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ベルリオーズのオペラ「ベンヴェヌート・チェルリーニ」(コンサート形式)

2007年6月26日、バービカンホールにて。

Hector Berlioz (1803-69)
Benvenuto Cellini (1834-38) :Opera semi-seria in two acts and four tableaux

Gregory Kunde: Cellini
Laura Claycomb: Teresa
Darren Jeffery: Balducci
Peter Coleman-Wright: Fieramosca
Andrew Kennedy: Francesco
Isabelle Cals: Ascanio
Jacques Imbrailo: Pompeo
John Relyea: Pope Clement VII
Andrew Foster-Williams: Bernardino
Alasdair Elliott: Cabaretier
London symphony Chorus
London Symphony Orchestra
Colin Davis: conductor

序曲しか聴いたことがなかったこのオペラ、繊細さとスケールの大きさを持ち合せた聴きごたえのある音楽です。時に「トロイ人」を思い起させるような旋律もあります。物語は単純であまりおもしろくありませんが。
管弦楽と合唱はすばらしい演奏でした。ベルリオーズを得意とするコリン・デイヴィスという印象をさらに強める出来です。
歌手は、タイトルロールを歌うはずだったテノールGiuseppe Sabbatiniが降りてしまったのが痛い。彼が出るからと思って切符を買ったのに。代役のGregory Kundeは強く歌う部分では素敵な声を聴かせてくれるのですが、そうでないときはざらついたような嗄れたような声になってがっかりすることが多いのです。
チェルリーニの恋人テレサを歌うソプラノLaura Claycombは魅力的な声と歌唱に加えて見栄えのする美人で華やかさもあります。
もう一人、メゾソプラノIsabelle Calsは小柄の人ですがいい声をしています。
男声陣ではバスのJohn Relyeaが秀逸。同じバス役のBalducciを歌ったDarren Jefferyは声質はいいのですがもう少し声量がほしいところです。その他の歌手はまあまあという出来。
写真は左から、Gregory Kunde、Isabelle Cals、Laura Claycombです。
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by dognorah | 2007-06-27 08:51 | オペラ

フリーメイスンイギリス本部のJapan Room

c0057725_015117.jpg地下鉄コヴェントガーデン駅を出たところに東西に延びるLong Acreという道路がありますが駅から東方向を見ると、あれは何だ?というくらい目立つ立派な建物(左の写真)が見えます。それがイギリスのフリーメイスン組織の総本山です。建物の創立は1717年で、その後2回建替えられ、現在のものは1933年に完成したものだそうです。内部は美しいアールデコ調の装飾が施され、ステンドグラスを嵌め込んだ窓も多数あります。一番大きなホールは1700席の大ホール(次の写真)で、これも美しい装飾や神を讃える壁画などで囲まれています。演説はちょっと聞苦しい感じですが、音楽を演奏するには適した残響です。予約すれば一般の人でも貸してくれます。その他にも大小いくつもの部屋があり、No.11の部屋はJapan Room、No.12の部屋はBurma Room、No.17の部屋はBuckinghamshire Roomという特別の名前がついています。これはこの建物を建てるために1920年頃から世界中のフリーメイスン会員に寄付を募ったところ、この3カ所からは短期に高額の寄付があったということでそれに対するお礼の意味があるそうです。ちなみに日本からは£2600余りの寄付があったそうです。しかしこの立派な建物を維持管理するだけでも相当なお金がかかると思われますが、それはイギリスで30万人以上という会員の会費で賄われています。c0057725_0223993.jpg

フリーメイスンといえば音楽家ではモーツァルトが会員であったことは有名な事実ですが、ヴァーグナーは入会したかったけれど審査で撥ねられたという噂があります。私は実態に関しては全く知らなかったのですが、人間の友愛を深めることが目的で、特定の宗教団体とは関係ないものの、会員は無神論者であってはいけないらしい。大多数はキリスト教徒のようですがモスレムもヒンズーも仏教徒もユダヤ教徒もいるそうです。国際的な連携はなく、各地で同様の目的で会員組織があるとのこと。イギリスでは王室のケント公がかなり重要な地位を占めていると公表されています。お互いに誰が会員であると公表するのは禁じられているようですが有名人に関してはこのケント公のように公表されています。

