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オランジェリー美術館再訪

Musée de l’Orangerie

チュイリュリー公園にあるこの美術館は昔行ったことがあるものの、建物が改装なってからは一度も行っていなかったので久しぶりに訪問しました。
以前は地下にあったモネの睡蓮の間が1階に移動して天然の光がたっぷり入った明るい環境になっています。
そして地下はスペースが拡張され、Collection Jean Walter et Paul Guillaumeと銘打ってこの画商たちが持っていた絵画が展示されています。かなりの枚数で見応えがありますが、一部は照明があまり理想的ではなく(額縁の陰や反射光)見にくい感じがします。
今まで見たことのある絵も多いのですが、次の絵はあまり見た記憶もなく新鮮味を覚え、出来のいい作品とも思いました。いずれも何か手に持った女性像ですね。上から、RenoirのFemme a la lettre(1890)、MatisseのFemme au violon(1923)、PicassoのFemme au tamborin(1925)です。
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なお、すべての収蔵品はオランジェリー美術館のサイトで見ることが出来ますが、いずれのディジタル画像も色が悪いです。わざとそうしているのかしら?
私がデジカメで撮ったもの(ルノワールとマティス)の方が遙かに原画に近い色が出ています。
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by dognorah | 2007-03-31 20:18 | 美術

パリオペラ座バレー「ドン・キホーテ」

2007年3月26日、バスティーユにて。
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Don Quichotte
ballet en un prologue et trois actes d'après quelques épisodes du roman de Miguel de Cervantès

キャスト
musique Ludwig Minkus - arrangements et orchestration John Lanchbery
chorégraphie et mise en scène Rudolf Noureev d'après Marius Petipa
décors Alexandre Beliaev
costumes Elena Rivkina
lumières Philippe Albaric
Orchestre de l'Opéra national de Paris
direction musicale Pavel Sorokin

主演ダンサー
KITRI (et DULCINÉE) Myriam Ould-Braham
BASILIO Emmanuel Thibault
ESPADA Audric Bezard
LA DANSEUSE DE RUE Alice Renavand
DON QUICHOTTE Richard Wilk
SANCHO PANÇA Fabien Roques
GAMACHE, prétendant de Kitri Eric Monin
LORENZO, père de Kitri Alexis Saramite

この演目を見るのはは15年以上前にエディンバラ・フェスティヴァルで見て以来です。
パリのバレーは事前に誰が踊るのかわからないのでこちらの日程に合わせて切符を買うしかないのは不便ですね。ロイヤルバレーは3ヶ月前から出演者がわかっているのに。
会場に行って出演者リストを貰って驚きました。ロイヤルのPrincipalに相当するÉtoileの格付けダンサーが誰も出演しない!これはロイヤルバレーではちょっと考えられないことで、ある意味観客を馬鹿にしているように思えます。
それにも拘わらずキトリとバジリオのダンスには大変感心しましたが。特にバジリオを踊ったエマニュエル・ティボーはテクニックを駆使したスケールの大きいダンスで非常に気に入り、ファンになってしまいました。第3幕の白鳥の湖ばりのフェッテも二人とも見事に決まっていましたし。下の写真は主役二人です。
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あと、第2幕第2場でソロを踊ったMiteki Kudo(日本人父を持つハーフらしい)もなかなか印象的なダンサーでした。
舞台装置はよくできていて美しいものです。
特筆すべきはオーケストラで質の高い音楽にはうっとりさせられます。指揮者にブラヴォー!
題名役とサンチョ・パンサはどうでもよく、単なる狂言回し役なのであまり出しゃばらない演出の方が楽しめるようです。出演者が多いもののちゃんと統制がとれていて、全体としてはまるで宝塚レヴューを見ているような肩の凝らない楽しさがありました。

プロローグのその他のダンサー
LA FEMME DE CHAMBRE Anémone Arnaud
LE VALET Bruno Lehaut
TROIS FEMMES Miho Fujii, Eléonore Guérineau, Carole Maison
DEUX AIGLES Alexandre Carniato, Julien COlette

