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ダリと映画 (Dalí & Film)

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Sarvador Dalí :Metamorphorsis of Narcissus (1937)

題名のような展示をTate Modernでやっているので見てきました。結構人気があって平日の午後だというのに混んでいました。
内容は彼の絵画の回顧展(油彩約60枚)と制作に関わった映画(10本)の上映です。彼は子供の頃から映画に興味があって生涯にわたって映画と関わっていたことを初めて知りました。そしてヒッチコックやウォルト・ディズニーとも協力していたんですね。中には私が若い頃六本木の前衛映画館で見たものもありました。カミソリで女性の目玉をザクッと切るやつ(観客席から悲鳴が上がります)。それはLuis Buñuelの監督作品ですがダリも協力していたことは知りませんでした。
今回一通り映画も見ましたがお勧めはディズニーと協力して作ったアニメ「Destino」(1946年)です。カラーだし、そのファンタジーに釘付けとなりました。ダリの創造力(そして想像力)の多彩さに感動します。映像の一部は次のヴィデオで見ることが出来ます。
http://www.tate.org.uk/tateshots/episode.jsp?item=9825

絵画は過去に見たものも多いのですが初めて見るものも多数ありました。就職したての頃に昼休みに会社の図書室に行ってダリの分厚い画集を一生懸命見ていたのを憶えています。当時はシュールリアリズムが大好きだったのです。なぜ電機会社の図書室にそういうものがあったのかは謎ですが。その後展覧会でシュールリアリストの実物を何度も見ているうちにだんだん関心も薄れていきましたが、今回改めて見ていて随分丁寧に描かれていることと夢のように次々わき起こるイメージを絵にするだけなのに見る人を魅了することに感心しました。やはり心の中の強い欲求を昇華させて絵にすると説得力があるのでしょう。

Dalí & Film
1June – 9 September 2007
Tate Modern
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by dognorah | 2007-07-27 09:14 | 美術

ハイドンのオラトリオ「四季」(PROMS)

2007年7月23日、ロイヤル・アルバート・ホールにて。

Joseph Haydn: The Seasons

出演
Sally Matthews (soprano)
James Gilchrist (tenor、Toby Spenceの代役)
Jonathan Lemalu (bass-baritone)
Handel and Haydn Society of Boston
Roger Norrington (conductor)

PROMSに初登場のHandel and Haydn Society of Bostonという団体は古楽器管弦楽団と合唱隊で構成されていますが、創立がなんと1815年というアメリカでも最古の演奏団体だそうです。NYフィルやヴィーンフィルよりも古いですね。ノリントンはその団体のArtistic Advisorをしています。知名度のせいか会場は5-6割の入りで、遠方から来た演奏者にとってはちょっと気の毒でした。

最初は管弦楽団のノリが悪くあまりいいアンサンブルではありませんでしたが途中からどんどんよくなって、そのノーブルな音に魅せられました。合唱は最初からすばらしい声とアンサンブルで惚れ惚れする美しさです。
独唱者もすばらしく、特にソプラノのマシューが好調で終始魅力的な声です。3月にマーラーの2番に出演したときと同じドレスでした。写真を撮っているとこういうこともわかってしまう。ついでに言うと昨年5月にフィデリオのコンサート形式に出演したときに比べるとちょっと痩せてスマートな顔立ちになっているのが好感を持てます。
テノールのジルクリストは声質が太めで、前半トビー・スペンスだったらなぁと思わせる歌唱がありましたが後半はとてもよくなってかなりの実力者であることを認識しました。バスバリトンのレマルはちょっとムラがありましたがそこそこの出来でしょう。

この曲は名前を知っていたものの聴くのは初めてです。春夏秋冬が各30分ぐらいの演奏時間で計2時間。字幕は出ないので手元のパンフレットを読むしかないのですが眠くなってきたので途中で放棄し、音楽だけ聴いていました。演奏のノリと関係あるかも知れませんが春の前半は特に眠くなるような音楽でやや面白味に欠けるかなという印象ですがその後半と、夏以降はとても楽しめました。秋が一番気に入りました。
写真はSally MatthewsとJames Gilchristです。
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by dognorah | 2007-07-25 03:28 | コンサート

コジ・ファン・トゥッテ公演(ロイヤルオペラ)

2007年7月17日、ROHにて。
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Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti: Opera buffa in two acts
Music: Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto: Lorenzo da Ponte

Conductor: Colin Davis
Director: Jonathan Miller
Set Designs: Jonathan Miller
Lighting: Jonathan Miller and John Charlton
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House

