴らされ、納得という印象。第4部は再び瞑想的で静かなメロディが奏でられます。天を伺うような気持ちが感じられました。最後はディミヌエンドしながら静かに終了。宗教が強く感じられる曲です。

2番目の曲は18の木管、16の金管と金属製の打楽器群だけで演奏される一風変わった曲です。「私は死者の復活を待つ」というような宗教的な意味合いの題名が付いていますが純音楽として聴いても大変面白いものです。途中2回ほど全打楽器が一斉に大音響で鳴らす場面がありますがぞくぞくします。木管や金管の演奏もすばらしく、飽きることがありません。チョンは打楽器などが大きな音を立てた後は残響が充分静まるのを待って次の指示を出し、決して急ぎませんが正解と思います。大変楽しめました。

最後の曲はパイプオルガンの効果がすばらしくて私の大好きな交響曲です。暗譜で指揮するチョンは手慣れたもので、第2楽章のオケの美しさは特筆もの。オケもチョンをレスペ区としながら弾いている印象で、一丸となっている様子が好ましい。第4楽章の盛り上がりもすごくて終了後は大歓声でした。いい演奏会でした。
何度かステージに呼び戻された後短いスピーチの後アンコールにカルメン序曲で締めくくりました。
なお、この演奏の映像はしばらくの間BBCのサイトから試聴並びにダウンロードが出来ます。ダウンロードしたものは一定期間後に自動的に消えてしまうようですが。

写真は終演後の拍手に応えるチョン(TV画面よりキャプチャー)。
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by dognorah | 2008-07-24 18:51 | コンサート

モーツァルト「フィガロの結婚」公演

2008年7月19日、ROHにて。
ROHの今期最後の公演です。

Le nozze di Figaro
Opera in four acts
Music Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto Lorenzo da Ponte (after La Folie journee, ou Le Mariage de Figaro by Pierre-Augustin Caron de Beaumarchais)

Conductor: David Syrus
Director: David McVicar
Revival Director and Movement Director: Leah Hausman
Designs: Tanya McCallin
Lighting design: Paule Constable
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House
Harpsichord continua: Stephen Westrop
Cello continua: Christopher Vanderspar

CAST
Figaro: Ildebrando d'Arcangelo
Susanna: Aleksandra Kurzak
Bartolo: Robert Lloyd
Marcellina: Ann Murray
Cherubino: Sophie Koch
Count Almaviva: Peter Mattei
Don Basilio: Robin Leggate
Countess Almaviva: Barbara Frittoli
Antonio: Donald Maxwell
Don Curzio: Harry Nicoll
Barbarina: Kishani Jayasinghe
First Bridesmaid: Glenys Groves
Second Bridesmaid: Kate McCarney

このプロダクションのプレミエは2年半前で、何度か再演されていますが私は今回見るのがそのプレミエ以来です。ロイヤルオペラというのは再演の時はオリジナルの演出を他の演出家にいじらせる方針らしく、他のプロダクション同様今回もそうでした。細かいところで随分演出を変えていました。一番大きいのは伯爵夫人がケルビーノを部屋に隠している件で伯爵が奥さんに強烈な平手打ちを食らわせるところでオリジナルではそれはありませんでした。(どうやら私の記憶違いのようです)それにこの場面の始めに猟を終えた伯爵が部屋に入ってくるところでは猟犬を従えていたのが今回はなし。楽しみにしていたのに。ロンドンの椿姫さんに伺ったところ彼女のご覧になった分では出場したとのことなのでこの日だけ犬の都合が付かなかったのでしょう。

