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ドレスデンの「タンホイザー」公演

2008年6月25日、ゼンパーオーパーにて。
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TANNHÄUSER und der Sängerkrieg auf Wartburg
Große romantische Oper in drei Aufzügen von RICHARD WAGNER

Musikalische Leitung Christof Prick
Inszenierung Peter Konwitschny
Bühnenbild Hortmut Meyer
Kostüme Ines Hertel
Dramaturgie Werner Hintze
Choreinstudierung Matthias Brauer

CAST
Landgraf Hermann von Thüringen Georg Zeppenfeld
Tannhäuser Robert Gambill
Wolfram von Eschenbach Christoph Pohl (für Olaf Bär)
Walther von der Vogelweide Martin Homrich
Biterolf Michael Eder
Heinrich der Schreiber Tom Martinsen
Reinmar von Zweter Rolf Tomaszewski
Elisabeth, Nichte des Landgrafen Brigitte Hahn (für Catherine Foster)
Venus Michaela Schuster
Ein junger Hirt Lydia Teuscher
Vier Edelfrauen Gabriele Müller, Ute Siegmund, Barbara Leo, Claudia Mößner

今回のドレスデン訪問の目的であったこのオペラは欧州では初の経験ですが、特に優れた歌手もいなくて出来としては水準程度かという印象です。そういうレヴェルのせいか、会場内は空席が結構目立ちました。
歌手陣では、タンホイザーを歌ったアメリカ人テノール、ロバート・ギャンビルは高音までよく伸びる声ながら時たま不快な声が出ます。全体としてはまあまあといったところ。
ヴォルフラムはオラフ・ベールの代役クリストフ・ポールが歌いましたが充分楽しめる声と歌唱でした。
エリザベト役はキャサリン・フォスターの代役ブリギッテ・ハーンが歌いましたが第2幕では声に張りがなくてハスキーで極めて不満足。第3幕でやや改善されたものの声質は好みではありません。かなり年増で50代後半か。がっかり。
ヴェヌス役のソプラノ、ミヒャエラ・シュスターは透明感のある声でよかったのですが第3幕ではヴィブラートが多くなってやや興醒め。
領主ヘルマン役のゲオルク・ツェッペンフェルトは声量あるバスがすばらしく、今回の歌手陣の中では一番光っていました。
また、合唱は本当にすばらしかったです。
クリストフ・プリック指揮のオケは重厚で美しい響きを出してヴァーグナーにふさわしいものでした。
このプロダクションは1997年プレミエのもので、演出はペーター・コンヴィチュニーですが、全体に訳の分からない部分はあるものの納得できるものでした。ただ、最後はエリザベトとヴェヌスが抱き合って終わるというのは非常にユニークです。しゃべっている言葉が分からないので子細は不明ですがありきたりの女性の死による救済とは違う解釈はあってもいいでしょう。細かいところでは、第1幕で大小様々なタンホイザー人形を弄ぶヴェヌスの取り巻き女性達とか、剣を使うときに手に嵌める甲冑をタンホイザーが終始手放さなくて、一度だけエリザベトの右手に嵌めさせることの意味などよく分かりません。いろいろ解釈を考えさせられますが、なるほど巷で評判のコンヴィチュニー、なかなか才能のある演出家であることはよく分かりました。面白いです。
舞台装置は第1幕が特に奇抜なものですが第2幕第3幕はそれなりに美しく、よく考えられたものです。第3幕では階段状の舞台が作られていますが、その下に左右に分かれた部屋があり全く別のオケ奏者達が10分程度演奏していました。それぞれに指揮者がいたので都合3人の指揮者が振る姿が私の3階席からは見えましたが、そういうヴァーグナーの指定なのか今回のプロダクションの創作なのか不明です。衣装はあまりいただけません。タンホイザーは終始パジャマのようなものを着ています。ヴェヌスは顔を青く塗っていますが尋常の世の人じゃないという意味付けでしょうか。

第2幕終了後の舞台
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第3幕終了後の舞台
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挨拶する出演者。左から、Christoph Pohl、Brigitte Hahn、Robert Gambill、Georg Zeppenfeldです。
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終演後は前日に続いて近くのレストランで食事をし、ホテル帰還は午前様。タクシーに乗っているとドイツの小旗をつけた車がピーピーとクラクションを流して走り回っており、ああドイツがトルコに勝ったんだ、と分かりました。非ドイツ人らしき運転手にスコアを確認しましたがあまり愉快そうではなかったのでひょっとして彼はトルコ人だったのかもしれません。
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by dognorah | 2008-06-29 19:55 | オペラ

