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ドニゼッティのオペラ「愛の妙薬」

2007年11月26日、ROHにて。

L' elisir d' amore

Melodramma giocoso in two acts
Composer: Gaetano Donizetti
Libretto: Felice Romani after Eugène Scribe's text for Daniel-François-Esprit Auber's Le Philtre

Conductor: Mikko Franck
Director and Costume designs: Laurent Pelly
Set designs: Chantal Thomas
Lighting: Joel Adam
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House

Giannetta: Kishani Jayasinghe
Adina: Aleksandra Kurzak
Nemorino: Stefano Secco
Belcore: Ludovic Tézier
Doctor Dulcamara: Paolo Gavanelli

パリオペラ座との共同制作で、昨年パリで初演されたもの。時代設定はほぼ現代のイタリア農村で、自転車やバイク、トラック、トラクターなどが出てきますが、なかなかよくできた演出でコメディとして十分楽しめました。カーテンが上がる前に犬の吠え声がしたので予想はしていましたが左から右へ、右から左へと走り抜く犬はとても効果的。もう少しゆっくり走ってくれるとより楽しかったのですが。

指揮のミッコ・フランクは1979年生まれで、将来を嘱望されているフィンランドの若手らしい。序曲が始まったらちょっと顔をしかめたくなる音でしたがすぐに立ち直りました。無理のない運びで笑いどころも効果的に決めていましたし、まずまずの出来でしょう。

歌手ですが、今回で4度目の体験となるステファノ・セッコは持ち前の美しい高音がよく出ていましたが、このところ気になっていた中低音の不快な響きも時々あって、この人はまあこんなものかなという感じです。決して最高のテノールじゃないと思います。
アディーナを歌ったアレクサンドラ・クジャァクは2年前に「ポント王ミトリダーテ」ですばらしいアスパシア役を演じていた人ですが、今日はそれほどレヴェルの高さは感じず、まあまあの及第点というところ。セッコとはいいコンビでした。
ベルコレ役のルドヴィク・テジエはフランス出身の若いバリトンですが、開演前に調子が悪いけれども歌うとのアナウンスがあり、事実あまり迫力はない歌唱でした。そして第2幕の開演が大幅に遅れたのは彼が歌えなくなり、代役の準備で時間がかかったせいです。上演は例の口パク演技で続けられました。声の代役氏は名前をキャッチできませんでしたが、舞台袖で譜面台を前にして歌っていました。
デュルカマラ役のパオロ・ガヴァネリはリゴレット以外で初めて聴きましたがなかなか堂に入ってよかったです。
写真は左からAleksandra Kurzak、Mikko Franck、Stefano Seccoです。セッコのシャツが汚れているのは彼が愛の妙薬をドジってこぼしたせいです。
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by dognorah | 2007-11-28 01:00 | オペラ

ロッシーニ「セビリアの理髪師」公演

2007年11月24日、ヴィーン国立歌劇場にて。
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II barbiere di Siviglia
Commedia in zwei Akten von Cesare Sterbini nach dem gleichnamigen Lustspiel von Pierre-Augustin Caron de Beaumarchais

Musik von Gioachino Rossini

Dirigent: Paolo Carignani
Nach einer Inszenierung von Günther Rennert
Regie: Richard Bletschacher

Graf Almaviva: Javier Camarena
Bartolo: Alfred Šramek
Rosina: Elina Garanča
Figaro: Adrian Eröd
Basilio: Janusz Monarcha
Fiorello: Hans Peter Kammerer
Ambrogio: Michael Kuchar
Marcellina (Berta): Åsa Elmgren
Ein Offizier: Erich Wessner

Orchester der Wiener Staatsoper
Chor der Wiener Staatsoper

なぜかこの演目は今シ-ズン今日だけのたった1回の公演です。
舞台は写真のように三階建てのバルトロの家が最初から最後まであり、各階の壁やシャッターが開いたり閉じたりして家の内外を表現するもので、ずっと見ていても味があってとてもよくできていると思いました。人物の出入りもオケピット出入り口から階段で舞台に上がれるようにもしてあり変化をつけるとともに機能的でもあります。台詞のない下男役が結構舞台をうろちょろしてそれなりに意味のある動きをしているのも好ましい。二年前にコヴェントガーデンで見ているので筋はかなりしっかり頭に残っています。その記憶からすると今回はあちこちカットが入っているようです。例えばロジーナがリンドロに裏切られたと思って怒るところで家具を蹴飛ばしたりして荒れ狂うのですが、それがなくて一瞬怒るだけとか。