歌手ですが何と言ってもバーバラ・フリットリの伯爵夫人はすばらしい。第3幕で一人伯爵の部屋に入ってきて独白のアリアを歌うところでは胸中の思いを細やかに表現する絶妙の歌唱で思わず涙してしまいました。偉大なソプラノです。
伯爵を演じたPeter Mattei(1965年生まれのスェーデン人バリトン。ペーター・マッテイと読むのでしょうか)は初めて聴く人ですが滑らかな発声が心地よいすばらしい歌手です。この役は過去にジェラルド・フィンリーやサイモン・キーンリーサイドで聴いていますが彼等の輪郭のがっちりした声に比べてやや柔らかさがあり、いかにも好色そうな伯爵の役にはぴったりの声という感じがします。
イルデブランド・ダルカンジェロはいつも通り水準の高い歌唱でしたが、フィガロとしてはえらく真面目でエルウイン・シュロットのような割といい加減な性格表現という点ではちょっと物足りないかもしれません。
ソフィー・コッシュのケルビーノはとてもよかった。この人も聴く度に期待通りの歌唱をする人という印象です。体型も細めなのでズボン役にはお似合いです。
スザンナを歌ったアレクサンドラ・クジャァクは昨年11月に「愛の妙薬」でアディーナを歌ったのを聴きましたが今回もそのとき同様まあまあという歌唱で前回聴いたミア・パーソンには声も歌唱も遠く及ばずです。
その他の歌手ではバルバリーナを歌ったキシャニ・ジャヤシンゲというROHの若手育成プログラム所属のソプラノが注目に値する歌唱で、この人は今までも脇役で好印象を与えている歌手です。

指揮のデイヴィッド・サイラスは5年前の「エレクトラ」以来久し振りの登場ですが、この人は歌手を指揮するのが精一杯でオケのコントロールはいまいちなのか音の響きはよくなく、プレミエの時のパッパーノには及びません。

写真は左からPeter Mattei、Barbara Frittoli、Ildebrando d'Arcangeloです。
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by dognorah | 2008-07-21 05:10 | オペラ

ソプラノ、ダニエル・ドゥ・ニース

2008年7月17日、バービカンホールにて。
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Soprano: Danielle de Niese
Flute: Adam Walker
Harp: Sally Pryce
Conductor: Garry Walker
Academy of St Martin in the Fields

プログラム
Haydn: Symphony No.70
Handel: Semele – ‘Endless pleasure’
Handel: Rinaldo – ‘Lascia ch’io pianga’
Handel: Semele – ‘Myself I shall adore’
Mozart: Concerto in C major for Flute and Harp, K299
Mozart: Exsultate, jubilate, K165

管弦楽以外の演奏者はすべて30歳前後の若手による演奏でしたが、とても楽しめたコンサートでした。毎年夏に開催されるMostly Mozartシリーズの一環で、今年のポスターは今日歌ったダニエル・ドゥ・ニースのにこやかな笑顔で、ちょっと聴いてみたくなって切符を買ったのでした。1980年シドニー生まれで両親はスリランカ人とオランダ人、現在の国籍はアメリカと4カ国と関係ある複雑な人です。背が高くて華やかな顔でぴちぴちとした印象を受けます。
彼女のプログラムはヘンデルのアリアを3曲とモーツァルトの作品を一つ。すごく伸びのある美声でちょっとテクニックを見せびらかすようなところもあるけれどなかなか好感が持てました。声質は非常に好きというわけではありませんがのびのび歌う様は気持ちがいいです。経歴を見ると古楽系オペラの出演が多いもののプッチーニやヴェルディも歌っています。今後はどういう方向に進むのか注目していきたいと思います。

指揮者は今年33歳ですが舞台上ではもっと若く見えます。指揮姿はふにゃふにゃ体をくねらせるのであまりかっこよくはないですが音楽はすばらしく、最初のハイドンの交響曲は瞠目に値する出来で、並の指揮者じゃないという印象を受けました。実に細かくオケをコントロールしてダイナミズム、テンポ感とも体にしっくりする感じです。Academy of St Martin in the Fieldsは久し振りに聴きましたが相変わらず質の高いアンサンブルでした。

トップの写真はDanielle de NieseとGarry Walkerです。
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by dognorah | 2008-07-20 19:43 | コンサート

ミュンヘンにて

7月12日から16日までミュンヘンに滞在。目的はオペラフェスティヴァルの2演目を見ることで、それらのオペラについては既に記事にした。
到着した12日はオペラはなく、その代わり野外コンサートが開催されていた。ケント・ナガノ指揮のバイエルン州立管弦楽団の演奏で、プログラムは次のとおり。