ヴェルディのオペラ「リゴレット」公演

2008年6月24日、ドレスデン州立歌劇場(ゼンパーオーパー)にて。

Rigoletto
Oper in drei Akten von Giuseppe Verdi

Musikalische Leitung: Fabio Luisi
Inszenierung: Nikolaus Lehnhoff
Bühnenbild: Raimund Bauer
Kostüme: Bettina Walter
Lichtdesign: Paul Pyant
Choreografie: Denni Sayers

CAST
Der Herzog von Mantua: Juan Diego Flórez
Rigoletto: Željko Lučič
Gilda: Diana Damrau
Graf von Monterone: Markus Marquardt
Graf von Ceprano: Markus Butter
Gräfin Ceprano: Kyung-Hae Kang
Marullo: Matthias Henneberg
Borsa: Oliver Ringelhahn, Timothy Oliver
Sparafucile: Georg Zeppenfeld
Maddalena: Sofi Lorentzen
Giovanna: Angela Liebold
Ein Page: LinLin Fan

Tさんとロンドンの椿姫さんと3人でドレスデンにオペラを見に行こうという話が5月にまとまり、やはりヴァーグナーを見たいということで、ネットで切符が取れたタンホイザーを目的に行きました。到着はタンホイザー前日の24日で、飛行機の中で椿姫さんからこの日は人気が高くて切符が売り切れたフローレス出演の「リゴレット」があるという話を聞いていました。フライトも順調に到着し、ホテルにも意外に早くチェックインできたので、劇場に行ってもし切符が入手できるようならこれも見ましょうということで3人の意見が一致。で、行ってみたら当日売り目当ての行列もあったけれど、ダフ屋が出ていました。かなり高かったけれど3人とも見たいという欲求には勝てずイージーゴーイング。
割といい加減な気持ちで見たわけですが、これが私が見た中では過去最高のレヴェルの高い公演でした。まず、フローレス、ダムラウ、ルチッチの3人がすべて上手い上に絶好調で、更にルイージ指揮のオケもすばらしい演奏で、それに加えて演出と舞台もとてもよくできたもので、うなってしまいました。
マントヴァ公爵としてのフローレスの声は私にはマルセロ・アルバレスよりも好みです。終始例の美声が全開で、第1幕第2場のジルダとの二重唱もダムラウのすばらしさもあって圧巻でした。
リゴレットを演じたジェリコ・ルチッチはROHのラ・トラヴィアータでジェルモンをやったことがあり、そのときのすばらしい歌唱はよく憶えています。そしてこのリゴレットも文句のつけようがない立派な歌唱でした。素直で抜けのよい安定感ある声と類い希な格調高い歌唱で終始感動的でした。ただ、リゴレットという役柄は外面的に道化でも内面的にまじめな性格ですが、ルチッチの場合ほとんど道化としての柔らかい面は出ていなくて終始まじめ一方というのがちょっと気になるところです。演出がそういう方針なのでしょうか。
ジルダを歌ったディアナ・ダムラウもそれに劣らず安定した音程と魅力的な声による情感たっぷりの歌唱で親子コンビでも公爵との熱愛コンビでも第一級のドラマティックな高みに達していたと思います。ROHで夜の女王をやった時みたいに濃い特殊メーキャップもしていないので、美しさにも惚れ惚れです。
この3人に加えて、殺し屋スパラフチレを歌ったゲオルク・ツェッペンフェルトの低音もなかなかのものでした。
しかしマッダレーナを歌ったゾフィ・ロレンツェンの声、歌唱ともあまり魅力的ではないです。したがって第3幕の4重唱はちょっと瑕があるものの後の3人が凄かったのでよい印象です。
指揮のファビオ・ルイージは初めて経験しますが、ヴェルディ音楽を魅力たっぷりに響かせる好感の持てるもので、厚みあるオケの音にも感動しました。
演出と舞台もかなりいい線を行っており、現在のROHのもの(マクヴィカー)より好きです。マントヴァ公の宮殿の黒大理石も豪華だし、ヌード女性を徘徊させたり怪しげな動作をするカップル達で退廃的な雰囲気もきちんと出ています。第二場のリゴレットの家はちょっと変な作りですがまあまあ。しかし第3幕の居酒屋はあまりいただけません。恐らく空を描写する空間をたっぷり取りたいがために、居酒屋そのものは極力小さく簡素にしたのでしょう。リゴレットの性格付けは先に述べたようにあまり道化という雰囲気はありません。前奏曲が鳴っている最中に彼がプロンプターボックスから這い出し、まじめで厳しい顔つきをしながら道化の衣装を身につけていきます。最初から道化はほんの仮の姿であることを強調しているようです。しかしながら細かいところがあちこち凝っていて、リゴレットは宮殿では30センチぐらいの金色の棒をいつも持っているのですがよく見ると(席が前から3列目だった)凄くエロティックなもので、棒の先がヌード女性の下半身に刺さったものです。また、ジルダがマントヴァ公に犯された後では彼女の白いドレスの下腹部が血で汚れているなど生々しさも感じます。
このプロダクションのプレミエは3日前の21日でしたが、来期の再演はごくローカルな歌手達ばかりで、ドレスデンにしては今回の歌手陣は異例の豪華さであることが分かりました。