この団体はチャリティ行為も行っているのでそういった基金集めのために秘密結社というイメージを払拭して一般の人にお金を使ってもらうイヴェントをいろいろ企画しているようです。その中の一つにこのJapan Roomを使った催物があり、責任者のMiss Pauline Chakmakjianが取仕切っています。彼女は数少ないフリーメイスン女性会員の一人らしい。今回のイヴェントは南太平洋にあるイースター島(チリ領)の有名な石像モアイ(下の写真)に関するもので、なぜこれが日本と関係づけられるのかというと日本のクレーン製造会社のタダノが津波でメチャメチャになった海岸沿いのモアイをクレーンを使って1990年前後に元通りにきちんと並べ直したということにあるようです。
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モアイ研究家でもある彼女が最近現地を訪問してその事実を知り、モアイの歴史的背景と共に今回紹介したというもの。集った聴衆は100人ぐらいいたでしょうか、レクチャーの後は梅酒やワインなどを飲み、和菓子を食べながらの歓談となりました。チリ大使も参加していましたが、彼はフリーメイスン会員ということで皆さんに見せる意味もあって会員が着用すべき前掛やたすきみたいなものを身につけていました。
次回の彼女のイヴェントは11月29日の琴コンサートのようです。
今回はレクチャーに先駆けてフリーメイスンホールの見学会もありましたが、普段は毎日無料の見学ツアーがあるようです。
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by dognorah | 2007-06-27 00:24

ヤナーチェクのオペラ「カーチャ・カバノヴァー」

2007年6月25日、ROHにて。

KATYA KABANOVA (KÁT'A KABANOVÁ):Opera in three acts
Music Leoš Janáček
Libretto by the composer after V. Červinka's translation of the play Groza (The Thunderstorm) by Alexander Nikolayevich Ostrovsky

Conductor: Char1es Mackerras
Director: Trevor Nunn
Revival Director: Andrew Sinclair
Designs: Maria Bjornson
Lighting: Patricia Collins
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House
Concert Master: Peter Manning

Váňa Kudrjáš: Toby Spence
Glaša: Miranda Westcott
Savìl Prokofjevič Dikoj: Oleg Bryjak
Boris Grigorjevič: Kurt Streit
Fekluša: Elizabeth Sikora
Marfa Ignatěvna Kabanová (Kabanicha): Felicity Palmer
Tichon Ivanyč Kabanov: Chris Merritt
Katěrina (Kát’a): Janice Watson
Varvara: Liora Grodnikaite
Kuligin: Jeremy White
Zena: Renata Skarelyte
Chodec: Neil Gillespie

なんてすばらしい音楽でしょう。美しい旋律が全編に散りばめられていて台詞のように歌われる歌と共に音楽的には至高の作品と感じました。舞台はもちろん音楽も初めて体験しましたが、マッケラス指揮のオケも歌手たちも文句なしの出来で、これはめっけもんと思った作品です。さすがにチェコ音楽を得意とするマッケラス、第2幕終了時のインターヴァルでのブラヴォーに加えて一番盛大な拍手をもらっていました。主演のジャニス・ワトソンは高い音域までよく声が出ていましたし、憎まれ姑役のフェリシティ・パーマーも立派。それに加えて代役で出演したROHヤング・アーティスト・プログラムのリオラ・グロドゥニカイテも柔らかい美声ですっかり上手くなったなぁと感心しました。男声のトビー・スペンス、クルト・シュトライト、クリス・メリット、ジェレミー・ホワイトも上手かった。
ただしオペラの筋はあまりおもしろいものでもありませんが。原作はショスタコーヴィッチの「ムツェンスク群のマクベス夫人」と同じで、こちらの作品では舅の代りに姑がいて彼女が嫁いびりを生甲斐としており、息子が親に頭が上がらないという設定と最後に嫁が川に身投げする点は同じです。

演出も舞台装置もよくできています。新作ではなく前回公演は19942000年ですので久し振りに引張り出された舞台装置は田舎道と粗末な木の階段が螺旋状に組合わされたもので、がらくたを組合わせたように見えながらもはっとする美しい空間を作り出しています。3幕とも基本的に舞台は同じというシンプルさですが照明の効果も相俟ってこれで十分と思いました。