ブラームス: 大学祝典序曲
アイヴス: 交響曲第1番
リヒャルト・シュトラウス: 交響詩ドン・ファン
リヒャルト・シュトラウス: ソプラノと管弦楽のための4つの最後の歌
(ソプラノ: ソイレ・イソコスキー)

夕方から、ブログ仲間でありmixiのマイミクでもあるフンメルさんと落ち合い、ビールを飲みながら食事をしたので会場に着いたときはアイヴスの交響曲の途中だった。舞台は雨に濡れないように山形の巨大なヴィニルで覆われてスピーカーが両脇と前面各所に取り付けられている。サイドや後方で人の頭の隙間から覗きながら聴いたが音はなかなか良い。音は舞台のあちこちに立てられたマイクで拾っているらしい。幸いにして先ほどまで降っていた雨は演奏中は降らなかったので結構人で溢れていた。
オケもいい音を出していたが、マイクを通して聴いてもイソコスキーの歌唱はすばらしい。
終了後は再びフンメルさんとワインを飲みながら深夜まで語り合う。初対面だがネット上では旧知であるので過去の話題もスムーズに言及できて話題は尽きない。

翌日曜日は朝から土砂降りの雨の中をフンメルさんの好意でムルナウに車で連れて行って貰い見所を案内していただく。晴れていればアルプスの山々を近くに見ることの出来る美しい湖畔の村であるが雨が止むことはほとんど無かった。夏の休暇で滞在している人たちもこの雨で他にすることがないのでSchlossmuseumとミュンターの家に殺到。大変な混み合いだった。今年は、カンディンスキー、ミュンター、ヤウレンスキー、ヴェレフキンの4人の画家がムルナウに集まって美術論を論じてから100年記念ということでSchlossmuseumでは彼等の絵を集めた特別展をやっている。それもあってムルナウを是非訪問したいと思っていた。特別展そのものは特に重要な絵画が展示されていたわけではないものの多くの絵画が集められていて、当時の彼等が数年後に青騎士グループ(Der Blaue Reiter)を形成するに至る過程をたどることが出来て興味深い。その建物の窓からちょっと離れたところにミュンターの家が見える。午後はそこを訪問。

ミュンターとカンディンスキーの住んでいた家(入場券からスキャンしたもの)
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Gabriele MünterはWassily Kandinskyの絵画教室の生徒であったが1902年頃から二人は愛人関係になり既婚者だったカンディンスキーは数年後に離婚。、彼女は1909年にムルナウに家を買って二人はそこで暮らす。1914年の第1次世界大戦勃発でカンディンスキーがロシアに帰国することで二人の関係は終了するが、その家が現在はミュンターの家として博物館になっている。彼等の絵や写真(ミュンターは写真家でもあった)を元に家の内部は復元されてかなり当時の状態に保たれているようだ。
次の写真は食卓。かなり狭いスペースである。
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階段や家具などはカンディンスキーがいろいろの模様を描いたまま保存されている。次の写真がその一部。
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私は芸術家同士が愛人関係にあってお互いに影響を及ぼし合う様をたどるのが好きで、エピソードを読むにつけ胸にぐっと来るものをいつも感じる。そこから自分勝手に想像を膨らませてロマンティックな気分に浸るのだが、今回もそうだった。

ところでカンディンスキーはロシアに帰国するに際して大部分の作品は彼女の元に残していったらしく、そういった絵や他の青騎士グループの作品など膨大な絵画をミュンターは大切に保管していた。北欧に移住したりあちこち旅をしたりしたときにそれをどうしたのか知らないがとにかく彼女の80歳の誕生日を記念してそっくりそれをミュンヘン市内にあるレーンバッハ美術館に寄贈した。二流の美術館はそれでもって一躍世界的な質の高い美術館になったという。
Lenbachhaus
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今回初めてそこを訪問して、ミュンターはよくこれだけ多くの作品を所持していたなぁと感心した。大作もかなりあるし。ドイツ表現主義に興味があれば他の作品も含めてかなり見応えのあるものだ。カンディンスキーの抽象への道はこのコレクションだけでかなり充実している。これを火曜日に見たが前日の月曜日に唯一オープンしているミュンヘンの美術館、近代美術館(Neue Pinakothek)を訪問し、同時代の作品も見ているので今回は予想外に興味ある作品群に触れることが出来た。お薦め下さったフンメルさんに感謝である。

