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このところ

12月も後半になってめっきりコンサートやオペラも減ったので最近は宴会モード突入069.gif

ある日は友人が若い女性達を引き連れて我が家を襲撃。食べ物は持ってきたり台所で作ったりしてくれたので私はワインを出すだけ。おいしい食事と弾む会話でしこたま飲んでしまった。

次いでこちらからワインを飲めそうな友人達を招待してワインと手作りの料理で歓待した。料理を褒められていい気になり、この日もワインを1本以上飲んで酔っぱらいモード。

クリスマスイヴはギリシャ人の友人に招待されてディナー。この日は車で行ったのでワインはシャンパンを含めてグラス3杯ぐらいに抑えた。料理はランゴスティンを使ったスターター、レヴァーと栗を使って複雑な味付けの第1メインと名前を忘れたが鳩より小さい鳥を使った第2メインなど数多く作ってくれて満腹に。日系の証券会社に勤めるイギリス人女性も来ていたがお母さんはギリシャ人なので彼女はハーフということになる。この人はカナダに本部があるある新興宗教らしい団体に取り憑かれていて、かなりの金がそちらに流れていっているらしい。友人に頼まれてさりげなく日本のオーム真理教の恐ろしい話をしてくれと事前に頼まれていたので一通り話し、金を出せ出せという宗教団体はその金でよからぬことをするので気をつけた方がいいという方向に持って行った。同席していたインド人もそうだそうだと相槌を打ってくれたが果たして何らかの効果があったかどうか。終わってからみんなで教会に行く話があったが私は疲れていたのでパスした。翌日聞いたらロイヤルアルバートホール近くの美しいカソリック教会で、豪勢なプロセッションが見ものだったらしい。ちょっと後悔。

クリスマスデーはギリシャ人女性の友人から2時開始のディナーに呼ばれていたが、用意してくれたガチョウがなかなか焼けず開始は4時頃になってしまった。彼女もギリシャ人で夫(別居中)はイギリス人。家に一杯絵が飾ってあるので訊いたら彼女の叔父が画家でよくプレゼントしてくれるという。彼女の少女時代から最近のものまで肖像画もあり、写真じゃなくて絵で自分の記録があるなんて素敵だなぁと感嘆した。娘はオックスフォード大学を出てナショナルギャラリーに勤めているというので絵画展を中心に話が弾んだ。こういう美術館は何年先の美術展まで企画しているのか質問したところ、5年以上先まで企画はあるとのこと。なかなか先の方までは公表してくれないのがもどかしいと言ったら、実は出展者との交渉が一筋縄には行かず、時にはぎりぎりまで決着が付かなかったりするので公表が遅れるのだとのこと。最近ヴィーンでティチアーノ展を見た話をしたら、実はヴィーンから貸して欲しいと依頼されていたティチアーノ数点のうち一つはとても傷みやすい状態だったので最後の最後に断った話をしてくれた。
彼女はピアノと共に声楽も習っており、我々の求めに応じて余興にコジ・ファン・トゥッテからドラベラのアリアを歌ってくれたが芸達者なのには感心する。
私が行くという話を事前に聞いて、ちゃんとクリスマスプレゼントを用意してくれていた。私は何も用意していなかったので恐縮の限り。

その後、前日に一緒だった日系証券会社勤めの女性の叔父さんの家に招待されていたが、お腹がいっぱいだったので飲み物だけということで訪問した。行ってびっくり、こんな豪壮な家を見たのは初めてというくらい立派な家だった。家は3階建てで部屋は恐らく10ぐらいあるのだろうけれど(案内してもらったが数えきれず)各寝室がすべて20畳ぐらいありそうでしかも全部オン・スイート。レセプションルームだって4つぐらいある。キチンだってアイランド付きでだだっ広く食事の用意をするだけでかなりの歩数が稼げそう。家族用の食卓がそのキチン内にあるが悠々と10人以上が座れる大きさだ。3階にはそこで独立して生活できるように小型のキチンも用意されている。
更に庭には結構大きな池もありその周りにバーベキュールームとスヌーカーなどができるゲームルームがある。スヌーカー台はプロが競技で使う本格的なもので、街のスヌーカー屋に置いてあるのは素人用の小型のものだということが初めて分かった。バーベキュールームでは今日のパーティのために豚を1匹丸ごと焼いたらしいが、まだ残っているから食っていけよと言われてもまだお腹はいっぱいでノーサンキュー。この一家もギリシャ人で大きなプラズマTVには衛星受信のギリシャ番組が映っていた。ギリシャ人というのはビジネスで成功している人が多そうな気がする。先日もやはり友人に紹介されてベルグレーヴに住んでいる金持ちのギリシャ人女性とナイツブリッジのイタリア料理店に行った。そこであのイージージェットの創始者である社長に会って彼女は挨拶していたが、その社長もキプロス出身のギリシャ人らしい。
とにかく今年のクリスマスはちょっと普段は話ができそうもない人たちと喋れて有意義だった。西へ北へと車を随分運転したがこのシーズンは道路も空いているので苦にもならなかったし。
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by dognorah | 2007-12-27 10:34 | グルメ