下の最初の写真は第2幕終了後のもので、左からŽeljko Lučič、Diana Damrau、Juan Diego Flórezです。
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次の写真は公演終了後のもので、左からGeorg Zeppenfeld、Juan Diego Flórez、Diana Damrau、Željko Lučičです。
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by dognorah | 2008-06-28 02:38 | オペラ

バーンスタインの「キャンディード」ロンドン公演

2008年6月23日、ENOにて。

2年前の暮れにパリで初演されたカーセンのプロダクションがミラノのスカラ座を回ってやっとロンドンにやってきましたので、初日を見てきました。
パリからのTV放送を見ていたとは言え、やはり生で見ると楽しいです。最初はアメリカの50-60年代の映像が序曲をバックに流されますが、その音楽の何と活き活きしていることか。指揮者とオケに拍手です。また、主役のキャンディードにはちゃんとしたオペラ歌手であるトビー・スペンスが起用されましたがパリで主演したウイリアム・バーデンより歌がずっと上手かったので全体としてもいい出来だったと思います。相手役のクネゴンデはパリと同じです。ヴォルテールは当然のことながらここではすべて英語で話します。
5人の政治家が水着姿で出てくるところは現在の状況に応じて変えられていて、最初に舞台に出てくるのはシラクではなくブレアです。やはりロンドンでも受けていました。そして台詞も「僕ちゃん首相を辞めちゃったもんね」、シラクが「ワシもだよ」、ブッシュ「俺ももうすぐ引退さ」、プーチン「同じく辞めちゃったけど、ベルルスコーニ君、君は復活したね」など。ヴィデオを見ればもっと違いがいろいろ見つかるでしょうけれど。
この初日は満席でしたが、他の公演日は早くもディスカウントチケットが出回っているようです。
下の最初の写真はクネゴンデを歌ったAnna Christyとエールを送るToby Spence。右端はヴォルテール役のAlex Jennings。
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次の写真は、盛大な拍手で成功裏に終わって上機嫌のRobert Carsenです。
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Candide
Comic operetta in two acts
Music by Leonard Bernstein
Lyrics by Richard Wilbur, additional lyrics by Stephen Sondheim, John Latouche, Lillian Hellman, Dorothy Parker and Leonard Bernstein
Book adapted from Voltaire by Hugh Wheeler, freely adapted by Robert Carsen and Ian Burton
Orchestrations by Leonard Bernstein and Hershy Kay, with additional orchestrations by John Mauceri

Conductor Rumon Gamba
Director Robert Carsen
Set designer Michael Levine
Costume designer Buki Shiff
Lighting designers Robert Carsen and Peter Van Praet
Dramaturg lan Burton
Sound designer Nick Lidster
Choreographer Rob Ashford

Cast
Voltaire, Pangloss, Martin:Alex Jennings
Candide:Toby Spence
Cunegonde:Anna Christy
Old Lady:Beverley Klein
The Grand Inquisitor, Captain, Governor, Vanderdendur, Ragotski:Bonaventura Bottone
Paquette:Mairéad Buicke
Maximilian:Mark Stone
Cacambo:Ferlyn Brass
Baron:James Glenister
Sailor:Simon Butteriss
Officer 1:Adrian Brand
Officer 2:Graeme Danby
Immigration Officer Aide:Philip Sheffield
Jazz Band Musician:Claire Mitcher
The Beggar:Thierry Laurion
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by dognorah | 2008-06-27 09:25 | オペラ