ミュンヘンは3年振りだがそのときは仕事で昼も夜も時間がなくて何も見ることが出来なかったので観光名所を見て回ったのは久し振りだが雨のため極めて限定的になってしまったのはやや残念。しかし来期のオペラも充実していようなので近いうちにまた訪問して今回見損なったものも見てみたい。ドイツ料理のまずさは相変わらずだがビールだけは別格。
ユーロ高のせいで物価はロンドンよりも高いかも。中でも空港から市内への電車の運賃が馬鹿高い。ドレスデンに比べると5倍ぐらいする。
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by dognorah | 2008-07-19 09:01 | 旅行

ヴェルディのオペラ「ナブッコ」公演

2008年7月14日、バイエルン州立歌劇場にて。
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Nabucco
Oper in vier Teilen
Musik Giuseppe Verdi
Libretto Temistocle Solera

Conductor: Paolo Carignani
Production, Set and Costumes: Yannis Kokkos
Lighting: Michael Bauer
Chorus Andrés Máspero
Dramaturgy: Anne Blancard-Kokkos

CAST
Nabucco: Paolo Gavanelli
Ismaele: Aleksandrs Antonenko
Zaccaria: Giacomo Prestia
Abigaille: Maria Guleghina
Fenena: Heike Grötzinger
Il Gran Sacerdote: Steven Humes
Abdallo: Kevin Conners
Anna: Lana Kos

The Bavarian State Orchestra
The Chorus of the Bavarian State Opera

席は3 Rang(日本流で4階)中央付近の1列目で音響的には不満のない場所ですが、目の前に手すりがあり、シートバックに寄りかかって座ると舞台が見えにくくなるのでちょっと前屈みの姿勢を取らざるを得ません。そのために私より後ろの席の人たちは更に見難くなることでしょう。それに夏期は暑いです。男女とも多くの人が上着を脱いでいました。トップの写真はこの席から舞台方面を見たもの。

このオペラは実演で見るのは今回が初めてです。舞台は灰色を基調にしたシンプルなもので、神殿は断面が正方形で内部を金色に塗ったホーンのようなもの。それが上下や前後に移動します。また舞台前面には三方が階段になった台座が左右にスライドし、ホーンの位置と併せて各場面を形成します。兵士達は黒っぽい現代的衣装で自動小銃を構えています。主役達はそれなりに立場が分かるようなデザインのガウンを着用しているので場面を想像するのは容易です。演出的にはかなりまともと言えるでしょう。

歌手ですが、ROHでお馴染みのパオロ・ガヴァネリがタイトルロールです。台詞的な箇所では時折気の抜けたような声を出していましたがアリア部分ではさすがに気合いを入れて歌い、特に第4部ではそれまで貯めていたスタミナを出し切って熱唱。もともと迫力のある声ではありませんが歌のうまさで充分カヴァーしている感じです。アリアもカーテンコールも大喝采でしたが、カーテンコールではかなりのブーも混じっていました。

司祭役のジャコモ・プレスティアは開演前に、喉の調子が悪いけど歌う、とアナウンスされましたが特に問題ないどころか大変立派な歌唱で存在感充分でした。

このオペラではテノールが脇役ですが、イズマエレ役のロシア人テノール、アレクサンドルス・アントネンコは結構優れた声と歌唱で、ちゃんと聴いてみたい人だと思わせました。

アビガイレ役のマリア・グレギーナ(1959年生まれのウクライナ人)は初めて体験しましたがとても魅力的な声で声量もあり、その歌唱は私的にはブラヴァーですがカーテンコ-ルでは歓声に混じってかなり強烈なブーも飛んでいました。過去にもっといいときがあってそれとの比較でこうなったのか、あるいはもともとあまり人気のない人なのかよく分かりません。アビガイレという役にはふさわしい立派な体躯で歌は上手かったと思うのですが。

「ブラヴァー!」 「ニコニコ」
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「ブー!」 「キッ!」
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フェネーナを歌ったメゾソプラノはちょっと水準の落ちる歌唱でしたがドイツ人のせいか暖かい拍手でした。