Ivo Stankovのヴァイオリンリサイタル

2007年12月19日、ウイグモアホールにて。

Ivo Stankov: violin
Ivo Varvanov: piano

プログラム
Leoŝ Janáček: Sonata for violin and piano
Karen Khachaturyan: Sonata for violin and piano in G minor, Op.1
Manuel de Falla: Spanish Dance No.1 from the opera “La Vida Breve”
Dimitar Nenov: Sonata for violin and piano (UK premiere)
Maurice Ravel: Tzigane, Rhapsodie de concert
Taïs: Meditation (アンコール)

ヴァイオリニストとピアニストは共にブルガリア人で音楽教育の一部をRAMを受けたよしみか現在はロンドン在住である。ヴァイオリニストは30代前半、ピアニストは30代後半と思われる。
プログラムは結構渋くて聴いたこともない作曲家の名前はあるしファリャとラヴェル以外は初めて聴く曲ばかりなので大いに楽しみにしていた。

ヤナーチェクのソナタは取っつきやすい曲とは言えない。最初のヴァイオリンの音でヤナーチェクらしい魅力を垣間見たがその後は主題を繰り返しながら瞑想的な境地に達する感がある。ヴァイオリンに比べるとピアノパートはあまり魅力的とは言えない。4楽章構成で20分足らずの曲。

カレン・ハチャトリアンは有名なアダム・ハチャトリアンの甥で1920年生まれの87歳。今でもモスクワのチャイコフスキー音楽院で教えているらしい。初めて聴くが特に現代的でもないもののこれもやや取っつきにくい曲。最初はあまり印象的ではなかったがピアノが結構活躍して盛り上がりもあり、進行と共にエキサイトしていくような感じである。第3楽章でそれが最高に盛り上がり劇的に終了する。確信に満ちた演奏で終了後はブラヴォーも。

ファリャはまあ後半の指ならしという感じか。豪快に弾いてこれもブラヴォー。

次のディミタール・ネノフは1953年に52歳で亡くなったポーランドの作曲家。故国の作曲家をUKに紹介したいということでこれが一番弾きたかった曲だろうか、力の籠もった熱演で聴きごたえがあった。曲自体も深みのある佳作で本日一番のイヴェントと感じた。2楽章構成の15分くらいの曲。ピアノ伴奏部もインスピレーションに富んだ奥深いものがある。

ラヴェルのチガーヌはご存じヴァイオリニストがテクニックを見せるための作品だが、ジプシーの憂愁を帯びたメロディが饒舌に演奏され、大いに美しいヴァイオリンの音色を楽しませてくれた。高音ピアニッシモでのかすれなどテクニック的には非常に優れているというわけではないが音楽する心は十分に伝わってきた。終了後は大ブラヴォー。

彼は1787年製GaglianoのヴァイオリンをSadler’s WellsのIndependent Operaから貸与されている由。美しい音がよく響くヴァイオリンだ。
写真は拍手に応えるIvo StankovとIvo Varbanov。
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by dognorah | 2007-12-21 20:30 | コンサート

楽劇「パルシファル」公演

2007年12月18日、ROHにて。

Parsifal
Bühnenweihfestspiel (Festival play) in three acts
Music and libretto: Richard Wagner