第1幕のその他のダンサー
DEUX AMIES DE KITRI Fanny Fiat, Muriel Zusperreguy

LES FILLES DE BARCELONE Sandrine Marache, Laure Muret, Natacha Quernet, Lucie Clément, Charline Giezendanner, Daphnée Gestin, Céline Palacio, Anémone Arnaud, Leila Dilhac, Miho Fujii, Carole Maison, Juliane Mathis, Sofia Parcen, Aubane Philbert, Maud Rivière, Pauline Verdusen

LES PÊCHEURS Bertrand Bélem, Stéphane Elizabé, Mallory Gaudion, Mathias Heymann, Adrien Bodet, Grégory Gaillard, Mathieu Botto, Fabien Révillion

LES MATADORS Gillsoart, Yong Geol Kim, Julien Meyzindi, Sébastien Bertaud, Vincent Chaillet, Axellbot, Julien Cozette, Yann Chailloux

第2幕第1場のその他のダンサー
LE GITAN Yong-Geol Kim
DEUX GITANES Lucie Clément, Pauline Verdusen
LE ROI DES GITANS Auber Vanderlinden
LA REINE DES GITANS Anémone Arnaud

LES GITANS Leïla Dilhac, Miho Fujii, Emilie Hasboun, Carole Maison, Juliane Mathis, Sofia Parce n, Aubane Philbert, Maud Rivière
Sébastien Bertaud, Adrien Bodet, Grégory Gaillard, Axellbot, Mathieu Botto, Alexandre Carniato, Yann Chailloux, Julien Cozette, Alexandre Labrot, Fabien Révillion

第2幕第2場のその他のダンサー
L'HOMME EN NOIR (pour l'apparition de Dulcinée) Yann Chailloux
LA REINE DES DRYADES Laurence Latton
CUPIDON Miteki Kudo

TRIO Fanny Fiat, Myriam Kamionka, Laure Muret
QUATUOR Marie-Solène Boulet, Sarah Kora Dayanova, Laurence Latton, Alice Renavand

LES DRYADES Lucie Clément, Daphnée Gestin, Charline Giezendanner, Vanessa Legassy, Sabrina Mallem, Céline Palacio, Leïla Dilhac, Emilie Hasboun, Juliane Mathis, Sofia Parcen

第3幕第2場のその他のダンサー
FANDANGO Anémone Arnaud, Leïla Dilhac, Miho Fujii, Emilie Hasboun, Carole Maison, Juliane Mathis, Aubane Philbert, Maud Rivière, Pauline Verdusen
Bertrand Belem, Axellbot, Stéphane Elizabé, Mallory Gaudion, Fabien Révillion, Mathias Heymann, Julien Meyzindi, Mathieu Botto, Julien Cozette

LA PREMIÈRE DEMOISELLE D'HONNEUR Lucie Clément

LES DEMOISELLES D'HONNEUR Marie-Solène Boulet, Sarah Kora Dayanova, Myriam Kamionka, Daphnée Gestin, Charline Giezendanner, Vanessa Legassy, Sabrina Mallem, Juliane Mathis
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by dognorah | 2007-03-30 20:16 | バレー

歌舞伎パリ公演

2007年3月25日、パリオペラ座(ガルニエ)にて。

市川海老蔵(11代目)と市川亀次郎(2代目)は昨年6月にロンドンで公演していますが、今回は海老蔵の父である團十郎(12代目)を始め多くのメンバーを揃えてのパリ公演です。会場に着いて驚いたのは着物を着た女性がものすごく多く、恐らく日本から駆けつけたファンに相違ありません。インターネットでこの公演の切符が発売と同時に売り切れたのは日本からのアクセスのせいであったとは。観客も4割ぐらいは日本人と思われます。その割には会場からの掛声が少なかったのは歌舞伎ファンというより海老蔵ファンだからでしょう。ロンドンでは複数のイギリス人が「ナリタヤ!」と叫んでいたのとは大違いで、フランス人で声を出した人は皆無と思われます。モルティエ総裁の依頼で実現した公演の割にはパリではあまり歌舞伎ファンはいないようです。なお、舞台はロンドンと違って花道は造られず、代わりに客席中央通路に舞台から行けるようにしてそれを花道代わりに使っていました。