写真は、Charles Mackerrasを挟んで左がLiora Grodnikaite、右がJanice Watson、その右がKurt Streitです。
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あらすじ
気が弱くて母親の言いなりの商人ティホンの妻カテリーナは姑の絶え間ないいじめで生活にいい加減うんざりしている。ある日ティホンが商用で10日ほど出張する。その機会を狙ってボリスが予てから思いを寄せているカテリーナを誘惑する。恋仲の学校の先生と上手くやっている姑の養女ヴァルヴァラの勧めも味方して、罪の意識がありながらも自身も彼のことを憎からず思っていたカテリーナはそれを受入れ、10日間毎日のように密会する。しかし罪の意識から脱することが出来ず、ティホンが帰宅すると半狂乱状態になりみんなの前で告白してしまう。ヴァルヴァラもとばっちりで養母から部屋に閉じこめられるが上手く家を抜出し、学校の先生とモスクワへ駆落ちしてしまう。ボリスは世話になっていた叔父から勘当されてシベリアに行くことになり、カテリーナも一緒に行こうと誘うが前向きに考えるヴァルヴァラと違ってカテリーナは罪を償うべきだと考えてそれを断わり、ヴォルガ河に身投げしてしまう。
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by dognorah | 2007-06-26 10:05 | オペラ

ロンドン室内管弦楽団演奏会

2007年6月20日、St John's Smith Squareにて。

LONDON CHAMBER ORCHESTRA (LCO)
Christopher Warren-Green conductor
Isabelle van Keulen violin

プログラム
Elgar Introduction and Allegro
Mozart Violin Concerto No.4 in D K218
Beethoven Symphony No.7 in A op.92

2年前の11月以来久しぶりにこのオケを聞きましたが、相変わらずうまいしいい音を出していました。
1曲目のエルガーは弦のみで演奏されるものですが、質の高い弦楽合奏に聴き惚れました。
2曲目のヴァイオリンコンチェルトは独奏ヴァイオリンがタイミングを指示して指揮者なしで演奏。お馴染みの楽しい曲であり瑞々しい演奏でした。
最後のベートーヴェンは私はあまり好きな曲でないので最近は滅多に聴きませんが、このスケールのオケ(ヴァイオリン6+6、ヴィオラ3、チェロ2、バス2)ながら豊かな音と格調の高い演奏で感心しました。第4楽章での速いテンポでも全く乱れることなく指揮者の思い通りに自由自在という感じで長年のコンビの良さも伺えます。シーズン最後のコンサートということで力も籠もっていたと思いますが、大拍手に答えて珍しくアンコール(フィガロの結婚序曲)が演奏されて終了。冷房装置のないホールはかなり蒸しましたが音楽はとても楽しめました。
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by dognorah | 2007-06-22 08:45 | コンサート

ラファエロとタピストリー

The Miraculous Draught of Fishes: Raffaello Sanzio (1515)
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先日、来月から始まるロンドンの夏の音楽祭PROMSの切符を買いにロイヤル・アルバート・ホールに出向いた帰りにせっかくここまで来たのだからとVictoria & Albert Museum (V&A)に立寄って最近聴いたインド美術のレクチャーの影響でアジアの彫刻群をくまなく見てまわりました。そのときにある部屋に迷い込んだらそこに突然巨大なラファエロの絵が迫ってきたのです。全部で7枚あります。ちょっと壮観です。部屋はRaphael Cartoon Courtという名前です。部屋の写真を下に示します。
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初めてこういうものの存在を知ったので最初はこれは本物か?と疑ったのでした。説明を読むと、彼が法王レオ10世の依頼で仕上げたタピストリー用の下絵だったのです。縦3.6m、横4mの紙にテンペラで描いたもので、1515年制作ですが、前後数年をかけて全部で10枚用意されました。
そのうち4枚はSt Peterの生涯を描いたもので、以下の題名がついています。
・The Handing-over of the Keys
・The Miraculous Draught of Fishes
・The Healing of the Lame Man
・The Death of Ananias