ヴォーン ウイリアムズのオペラ:The Pilgrim’s Progress

2008年6月20日、Sadler’s Wellsにて。Semi-staged performance。

The Pilgrim's Progress (A Morality)
Music Ralph Vaughan Williams
PROLOGUE, FOUR ACTS AND EPILOGUE
Libretto ADAPTED FROM BUNYAN BY RALPH VAUGHAN WILLlAMS WITH INTERPOLATIONS FROM THE BIBLE AND VERSE BY URSULA WOOD

RICHARD HICKOX conductor
DAVID EDWARDS director
SIMON CORDER set & lighting designer
Philharmonia Orchestra
Philharmonia Voices

ヴォーン ウイリアムズ(1872-1958)という作曲家は名前を知っていてCDも1-2枚は持っていると思うのですが、まるで聴かない作曲家でした。まずアメリカ人かイギリス人かも知らなかったのでWikipediaを参照していろいろ事実を知りました。イギリス人で、ヴォーン ウイリアムズが姓で名前はRalphですが発音は本人の希望でレイフというらしい。生涯にオペラを5つ作っていて、今回上演されたのは最後の作品です。ストーリーは題名から推察されるように多分に宗教的なもので、一人の若者が伝道師に諭されて巡礼の旅に出、いろいろな困難を克服して神への道を無事に見つけるというもので、オペラの題材としてはどうかと思うようなもの。ものすごく沢山の役があり、一人で二役三役とこなすにしても結構な数の歌手が必要です。参考のために下に登場した歌手達の名前を掲げておきます。知っている歌手は、マシュー・ローズ、ティモシー・ロビンソン、セーラ・フォックス、アンドリュー・ケネディぐらいなもの。音楽は悪くはなく2時間ちょっとのオペラは聴いている分には退屈しません。1951年にROHで初演されたそうですがさんざんの評判で、それ以来レパートリーから外されたとか。今回も会場はかなりがらがらでした。
今回の主役を歌ったバリトン、ロデリック・ウイリアムズは大変立派に歌いきりましたが、オペラそのものからは特に感動は得られず、今後もう一度これを見ることもないでしょう。
写真は終演後のRichard HickoxとPilgrim役のRoderick Williamsです。
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CAST
John Bunyan NEAL DAVIES baritone
The Pilgrim RODERICK WILLlAMS baritone
Evangelist MATTHEW ROSE bass
Pliable RICHARD COXON tenor
Obstinate MATTHEW BROOK bass-baritone
Mistrust GIDON SAKS bass-baritone
Timorous TIMOTHY ROBINSON tenor
Shining Ones SARAH FOX soprano
Shining Ones SARAH TYNAN soprano
Shining Ones PAMELA HELEN STEPHEN mezzo-soprano
Interpreter JAMES GILCHRIST tenor
Watchful MATTHEW BROOK
Herald ROBERT HAYWARD baritone
Appollyon GIDON SAKS
Heavenly Being I SARAH TYNAN
Heavenly Being II PAMELA HELEN STEPHEN
Lord Lechery ANDREW KENNEDY tenor
Demas ROBERT RICE baritone
Judas Iscariot SAMUEL EVANS bass-baritone
Simon Magus JAMES OLDFIELD bass-baritone
Wordly Glory GRAHAM NEAL tenor
Madam Wanton SARAH FOX
Madam Bubble PAMELA HELEN STEPHEN
Pontius Pilate FRANCIS BRETT baritone
Usher TIMOTHY ROBINSON
Lord Hate-Good GIDON SAKS
Malice SARAH TYNAN
Pickthank ANDREA BAKER mezzo-soprano
Superstition JAMES GILCHRIST
Envy MATTHEW ROSE
Woodcutter's Boy ADAM HICKOX treble
Mr By-Ends RICHARD COXON
Madam By-Ends ANDREA BAKER
First Shepherd MATTHEW BROOK
Second Shepherd JAMES GILCHRIST
Third Shepherd MATTHEW ROSE
Solo Soprano SARAH FOX
Solo Alto ANDREA BAKER
Solo Tenor JAMES GILCHRIST
Voice of a Bird SARAH TYNAN
Celestial Messenger ANDREW KENNEDY
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by dognorah | 2008-06-23 22:20 | オペラ

ナキソス島のアリアドネ

2008年6月19日、ROHにて。

Ariadne auf Naxos
Opera in a prologue and one act
Music: Richard Strauss
Libretto: Hugo von Hofmannsthal