上記配役のうち、アルマヴィーヴァ伯爵は当初Antonio Siragusaが歌う予定だったのがキャンセルになり、ヴィーン初出演のメキシコのテノール、カメレナになりました。シラグーサだったら最後のアリアCessa…を歌う場面はカットされなかったはずなのに残念。
でも、このメキシコ人テノールはなかなかいい声をしていて、1幕最初のアリアは美しい高音が楽々と出ていました。歌はいいのですが、この人の顔を最初に見たとき「ひょっとして中国人?」と思ったくらい顔が扁平な東洋系で、ちょっとアルマヴィーヴァというイメージではありません。恐らく東洋人の血が入った混血なのでしょう。メキシコでの初舞台が「連隊の娘」のトニオなのでハイCがちゃんと出せるということですね。既に、MET、パリ、チューリッヒ、ドレスデン、マドリード、などの有名舞台で歌っているのでかなり実力がありそうです。でも、Cessaは無理だったみたいですね。

お目当てのガランチャは、最初の声があまり好調とは思えず心配しましたがだんだん調子を上げて、例のUna voce poco faは絶好調!ニュアンス豊かで大きな声量を生かしたダイナミックレンジの広い歌唱が得も言われぬすばらしさで参りました。最初は2階のバルコニーで歌い始め、螺旋階段を下りて後半は舞台上で、そして歌い終わるとまだオケが鳴っている間に階段を駆け上がってバルコニーから大歓声に対して挨拶します。優雅!

フィガロはヴィーンでは八面六臂のエレートで歌はいつものすばらしさながら、イメージ的にはちょっと体が細すぎてフィガロの存在感が感じられない印象です。バルトロはとても演技が上手い人で、ちょっとした仕草で観客の笑いを取ります。声があまりよくないのが残念。ドン・バジリオは低音がきれいに出ていて特に文句なし。ベルタを歌ったエルムグレンもなかなかいい歌手と思いました。

指揮のカリニャーニは序曲の前半はあまりよくなくオケの音も普通という感じでしたが後半から弦もまとまりが出てきてロッシーニらしい雰囲気になりました。幕が上がってからはもう手慣れたものという感じで歌手も歌いやすそう。ちなみにオケはいつもの主力部隊がいなくて留守部隊と思われます。ヴィーンフィルがどこかへ公演旅行をしている?
上の写真は終演直後の舞台、下の写真は左からPaolo Carignani、Elina Garanča、Javier Camarenaです。
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by dognorah | 2007-11-26 21:46 | オペラ

フィンランドのソプラノ、ヨハンナ・ルサネンのリサイタル

2007年11月23日、ウイグモアホールにて。

Johanna Rusanen: soprano
Ilmari Räikkönen: piano

プログラム
Toivo Kuula: Four songs
Oskar Merikanto: Five songs
Jean Sibelius: Three songs
Aulis Sallinen: Three ‘Dream Songs’ from the opera ‘The Horseman’
Richard Wagner: Wesendonck Lieder
Sergei Rachmaninov: Four songs

全く初めて聴く人。30代半ばと思われる。
最後の2作品を除いて他はすべてフィンランドの作曲家のもの。今ロンドンではあちこちでフィンランドの音楽を特集しているらしい。本日のテーマもSibelius and Beyondというもの。
そのフィンランドの作品では中低音域で声に何か布が被さっているというか声のスペクトラムが拡がっているような印象で、あまり好きじゃない声という印象だった。それがヴァーグナーあたりでややましになり(歌唱の出来という観点では高音のフレーズがちょっと苦しそうだったし、表現的にあまり感心しなかったが)、最後のラフマニノフでは完全に気になる点が払拭され、すばらしい歌唱になったのである。恐らくその状態が本来のものでしょう。ラフマニノフを得意としているのかもしれないけれど(確信に満ちた歌唱だった)、その声ならもっとずっと聴いていたいと思わせるものだった。やや太めの声で、スピント乃至ドラマティコというところか。ちなみにこのラフマニノフはいくつかの歌曲集から4つをピックアップしたものである。
写真は拍手に応えるJohanna Rusanen。前半はブルーのドレスに白いガウンだったけれど後半はこのように金のドレスに赤いガウン。
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by dognorah | 2007-11-26 07:14 | コンサート