Conductor: Bernard Haitink
Original Director: Klaus Michael Grüber
Revival Director: Ellen Hammer
Set designs: Gilles Aillaud and Vera Dobroschke-Lindenberg
Costume designs: Moidele Bickel
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House

Gurnemanz: John Tomlinson
Kundry: Petra Lang
Amfortas: Falk Struckmann
Parsifal: Christopher Ventris
Titurel: Gwynne Howell
Klingsor: Willard W. White
First Knight: Nikola Matišić
Second Knight: Krzysztof Szumanski
First Esquire: Harriet Williams
Second Esquire: Rebecca de Pont Davies
Third Esquire: Ji-Min Park
Fourth Esquire: Haoyin Xue
Voice from above: Pumeza Matshikiza

この演目の実演を見るのは初めてですが、音楽はすごく楽しめました。ハイティンクが指揮するとROHもすばらしい音を出してくれます。前奏曲が始まったとたんヴァーグナーが出現しました。非常にゆっくりしたリズムで美しいメロディが奏でられますが間を十分取ってゆったりと進む音楽を緊張感を失うことなく連綿と綴る指揮には心底感心しました。
過去にDVDを見たことがありますが、楽劇としての内容は全く取るに足らないつまらないもので、それは今回の実演でも同じ。進行ののろい物語と動作に閉口します。それでも舞台装置はよくできていて視覚的には音楽と同様楽しめました。第1幕第1場では多数の円柱が森を表現して様式美を出しています。また舞台幅一杯に設置されたテーブルと背景に置かれた鎧甲の像で構成される聖杯の場は厳粛で美しい。第2幕のクリングゾルの住居はサイケデリックなデザインと色調で面白い。第3幕第1場では歌舞伎の影響を受けた背景作りと石庭を思わせる野原もまあまあ。しかしそういう色調豊かな舞台を挟んだせいか宗教的な厳粛さというのは後退して舞台神聖劇的印象はほとんど感じられませんでした。衣装がまたいけてなくて、グルネマンツなんてGパンに汚れ邦題のぼろマントを引っかけたものだしパルシファルはトレーナー姿。王様だって浮浪者に王冠をかぶせたようなもので貧しい時代だったかもしれないけれどもうちょっと視覚的に不快感を与えないものにできないのか、と言いたくなる。
歌手はすべてよかったと思います。グルネマンツを歌ったトムリンソンは第1幕の長丁場を堂々と歌いきりました。所々声が霞むことがありましたが概ね迫力ある中低音は健在です。クンドリーを歌ったペトラ・ラングは昨年5月の「青髭公の城」以来ですが今回もよく声が出ていました。 パルシファルを歌ったヴェントリスは今まで「ムツェンスク郡のマクベス夫人」と「イェヌーファ(コンサート)」で聴きましたがひょっとして今回が一番よかったかもという出来でした。アンフォルタスを歌ったシュトルックマンはまあこんなものでしょう、特に不満はありません。それはクリングゾルを歌ったホワイトにも言えます。ホワイトは先日のコルンゴルトのオペラではかなり衰えを感じましたが今日はましでした。今日の合唱はあまりがなり立てることなくヴォリュームが全体的に抑え気味だったのはよかった。第1幕最後の聖杯の場での合唱はピアノでのハーモニーが美しく特に印象的でした。第2幕のFlowermaidenによる合唱も非常に美しいものでした。ということで音楽的にはとても満足しました。
写真は左からJohn Tomlinson、Christopher Ventris、Bernard Haitink、Petra Langです。
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by dognorah | 2007-12-19 23:28 | オペラ