Conductor: Mark Elder
Director: Christof Loy
Revival Director: Andrew Sinclair
Designs: Herbert Murauer
Lighting design: Jennifer Tipton
Choreographer: Beate Vollack
The Orchestra of the Royal Opera House

CAST
・Prologue
A Music Master: Thomas Allen
The Major Domo: Alexander Pereira
A Lackey: Dean Robinson
An Officer: Nikola Matišić
The Composer: Kristine Jepson
The Tenor: Robert Dean Smith
A Wigmaker: Jacques Imbrailo
Zerbinetta: Gillian Keith
The Prima Donna: Deborah Voigt
A Dancing Master: Alan Oke
Three Singers: Anita Watson, Anna Leese, Sarah Castle
Four Comedians: Markus Werba, Ji-Min Park, Haoyin Xue, Jeremy White

・Opera
Naiad: Anita Watson
Dryad: Sarah Castle
Echo: Anna Leese
Ariadne: Deborah Voigt
Zetbinetta: Gillian Keith
Harlequin: Markus Werba
Truffaldino: Jeremy White
Scaramuccio: Ji-Min Park
Brighella: Haoyin Xuet
Bacchus: Robert Dean Smith

4年ぶりに再演されたこのプロダクション、そのときのことはプロローグの舞台装置の凝った作りと劇としての面白くなさしか印象にありませんが、今日は劇の筋のことは放棄して音楽に集中した結果すばらしい出来に感嘆しました。

まず歌手ですがすべてとてもよい出来でした。4年前に肥満のためタイトルロールを首になって世界中の話題になったデボラ・ヴォイトはそのときのギャラで外科手術をして“やや痩せて”今回やっと歌わせて貰ったわけですが、評判の高さを確認できる歌唱でした。よく伸びる高音と高貴な歌声、歌唱のうまさなどさすがでした。高音はやや金属的な印象もあって声質そのものは非常に好きというわけではありませんが初の体験はインパクト充分でした。バッカス役のロバート・ディーン・スミスも非常に優れた歌手とは思いませんし好みの歌手というわけではありませんが今日の歌唱はかなり調子がよく、終盤のヴォイトとの二重唱は圧倒的な感銘を与えてくれました。ツェルネビッタ役のジリアン・キースは多分ROH初登場のカナダ人ソプラノですがこれがまたすばらしいコロラチューラでアリア終了時にブラヴォーを進呈しました。2000年にキャサリン・フェリアコンクールで優勝した人ですがヴォイトの半分以下と思える華奢な体つきも大変好ましい。
プロローグにしか登場しない作曲家役のクリスティン・ジェプソンはアメリカ人メゾ・ソプラノで過去にROHでドラベラ役を聴いたことがあります(特に印象はなし)が、今日の歌唱はすばらしく大満足です。ガランチャがこの役をレパートリーにしないということで降りた代役として起用された人ですが、これだけの優れた歌唱でしたら文句なしです。因みにガランチャの言い分は本当で、ヴィーンでも同じ理由で降りています。
こういう歌手達に後一人付け加えたい特筆ものの歌手はハーレクィン役のオーストリア人バリトン、マルクス・ヴェルバです。魅力的な声にスムーズな歌唱は大いに印象的でした。この人も今回がROH初登場でしょう。なお代役で出演したThe Major Domo役のアレクサンダー・ペライラはヴィーン・コンツェルトハウスやチューリッヒ・オペラのディレクターをやっていた異色の人ですが演技は特段上手かった印象がありました。会場で会った知り合いの連れがドイツ人で、彼に言わせるとものすごくオーストリア訛りのドイツ語だと言うことですが。彼のコメントによるとROHの英語字幕はひどくて、台詞のニュアンスをほとんど伝えていないとのこと。さもありなん。
マーク・エルダー指揮の管弦楽ですが職人的とも思えるスムーズなメロディ運びと美しいアンサンブルでこれも文句なし。
演出はプロローグ、オペラ共にいろいろ演技を持ち込みすぎてやや散漫という印象です。舞台装置はプロローグのリフト(エレベーター)とそれに連動して上下する床の作りが凝っていて楽しいですが、それにお金を使いすぎたのか後半のオペラ部分はごく普通といったところです。
次の写真はプロローグ終了時のもので、左からGillian Keith、Thomas Allen、Kristine Jepson、Alan Okeです。
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次は全幕終演時のもので左からDeborah Voigt、Mark Elder、Gillian Keith、Robert Dean Smith、Markus Werbaです。
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by dognorah | 2008-06-20 22:50 | オペラ