6枚はSt Paulの生涯を描いたもので次のものです。
・The Stoning of St Stephen
The Conversion of Proconsul
・The Blinding of the Sorcerer, Elymas
The Sacrifices in Lystra
・St Paul in Prison
St Paul Preaching in Athens
この下絵は当時タピストリーでは高度な技術を持っていたブリュッセルのPieter van Aelst工房に送られて1517年から順次仕上げられ、1521年にすべて完成しヴァティカンのシスティーナ礼拝堂に飾られたのでした。ラファエロは先輩のミケランジェロが描いた天井画と同じ場所に飾られるということでかなり張切って仕事をしたようです。
タピストリーは現在Vatican Museumで公開されているそうですが、私はそこに2回行ったものの絵画しか見なかったのでそういうものの存在さえ知りませんでした。

そしてなぜ下絵がロンドンにあるかというとイギリスの国王Charles I世が1623年にイタリアの業者から保存されていた7枚(上記の題名で太字のもの)を買取ったからです(3枚は行方不明)。意図はヴァティカンにあるのと同じタピストリーをロンドンのMortlake地域で立上がったタピストリー工房に作らせるためでした。タピストリー制作後は下絵はハンプトンコートに保存されていたのですがその後V&Aで展示公開されるようになったのです。

下絵はタピストリー制作時には幅数十センチの短冊状にカットされるのですが、それは元通りにつなぎ合されて展示されています。現物を見ればカットされた後がはっきりわかります。絵はかなり精緻に描かれています。解説によれば、ラファエロはタピストリーの技術を実際以上に優れたものと見ていたようです。この部屋には件のMortlakeで制作されたタピストリーの実物が一枚だけ展示されていますが、下絵と反対側の壁に掲げられているので比較しやすいです。再現性は驚くべきものがあります。ブリュッセルで作られたときから丁度100年たっているわけですが、新興工房の技術はブリュッセル以上だったと解説されています。ということでヴァティカンにあるものより出来がいいそうです。残念ながらこのMortlake製の作品の写真がないので、ヴァティカンのものの写真を掲げます。この写真を見る限り、色がかなり原画と異なっていますがMortlakeのものはそれがもっと忠実に作られています。

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下絵とタピストリーで絵が反転しているのは制作過程的に必然だそうです。タピストリーはまず木枠に縦の糸を等間隔で張り、それを下絵の上に乗せて縦糸に下絵の通りにカラーのマークをつけていきます。そして横糸を編んでいくのですが、各色の余った糸はこちら側で結んでほどけないようにします。従ってこちら側は見苦しくなり、反対側を表とするために絵が反転してしまうわけです。
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by dognorah | 2007-06-17 10:01 | 美術

ネトレプコ復活 - ドン・ジョヴァンニ

2007年6月15日、ROHにて。
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Donna Anna: Anna Netrebko
その他の出演者は6月10日の記事に書いたものと同じです。

リハーサルも含めて最初の3ステージを休演したネトレプコは本日は登場してくれてほっとしました。しかもほんとに病気だったの?というくらいの好調な歌唱で。容姿も立居振舞も美しい。演技も上手い。リゴレット以来2年ぶりに舞台での彼女を見ただけで感動し、第1幕のアリアでは深みがありながら高音まで伸びていく美声に涙まで出てしまいました。第2幕のアリアでもうっとりする出来です。今日の席はオーケストラピット横の指揮者より舞台に近い位置で、前に視界を遮る観客はいない上に数メートル先で歌う歌手たちを聴ける大好きな場所でしたので細かいことも逃さず聴けました。休憩時間に後方の席で聴いていた人の意見ではすべての歌手があり得ないぐらいの音量だったというコメントでしたので、今日もPAを使っていたのでしょうが私の席からはほとんどが直接音だったのも幸いしました。

そのネトレプコを歓迎するかのようにアナ・マリア・マルティネスもリハーサル時と同じ好調さを披露し、エルウィン・シュロット、カイル・ケテルセン、ミヒャエル・シャーデは相変らずのすばらしい歌唱で、今日はとても幸せな舞台でした。こういう人たちに並ぶとやはりツェルリーナ役のサラ・フォックスは残念ながらちょっとレヴェルが違うのが歴然です。