Camerata Irelandのコンサート

2007年12月13日、カドガンホールにて。

Barry Douglas: 指揮とピアノ
Chee-Yun: ヴァイオリン
Andres Diaz: チェロ
Camerata Ireland: 管弦楽

プログラム
シベリウス:Rakastava
シューベルト:交響曲第3番
ベートーヴェン:ヴァイオリン、チェロおよびピアノのための協奏曲

カメラータ・アイルランドはイギリスの女王とアイルランドの大統領の両方がパトロンになっている珍しい室内管弦楽団である。聴くのは今回が初めてであるがとても優れたアンサンブルを持つ一流団体であった。バリー・ダグラスの指揮も緻密で柔軟、自然な流れの音楽を作っていく好感の持てるもの。
シベリウスの曲は彼らしい響きの弦楽合奏で(ティンパニーが入っているのがちょっと普通じゃないが)寂しさを湛えたメロディで構成される。
シューベルトはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンが見え隠れするような感じでまだ個性がそれほど強いという印象はないものの抵抗なく聴けるいい音楽である。劇的な面がやや強調されるような演奏であった。弦の響きはここでも秀逸。
ベートーヴェンの三重協奏曲は前の2曲と共に初めて聴く曲であるが、聴きごたえのある佳作である。バリーダグラスは弾き振りだがそれが特に問題となることはなく非常に上手くオケと独奏者を統率していた。Chen-Yunは韓国生まれの美人ヴァイオリニストで美しい音色を響かせていた。チェロのディアスはチリー生まれで、そつなく弾くものの実力のほどはいまいち分からず。
写真は左からヴァイオリン独奏のChee-Yun、チェロのAndres Diazそして指揮とピアノのBarry Douglas。クリックすると拡大します。
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by dognorah | 2007-12-17 02:48 | コンサート

すばらしい室内楽コンサート

2007年12月11日、St John’s Smith Squareにて。
演奏はInternational Mahler Orchestra (IMO)のメンバー達。

プログラム
Benjamin Britten: Phantasy Quartet for Oboe, Violin, Viola and Cello, Op.2
Florian Kovacic: String Quartet No.1 (1999), UK Premiere
Erwin Schulhoff: Five Pieces for String Quartet (1923)
Maurice Ravel: Sonata for Violin and Cello
Gustav Mahler: Piano Quartet in A minor (1876)
Ludwig van Beethoven: String Quintet in C major, Op.29

今まで管弦楽コンサートは2回聴いていて(今年6月10月)いずれもいい音楽を聴かせてくれていたが、今回はトップ奏者達による室内楽コンサート。とにかく感心したのは比較的若い奏者達の研ぎ澄まされた技量。アンサンブルもよく、それぞれの音楽に没頭できた。プログラムが地味なせいか聴衆は2-300人と少なかったが勿体ないという思いが募るようなレヴェルの高いコンサートだった。すべての曲は私にとっても初めて体験する音楽で、室内楽という音楽の宝庫のごく一部にしか過ぎないのだろうけれど、いくらでもいい音楽はあるものだ。

ブリテンの曲は低弦のピチカートで始まりすぐにオーボエの音色が響く親しみやすい曲想のもの。単楽章構成。
UK初演となったKovacicの作品は現代曲ながら割と古典的な音であった。作曲者は私のすぐ前の席で聴いていたが1972年生まれの若い人。音楽はヴィーンで学んだとのことだが国籍は情報なし。
シュルホッフはチェコ生まれのユダヤ人でナチスに捕まって1942年に強制収容所で亡くなったらしい。音楽はとてもモダンで面白いし、結構緻密な楽想だ。
ラヴェルのこの曲は当方が知らなかっただけで割とポピュラーな曲らしい。ちょっとそれまでに演奏された曲とは作曲のレヴェルが違うぞと思わせる名曲と感じた。ヴァイオリンとチェロの緊張感溢れるやりとりは聴きもの。
マーラーの曲はマーラー唯一の室内楽でしかも第1楽章しか残されていない未完のもの。まだ16歳の頃の作品だが何か溌剌とした意気込みが感じられる曲である。
ベートーヴェンの5重奏曲はヴァイオリン2,ヴィオラ2,チェロという構成。チェロを挟んで両側にヴァイオリンとヴィオラが位置して演奏だれた。ベートーヴェンらしい魅力的な楽想に溢れた佳作で感動した。今までこんな名曲を知らなかったなんて。

ラヴェルのヴァイオリンとベートーヴェンの第1ヴァイオリンはTristan Theryというフランス人プリンシパルによって演奏されたがすばらしい技量とリーダーシップを兼ね備えた人で、両曲ともこの人の音楽性が大いに発揮されて名演になったと思われる。
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by dognorah | 2007-12-15 23:02 | コンサート