ロイヤルバレー「Jewels」(ドレスリハーサル)

2007年11月22日、ロイヤルオペラハウスにて。

Jewels: Ballet in three parts
Choreography: George Balanchine
Set designs: Jean-Marc Puissant
Costume designs: Barbara Karinska
Lighting: Jennifer Tipton
Conductor: Valeriy Ovsyanikov
The Orchestra of the Royal Opera House

1966年にニューヨークを訪問していたバランシンがマンハッタンの宝石店のショーウインドウを見たときにひらめいて創作したバレー。特に筋はなく、エメラルド、ルビー、ダイヤモンドと名付けられた3つのパートから成り、それぞれ異なった音楽を用いた。翌1967年にNY City Balletで初演された。1970年末になってロイヤルバレーで一部上演されたりしていたが、3部が完全な形で公演されたのは2000年と比較的新しい。
ドレスリハーサルとはいえ豪華メンバーによる公演ですばらしいダンスを楽しめた。

(1)Emeralds
Music: Gabriel Fauré
Tamara Rojo
Leanne Benjamin
Edward Watson
Ivan Putrov
Deirdre Chapman
Laura Morera
Steven McRae
Artists of The Royal Ballet

コスチュームは当然エメラルド色に擬似エメラルドをあしらったもの。心の中に響くような美しいフォーレの音楽に乗ってソロ、デュエット、群舞が踊られるが音楽の性格上激しい動きはない。ソロではロホの可愛くまとまったダンスに比べてベンジャミンはよりスケールが大きく好ましい。
写真は前列左からマクレー、モレラ、ワトソン、ロホ、プトロフ、ベンジャミンかな。
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(2)Rubies
Music: Igor Stravinsky
Sarah Lamb
Carlos Acosta
Zenaida Yanowsky
Artists of The Royal Ballet

音楽はストラヴィンスキーにしては割と古典的ながらリズミカルなので振り付けもきびきびした動きが主であるが一部体操を思わせる動きがあまり好みじゃない。その中でアコスタとラムのデュエットは流れるようなスムーズな動きでさすがと思わせるダンス。見応えがあった。写真は左からヤノフスキー、アコスタ、ラム。
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(3)Diamonds
Music: Pyotr Il’yich Tchaikovsky
Alina Cojocaru
Rupert Pennefather
Deirdre Chapman
Lauren Cuthbertson
Isabel McMeekan
Laura Morera
Valeri Hristov
Kenta Kura
Yohei Sasaki
Thomas Whitehead
Artists of The Royal Ballet

視覚的には白とクリーム色のコスチュームで前の二つに比べるとやや地味という印象であるが、やはりバレーはチャイコフスキーの音楽が一番しっくり来ると思わせる振り付け。スムーズさとメリハリが感じられる。コジョカルとペニファーザーの組み合わせは珍しいが、彼はサポートで手一杯という印象でコジョカルの相手にはちょっと役不足の感は免れない。でも、ソロの部分ではなかなか見せるダンスで、今後の成長が期待される。
写真はコジョカルとペニファーザー。
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by dognorah | 2007-11-23 22:03 | バレー

コルンゴルトのオペラ「ヘリアーネの奇跡」(コンサート形式)

2007年11月21日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにて。

Das Wunder der Heliane, Opera in three acts (UK première)
Libletto: Hans Müller after Hans Kaltneker
Music: Erich Wolfgang Korngold