Ferrando: Matthew Polenzani
Guglielmo: Lorenzo Regazzo
Don Alfonso: Thomas Allen
Fiordiligi: Dorothea Röschmann
Dorabella: Elina Garanča
Despina: Rebecca Evans

このプロダクションは2004年9月に初めて見ましたが、現代に置き換えた演出です。全員携帯電話を持っていて、第1幕で登場する姉妹はそれぞれTextによるチャットでも楽しんでいるのか夢中になっています。グリエルモになびいたドラベラの写真を携帯で撮ってフェランドに証拠として見せるとか、二人が出征するシーンではCNNの取材陣が来たり、結婚届の書類はパソコンで作るなど現代技術が大いに披露されます。服装も背広、迷彩服、タトゥーに革のパンツなど。開始直後の3人の男達の議論は左側客席の中に置かれた食卓から始まります。彼等はすぐに観客席の仕切りを乗り越えて舞台に出てくるのですがおもしろい設定ではあります。ただし舞台は上の写真のような簡素な(チープな)物で最初から最後まで変化はありません。

3年前もトーマス・アレンがドン・アルフォンソ役でした。彼の歌唱は今回も悪くはありませんが当時の方がもっと声に張りがあったような気がします。しかし演技は相変わらず上手いですねぇ。フェランド役もグリエルモ役も今回の歌手はレヴェルが高く楽しめました。フェランドは第1幕ではクッションに寝転がったままアリアを歌うのですが弱音でも終始安定した音程で魅力的な声を響かせ、歌唱のうまさに感心しました。いいテノールです。

フィオルディギリを歌ったレシュマンは高音域は終始すばらしい歌唱でした。しかし低音域になるとやや違和感があり、特に第1幕ではその印象が強かったです。第2幕ではかなりそれは改善されましたが。しかし存在感のある声です。ドラベラよりアリアが多い分しっかりしたソプラノでないとこのオペラは持ちませんが彼女なら大丈夫ですね。

ドラベラは期待のガランチャですが、声はよく出ていたもののちょっと彼女のイメージとは違います。昨年9月に「皇帝ティートの慈悲」で初体験したときのたっぷりした潤いと深みのある声は、今年1月にヴィーンで見たドラベラでもかなり聴けましたが、今回はそれが非常に少ないと感じました。ただ、声には張りがあり、今回の演出で強調されている蓮っ葉なドラベラ役用に敢えて明るい声にしたのかも知れませんが。悪くはないものの私にはちょっと期待はずれではありました。

デスピーナを歌ったレベッカ・エヴァンスは結構上手いのですが非常にというほどではありません。声はよく出ていますが歌唱が平坦であまりおもしろみがないかなという感じです。

管弦楽は特にいいというわけではありませんが流麗に演奏されて歌手の邪魔にならないというか極めて自然な音楽作りでした。第1幕のデスピーナのアリアでは木管の音にちょっと違和感が感じられましたが。
演出は笑どころ満載でよくこなれており、現代風でも全く問題なくオペラとしては非常に楽しめました。二人の姉妹の性格はきっちり描き分けられていて意図はよく伝わります。前回の公演では最後に、浮気した相手同士手をつないで退出したようにおぼろげに記憶しているのですが今回は全員がばらばらに舞台奥に引っ込みました。
写真は左からElina Garanča、Matthew Polenzani、Dorothea Röschmannです。
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by dognorah | 2007-07-18 20:01 | オペラ

ロッシーニのスターバト・マーテル

2007年7月16日、ロイヤル・アルバート・ホールにて。
私にとって今年初めてのPROMSです。

演奏者
Janice Watson(ソプラノ、Emma Bellの代役)
Joyce DiDonato(メゾソプラノ)
Colin Lee(テノール、Lawrence Brownleeの代役)
Ildar Abdrazakov(バス)
Swingle Singers
Orchestra and Chorus of the Academy of Santa Cecilia, Rome
Antonio Pappano(指揮)

プログラム
Berio: Sinfonia
Rossini: Stabat mater

ローマのサンタ・チェチーリアが音楽監督のパッパーノに率いられての登場です。歌手にエンマ・ベルとジョイス・ディドナートの名前があったので行くことにしました。しかしベルは体調不良で降板しちゃいました。代役は先日「カーチャ・カヴァノーヴァ」で好演したワトソンですがレパートリーがちょっと違うんじゃないの?という心配をよそにすばらしい出来でした。彼女に限らず今日の歌手はすべて満足すべき歌唱で、「セビリアの理髪師」と「ヘラクレス」以来久し振りに聞くディドナートは相変わらず上手いし、南アフリカ出身のテノール、リーは甘くてよく伸びる美声でしたし、バスのアブドラザコフも艶のある声が魅力的です。