演目
(1)勧進帳
武蔵坊弁慶:市川海老蔵
九郎判官源義経:市川亀治朗
富樫左衛門:市川團十郎
常陸坊海尊:市川團四郎

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さすがに成田屋歌舞伎十八番の一つ、とても楽しめました。上の写真は弁慶の六尺棒と富樫の刀があわや火花を散らすかというクライマックスですが様式的にも美しく、歌舞伎ってすばらしい芸術だなぁと感心させられる場面です。市川親子の仕草は見事でした。下の写真は殴ってしまった義経に詫びを入れる弁慶。体格がいいこともあって海老蔵の弁慶はなかなか見応えがあります。以前から見たいと思っていたこの演目をこのようなすばらしい役者で見ることが出来て幸せです。
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(2)口上
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主立った出演者が上の写真のように正装してずらっと並び、観客相手に一人一人が挨拶するものです。9人並んでいますが、約1名を除き全員がフランス語で挨拶したのは立派。それも結構長い台詞で、フランス人観客にとても受けていました。しかしちゃんと字幕も出るので、口上だけだとどの程度通じたかは謎ですが。下の写真は長々とフランス語をしゃべりまくった團十郎です。
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(3)紅葉狩り
更科姫(後に戸隠山の悪霊):市川海老蔵
平維茂(たいらのこれもち):市川團十郎
山の神:市川亀治朗

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海老蔵は弁慶という偉丈夫を演じた後は一転して美女役、そして悪霊の役と芸達者なところを遺憾なく見せてくれます。上の写真は将軍、平維茂の前で挨拶する更科姫の場面。このあと次の写真のように悪霊に変化します。ここでも團十郎との立ち回りのコンビはすばらしい。舞台装置も衣装も美しく、舞踊と荒事の両方を堪能できるおもしろい演目と思いました。
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最後の写真はカーテンコールで勢揃いした主な出演者たちです。
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3月28日にフランス政府から團十郎と海老蔵に対してChevalier dans l'Ordre des Arts et des lettreという勲章が贈られたそうです。團十郎に対してCommandeur、海老蔵にはChevalierという格のものが授与されました。

今回の公演は昨年のロンドン公演より遙かに力が入ったもので、次回はロンドンでもちょっと大がかりな演しものを期待したいところです。
私は切符を入手できなかったのですが、sottovoceさんから1枚譲っていただき、このすばらしい公演をよい席で見ることが出来ました。またまた感謝です。
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by dognorah | 2007-03-29 19:41 | 観劇

ジェニファー・ラーモアのヘンデルオペラアリアの夕べ

2007年3月24日、シャンゼリゼー劇場にて。

Jennifer Larmore: mezzo-soprano
Jean-Christophe Spinosi: conductor
Ensemble Matheus: orchestra

プログラム(オールヘンデルプロ)
・「水上の音楽」第1組曲の序曲からアンダンテまで4部
・HerculesからアリアWhere shall I fly
・Giulio CesareからアリアEmpio, diro, tu sei
・「水上の音楽」第1組曲のプレストからメヌエットまで5部
・RinaldoからアリアCara sposa
・RinaldoからアリアVenti, turbine
・Giulio CesareからアリアDall’ondoso periglio…
・SemeleからアリアHence, Iris, hence away
・「水上の音楽」第2組曲のアレグロとAlla Hornpipe
・SerseからアリアOmbra mai fu
・AriodanteからアリアDopo notte

アメリカの歌手、ラーモアは3年前にROHで「ホフマン物語」のジュリエッタ役で聴いたことがあるだけであまり馴染みがあるとはいえない歌手です。40代後半ぐらいの年齢でしょうか。ここパリでどの程度の人気なのかよくわかりませんが、結構空席がありました。意外に入場料が高いのにはびっくり(最高72ユーロ、約£50)しましたがその割には高い席はかなり埋まっているのに感心。この劇場の安い席は舞台が半分ぐらいしか見えないせいかもしれません。