今日は最後の舞台が割れて下から騎士長の亡霊が現れるところで機械装置が不調だったらしく、騎士長は舞台袖から歩いて登場していました。その他細かいところで演技を変えている部分もあって、毎回出演者が適当にやっているんだなということがわかります。その他、脱いだマントを床に置忘れたり、ドンナ・エルヴィーラが騎士長の亡霊を見て悲鳴を上げるのを忘れたり、など細かいミスもいろいろありました。タイトル・ロールのエルウィン・シュロットはやはりラテン系の性格で毎回アドリブを変えるのはもちろん、マルティネスの豊かな胸を触って睨まれるとか、カーテンコールで舞台に引込むときにカメラを向けている我々の前でおどけてみたり楽しそうな人です。
写真は左からネトレプコ、ケテルセン、ボルトン、シュロットです。
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by dognorah | 2007-06-16 10:09 | オペラ

International Mahler Orchestra(IMO)演奏会

2007年6月12日、St John’s, Smith Squareにて。

指揮:Yoel Gamzou
ヴァイオリン:Guy Braunstein

プログラム
ベートーヴェン:エグモント序曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調
ブラームス:交響曲第4番ホ短調

このオケは2006年にロンドンで設立され、最初のコンサートは今回と同じ場所で昨年12月に開催されました。名前の通り団員は国際的で、フランス(14人)、ドイツ(6人)、ベルギー(2人)、スペイン(1人)、日本(1人)、イタリア(5人)、ルーマニア(2人)、ブルガリア(1人)、ベネズエラ(1人)、USA(1人)、UK(10人)の奏者で構成されています。大半は20代と思しき若い人です。
指揮者のガムゾウはイスラエル人でマーラーのスペシャリストと自認していて交響曲第10番を完成させるべく2004年から研究に取組んでいるらしい。やはり若くて20代に見えますがこのオケの芸術監督でもあります。
ヴァイオリン独奏のブラウンシュタインはベルリンフィルの3人のコンサートマスターのうちの一人で、3月に聴いたラトル指揮のベルリンフィルの演奏会でもコンサートマスターを務めていた人です。こういうオケと共演する独奏者としては大物ですが、イスラエル人ということで指揮者と繋がりがあるのでしょう。

演奏ですが、エグモント序曲はややアンサンブルの荒さが目立つものであまり楽しめませんでした。しかし次のブルッフの協奏曲はすばらしい演奏で私もブラヴォーを献呈しました。さすがにベルリンフィルのコンサートマスター、美しい音色で確信に満ちたヴァイオリン独奏です。オケもこの曲に限ってはアンサンブルもよく、抑え気味の演奏がとても気品があってしっかりと独奏をサポート。練習中にいろいろブラウンシュタインからアドヴァイスがあったのではと思われます。熱狂的な拍手に応えてバッハの何かをアンコールに弾きました。
最後のブラームスは弦が主体のパッセージではとても美しく納得のいく音楽でしたが、どうも金管が入ると荒れる感じです。ホルンはかなり音を外す場面もありました。しかしこの指揮者の力量は大したもので、そういう状態にもかかわらず十分楽しませてくれる指揮ぶりでした。最初にちょっと驚いたのは、さっきブルッフを独奏したブラウンシュタインが第1ヴァイオリンの最後尾に座ってこの曲も弾いたことです。しかも譜面をめくらなくてはいけないポジションで。飾らない人柄なんですね。

名前に反して今日はマーラーの曲が全くなかったのがちょっと残念でした。
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by dognorah | 2007-06-13 19:54 | コンサート