Patricia Racette: Heliane (soprano)
Michael Hendrick: Stranger (tenor)
Andreas Schmidt: Ruler (baritone)
Ursula Hesse von den Steinen: Messenger (mezzo-soprano)
Willard White: Porter (bass-baritone)
Robert Tear: Blind Judge (tenor)
Andrew Kennedy: Young Man (tenor)
EUROPACHORAKADEMIE
London Philharmonic Orchestra
Vladimir Jurowski: conductor

コンサート形式とはいえ初めてコルンゴルトのオペラを経験しました。この作品は1927年にハンブルクで初演されたものですがやっと80年後にイギリスで初演されたのです。この作品をオペラにする契機となったのは彼が好きな女性と結婚しようとしたときに父親に猛反対されたことのようです。愛の強さが逆境を克服できると強調したかったのでしょう。

オケの編成が大きいため最前列の座席を撤去して舞台を広げても歌手の立つ場所が確保できず、歌手はすべて合唱隊と並んでコーラス席に横並びとなり、観客からは一番遠い場所で歌うことになってしまいました。若い常任指揮者ユーロフスキーの指揮はダイナミックで劇的な面を強調するものだったので大音響の舞台上のオケが邪魔してしばしば声が聞き取りにくくなったのがやや残念です。しかし歌も管弦楽も饒舌な音楽ですね。音の饗宴を楽しみました。今夜のロンドンフィルは好調、持てる力を存分に発揮した感じですが、やはり指揮者による力が大きいと感じました。

歌手は概ねよい出来でした。特に主役のヘリアーネを歌ったパトリシア・ラセットがすばらしく、第2幕第3幕の長丁場でも全く衰えを知らぬ熱唱で魅了してくれました。美声を微妙にコントロールして全く破綻がなく劇的ニュアンスを表現する様には感嘆。安心して聴ける名ソプラノだと思います。私はこれが初の経験ですが、主に北米で活躍しているアメリカ人でレパートリーもプッチーニ、ヴェルディからヤナーチェクまで幅広くカヴァーしているようです。
Strangerを歌ったマイケル・ヘンドリックは柔らかい声で好演していましたがやや声が通らず迫力不足の面もありました。
独裁者を歌ったアンドレアス・シュミットは大音量のオケをものともせず声を飛ばしていました。いいバリトンと思います。彼はオケの向こうに声を届かせようとするかのように左手の甲をあごの辺に持ってきて発声していましたが功を奏していたのじゃないかと思います。
Messenger役のシュタイネンも大きな美声で目立っていました。
Porter役のウイラード・ホワイトは聴くのが久し振りでしたが、かなり衰えたなぁという印象です。声に張りも潤いもなく、もう過去の人という感じです。
合唱はドイツから来ましたがヴォリュームもたっぷりながらやや一本調子という印象でした。そういう音楽なんだと言ってしまえばそうですが。
写真は終演後のもので左から、Andreas Schmidt、Patricia Racette、Michael Hendrickです。
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あらすじ
独裁者が人々を抑圧しているある国を旅行していたStrangerが人々に笑もなく喜びもない状態に接して、喜びを持とうと演説したら逮捕されて死刑を宣告される。独裁者の妻ヘリアーネが翌日に死刑執行を控えている囚人を慰めるために牢にやってくる。そこでお互いに話すうちに愛が芽生え、求められるままにヘリアーネは裸になるがそれ以上の行為に躊躇して隣のチャペルに籠もる。そこへ独裁者がやってきて、自分は妻の愛を未だに得られない、お前は愛を人々に説いたそうだがどうしたら妻の愛を得られるか教えて欲しい、うまくいったら死刑を撤回してお前と彼女を共有して暮らしてもいい、と相談を持ちかける。と、そのとき未だに裸のヘリアーネがチャペルから戻ってくる。独裁者は妻を不貞罪で逮捕させ、Strangerの死刑を執行するように命令する。ヘリアーネは不倫を否定するが強い疑心を持つ独裁者は二人の言い分を聞いて裁判官に判断するよう要請するなかStrangerは何も言わず自殺してしまう。その後神の出現でStrangerは一時的に生き返り、ヘリアーネと共に愛を賛美しながら昇天する。
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by dognorah | 2007-11-23 02:44 | オペラ