こういうプログラムであるからしてヘンデルは得意と思われますが、声はコジェナーのような華はないもののそこそこ美しいし、歌はとてもうまい。Cara sposaは心に染みる嘆き節でしたし他の曲も表現力ある歌い方です。
オケもなかなかの水準で、水上の音楽は結構楽しめました。クラヴサン奏者はYoko Nakamuraという日本人ですね。指揮者と歌手も気の合う演奏ぶりでこなれた音楽作りです。聴衆はかなり熱心な人が多いのでしょう盛大な声と拍手で、一体となって音楽を楽しんでいるようでした。アンコールは2曲演奏されました。1曲目は知らない曲ですが2曲目は本日のプログラムからEmpio, diro, tu seiの再演奏でした。

ということでホテルで思い立って雨の中を聴きに行った甲斐はありました。コンサート情報を提供くださったsottovoceさんに感謝します。
写真は拍手に答えるラーモアと指揮者スピノジです。
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by dognorah | 2007-03-28 21:37 | コンサート

ハーディング指揮LSOによるマーラーの第7番

2007年3月22日、バービカンホールにて。

指揮:Daniel Harding
管弦楽:London Symphony Orchestra

プログラム
Rameau: Dances from Hippolyte et Aricie
Mahler: Symphony No.7

妻の49日供養のため一時帰国していてしばらく間があいてしまいましたがまた復帰しました。

1月にマーラーの第9番で失望の演奏をしてくれたハーディングの記憶はまだ生々しいので、今夜の演奏に一抹の不安がありましたがそれは杞憂でした。今回は最初から指揮とオケが渾然一体となってハーディングの面目躍如たる快演となりました。第1楽章や第5楽章での管弦楽の盛り上げ方もよかったけれど第2楽章から第4楽章の実に美しい表現は心に染み入ります。叙情的にしてダイナミック、スケールの大きい名演です。オケの各パートも実力を発揮。第1ヴァイオリンはとても冴えていました(ゲストリーダーAndrew Haveron)。金管群にもう少し繊細さがほしいとは思いましたが音程を外すこともなく全体的に立派な演奏でした。
ハーディングはこういう演奏をするとまた指揮してくれと頼みたくなります。若いのに本当に大したものです。感動しました。第7番としては昨年3月のシャイー指揮ゲヴァントハウス以来ですが共に優劣をつけがたい出来です。

前半の曲は初めて聴く音楽ですが、30人程度の管弦楽で演奏される魅力的なものです。ハーディングはこういう古典的な曲でもなかなかの腕の冴えを見せてくれる人ですが、今夜は前半と後半で彼の異なる持ち味を披露してくれた感があります。

客席は意外と空席が目立つ入りで、ハーディングはイギリス人ながら活動の主舞台を欧州にしているのでロンドンでは意外と人気がないのかもしれません。

これで3月はマーラーを3曲も聴いてしまいましたがいずれも名演で充実の月でした。
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by dognorah | 2007-03-23 20:49 | コンサート

ムーティ指揮ヴェルディのレクイエム

2007年3月14日、Westminster Cathedralにて。
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演奏
Riccardo Muti: conductor
Tatiana Serjan: soprano
Olga Borodina: mezzo-soprano
Guiseppe Sabbatini: tenor
Petri Lindroos: bass
Philharmonia Chorus
Philharmonia Orchestra

ムーティの指揮はすばらしく、非常に質の高い演奏でした。旋律の流れ、テンポ、ダイナミズム、どれをとっても納得できるもので一心不乱に聴いてしまいました。4人の独唱者も立派な歌唱でさすがにムーティのおめがねにかなった歌手たちです。この中でサバティーニは昨年12月にロメオ役で聴いてとてもいい印象を持っていましたが今夜も声も歌も文句なしです。メゾのボロディナは数年前に「ボリス・ゴドノフ」で聴いてそのときはそれほど印象的ではありませんでしたが今夜は立派なもの。ソプラノとバスははじめて名前を聞く人ですがとてもいい歌手たちです。
この曲は2年前にセント・ポール大聖堂で聴いたことがありますが、こちらウエストミンスター大聖堂の方が残響が少なく、その分各パートがクリアに聞こえて音楽を鑑賞するにはより望ましい環境です。当分この曲のスタンダードとして私の心に残るでしょう。