ドン・ジョヴァンニ初日

2007年6月11日、ROHにて。

一昨日のリハーサルに続いて初日を見ましたが、女声陣が不調で不満な公演となりました。ネトレプコの代役ポプラフスカヤは初めての本番での大役というプレッシャーからか大過なく通して歌えたリハーサルとは大違いで、声に潤いが無く第2幕の重要なアリアでは音を外すという失態まで演じてしまいました。
そしてマルティネスは、リハーサル時を100点とすれば本日は70点ぐらいの出来で、その時に魅了してくれた声の自然な柔らかさというものがなくなっているのです。どうもラ・トラヴィアータの時も初日で評判を落してしまったようなので初日に弱い人かも。ツェルリーナ役のフォックスは本日の方がよかった。男性陣ではシャーデが相変らずの好調、シュロットはどちらかといえばリハーサル時の方がきれいな声が出ていた。ケテルセン、ローズ、ハーゲンは本日の方がよく声が出ていたがマイク疑惑も感じられたので本物かどうかは疑問が残りました。
立て続けに2回見て演出はなかなかよくできているとは思いましたが、最後の部分でジョヴァンニが地獄落ちした後の処理がまずくてそこでオペラが終了したように見えてどうしてもいったん拍手が出てしまうし、残った6人が風圧で膨らんだ安っぽい白いカーテンの前で横一列になって歌うというのも見栄えが悪いし芸がない気がします。しかしみんなが引込んだ後その白いカーテンが上がってジョヴァンニが裸の女性を抱いているシーンが出て笑いを誘うのは後味がよくなってオペラ・ブッファにふさわしい終り方だと思いました。
写真は左からシャーデ、ポプラフスカヤ、シュロット、ケテルセン、マルティネスです。ドンナ・アンナ、ドンナ・エルヴィーラ、ドン・オッタヴィオの3人は頻繁に衣装を替えるのですが最後は一番つまらないデザインなのが残念です。
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by dognorah | 2007-06-12 23:15 | オペラ

弦楽合奏団Sejong演奏会

2007年6月10日、カドガンホールにて。

演奏:SEJONG (Leader Frank Huang – violin)

プログラム
Piazzolla/Leonis Desyatnikov (1921-1992/b.1955)
Las cuatro estaciones porteñas (The Four Seasons of Buenos Aires)
・Primavera porteña
・Verano porteño
・Otoño porteño
・Inviemo porteño

Sukhi Kang (b. 1934)
Four Seasons of PyeongChang (U.K. Premiere)
・Spring I: Awakening of the Earth
・Spring II: Dancing Spring
・Summer I: Summer is Coming
・Summer II: Fantasy
・Autumn I: Abundance
・Autumn II: Festivity
・Winter I: Winter Rhapsody
・Winter II: Cycle

Peter Tchaikovsky (1840-1893)
Serenade in C Major, Op. 48
・I. Pezzo in forma di Sonatina
・II. Waltzer
・III. Elégie
・IV. Finale - Tema Russo

Sejongは指揮者なしの合奏団で、現在のメンバーは全員20代と思われる。コアメンバーはヴァイオリン8人、ヴィオラ3人、チェロ3人、バス1人でオーストラリア、カナダ、ドイツ、アメリカ、中国、台湾、韓国、日本が出身国のインターナショナルな集団である。腕の立つ奏者の集りで、ストラディヴァリウス、ガルネリなどの名器7挺が韓国その他の財団から貸与されている。ニューヨークをベースにこれまで300回に及ぶ演奏会を日本を含む世界各国で行ってきた。ロンドンでも過去にウイグモアホールで演奏したことがあるらしい。

前半はヴィヴァルディの合奏協奏曲「四季」を念頭に作曲された2曲の現代版「四季」の演奏である。
最初のものはアルゼンチンの作曲家ピアソラのメロディをロシアのデシャトニコフが敷衍したもの。春夏秋冬をそれぞれ異なるヴァイオリン独奏者を立てて演奏する。所々にヴィヴァルディを思わせるメロディが出てくるが全編ほとんど不協和音で演奏され、それに加えて楽器を使ったノイズもふんだんにある。おもしろい。
次の曲は韓国の現代作曲家の作品で、春夏秋冬がそれぞれ2部に分けられて合計で8つのパートで構成される。こちらはヴィヴァルディに関わりなく自由に作曲したもの。なお題名に入っているPyeong Changというのは韓国の地名で2014年の冬季オリンピックが開催される山岳地帯だという。不協和音度はブエノスアイレスに比べて少ないがそれでも現代音楽特有の音と構成で、聴いていてとてもおもしろい。すべてを一人のヴァイオリン独奏者と共に演奏する。この作曲家は現在東京のShobi Universityの教授をしているらしい。
後半はチャイコフスキーのお馴染みの曲である。前半で不協和音に辟易した聴衆に気持よく帰ってもらおうという配慮か。彼らのやりたい音楽は前半の現代曲だと思われる。