パオロ・カリニャーニの指揮するオケは音、テンポ、間の取り方などどれを取ってもすばらしく、劇的なヴェルディのオペラにふさわしい出来だったと思います。彼は以前にヴィーンで「セビリアの理髪師」を振ったのを体験していますがそのときもすばらしい指揮で、ロッシーニでもヴェルディでも自在にこなせる人なのですね。

下の写真はカーテンコールのもので、左からPaolo Gavanelli、Paolo Carignani、Maria Guleghinaです。
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by dognorah | 2008-07-18 00:12 | オペラ

チャイコフスキーのオペラ「エフゲニー・オネーギン」公演

2008年7月13日、バイエルン州立歌劇場にて。
終演後のケント・ナガノと出演者達。
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Conductor: Kent Nagano
Production: Krzysztof Warlikowski
Set and Costumes: Malgorzata Szczesniak
Choreography: Saar Magal
Lighting: Felice Ross
Chorus: Andrés Máspero
Dramaturgy: Miron Hakenbeck, Peter Heilker

CAST
Larina: Iris Vermillion
Tatjana: Tatiana Monogarova
Olga: Elena Maximova
Filipjewna: Elena Zilio
Eugen Onegin: Michael Volle
Lenski: Marius Brenciu
Fürst Gremin / Saretzki: Günther Groissböck
Triquet: Guy de Mey

The Bavarian State Orchestra
The Chorus of the Bavarian State Opera

ヴィーンで見た「ドン・カルロ」でエリザベッタ役を歌ったOlga Guryakovaがタチアナ役で出演するのが決め手になってこのオペラの切符を買ったのですが残念ながら彼女は降板してしまいました。よくあることなのでまたの機会を楽しみにしましょう。

代役はやはりロシア人のTatiana Monogarovaという初めて名前を聞く人です。スタイルのいい人で見栄えがしますし歌も上手なのですが声は非常に魅力的というわけではありません。それでも前半はかなりよかったのでまたいいソプラノを見つけたかな、と思っていたらだんだん声が周波数的に分散するような状態になりそれは時間と共にどんどん増大してかなりがっかりさせられました。グリャコワのキャンセルが痛い。

オルガを歌ったElena Maximovaは特別なキャラクターには欠けるものの無難なメゾソプラノで悪くないです。

今日はレンスキー役に予定されていたChristoph Strehlも急病なのか代役が歌いました。ルーマニア生まれのMarius Brenciuというテノールです。声は美しくて魅力的ですがやはりキャラクターに乏しく、3月にROHで聴いたベチャラなどの一流どころと比べると単に優等生的という印象です。急な代役だから仕方がないかもしれませんが。

タイトルロールを歌ったMichael Volleは水準以上の歌唱ですが特段凄いと言えるわけではありません。アリアなどちょっと一本調子で、聴いていてわくわくするような歌唱ではないのが残念です。プリンス・グレミンを歌ったGünther Groissböckは姿形も若々しく力強い歌唱が印象的で、低音もよく響いていました。

ケント・ナガノ指揮のオケは質の高いいい音を出して「さすが」と思わせる演奏ですが、チャイコフスキーの音楽としてはやや流動感に乏しく、これも3月にROHで聴いたビエロフラーヴェクの指揮にはかないません。

演出は大変変わったものでゲイダンサーを始めカラオケやTV、カセットレコーダーなどが出てくる現代読替ものですが、既に普通の伝統的舞台を見たことがある人には受け入れられる範囲のものと思います。しかし初めてこのオペラを見る人にはあまりお勧めできません。叙情的な味がこのオペラのすばらしい一面だと思うのですがそれが払拭されています。タチアナだって読書シーンはあるものの現代娘的キャラクターで、最初のオルガとの二重唱はマイク片手にクラブで踊りながら歌うものだし、オネーギンへの告白を拒否された後も、「本当に好きなのよ」といわんばかりに脚を彼に絡めてまで追いすがる積極さも見せます。訳の分からない場面も満載で、決闘シーンだって二人でダブルベッドの上で悶々としているし、その部屋のガラス窓の外ではカウボーイ姿の男達が女の人形相手に輪姦シーンを描出しているし、レンスキーが殺された後は彼等が女装してベッドの周りを踊り回るし、どうもいまいち解釈に困るものの特に不愉快でもないです。文句を言いたいのは登場人物達があまりにも頻繁にたばこを吸うことで、最後にタチアナに振られたオネーギンもむしゃくしゃした気持ちを吹っ切るかのようにたばこを吸って幕。スポンサーにたばこ会社が付いているのかと疑ってしまいました。