アンドラス・シフ指揮フィルハーモニア管弦楽団

2007年12月9日、RFHにて。
András Schiff:指揮とピアノ
Philharmonia Orchestra

プログラム
シューベルト:交響曲第8番
シューベルト:ピアノソナタ、D840 Reliquie
シューベルト:交響曲第9番

二つの交響曲の間にピアノソナタを挟む珍しいプログラミングであった。シフとしてはどうしてもピアノを弾きたかったのだろう。シューベルトはピアノ協奏曲を残さなかったのでシューベルトシリーズとして一連のコンサートを企画したらこういう形にならざるを得なかったとも考えられる。ただ、交響曲2曲だけでも十分な長さなのに舞台セッティングのための小休止を加えて20分程度かかるソナタを付け加えたので今日のコンサートは2時間半を超える長さとなった。

未完成交響曲を実演で聴くのはとても久し振りである。ゆっくりしたテンポで非常に叙情的に演奏され、オケもすばらしい演奏で美しい仕上がりだった。しかも力強い推進力が感じられる演奏で荘重さもあり名演だったと思う。そして改めて名曲であると強く感じた。第2楽章が終わってまだ指揮者が腕をおろしていないのにフライイングの拍手があり大多数はそれに従わなかったものの雰囲気は壊れてしまった。

ピアノソナタは2楽章から成るもので、恐らく録音でも実演でも私は初めて聴く曲だと思う。第1楽章のModeratoは単純なメロディの繰り返しが多くやや退屈さを感じる。第2楽章のAndanteは美しい曲想でこちらの方は楽しめた。静かに終わり、ひょっとしてこれも未完成曲なのだろうか?と調べたらやはりそうらしい。Reliquieというのもそういう意味らしい。シフは意図して交響曲とピアノソナタの2曲の未完成曲を持ってきたに違いない。

第9番は8番と打って変わって冒頭のホルンからしてやや速めのテンポで演奏される。それに続くメロディも早めながら結構変動してダイナミックで躍動感がくっきり。全楽章を通じて基本的にこの傾向は変わらず。間を取るべきところは十分間を取り一瞬の静寂と余韻と緊張を感じながら説得力ある演奏は淀みなく続いた。それにも拘わらず今日の演奏は“天国的な長さ”となった。演奏時間が60分を優に超えたからである。恐らくシューベルトの指定した繰り返し指定を忠実に履行したためだろう。途中楽員が何度も譜面を反対方向にめくるのを目にしたし。格調の高い立派な演奏だったし滅多にできない経験だけど第4楽章などさすがに長いなぁと感じた。しかしある部分の繰り返しの冒頭で過去に聞いたことがないような颯爽としたフレーズがあり、はっとさせられもしたのだった。
写真はピアノ独奏後のAndrás Schiff。
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by dognorah | 2007-12-10 23:52 | コンサート

円熟期のティチアーノ展

ちょうど1年振りにヴィーン美術史美術館を訪問し、開催中の“der späte tizian” という特別展を駆け足で見て回りましたが見応えのあるものでした。昨年はBellini, Giorgione, Tizianoの展示でしたがその続きと位置づけたのが今回のものということです。今回は特にX線で各絵画の下塗りを調査した結果が解説として掲げてありました。多くの画家が一旦仕上げた作品が気に食わなくて別の絵をその上に重ねて描く性癖を踏まえてのことです。そのために同じ主題の、または似ている絵画を世界各地から借用して並列展示していますが大変興味深いものでした。中でも、アッと思ったのは昨年の記事で助六さんからコメントいただいた毛皮をまとった婦人像と関連の絵が3枚並べて展示してあったことです。
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左がエルミタージュ美術館、中がヴィーン美術史美術館、右がフィレンツェのピッティ宮所蔵です。パリのリュクサンブールで見損なったのをやっとここで回復というところで、考えてみるとこれらの絵は世界中に要請されてあちこち旅ばかりしていることになりますね。それはともかく3枚並べて見れるというのはなんという贅沢!X線照射による調査結果がまた面白く、真ん中の毛皮をまとった婦人像の下絵に右側の“La Bella”と同じものがあるのです。X線写真も展示されていました。恐らくティチアーノは最初に描いたLa Bellaが気に食わなくて新しいカンヴァスに描き直したのでしょう。こうして改めて3枚の魅力的な肖像を眺めると、私は右のフィレンツェ所蔵のものが一番気に入っていることが分かりました。
その他何点かの「ルクレチアの陵辱」とルーベンスの模写とか、ラファエロの影響を受けたものがラファエロと共に並べてあったり、見ものが多数あります。お勧め。


der späte tizian und die Sinnlichkeit der Malerei
18.10.2007 – 6.1.2008
kunst historisches museum, Maria Theresien-Platz, Wien
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by dognorah | 2007-12-06 01:05 | 美術