Music of Today - Nicholas Mawの音楽

2007年11月15日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにて。

出演
Edward Gardner: conductor
Hue Watkins: piano
Gillian Keith: soprano
Ensemble of Philharmonia Orchestra(10人)

プログラム
Nicholas Maw: Personae IV & V for piano solo (1985)
Nicholas Maw: La Vita Nuova for soprano and ensemble (1979)

c0057725_161488.jpgイギリスの現代作曲家ニコラス・モー(1935年生まれ)は作風が分かりやすい音楽と言われていてアメリカでの人気が高いようだ。私は聴いていないが「ソフィーの選択」と言うオペラが近年ROHを始め欧米で上演されている。会場には作曲家自身もいたが舞台には上がらず、作品に関する論評は主宰のJulian Andersonと指揮者Edward Gardnerの対談で行われた。ピアノ曲はMawの一連の作品の中でも特殊な作品とのこと。La Vita Nuovaは管弦楽的にはシンプルな構成だが奥の深い作品とENOの音楽監督でもあるガードナーが解説していた。実物は写真よりずっと好々爺的で親しみを憶える。

Personae IVは割とおとなしい音とメロディで始まるものの途中から高音部を多用した現代的な音が飛び交う。最後、コンスタントに奏でられる低音部をバックにチャイムの音のような高音部がディミヌエンドしていく様は美しい。Personae Vはまるでストラヴィンスキーの「春の祭典」のようにめまぐるしく音やメロディが変化する作品でそれがほぼ全体を支配している。打鍵も指だけではなく時に肘を使ったりして激しい音を出す。これも最後は高音が消え行くエンディングが採用されていて余韻が残る。どちらも5-6分の長さ。面白い曲と思った。

La Vita NuovaはBBCの委嘱で作曲され1979年にPromsで初演されたもの。ルネッサンス時代の次の5人の詩人の作品にそれぞれ曲をつけたもので、これは名曲と思った。
I Sonnetto (Guido Cavalcanti)
II Madrigale (Matteo Boiardo)
III Tacciono I boschi (Torquato Tasso)
IV Madrigale (Michelangelo Buonarroti)
V Il Sogno (Gaspara Stampa)
実に美しく高貴な香りが漂うようで聴き惚れた。最初の曲などホルンに乗って歌われるがわくわくする歌だ。歌手はカナダのソプラノで2000年のKathleen Ferrier Awardで優勝した人。音の高低と強弱の組み合わせによるニュアンスの表現が繊細でとても上手い。
ちなみに5人の作詞家のうち一人はあの有名なミケランジェロ。詩も残していたとは。

写真は左端がソプラノのGillian Keith、右側が指揮者のEdward Gardner。ガードナーは想像以上に若いが自信たっぷりのリーダーシップを感じる。
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by dognorah | 2007-11-20 01:07 | コンサート

ブラジル人ピアニストのリサイタル

2007年11月14日、ウイグモアホールにて。

Eduardo Monteiro: piano

プログラム
Villa-Lobos: Impressões Seresteiras
Villa-Lobos: Hommage à Chopin; Nocturne, Ballade
Beethoven: Sonata No.23, Op.57
Mignone: Sonata No.1
Lorenzo Fernandez: Three Etudes in the Form of a Sonatina, Op.62
Miguéz: Nocturno, Op.10
Liszt: Après une lecture du Dante – Fantasia quasi Sonata

アンコール
Wagner/Liszt: トリスタンとイゾルデより「愛の死」
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ブラジル人のピアニストとは珍しい。彼が最近リリースしたブラジルピアノ音楽のCDからブラジル人作曲家の作品が5曲演奏され、前半と後半の締めくくりをベートーヴェンとリストを持ってくるという折衷型プログラミング。作曲家の名前もVilla-Lobos以外は初めて聞く人たちであるが西洋音楽の範疇では非常にまっとうな曲ばかりですべて楽しめた。この人は恐らくブラジルでは有名な人なのだろう。年齢は30代後半か(写真参照)。輝かしい音色を持っている。ペダルを随分多用する人だという印象を受けた。