ところでこの日会場に着いてみると十分早い時間であるにもかかわらず入り口で人だかりがしていました。行列に従って進んでみると、なんと警察官が大勢出動してセキュリティチェックをしているのです。金属探知ゲートまで設けられています。検査も徹底的で小銭入れの中まで見られましたよ。私は早めに着いたからなんの問題もなかったけれど、ぎりぎりに駆けつけた人はすごい行列のためなかなかは入れなかったはず。したがってコンサートは20分遅れで開始です。舞台のオケとコーラスが起立したのでいよいよマエストロの登場かと思ったら聴衆まで全員起立しました。勘の悪い私は目の前にチャ-ルズ皇太子が現れるまで事情を推量できなかったのでした。カミーラ夫人はいませんでした。
そういう事情から会場にはかなりのVIPがいたようです。私が気づいた有名人はエフゲニー・キーシンだけでしたが。
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by dognorah | 2007-03-16 22:36 | コンサート

トーマス・アデスのオペラ The Tempest

2007年3月12日、ROHにて。

The Tempest: Opera in three acts
Music: Thomas Adès
Libretto: Meredith Oaks after Shakespeare
Conductor: Thomas Adès
Director: Tom Cairns
Set Designs: Tom Cairns and Moritz Junge
Costume Designs: Moritz Junge
Lighting: Wolfgang Göbbel
Choreography: Aletta Collins

歌手
Prospero: Simon Keenlyside
Miranda: Kate Royal
Ferdinand: Toby Spence
Caliban: Ian Bostridge
Ariel: Cyndia Sieden
King of Naples: Philip Langridge
Antonio: Donald Kaasch
Sebastian: Jonathan Summers
Trinculo: David Cordier
Stefano: Stephen Richardson
Gonzalo: Graeme Danby

2004年にプレミエだったものの再演です。当時は私はパスしたので今回が初めての経験です。作曲家自身が指揮しました。筋はシェークスピアのものをほぼなぞったものでした。
音楽は第1幕はかなりけたたましい音が出るもののやや退屈、しかし第2幕と第3幕はなかなか聴き応えのあるもので、劇の内容ともよくマッチしています。

歌手はキーンリーサイド始め全て持ち前の声がよく出ていたように思います。初めて聴くボストリッジの声はCDや放送で知っている声の先入観からすると道化た役柄にはちょっと違和感を感じましたが。ROHデビューのケイト・ロイヤルもはじめて聴く人ですがいい声をしています。Arielを歌ったアメリカのソプラノ、シーデンは曲の要請に応えて最高音域を出してはいたものの、精一杯という感じで聴いていてあまり気持ちのいいものではありません。尤もそういう音域が悠々と出せる人材はほとんどいないでしょうけれど。

舞台装置はよく出来ています。プロローグにおける船の沈没シーン(映像と思われる)と水中を沈んだり浮き上がったり泳いだりする人のワイヤーアクションがとても効果的です。背景や点在する爬虫類なども雰囲気があります。舞台中央にずっと存在し、開いたり回転したりするラップトップPCのような造作物も使い方が上手く、背景や周りの具象的なものが作る雰囲気の中で抽象化された空間を提示するなどアイデア一杯の演出でした。

アデスのオペラと言えば昨年6月にコンサート形式で「Powder Her Face」を経験しましたが、あの時は採用した台本とよくマッチした作品と思ったものです。しかし今回はなぜ古典的なシェークスピアを使う気になったのかいまいちわかりませんでした。
写真は、左からラングリッジ、ボストリッジ、キーンリーサイド、アデス、シーデン、ロイヤル、スペンスです。
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by dognorah | 2007-03-13 22:09 | オペラ

トーマス指揮LSOによるマーラー第2番「復活」

2007年3月11日、バービカンホールにて。

ソプラノ:Sally Matthews
メゾソプラノ:Karen Cargill
合唱:London Symphony Chorus
指揮:Michael Tilson Thomas

今日は一昨日の空席が目立つ客の入りから一転してほぼ満席でした。
マーラーの交響曲第2番を聴くのはこれでキャプランハイティンクについで3回目ですが過去2回はいずれもロイヤル・アルバート・ホールなので今回ようやくまともなコンサートホールで聴いたことになります。それを差し引いても今日は鬼気迫るすばらしい演奏でした。