サンタ・チェチーリアというのは名前は聞いて知っていますが実演を聞くのは初めてです。最初の音からして「ああ、イタリアの音!」。なかなか上手いオケです。それにもまして感心したのは合唱団。ロッシーニのこの曲に対しては完璧な出来でしょうがポテンシャル的にはすごいものを持っていそうだという奥の深さを感じさせます。
ということで演奏者のレヴェルが高く、パッパーノの指揮もとても納得できるもので感動的な演奏でした。6-7割しか入っていなかった聴衆も大歓声でした。
写真は演奏中の独奏者。左から、Janice Watson, Joyce DiDonato, Antonio Pappano, Colin Lee, Ildar Abdrazakovです。
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しかし最初に演奏されたベリオの曲はいまいちよくわからず。アメリカでキング師が暗殺された事件を織り込んだ曲だそうですが、過去の作曲家のメロディがちょこちょこ出てきたりします。Swingle Singersも男声はナレーション、女性はスキャットが多い構成ですがこの曲に関してはそれほど魅力的でもありません。指揮者の前に8人が半円形に座り全員マイクを持って歌っていました(写真)。ナレーションは英語ですがあまり聞き取れず意味不明。
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今日はオーケストラ横の席でしたので上手く写真が撮れず、掲載したのはすべてBBC TVの映像を録画後キャプチャーしたものです。
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by dognorah | 2007-07-17 19:33 | コンサート

フェデラーが5連覇---ウインブルドンテニス

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最終3日間が奇跡的に晴れて予定通り8日の日曜日で終了したウインブルドンテニス大会、男子決勝はロジャー・フェデラーが大方の予想通り優勝した。フェデラーもナダルもほぼ互角の伯仲する試合で最初から最後までTVの前で釘付けとなった。フェデラーは途中ブレークポイントをしばしばナダルに掴まれながらも何とか耐えて3-2で勝ったがこの5年間でもっとも苦労して取ったタイトルではなかろうか。サンプラスからタイトルをもぎ取ったときに彼は泣いたが、今日久し振りに彼の泣くところを見た。それだけナダルは強敵だったということだろう。私も見ていてナダルと交代する時期かしらと思ったりしたものだ。グラスコートでもここまで戦えるまでに強くなったナダルからフレンチオープンのタイトルを奪うのはまず無理だろうと思わせる強さであった。
今期導入されたヴィデオ判定システムは両者とも遠慮なく使ったが、フェデラーの勘とは異なる結果がしばしば出て相当苛立つ場面もあった。ヴィデオ判定が出た後も審判に文句を言う始末。それだけ勝負に執着していたと思われる。
このCHALLENGEと名付けられたシステムは興味深く見ていたが、わかったことは線審達が意外に正確な判定をしているということだ。線審が間違えている場合でもこれはちょっと無理という微妙なボールばかり。あのボールの早さを考えたら相当訓練を経てそのレヴェルを保っているのだろう。
5連覇のかかった試合ということで過去に5連覇したことのあるビヨン・ボルグが招待されていたが最初は誰だかわからなかった。言われてみてああそうかという感じ(下の写真)。
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by dognorah | 2007-07-09 02:58 | テニス

アルベルト・ノセのピアノリサイタル

2007年7月6日、Wigmore Hallにて。

Piano: Alberto Nosè

Programme
Mozart: Rondo in A minor, K511
Beethoven: Piano Sonata No.13, op27-1 ‘quasi una fantasia’
Beethoven: Piano Sonata No.14, op27-2 ‘Moonlight’
Chopin: Nocturne in Eb, op55-2
Chopin: Nocturne in C, op48-1
Prokofiev: Piano Sonata No.6, op82

イタリアのピアニスト、アルベルト・ノセは1979年生れ。パロマ、ザルツブルグ、ミラノ、ヴェネチア、パリ、ロンドンの各都市で開催されたピアノコンクールやロン・チボー、ブゾーニ、ショパンコンクールに出場して1位を含め軒並上位入賞を果している。2000年のショパンコンクールでは第5位。音色は太めの美しい和音が特徴でとても力強い。