合奏レヴェルはかなり優秀でどの作品も文句なく鑑賞できる。それに加えて珍しい曲を聴かせてもらって楽しかった。感謝。
写真は席が前過ぎて全員は写せず、左半分だけ。花を持っている人がリーダーのFrank Huang。女性のドレスは韓国人らしい配色だった。
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by dognorah | 2007-06-12 00:42 | コンサート

ネトレプコは病気休演 - ドン・ジョヴァンニ

豪華出演者で期待膨らむロイヤルオペラのドン・ジョヴァンニは最大の楽しみだったアンナ・ネトレプコがリハーサルと初日が休演と発表があった。数週間引きずっている病気のためと説明されているので残りの公演も休演の可能性が高そうである。本日のリハーサルも含めて3回も行く予定だっただけにショックは大きい。

代役はROHの専属でYoung Artists Programmeに所属するMarina Poplavskayaであるが、歌唱は上手だけど華がない。声は今まで聴いた経験ではきれいな人であるが本日はやや霞がかかったような声になる部分が結構あり(特に第1幕)、ここがネトレプコだったらなぁと思う場面もしばしば。しかし全体としてはまあ満足できる出来である。
ドンナ・エルヴィーラを歌ったAna María Martínezが絶好調で、すばらしく魅力的な声を終始響かせてくれたのでネトレプコの不在を補ってくれた。この人は昨年1月にヴィオレッタを、5月にボッカネグラを聴き、いずれも私的には大変好評であったが今日の歌唱は今までの最高。もう何も言うことなし。これでネトレプコがいればどれだけすごいことになったことか(まだ言っている)。

男声陣はすべて満足すべき歌唱でErwin SchrottもKyle Ketelsenも文句なしにうまい。特にシュロットの声が期待に違わず魅力的だった。Michael Schadeはロンドンやヴィーンで聴くたびに印象がよくなっているが彼も今日は今までの最高の出来と思う。低音から高音まで非常に滑らかで魅力的なテノールであった。これからは彼の出演を喜ばなくてはいけないだろう。
Sarah FoxとMatthew Roseは1幕はちょっと調子が出ないかなと思ったが第2幕ではかなりの出来。Commendatore役のReinhard Hagenは初めて聴く歌手であるが歌は上手いもののもう少し低く響く声がほしいと思った。
ということでネトレプコ不在ながらも歌手陣は総じてレヴェルの高い公演であった。そして今日はマイク疑惑なし(^^)

指揮者のIvor Boltonは初めて見る人で、あまり見栄えのいい人ではないが音楽はすばらしい。響きが自然で弦も美しく、アリアや重唱では生き生きした演奏でたっぷりモーツァルトに浸れる。

このプロダクションは5-6年前に一度見たことがあるので演出としては新しいものではない。舞台は結構シンプルで全幕を通して分厚い円弧状の壁が回転するだけのものながらその中に階段や屋上を作ったりして各場面を効率的に表現している。地獄落ちは炎が吹出して雰囲気を盛上げるがそこで一瞬照明が落ちて薄いカーテンが降りるので知らない人は終りだと思って拍手してしまう。残った人たちが今後の身の振り方を述べた後、一番最後に向こうの世界で全裸の女性を抱きかかえているドン・ジョヴァンニがちらっと登場して爆笑で終る。

DON GIOV ANNI:Opera buffa in two acts
Music: Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto: Lorenzo da Ponte
Conductor: Ivor Bolton
Director: Francesca Zambello
Revival Director: Duncan Macfarland
Designs: Maria Björnson
Lighting: Paul Pyant
Choreography: Stephen Mear, restaged by Duncan Macfarland
The Royal Opera Chorus
The Orchestra of the Royal Opera House

Leporello: Kyle Ketelsen
Donna Anna: Marina Poplavskaya
Don Giovanni: Erwin Schrott
Commendatore: Reinhard Hagen
Don Ottavio: Michael Schade
Donna Elvira: Ana María Martínez
Zerlina: Sarah Fox
Masetto: Matthew Rose
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by dognorah | 2007-06-10 04:32 | オペラ