第1楽章冒頭、トーマスのとてもきめ細かい指揮で低弦の迫力あるアンサンブルが心に響きます。完全にツボを押さえているという感じで全聴衆が固唾を呑んで咳一つしないで(ロンドンではとても珍しいこと)音楽に集中している様子が感じられました。テンポや間の取り方がとても納得のいくものだし、音楽の流れがマーラーそのもの。安心して身を任せる気になります。これでヴァイオリン群がもう少しいいアンサンブルだということはないのですが。でも第2楽章ではそのヴァイオリン群が羽毛のように軽く柔らかい音を出してくれて挽回。コンサートマスター(これがゲストなんですねぇ。ロンドンではよくあること)がひときわ秀でた音を奏でていました。フルートとの競演が多い曲ですが共に優れた演奏でした。第2楽章、第3楽章ともまったくだれることなく大きな流れを受け継いで行きます。第4楽章のメゾソプラノもこの流れに乗って静かながら説得力ある美しい歌声を響かせます。そして第5楽章、トーマスはますます乗ってきたという感じでぐいぐい引っ張っていきます。舞台裏の管楽器や打楽器も程よい音量レヴェルです。長い管弦楽の後合唱と独唱が交互に歌う部分に入って、中間どころで合唱がWas entstranden ist, Das muss vergehen! Was vergangen, auferstehen!(創造された者、それは死ななければならない!亡くなった者は復活しなければならない!)を歌う場面で涙が流れ出し、後は終曲まで止めどもなく流れ続きました。妻を思い出して嗚咽しそうになるのを必死にとどまり、まだまだ私の精神状態は尋常ではないことを思い知りました。
それにしても、マイケル・ティルソン・トーマスはすばらしい指揮者だと思います。独唱、合唱とも大満足。管弦楽はわずかに難ありといったところでした。
写真は向かって指揮者の左がメゾソプラノのカーギル、右がソプラノのマシューズです。
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by dognorah | 2007-03-12 10:07 | コンサート

マイケル・ティルソン・トーマス指揮LSO演奏会

2007年3月9日、バービカンホールにて。

出演
トロンボーン:Ian Bousfield
ソプラノ:Sally Matthews
指揮:Michael Tilson Thomas
管弦楽:London Symphony Orchestra

プログラム
Steve Reich: Variations for Winds, Strings and Keyboards
Jonathan Dove: Stargazer (Trombone Concerto)(世界初演)
Gustav Mahler: Symphony No.4

指揮のトーマスは90年代前半に聴いたことがあり今回は久しぶり。当時はそれほど印象的な指揮者ではなかったが今日はよくオケを鳴らして好演でした。

最初の曲はあるメロディを木管と弦とキーボードが延々と繰り返すもので時折金管がちゃちゃを入れる退屈極まりない作品。これをminimalismというそうですが苦痛の20数分間でした。バービカンでは彼の特集を組んでいますがライヒなんて2度と聞きたくない。

これに対してダヴのトロンボーン協奏曲はなかなかすばらしい音楽です。現ヴィーンフィルの主席トロンボーン奏者であるブースフィールド氏は2000年までLSOの主席でした。彼が昨年ロンドンで行ったコンサートを聴いてそのテクニックは十分知っていますがオケをバックにどういう演奏をするのか興味深いものがありました。1997年に作曲家のダヴ氏を訪ねてトロンボーン協奏曲を書いてほしいと依頼したそうで、そのときの彼の希望は、トロンボーンといえば現代作曲家は「大きな悪い狼」とか「道化役者」というような固定概念を持っているので、ここはひとつ叙情的な音のするものを作曲してほしい、ということだったそうです。星を観察している人(トロンボーン)が各星座(オケの各パート)に問いかけると星座が反応していくさまを描いたそうです。トロンボーンは実にさまざまな音を出しますが相当なテクニックを要する作品のようでかなりの熱演でした。やわらかく繊細な音も多く、希望はかなりかなえられているといえそうです。何よりも聴いていて楽しく、フランス音楽のように色彩感豊かなオーケストレーションも聴き応えがあります。初演がこのように遅れた理由はブースフィールド氏の移籍が絡んでのことだったようです。写真はBousfieldと作曲家Dove、後ろで拍手する指揮者のThomasです。
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マーラーの演奏を聴いてトーマスはなかなかの指揮者だと認識しました。第1楽章は溌剌としてオケは豊かな音を出しながら各部のバランスもよくテンポは中庸でまったく自然、密度の高い演奏です。第2楽章は非常に美しく叙情的な表現でした。ちょっとだれた印象が無きにしも非ずでしたが。第3楽章は静と動の対照を際立たせてスケールの大きい表現です。クライマックスからしっとりと導入される第4楽章もサリー・マシューズのきめ細かなニュアンスが美しい歌唱と相俟って共感できました。久しぶりに充実した4番を聴きました。写真は指揮者とともに挨拶するMatthews。
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by dognorah | 2007-03-11 00:15 | コンサート