モーツァルトのロンドはゆっくり目のテンポによる繊細な表現が美しく、今にも壊れそうな感じの微妙なタッチで彼独特の世界にいざなう。1曲目にしてこのピアニストに魅せられた。

前半のメインであるベートーヴェンがまた優れた解釈を聴かせる。2曲ともちょっと文句のつけようのない構成のしっかりした表現である。特に作品27-1に感銘した。

ショパンの夜想曲は2曲続けて演奏されたが、作品55-2の静と作品48-1の動を対比させる意図だと思われる。最初のものはかなりテンポを落して美しさを際立たせようとしていたがちょっとだれ気味でもう少し速めのテンポの演奏の方が好きだ。次の曲もその流れで遅いテンポで始まるが同様のことが言える。後半は意図どおり盛り上げてくれたので楽しめたが。

プロコフィエフは音の饗宴を大いに楽しめるのだが初めて聴くこの作品がよく理解できず、聴いていてテクニック的にはかなり大変そうには見えたが演奏がどうのこうのと言える状況ではなかった。第4楽章など手に汗を握るようなテンポで高音の華麗なフレーズが続いてここはなかなかの聴きどころであるが、あまり好きな作曲家でもないので全体としてはしばらくは良さがわからないかもしれない。

盛大な拍手やブラヴォーに応えてアンコールは2曲。1曲目は何かアナウンスしたけれど聞き取れず。2曲目はショパンのワルツ第16番ホ短調と思う。劇的な演奏で聴衆は大喜び。
とにかく彼にとっても聴衆にとってもハッピーなひとときであった。写真は盛大な拍手にうれしそうなAlberto Nosè。
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by dognorah | 2007-07-08 09:02 | コンサート

ネトレプコ、1幕だけで降板、また体調崩す

7月4日の彼女が出演する最後のドン・ジョヴァンニを見ました。第二幕開始直前に係員が出てきてネトレプコはここ数週間悩まされているヴィールス性疾患で再び調子が悪くなり、第二幕からはダブルキャストのポプラフスカヤに交代する旨が告げられました。

本日の配役
Leporello: Kyle Ketelsen
Donna Anna: Anna Netrebko(第1幕)、Marina Poplavskaya(第2幕)
Don Giovanni: Erwin Schrott
Commendatore: Robert Lloyd
Don Ottavio: Robert Murray
Donna Elvira: Ana María Martínez
Zerlina: Sarah Fox
Masetto: Matthew Rose

第1幕のネトレプコは別に悪いという状況ではありませんでしたが、オペラグラスで顔を見ると6月15日の前回公演の時に比べると明らかに痩せていました。その痩せた顔がほんとに美しい。出来るならこのまま太らずにいてほしいものですが、病気で痩せたとなれば問題ですね。早く完全回復することを祈っています。
騎士長のLloydはメインキャストのHagenよりもしっかりした声です。びっくりしたのはドン・オッタヴィオを歌ったロバート・マレーですごく出来がよかったと思います。彼としてはROHでやらせてもらった役の中では最も重要なものなので張切って練習したことでしょう。さすがにミヒャエル・シャーデを凌駕するほどではないですがかなりの美声を響かせていました。弱音が魅力無いところがちょっと問題で、シャーデはそういうところでも破綻を感じさせませんから。

今日はしかしものすごく興ざめなことを経験しました。
遂にスピーカーの位置を同定しました。丸天井の飛行機のフラップみたいな蓋の内側にあるのです。オペラが始ってケテルセン演じるレポレッロが「やれやれ、うちの旦那様と来たら・・・」と愚痴をこぼしながら舞台下手から出て来ますが、その声がそのスピーカーから大きく聞えて舞台からの彼の実の声を圧するのです。直後のドンナ・アンナと争うドン・ジョヴァンニの声もそうで、目をつぶって視覚によるごまかしを排除して聞くと全部そこから聞えました。全体にヴォリュームが大きすぎ、重唱などはうるさすぎて耳にびんびん響いて音楽どころじゃありません。私が今日座った座席はAmphitheatreの最前列です。あの天井のフラップはオペラが始まると開きますが、私は今まで照明のためと思っていましたがスピーカーを全開にするためのものだったのですね。ヴォリュームが小さいと気づき難いですが、今日は度が過ぎました。ヴィーンでもパリでもバルセロナでも経験しないミュージカルのようなことをなぜコヴェントガーデンがやるのでしょう。憤懣やるかたなしです。
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by dognorah | 2007-07-06 00:21 | オペラ