すばらしいチェリストに遭遇

2007年12月3日、ウイグモアホールにて。

Alexander Chaushian: cello
Yevgeny Sudbin: piano

プログラム
Mieczyslaw Weinberg (1919-1996): Sonata No.1, Op.21 (1945)
Ludwig van Beethoven (1770-1827): Sonata in A major, Op.69 (1817)
Robert Schumann (1810-1856): Adagio and Allegro, Op.70 (1849)
Dmitri Shostakovich (1906-1975): Sonata in D minor, Op.40 (1934)

チャウシアンは1977年生まれのアルメニア人で、ロンドンとベルリンの音楽大学を卒業後コンサート活動に。
スドゥビンは1980年レニングラード生まれで、チャウシアンとは逆にまずベルリンで学び後にロンドンのRAMを卒業して現在はロンドン在住。

二人ともすばらしい音楽家で、最初のワインベルグの作品からして二人の作る音楽世界の魅力の虜になりました。チェロは特に朗々と鳴るという印象ではなく松ヤニを連想させる中音のくすんだ響きが特に美しく、スタイルは豪胆で緻密という感じです。ピアノがまたすばらしく左手のデモーニッシュな響きに乗った右手の高貴なメロディなど溜息の出そうな美しさです。
ワインベルグという作曲家は今回初めて聴いたのではないかと思うのですが、ポーランド生まれながら社会主義に憧れてソ連に移住してモスクワで亡くなった人です。途中共産党政府から例によって弾圧を受けて作品の書き直しを要請されても屈せず、投獄までされましたがショスタコーヴィッチの取りなしで出獄したエピソードもあります。そのショスタコーヴィッチとの交友関係でロストロポーヴィッチと知り合い、彼のためにいくつかのチェロ作品を書いたようです。スターリンの死後は積極的に作曲し、オペラ7つ、交響曲を25もものにしています。その割にはあまり演奏されないような。

ベートーヴェンの曲は非常にポピュラーでCDで何回も聴いているものですが、今日の演奏はとても新鮮で啓示に富み、二人の発するエネルギーに陶然となりました。熱演も大熱演、息を飲むチェロとピアノのやりとりに興奮しました。絶対に実演でないと味わえない音楽的体験です。終了後はブラヴォーの嵐。
後半のシューマンとショスタコーヴィッチもそれぞれ立派な演奏で、特にショスタコーヴィッチは二人ともかなり乗っていました。ショスタコーヴィッチの曲もなかなか面白いのですが、名演であっても受ける感動はベートーヴェンとはやはり質が違うようです。
ロビーでは今日のプログラムを含むCDが販売されていましたが、チェリストのものはそれ1枚のみながらピアニストは更に独奏ものを2枚も既に出していました。二人とも別の機会にもう一度聴いてみたい演奏家です。
写真は終演後に挨拶する二人です。
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by dognorah | 2007-12-05 06:23 | コンサート

ベッリーニのオペラ「ノルマ」(コンサート形式)

2007年12月1日、ヴィーン国立歌劇場にて。
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今年最後のヴィーン詣で。12月に入り、先週はなかったクリスマス用の電飾がヴィーンの街にも出現。写真はシュテファン寺院そばのGrabenのもの。ケルントナー通りは意外にあっさりしてあまり見栄えがせず。さて、今夜はコンサート形式でノルマの公演。

Norma: Melodramma in zwei Akten von Felice Romani nach der Tragödie von Alexandre Soumet
Musik von Vincenzo Bellini

Dirigent: Friedrich Haider
Orchester der Wiener Staatsoper
Chor der Wiener Staatsoper

Norma: Edita Grubelova
Adalgisa: Elina Garanča
Pollione: José Cura
Oberhaupt der Druiden: Dan Paul Dumitrescu
Clotilde: Caroline Wenborne
Flavio: Marian Talaba