Sara Laimonピアノリサイタル

2008年6月16日、ウイグモアホールにて。

プログラム
・Harold Melzner (b.1966)
Toccata IV
Toccata II
Piano Sonata

・Laura Kaminsky (b.1956)
Fantasy Suite
Triftmusik
Boulevard
Musica Stellato
Toccata Piccola

・Ezra Laderman (b.1924)
Sonata No.3 (The Circus of My Mind)
I.Fantasia
II.Ten Piano Pieces
Mercurial
Driven & impetuous
Andante
Andantino
Gently
Forceful, Brusque
Pesante
Con amore, sempre legato
Allegro
Tenderly

III.Variations

カナダ人ピアニストSara Laimonは見たところ40代半ばでこれがウイグモアデビューである。プログラムを見ると全く知らないアメリカの現代作曲家3人の作品ばかり。その勇敢さに敬意を表したい。知らないピアニストが知らない曲を弾く。案の定会場は100人に満たない聴衆しかいない。こんな不入りなウイグモアホールは初めて見た。何を隠そう私だって只券が配られなければ行かなかった。無料ですよーとアナウンスしてもこれだけしか集まらなかった。しかも最初の二人の作曲家は演奏者から招待されて会場にいた。彼等もびっくりしたことだろう。

最初の曲は2005年に作曲された5曲のトッカータから2曲を選び、それに2008年に作曲された単楽章のピアノソナタをくっつけた形である。曲想的には関連があるらしく、作曲家と打ち合わせて決定したプログラムらしい。現代作曲家ながらかなり古典的な音と形式の作品で、同じテーマがわずかに変奏して続けられ、ちょっとミニマリズムの影響が感じられた。悪くない。演奏時間は約20分。

次の曲も作曲家と打ち合わせて彼女のピアノ作品の中から自由に取捨選択して演奏者のイメージでFantasy Suiteと名付けられたもの。4曲とも気品のある音で構成され、神秘的であったり、静かだと思ったらいきなりダイナミックになったりとなかなか楽しめる曲であり演奏だった。最初の曲より好感が持てる。演奏時間は約15分。

最後の曲は誰かの依頼ではなく作曲家が自分の妻のために書いたもので個人的な思いがいろいろ詰まったものらしい。演奏時間約50分の大作である。何かの情景を描写しているらしく、時たまムソルグスキーの「展覧会の絵」を思い出させてしまうようなフレーズがある。これも前2者と同様古典的な手法で書かれた曲である。結構いろいろな曲想が出てくるので退屈することはないが余りよく解釈できない曲ではある。譜面が見える位置の席だったので、まだまだ続くなぁと思いながら聴いていた。
アンコールは1曲のみ、バッハあたりか。
さすがにアンコール以外はすべて譜面を見ながらの演奏で、継ぎ接ぎして自分でめくれるように準備したものだが、達者な腕前のピアニストという印象だった。聴き始めると結構楽しめたコンサートで、食わず嫌いはやはりよくないなぁという印象。
写真はアンコールを弾こうと腰を下ろす瞬間のSara Laimon。ところで今日のピアノはスタインウエーだったがいつも見慣れたものではなく横の聴衆から見える位置に銘がないやつ。ひょっとしてピアノまで持ち込み?カナダからわざわざとはちょっと考えにくいけど。
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by dognorah | 2008-06-18 06:47 | コンサート

オペラ「Powder Her Face」

2008年6月13日、ROHのLinbury Studio Theatreにて。

トーマス・アデスのこのオペラは丁度2年前にバービカンでコンサート形式の演奏を聴いたが今回はちゃんとステージ化されたものである。

Powder Her Face
Chamber opera in two acts
Music: Thomas Adès
Libretto: Philip Hensher

Conductor: Timothy Redmond
Production: Carlos Wagner
Designs: Conor Murphy
Lighting design Paul Keogan
Choreographer: Tom Baert

Southbank Sinfonia

Duchess: Joan Rodgers
Hotel Manager: Alan Ewing
Electrician: Iain Paton
Maid: Rebecca Bottone