ロンドン交響楽団の今シーズン最終コンサート

2007年7月3日、バービカンホールにて。

指揮:Yan Pascal Tortelier
ピアノ:Barry Douglas

プログラム
Helen Grime:Virga (世界初演)
Pyotr Ilyich Tchaikovsky:Piano Concerto No.1 in B flat minor, op23
Henri Dutilleux:Métaboles
Maurice Ravel:Daphnis et Chloé Suite No.2

c0057725_0425464.jpg最初の曲はLSOが若い作曲家を選んで委嘱したもの。年間を通じて何回かこういうことがありますが、公式プログラムには載せず、当日発表します。本日の作曲家は1981年生れのHelen Grimeというイギリス生れの女性です。RCMでJulian AndersonとEdwin Roxboroughに作曲をを学んだそうです。舞台に出てきてインタヴューを受けてから(左の写真)演奏されました。ピッコロやフルートの高音メロディで開始、金管も鋭い音を合わせます。かなり大編成の管弦楽でいろいろなメロディが奏でられますが、心の中までは届かずどうもいまいち理解できません。不協和音はあまりない構成です。

c0057725_0433187.jpgチャイコフスキーのピアノ協奏曲を独奏したイギリス人ピアニスト、バリー・ダグラスは1986年のチャイコフスキーピアノコンクールで優勝した人です。当然腕の達者な人と思いますが第一楽章は何となく感動とは縁のない演奏という感じを受けました。第二楽章ではかなり音楽になり、第三楽章では更に調子が出てきたようでかなり楽しめました。管弦楽の方は終始一貫してレヴェルの高い演奏でしたが、第一楽章は両者の解釈が食違ったのでしょうか。右の写真は演奏後のBarry Douglasです。

3番目の曲は1916年生れの現役作曲家アンリ・デュティユーが1965年に作曲したものです。これはなかなかおもしろい曲です。現代曲ながらフランスの香りがします。打楽器が効果的に使われて賑やかな部分と静かな部分の対比が魅力的です。豊穣な音の洪水で最後を飾ります。

最後のラヴェルはすばらしい。さすがにフランス人指揮者、躍動感溢れる洗練された演奏で全く文句なしの名演でした。最初の曲から感じていたことですがこの指揮者はオケを鳴らすのも上手く、LSOからいいアンサンブルを引出していました。そしてディナミークを緩急自在につけるなどそれを操る技術がなかなかのものです。本日は後半のプログラムで満足すべきコンサートになりました。
写真は終演後楽員の拍手も受けるYan Pascal Tortelierです。
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今日の演奏会のスポンサー東芝さんのご厚意でプレコンサート、アフターコンサートともご馳走になった上、また多くの方と知合え、懐かしい方とも再会して充実した夜となりました。特に昔勤めていた会社のイギリス人同僚の消息がひょんなきっかけでわかったのにはびっくりしました。ほんとに世間は狭いです。
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by dognorah | 2007-07-05 00:45 | コンサート

チェロソナタの夕べ

2007年7月2日、ロンドンのハンガリー文化センターにて。

チェロ:Eszter Baráti
ピアノ:Balázs Vitályos

プログラム
Leos Janacek: Pohadka (A Tale)
Zoltán Kodály: Sonata op.4
Béla Bartók: Rhapsody No.1
Edvard Grieg: Sonata in A minor, op36

c0057725_0301868.jpgコヴェントガーデンにあるハンガリー文化センターは時々コンサートをやってくれます。部屋の大きさがあまりないので聴衆は60人程度しか入れず、事前予約が必要です。今日のチェロ独奏者はリスト音楽院で学び、ハンガリー国立オペラ管弦楽団のプリンシパルを勤めるエスター・バラティという女流(左の写真)ですが、背も高くないし腕も細い人なのにチェロの演奏は豪胆とも言うべき力の籠ったスケールの大きさで圧倒されました。楽器は一見古そうに見えますが、かなりの名品と思われる倍音に富んだ魅力的な音色を出します。2階の部屋は空調がないので窓を開けたままで、外からは人の話し声や笑い声、車のドアの開け閉めに雨道を走る音など雑音が遠慮無く入ってきますが彼女は動じることなく集中力を維持して美しい音色を紡いでいきます。不思議なもので演奏者がそういう態度だと聴いている方も雑音が気にならなくなります。