Villa-Lobosの最初の曲は「セレナーデの印象」とでも訳すのか一服の清涼剤という感じの魅力的なもので、シャンペンで客をもてなす感じである。次のショパンの曲を敷衍したものもそこそこ楽しめる。
Mignoneのソナタは厳かな第1楽章からスケールの大きい曲を予感させたがだんだん軽めに展開していくもので最後は軽快に終わる。
Fernandesの曲はピアノが多彩に鳴らされ、捨てがたい魅力を持つ。
Miguézのノクターンは今回のブラジル音楽の中ではただ一つ19世紀終わり頃の作品で(他はすべて20世紀前半の作曲)ショパン的ロマンティシズムを彷彿とさせるもの。

ベートーヴェンのソナタは間の取り方やテンポ設定など有名どころの演奏になじんだ耳にはかなりユニークな解釈で、たまにこういうのを聞くと新鮮で面白い。コーダ部分は颯爽とした演奏で後味もよい。
リストは聴きごたえのある曲で、演奏もかなりのテクニックを感じさせる力演だった。最後に持ってきただけに自信の演奏というところでしょう。拍手も大きかったのでアンコールに突入。最初は何かよく分からなかったけれどすぐに聞き慣れたメロディが出てきてこれだと分かった。最後の余韻はかなり引っ張ったけれど聴衆も十分長く息を潜めて敬意を表した。たまにはこういうのもいい。でもやはりこれは管弦楽だよな。リストもいろいろ編曲しているけど、実際に聴くのはこれが初めてのような気がする。
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by dognorah | 2007-11-19 21:09 | コンサート

サラステ指揮フィルハーモニアのマーラー6番

2007年11月8日、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールにて。

Janine Jansen: violin
Jukka-Pekka Saraste: conductor
Philharmonia Orchestra

プログラム
Mozart: Violin Concerto No.5
Mahler: Symphony No.6

先日のセーゲルスタムに続いてのフィンランド人指揮者の登場です。サラステはいつものように赤系統のカマーベルト着用でした。
モーツァルトのポピュラーなヴァイオリン協奏曲は美人ヴァイオリニストの独奏ですが、演奏は可もなし不可もなしの極めて普通という印象でした。ヤンセンのヴァイオリンは音が小さく、豊麗という印象は全くありません。
写真は拍手に応えるヤンセン。
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マーラーではサラステはモーツァルトでの適当に独奏者に合わせるだけの指揮と違ってえらく力の入った全力投球という印象で始まりましたがちょっと肩肘が張りすぎて第1楽章は熱演は感じられてもやや音楽の流れがスムーズじゃなかったです。でも第2楽章の後半ぐらいから乗ってきて第3,4楽章は絶好調。音のバランスもよく格調の高い演奏でした。特に第3楽章の美しさは特筆ものです。フィルハーモニアは今日もいい音を出していました。
この第6番の交響曲は一昨年のPromsでヤンソンス指揮ロイヤルコンセルトヘボーの演奏を聴いて以来です。全体としての出来は緻密で躍動感溢れるヤンソンスの演奏に軍配ですが、サラステの演奏にも捨てがたい魅力はあり、大いに楽しめました。
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by dognorah | 2007-11-12 06:24 | コンサート

ロンドン室内管のショスタコーヴィチ第14番

2007年11月7日、St John’s Smith Squareにて。

出演
Orla Boylan: soprano
Stephen Richardson: bass
Christopher Warren-Green: conductor
London Chamber Orchestra (LCO)

プログラム
チャイコフスキー:弦楽のためのセレナーデ、Op.48
ショスタコーヴィチ:交響曲第14番、Op.135

チャイコフスキーのセレナーデは非常に美しい演奏で、このオケの弦はかなりの実力があることが分かります。
2曲目がこのオケにしては珍しくショスタコーヴィチでした。私は彼の交響曲は随分聴いたつもりでしたが、この14番はまだでした。最初から最後まで独唱者のどちらかあるいは両方が歌うという歌中心の交響曲ですね。傑作と思いました。もっと早くから聴いておくべき曲でした。二人の独唱者もオケもとてもすばらしい演奏で、聴衆が5-600人しかいないのはもったいないことです。ただ、全体にとても暗い雰囲気なので嫌う人も多かったようですが。
ソプラノのオーラ・ボイヤンはアイルランド人で結構国際的に活躍している人です。最初ちょっとオケにかき消されるような声で声量がないのかなと思っていたらだんだん調子を上げて立派な声になりました。
バスのスティーヴン・リチャードソンはイギリス人です。主にオペラ・ノースなどで活躍していますが、ROHでも「テンペスト」に出ていました。立派な低音です。
二人のロシア語のディクションがどうなのかはさっぱり分かりませんが、手元の歌詞を見てもどこを歌っているのか全然分からなかった(^^;
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by dognorah | 2007-11-08 10:01 | コンサート