はっきり言ってどうも面白くないオペラだ。2年前にコンサート形式で聴いたときはそこそこ楽しめたのに。歌手は2年前の方がいい。今回の歌手でよかったのはMaid役のRebecca BottoneとElectricianなどの役をやったIain Patonのみ。主役のDuchess役を歌ったJoan Rodgersは演技も含めてあまり上手くない。また管弦楽演奏もいまいちリズム感が悪い。オペラとしては演技が入る分面白くなるはずなのに音楽的に劣ることと、演出に問題があることが原因かもと思った。個別のアクションでは演出は結構気が利いているような気がする。フェラチオのシーンはどう処理するのかと思っていたが全裸の男性俳優を使う奇想天外なものでこれは受けていた。しかし全体としては原作を解釈しすぎという印象で、もっと観客の想像力に頼った方がいいのではと思った。私が最近見たオペラの中では異例とも言えるがっかり度の大きいもので、退屈でさえあった。他の人でもそういう受け止め方の人がいたらしく、音楽の音量が小さいときはいびきが聞こえた(笑)。
舞台装置は奥行きのある階段の上に扉があるものと化粧品の大型模型で、階段中程の右側にコンパクトが置かれているもの。コンパクトは蓋が閉じたり開いたりするが、閉じるときは恐らく中央部が沈下して人が入れる空間が作られるはず。公爵夫人はほとんどこの中に横たわっている。全裸男性もこのコンパクトの中央部からむくむくとせり上がってくる仕掛けである。題名から連想した舞台だろうけれどこれ自体は悪くはない。

写真は終演後挨拶する出演者達で、左からAlan Ewing、Rebecca Botone、Joan Rodgers、Timothy Redmond、Iain Paton。
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by dognorah | 2008-06-15 08:36 | オペラ

ヴラマンク展

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Le Pont de Chatou, 1906/07, Huile sur toile, 68 x 96 cm
Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie


パリのMusée du Luxembourgで開催中の展覧会を見ました。
Maurice de Vlaminck(1876-1958)はフォーヴィズムの画家として知られていますが、今回は1900-1915年の期間の作品でフォービズムに焦点を当てたものでした。その中でも典型的なフォーヴィズムと思われる作品は1910年以前のもので、それらは私の好みでもありますがそれ以降の作品は造形が直線的で色も暗くなりあまりぴんと来ないものです。
1903-1908年ぐらいの大胆で多彩な色使いの風景画が特にすばらしく魅了されました。なお、美術館で借りたオーディオガイドではこの画家の名前はヴラミンクと発音されていました。そういえばフランス人の名前にしてはちょっと変わったスペルなので先祖は移民なのかもしれません。そういうことでフランスではそういう発音なのでしょうか。

非常に気に入った絵の画像は入手できなかったのですが、風景画と静物画を一枚ずつ掲げます。
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Nature morte au compotier, 1905, Huile sur toile, 46 x 55 cm
Chartres,musée des Beaux-arts - Dépôt privé permanent


VLAMINCK un instinct fauve
2008年7月20日までリュクサンブール美術館で開催中
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by dognorah | 2008-06-12 22:31 | 美術

ベリーニのオペラ「カプレティ家とモンテッキ家」

2008年6月8日、パリオペラ座バスティーユにて。
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I Capuleti ed i Montecchi
Opéra en deux actes
Musique: Vincenzo Bellini
Livret: Felice Romani

Direction musicale: Evelino Pidò
Mise en scène: Robert Carsen
Décors et costumes: Michael Levine
Lumières: Davy Cunningham
Orchestre et Chœurs de l'Opéra national de Paris

CAST
Capellio: Giovanni Battista Parodi
Giulietta: Anna Netrebko
Romeo: Joyce DiDonato
Tebaldo: Matthew Polenzani
Lorenzo: Mikhail Petrenko