ヤナーチェクの作品は3楽章構成で、第1楽章は私にはやや取っつきにくい感じでしたが第2楽章以降はいかにもチェロでしか出せない特有の魅力溢れる音で魅了されました。演奏時間は約15分。
コダーイは最初から魂を揺さぶるような深遠な音がこれまた美しいピアノ伴奏に乗ってゆっくりと奏でられます。なんとすばらしい音楽でしょう。アレグロはハンガリーの民族的メロディを思わせる軽快さがありますがピアノと対話するような構成もおもしろい。最後はまた朗々とチェロの美しい音色が響き渡り、思索に誘うような雰囲気のまま静かに終ります。名曲と思います。彼女はこの作品を完全に解釈し尽している印象を受けました。ブラヴォーです。演奏時間は約20分。
バルトークは民族的メロディを敷衍したような作品で、思わず拍子を取りたくなるようなとても親しみやすい曲です。演奏時間は約10分。
休憩後のグリークはこれまでの曲と違ってやはり古典的な音、ほっとした聴衆もいたかも知れません。美しいメロディと音色でとても楽しめる曲ですが、それほど優れた作品とも思えず、私は断然前半の作曲家たちの作品が好きです。演奏時間は約30分。

これだけの音楽を聴けてインターヴァルにはワインまで飲ませていただいて無料というのは感謝です。外国公館の主催するものではこういうのが多くていいですね。今までイタリア、ベネズエラ、日本と経験していますが他の国でも自国の芸術家の紹介のために当然やっているでしょう。これから少しずつ開拓して行かなくては。
インターヴァルにはペルーの方々から話しかけられペルーと日本といえば当然藤森氏の話になってしまいました。彼はペルー入りする前に隣国のチリかどこかで逮捕されたところまでは知っていますがその後どうなったのでしょう。
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by dognorah | 2007-07-04 00:32 | コンサート

インヴァ・ムーラの「マノン」公演

2007年6月28日、バルセロナ・リセウ劇場にて。

前回に続いてBキャストの報告です。前回と異なる出演者は次の5人です。

Manon Lescaut:Inva Mula
El cavalier Des Grieux:Stefano Secco
El comte Des Grieux:Philippe Rouillon
Leseaut:Joan Martin-Royo
L'hostaler:Carlos Dasa

インヴァ・ムーラは初めて聴きましたが評判に違わずとても素敵なソプラノです。声は癖が無く素直に伸びています。昨日のナタリー・ドゥセに比べると性格がかなりおとなしめでまじめに歌う分マノンの悪女ぶりがかなり薄められる印象ですが。
ステファーノ・セッコは昨年5月にパリで聴いて注目していたテノールですが期待に違わず私の好きな声を響かせてくれました。ただ、ちょっと喉の調子が悪いときがあり、第二幕の食卓でマノンと食事中のアリアで声がかすれたりしていました。それにも拘らず大ブラヴォーをもらっていましたが、友人の評によると歌唱力はビヤソンより上とのこと。派手さはないものの堅実というところでしょう。それはムーラにも当てはまり、二人はバランスが取れたコンビといえそうです。二人とも劇の進行と相手に合わせようとしている分演劇的観点からも優れたオペラになっていると思われます。
他の歌手ではグリューの父親を歌ったフィリップ・ルイヨンが安定したバスで昨日のレイミーより遙かによかったと思いますが、レスコー役の歌手は昨日に比べて迫力が無く声だけを聴いているとなよなよという印象で喧嘩っ早くて気の強い軍人という役柄設定には合いません。
こうしてAキャストとBキャストを聞き比べるとそれぞれ演劇でも歌唱でも表現の仕方が異なっていて非常に興味深いものがあります。マノンが死ぬ場面でもドゥセは看守が路上に放り出してからずっと横になったままですが、ムーラは死ぬ直前まで立ってグリューに寄りかかりながら歌うなど大きな違いがあります。見ている方としては立って歌ってくれた方がいいのですが。
しかしこの劇場はキャストで入場料を大幅に変えているところが正直でいいです。例えばAキャストの最高席は174ユーロしますが、Bキャストでは66.25ユーロです。すごい差ですね。そのままギャラの差を表しているわけですが聴いている方はそれほどの差は感じられませんでした。ROHでも料金に反映させればいいのに。そこでは同じ値段なのでいつもBキャストの席がかなり空いています。もっともリセウでもAキャストは満員でしたがBキャストはこの安さにもかかわらず結構空席がありましたので観客のBig Name好みはなかなか押えられないというところでしょうか。
写真は終演後のStefano SeccoとInva Mulaです。
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by dognorah | 2007-07-03 01:09 | オペラ