セーゲルスタム指揮フィルハーモニア管

2007年11月4日、ロイヤルフェスティヴァルホールにて。

Leif Segerstam: conductor
Julian Rachlin: violin
Philharmonia Orchestra

プログラム
シベリウス:カレリア組曲
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲、Op.47
チャイコフスキー:交響曲第4番、Op.36

今年1月にヴィーンで聴いたセーゲルスタム指揮する「トリスタンとイゾルデ」の演奏があまりにもすばらしかったので彼が振ると聞いただけで切符を購入しました。そして期待通りの心に響く演奏だったと思います。今日のコンサートマスター岩淵さんが登場後、彼が舞台袖から登場しますが巨体故にまるでよちよち歩き。顔全体という印象の真っ白のひげもあってシロクマを思い浮かべてしまいました(下の写真)。
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最初の曲「カレリア組曲」が始まってすぐに生きている音楽が聞こえてきました。さすがに母国の音楽、これが本当のシベリウスなんだ。思わず膝で拍子を取ってしまうぐらいのめり込めます。フィルハーモニアもこの前のシーズン幕開けよりも遙かにすばらしい音で、やはり指揮者というのは凄い。途中弦が主にメロディを奏でる曲で、指揮者は何を思ったか演奏はオケに任せて客の方を向き、まるで「どうです?いい音楽でしょう?」と言いたげに両手を広げてポーズ。あっけにとられた聴衆はくすくすと笑っていましたがユニークで愛すべき指揮者です。

次のシベリウスのヴァイオリン協奏曲は1974年リトアニア生まれのジュリアン・ラクリンの独奏ですが、通常の独奏者と違って彼は指揮者とアイコンタクトを取りやすい位置まで引っ込んで演奏します。しょっちゅう指揮者の顔を伺いながら演奏しますが、木管や金管奏者とも必要に応じてアイコンタクトし、またコンサートマスターとも間近に顔を持っていてお互い競争するように弾いたりと見ていてとても面白い。すごく繊細な音でしかも熱っぽい演奏、名演だったと思います。第2楽章などセーゲルスタムの指揮もデモーニッシュとも思える音楽作りでとても新鮮。ところでその第2楽章で気付きましたが、なんか知っているこの曲とちょっと違うという印象を受けました。ひょっとしてオリジナルの1903年版?それは聴いたことがないからよく分かりません。プログラムには何か載っているのかもしれませんが£5という法外な値段だったので買いませんでした。ロンドン交響楽団は無料なのに。
写真は、赤いハンカチを胸にしているのがJulian Rachlin、その後ろがLeif Segerstam。
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【追記】 フィルハーモニア管に問い合わせていた回答が来て、このヴァイオリン協奏曲は全くの通常版だったそうです。単に演奏がユニークなだけだったのでしょう。

チャイコフスキーは全体に柔らかい音作りでしかも音楽の流れがとてもスムーズ(これはシベリウスでも感じた)、金管が吼えても全く刺激的ではなく、こういうところがセーゲルスタムの特徴かなと思います。威圧的ではなく自然で美しさを感じさせる演奏でした。本来それほど好きな曲ではなかったのですがこういう演奏なら大歓迎です。
ところで新調成ったこのホール、舞台横の指揮者を真横から見る位置ではオケがジャーンと音を出すとホール後方からちょっと刺激的な反響(残響なんていうマイルドなものではない)が聞こえてきて、やっぱり音響的には駄目なホールだという印象を受けました。
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by dognorah | 2007-11-06 23:06 | コンサート