初めて見るオペラです。ネトレプコが出演するというのでなければわざわざパリまで見に行くこともなかったでしょう。しかしキャンセルのリスクを心配しながらも行ってよかった。予定通り出演したネトレプコの歌唱はそれはそれはすばらしく、いつものあの柔らかく透明な声が全開で第1幕第2場冒頭のアリア“Oh! Quante volte”で早くも涙が出そうになったくらいです。世の中にはネトレプコのことが嫌いで彼女が歌うベルカントオペラを「あんなの、ベルカントじゃないよ」と悪口をたたく人も沢山いることは知っていますし、多分それはある程度的を得ているのでしょうけれど、彼女の歌唱はベルカントがどうのこうのというレヴェルを超えた高みにあると思います。
c0057725_955013.jpgそれに先立つ第1幕第1場でのディドナートの歌唱も文句なしのすばらしさですが、カチッとした輪郭を印象づけられる彼女の声はネトレプコと一緒に聴くと硬い金属を思わせる印象になります。それぐらい声質が違うんですね。彼女は今まで女性役ばかり見てきましたが今回初めてのズボン役でフラットな靴を履いたせいでかなり身長の低い人だということが分かりました。見栄え的には来シーズンのROHで登場するガランチャの方がいいでしょう。それにも拘わらずディドナートの凛々しい姿はなかなか魅力的です(左の写真)。
テバルドを歌ったポレンザーニは昨年ROHのコジ・ファン・トゥッテでフェランド役を歌った人ですが今回もしっかりした歌唱と声で充分満足です。ロレンツォを歌ったペトレンコは声が軽めのバスですがこの役にはふさわしく、きれいに低音が出ていました。もう一人のバス、カペリオ役のパロディは対照的に重めのバスですが特に文句はないです。
指揮のピドは例によって全身を使った派手な指揮振りですが今回はあまりオケがいい反応を示さなかった感じがします。序曲はペラペラの音で、ここで今まで聴いた中では最低の出来でしたが歌手が歌い始めるとかなり持ち直しました。
演出はカーセンお得意のチープ路線ではありますが想像力で充分補える範囲だし、単純な舞台装置も様式的な壁の使い方が上手くてそれなりに納得できるものでした。

次の写真は終演後のもので、左からEvelino Pidò、Anna Netrebko、Matthew Polenzaniです。また、冒頭の写真は第3幕でジュリエッタが死んだと思って嘆き悲しむロメオの場面で、横たわっているのは妊娠中のネトレプコです。パリは美術館同様フラッシュさえ使わなければ公演中でも写真OKですが、今回初めて撮ってみました。
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by dognorah | 2008-06-11 09:14 | オペラ

「トスカ」公演

2008年6月5日、ROHにて。

Tosca
Melodramma in three acts

Music: Giacomo Puccini
Libretto: Giuseppe Giacosa and Luigi Illica (after Victorien Sardou's play La Tosca)

Conductor: Paul Wynne Griffiths
Director: Jonathan Kent
Revival Director: Stephen Barlow
Designs: Pau I Brown
Lighting design: Mark Henderson

The Royal Opera Chorus Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House

GAST
Cesare Angelotti: Kostas Smoriginas
Sacristan: Enrico Fissore
Mario Cavaradossi: Jonas Kaufmann
Floria Tosca: Micaela Carosi
Baron Scarpia: Paolo Gavanelli
Spoletta: Robin Leggate
Sciarrone: Darren Jeffery
Shepherd Boy: Timothy Posner
Gaoler: John Morrissey

ヨナス・カウフマンが第1幕の絵を描きながら歌うカヴァラドッシのアリアは魅力的な声と歌唱で今夜一番の出来でした。しかし第3幕のアリア「星は輝き」はいまいち平板であまり印象的ではありませんでした。
タイトルロールを歌ったミカエラ・カロシは初めて聴く人ですが非常に魅力的と言うほどではないにしてもかなりいい線を行っている歌手です。
スカルピアを歌ったパオロ・ガヴァネリは今までリゴレットでしか聴いたことはなかった人ですが、今回の役も結構行ける役です。
他の脇役陣もすべてしっかりした歌唱で、歌手的にはかなり水準の高い公演でした。トスカ役は2年前のプレミアでのアンジェラ・ゲオルギューの方が私の好みですが。
指揮者は初めて名前を聞く人ですが音楽はやや平板ながらいい音を引き出していました。
このプロダクションはしかしおぼろげな2年前の記憶ではもう少し明るい舞台だった印象があるのですが、今回は全幕ともやたら暗い照明でした。改訂版のディレクターの好みでしょうか?
演出では前回は気がつかなかったのですが、第2幕のスカルピアノ部屋にある大きな天使像が剣を突き刺すようなポーズを取っているのはトスカに暗示を与える意味があるのだということ。トスカはじっとその像の剣を見つめた後スカルピアを刺殺するのです。第3幕の空に浮かぶ造形物の意味は相変わらず分からずじまいです。

写真は左からJonas Kaufmann、Paul Wynne Griffiths、Micaela Carosi、Paolo Gavanelliです。
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by dognorah | 2008-06-10 20:32 | オペラ