ホールの音響について高い席だったにも拘わらず不満がありました。今回は1 Rangの中央やや右よりの最前列で、舞台を見るには最高ですが、歌手の歌う場所によってはすぐ後ろの天上と壁の間で共振するらしく、まるでそこにスピーカーがあるがごとくの音になりかなり不愉快でした。歌手が舞台の右端3分の1あたりで歌うとその現象が起きます。席が異なると歌手のポイントも違ってくるのでしょうけれど。翌日座った3 Rangの同様の席ではそういう現象は一切ありませんでしたし、10年ぐらい前に平土間で聴いたときも欠点は感じませんでしたので、1 Rang特有の現象なのでしょう。

10年前にここで「ヴァルキューレ」を見たときのことは仕事の合間だったせいかあまり憶えていないので、今回劇場を始めいろいろ新鮮に見ることが出来ました。観客のおしゃれ度はかなりのものでドレスデン、ヴィーン、パリ、マドリードなどのどこよりも服装に気を使っている感じでした。劇場はロビースペースが広々しているのも気持ちがいいです。インターヴァルには座席出入り口の鍵をかけてしまうので席に貴重品を残しても安心ですね。この日は気温が20度程度だったので多分エアコンは効いていなかったと思いますが、上の方の階に行くにつれて気温が上昇しているのはロンドンのロイヤルアルバートホールと同様でした。最上階はかなり暑いです。

下の写真はカーテンコールのTatiana MonogarovaとMichael Volleです。
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by dognorah | 2008-07-17 00:40 | オペラ

モーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」公演

2008年7月11日、バービカンホールにて。
公演日からちょっと時間が経ってしまいました。

Wolfgang Amadeus Mozart (1756-91)
Così fan tutte, K588 (1790)

Dramma giocoso in two acts
Libretto by Lorenzo da Ponte

Steuart Bedford conductor /fortepiano continuo
Frederic Wake-Walker director
Robert Perdziola designer
Garsington Opera Orchestra
Jane Fenton cello continua
Concert staging based on John Cox’s production for Garsington Opera, first performed on 12 June 2004.

Cast
Erica Eloff: Fiordiligi
Anna Stéphany: Dorabella
D’Arcy Bleiker: Guglielmo
Ashley Catling: Ferrando
Teuta Koço: Despina
Riccardo Novaro: Don Alfonso

オーケストラと同じ舞台上で演じられるもので、当然背景はなく少しばかりの家具があるのみ。歌手はかなりちゃんとした衣装を着けていますし、姉妹は2回も着替えます。ガーシントンオペラで使った衣装をそのまま持ってきたのでしょう。因みにガーシントンオペラというのはオクスフォードの郊外にあるGarsington Manorで毎年夏期に一ヶ月間開催される野外オペラフェスティヴァルだそうです。歌手は世界各地から集められた若手で、すべて私は初めて聞く名前ばかりです。

フィオルディリギ役を歌った南アフリカのソプラノは緊張していたのか第1幕前半は声があまり出ず、やはりこういうレヴェルか、とちょっとがっかりしたのですが時間と共に本来の実力を発揮し、特に私の好きな声ではないものの全体としてはとてもよい歌唱でした。ドラベラを歌ったメゾは最初から美しい声でまあまあ。もう少しドラマティックさがあればよりいいのですが。デスピーナを歌ったアルバニアのソプラノは上手い歌唱で最初からがんがん飛ばして大きな喝采を浴びていましたが後半はややお疲れでした。
グリエルモ役の英国人バスバリトンはかなりまともな歌唱で声もよく出ていました。しかしフェランド役の英国人テノールは声に迫力がなく全編にわたってあまり印象的な歌唱ではありませんでした。ドン・アルフォンソを歌ったイタリア人バリトンは男声陣の中では最もこなれた歌唱で声も滑らかな発声で魅力的でした。
特筆すべきは管弦楽で30人程度の生編成ながら音良しアンサンブル良し演奏良しで大満足です。メンバーは毎年決まっているのかあるいはかき集めて編成するのか知りませんがよほど指揮者がいいのでしょう。キャリアを見ても世界中のオペラで活躍しているかなりのヴェテランです。合唱も全く不満はありません。
演出は非常にまっとうなもので、制約ある舞台スペースなのに効率よく使ってちゃんと筋が運ばれていきます。
全体としては予想以上に水準が高く、ガーシントンオペラも満更ではないことが分かりました。とても楽しめました。
写真は終演後に挨拶する出演者達です。
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by dognorah | 2008-07-16 07:56 | オペラ