ベルリンフィル演奏会

2007年3月7日、バービカンホールにて。

指揮:サイモン・ラトル(Sir Simon Rattle)

プログラム
ドヴォルザーク:交響曲第7番ニ短調
アデス (Thomas Adès):Tevot (UK初演)
ヤナーチェク:シンフォニエッタ

昨年9月にPROMSで聴いて以来のベルリンフィル、今日もすばらしい音で圧倒してくれました。特に管楽器の名手たちの音の質の高さにはただただ感銘するのみ。
最初にメインを演奏するのが最近の流行みたいですね。早く帰宅したい人のためにメインだけ食べてもらうということでしょうか。それが感動的名演だったのでドヴォルザーク1曲だけで帰ってもよかったくらい。
第1楽章冒頭の弦によるメロディが流れただけで質の高い音とエネルギーを内に秘めた演奏スタイルにこれから展開するであろう名演の期待感が高まります。その期待は全く裏切られることはありませんでした。第1楽章では短いフレーズではっとするような美しい音を出していたフルートやオーボエは第2楽章では名人芸をたっぷり楽しませてくれましたし。

2曲目は現代イギリスで最も嘱望されている作曲家トーマス・アデス(1971年生れ)がベルリンフィルに委嘱されて作曲した最新作で、先月ベルリンで世界初演済みですが今回はUKでお披露目。プログラムノートによれば、タイトルはヘブライ語の音楽用語で「小節」を意味するそうですが、他に「言葉」と言う意味もあるようです。その単数形はtevahで聖書には2回登場するという。1回目はノアの箱舟を意味し、2回目はモーゼの母が彼をナイル川に浮かべるために葦で作った筏でどちらも水の上で安全を守るもの、流れの中で強固なもの。音楽は流動的ながらそこに何か強固なものが存在するということらしいです。大編成の管弦楽で演奏時間20数分のもの。打楽器が活躍する音の饗宴といった趣ですが聴いていて何か残酷な絵画を思い起こさせる雰囲気がありました。中間部で一転して内省的な静かな響きとなります。終曲近くで音楽は再び輝きを取り戻し、何かを祝福するかのように歓喜を表現して静かに終わります。名曲なのかどうかいまいちよくわかりませんでしたが。写真は、ステージに呼び出されて挨拶するアデスと楽団です。
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最後のヤナーチェクも実演では初めて聴く作品です。多数の金管楽器奏者を必要とするのでLSOとフィルハーモニアの奏者がエクストラで参加しているそうです(会場で会ったO氏の情報)。数えるのを忘れましたが総勢10人程度。そのエクストラ軍は冒頭のファンファーレでなかなか元気のいい音を奏でていました。音楽としては作曲の経緯からして体育会系という印象で始まるものの中間楽章ではそういう印象を離れて豊かな楽想が見て取れます。大活躍するフルートも聞き逃せません。第4楽章で再び金管が活躍し、行進曲風になりますが第5楽章はちょっと郷愁を呼び起こすようなメロディが美しく展開していき、ここでもこの楽団のトップ奏者たちのすばらしいテクニックが冴え渡ります。音を聴いているだけで楽しい。最後の終わり方は壮大で華麗。暗譜で指揮したラトルはよく演奏するのでしょう、まとまりのよい演奏でした。文句なし。

インターヴァルにロビーで会った皆さんも今日の演奏には感嘆されていました。先日のLSOとの落差は大きいです。
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by dognorah | 2007-03-10 00:01 | コンサート