なぜかグルベローヴァのノルマは毎回コンサート形式らしい。隣の席のオーストリア人に訊いたがはっきりした理由は分からず。恐らくノルマ役の歌唱量からして高齢のため演技しながら歌うのがつらいのだろう。それでも客席はほぼ満席。今日は演技を見なくてもいいのでボックス席の最後部にも客が座っている。
そのグルベローヴァ、第一幕最初の大アリアは絶好調とは言えず、声が乾き気味。最高音域もちょっとつらそう。しかしそれでも足踏みを含む拍手と大歓声で、それに気をよくしたのか第一幕第二場以降は調子をどんどん上げていった。でも9月に聴いた「清教徒」の時に比べると声の潤いがやや落ちる印象だ。この人の歌は例えば音程が下降しながらしかもディミヌエンドする部分など美声を保ちながら完璧にコントロールする様などが感嘆すべき点と感じた。そしてフォルテの大声量。上体を反らす独特のポーズで思いっきり声を張り上げている様は見ていても気持ちがいい。サーモンピンクを基調にしたドレスはえらく凝ったもの。

ガランチャは相変わらず好調。グルベローヴァとの二重唱は本当にすばらしい。二人で声の出し合いをしている感じだ。今日は髪をアップにして黒のシンプルなドレスにプラティナとダイヤをあしらったようなお揃いのネックレスとベルトをアクセントにしている。

クーラは最初ちょっと声が固い感じだったが間もなく例のやや暗めの美声が満開。そのまま最後まで好調を持続。とてもよかった。

ハイダーという指揮者の実力はよく分からないが、オケの序曲での音はひどかった。そのままあまり改善せず第一幕第一場を完了。第二場でちょっとましになり第二幕でようやくいつもの音という感じ。今日もヴィーンフィルを構成するメンバーはちらほらなのでどこかでコンサートをしているのだろう。

カーテンコールがまたすごかった。聴衆のほぼ全員がstanding ovation。オケが退場しても延々と続くカーテンコール。最初は歌手全員が出てきて挨拶していたが、途中からグルベローヴァ、ガランチャ、クーラの3人だけになり、次いでグルベローヴァとガランチャだけ、最後はグルベローヴァ一人で何度も出てきて挨拶していた。それでも少数の聴衆が残って拍手し、それに応える彼女。私は途中で帰ったが。
写真は左からElina Garanča、Edita Grubelova、José Cura。
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by dognorah | 2007-12-04 01:17 | オペラ

ガッティ指揮コンセルトヘボー

2007年11月30日、RFHにて。

ヴァイオリン:Vadim Repin
指揮:DanieleGatti
管弦楽:Royal Concertgebouw Orchestra

プログラム
シューマン: マンフレッド序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番

最初の曲は名前を知っていても普段はCDでも滅多に聴かないものですが、シューマンらしい地味目のロマンティシズムと緊張感の持続が感じられる曲で、小曲にも拘わらず力の籠もった演奏でした。
レーピンはいつものように無愛想で小手先で扱うように飄々と弾いていましたが、ヴァイオリンは瑞々しく豊麗な音で美しいオーケストラの音と共にうっとりさせるような非常にレヴェルの高い名演でした。オケは特にホルン首席奏者の完璧にコントロールされた音色に感嘆しました。これほど美しいホルンはちょっと聴いたことがありません。
チャイコフスキーでは全4楽章を切れ目なく演奏。第3楽章まではかなりゆっくりしたテンポでロマンティックさを強調していました。金管が美しいせいかトゥッティの時でも豊かな音量にも拘わらず耳にはとてもソフトな響きです。第4楽章では一転速いテンポでダイナミックになりましたがちょっとスケール感が失われたのが残念。でも全体としては満足すべき演奏でしょう。カーテンコール時にただ一人ホルン主席がガッティから祝福を受けていましたが当然のことで、この人にはブラヴォーを献呈しました。
今日のガッティは全プログラムを暗譜で指揮しましたが協奏曲まで暗譜で指揮した人は初めて見ました。この前見たのは昨年9月にロイヤルフィルを演奏したマーラーの8番でしたがそのときよりちょっとスマートになったような。
写真は拍手に応えるレーピンとガッティ。
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by dognorah | 2007-12-03 22:23 | コンサート