藤本由紀夫講演会

2008年7月10日、Japan Foundationにて。

c0057725_9212151.jpg藤本由紀夫(左の写真はネットから拝借)は1950年名古屋生まれのInstallation Artist乃至はSound Artistで、今回はThe Ear Doesn’t Hear ‘There’, Always ‘Here’という題名でアイルランド生まれのアーティストDavid Cunninghamとの対話形式の講演会が開催され、出席してきました。彼は日本語しかしゃべらず、そばに若いイギリス人通訳が付いて進められましたが、彼女の通訳はほぼ完璧で見事なものでした。後で本人に訊いたら3年半日本に滞在して日本語を身につけたそうです。

この人の名前を聞くのは今回が初めてでどんなアーティストか全く予備知識がなかったのですが、結構面白いコンセプトに基づく「音」を主体にしたアートを発表している人であり、国際的にも名の知れた人であることが分かりました。ただし私自身はこれをアートと呼ぶのはちょっと迷うところであり抵抗もありますが、他のInstallationよりはかなりアートに近いかもしれないなとも思いました。

作品の紹介はいくつかの小品を展示すると共にヴィデオで過去の作品や展示会場の様子をスクリーンに投影して解説されましたが、身近にあるものを最小限使って構成する方針なので見た目には全く映えないものが多そうです。
会場に展示されているものでは、長さ15cmぐらいのガラス管にさいころをいくつか詰めてそれをオルゴールのゼンマイモーターで回転させて音を出すものなど。
ヴィデオでは、直径10cm長さ2mぐらいのプラスティックパイプを2本都市部のビルの屋上に設置し、両者の開口部に両耳を近づけて音を聴くものが代表作として紹介されました。周りのノイズがパイプの中で共振して高音から低音まで奇妙に響くのです。これは音を聴いているのではなく空間を聴いていると言えるそうです。耳は繊細なので聴いているのは音だけじゃないというわけです。そしてこれらを体験すること自体がCreativeなことであり、彼の作品はいろいろな音を聴くチャンスを創造するものであるとのことです。すなわちそのときしかない「出会い」が一番重要でそれを観客に提供するのが彼のアートだというわけです。そして作品にはメッセージを込めないで、観客が音を創作するきっかけを与えるとも。これは例えば抽象的な概念である「時間」を「時計」というもので具現化して「時間が流れる」など種々の表現を可能にしているのと似ているという解説でした。

Audio Picnic Projectについて:1997年から2006年まで毎年一日だけ開催してきた展覧会。美術館のありとあらゆるスペースを使ってあちこちに音を仕込み、それを観客が探して歩くもので彼等の出す音も作品の一部となるようなInstallationで、たった一日しかやらないのはそれをコンサートと捉えていたから。
展覧会=Artist+美術館+観客≒Musical Session
というわけです。

その他、ビートルズの231曲の歌を231台のCDプレーヤーで同時に再生して観客に聴かせるイヴェントなどの話とか、ジョン・ケージやマルセル・デュシャンに言及したり興味深い話がいろいろありました。個人的に話す機会があるならいろいろ聞きたいことがあったのですが、それは私だけじゃなかったらしく、終了後はレセプションがあったのですが彼は聴衆の質問攻めにあってなかなかワインが飲めない状態でした。ロンドンでは既に2001年に個展を開いていますが来年はバーミンガムで個展を開くそうです。
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by dognorah | 2008-07-11 09:26