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今年の活動

記録のために今年の鑑賞記録を数えてみました。

オペラ:49回(コンサート形式を含む)
コンサート:101回
バレー:5回
美術展:30回以上

昨年に比べるとオペラが16回から3倍増となりました。これは他のブロガーやコメントを下さった方々から多大な影響を受けた結果と思われ扇動されやすい自分を見る思いです(^^; 
駄プロダクションはほとんどなく、深く感動した記憶が沢山で、今後もオペラを最優先にスケジュールを決めて行くことになりそうです。その分(経費的な意味もあり)コンサートを減らそうと考えています。

美術展は20回程度しか記事にしていませんが、理解不能だったり時間の無駄だったと思えるものも多数経験しています。これは必然的に音楽とは鑑賞スタンスが違うので仕方がないことで、来年もこれは変わらないでしょう。

今年1年、多数の方に訪問していただきまた貴重なコメントを頂戴したことに深謝いたします。ブログを書き続けていく上で大変励みになりました。来年もよろしくお願い致します。皆様、よいお年をお迎えください。
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by dognorah | 2006-12-31 22:50

ヤン・ファン・エイクの「受胎告知」

BBC TVでクリスマスイヴにふさわしく題名のような番組が放送されたのですが、録画したものを今頃見ました。絵にまつわる物語があまりにも驚きの連続だったので、ここで紹介したいと思います。

c0057725_2222339.jpg左の写真に示す絵はこの画家の代表作の一つと評価されている名画ながら私は実物を見たことがないので絵そのものについての感想は書けませんが、写真やヴィデオを見る限りエイクらしいものすごい精密な絵で寓意がいっぱい描かれているもののようです。ガブリエル天使の羽が虹色というのも珍しいのですが、その着物もすごく豪華で精緻な模様です。これは布を実写したものでなくエイクの想像による描写らしい。顕微鏡的に拡大しても凄い精緻さで感嘆します。1435年ごろの作品とされていて、大きさは93 x 37cmです。現在ワシントン・ナショナル・ギャラリーにあります。

原画は形からして何かの絵と対になっていたと考えられていますが、出自は不明で、19世紀初頭にはさるオランダ貴族のコレクションでした。美術品に金を使いすぎた本人の死後、家族があるロシア人貴族に売却したという。売却価格は今日のお金で23000ポンド(約530万円)。その後ロシアに渡り、最終的にエルミタージュ美術館に入ります。ところが革命後のスターリン時代にハードカレンシーが欲しかった政府によってエルミタージュの多くの絵画が売却されました。1930年ごろの話です。その中にエルミタージュで唯一のエイク作品であったこの絵が含まれていたのです。美術館側はかなり抵抗したようですがスターリンの命令には勝てず、当時のアメリカの財務長官でビジネスマンにして美術品コレクターであるアンドリュー・メロン(Mellon財閥の御曹司)の手に渡ります。価格は現在の価値に換算して350万ポンド(約8億円)。彼はついでにエルミタージュの他の放出品20点も購入したそうです。現在のエルミタージュ美術館長は悔しそうに「文化というものは人間を他の動物から区別するもの、ひいては他の民族からも区別するもの。国の文化遺産というのはないがしろにするものではない。文化を守らない為政者なんて・・・」と吐き捨てるようにスターリンを批判していましたが、あの人はショスタコーヴィッチをいじめたりと確かに文化の庇護者ではなかったですね。お気持ちよくわかります。
ところがその後メロン氏は、次の民主党の政権から脱税容疑で調査される羽目になり、すったもんだの挙句彼の美術コレクションを全て国に寄贈することで訴追を免れたようです。そのかわりアメリカ政府も入れ物を作るということで現在のワシントン・ナショナル・ギャラリーができたのです。開館したのはメロンの死後4年経った1941年のことで開館の挨拶に立ったのはメロンの政敵であるフランクリン・ローズヴェルト大統領という皮肉。

話はこれで終わらず、この絵にはかなりの問題があることがわかりました。もともとエイクはオークの板にこれを描いたのですが、セント・ペテルスブルグは夏と冬の寒暖の差が激しく、反るなどして絵はかなり痛んでしまいました。そこでエルミタージュ美術館は絵をカンヴァスに移すことを決定したのです。やり方は、板の裏側から木を全て削り取り絵具だけにしてそれをカンヴァスに貼り付けるのです。その技術は現在でも使われているもので、ロンドンのナショナル・ギャラリーの専門家がサンプル板絵で実演して見せる映像も放送されました。準備段階として薄紙を絵具側に糊で貼り付けて最終段階で絵がばらばらにならないようにします。全ての木を削り終わった後、絵具部分をカンヴァスに糊で貼り付けてアイロンをあてて完成です。エルミタージュの19世紀の技術にはやはり問題があったらしく、カンヴァス自体が荒すぎてアイロンをあてたことによってその粗目が絵具に食い込んで表面から見えるほどになってしまったこと。完成後に薄紙をはがすのですが、お湯でやります。ところが全ての絵具が油彩だと思っていたのがマリアの着物である青い布の部分の表層部だけが水彩だったらしいのです。当然その部分は全て無くならなかったにしても大部分が洗い流されてしまいました。ワシントンではその部分の修復に苦労したようですが、髪の毛で覆われている部分からオリジナルの絵具を採取して同定し、オリジナルと同じ色と陰影を付けることに成功したと言っています。修復は1991年に終了して現在もそれが公開されているらしい。
ということでこの絵のあまりに波乱万丈な経歴に画面に食い入るようにしてこのヴィデオを見たのでした。彼がパトロンの依頼を受けて外国を訪問し、スパイ活動をしていたと言う説も紹介されていましたが、絵と直接関係はないので割愛致します。
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by dognorah | 2006-12-29 22:25 | 美術

ヴィーン旅行雑感

今回初めてヴィーン国立歌劇場でオペラを見るために旅行しましたが、雑多に若干感想を述べて見たいと思います。

(1)歌劇場について
10年以上前に内部を見学したときはなかなか豪華なものだと思ったものですが、パリのガルニエを見た今となっては、結構質素だな、という感想に変わりました。内部の構造がガルニエとよく似ているのはガルニエ氏が設計前にこのヴィーンを見て参考にした可能性がありますね。ロンドンのコヴェントガーデンも含めて3ホールとも2000席前後の座席数と思われますがオーディトリウムは空間的にほぼ同じ容積という印象です。

座席は今回、3階のボックス、1階のボックス、平土間と3種類試しましたが、平土間は傾斜がROHとほぼ同じで、前後の座席が左右にずれていない分見難い感じです。前の席に背の高い人が座ると悲劇です。チビの私にはボックスかバルコニーの最前列が無難です。ボックスの中は3列になっていますが、2列目でもかなり前の人が邪魔そうで、3列目は座ったままだとほとんど舞台が見えないと思います(特に両サイドのボックス)。2列目と3列目の椅子を高くしている分、パリよりはましと思いますが。

座席の前にコヴェントガーデンと同じメーカー製と思しき字幕ディスプレーがありますが、ドイツ語と英語の2ヶ国語対応なのはうれしい。ロンドンでもパリでも自国語しか出しませんから。しかしこの字幕機は液晶の性能が悪くて視野角が非常に狭い上、角度調節メカの壊れたものが大部分です。これはコヴェントガーデンでも全く同じなのでもともと欠陥商品なのでしょう。

(2)歌劇場の切符の販売と受け取りについての不満
会員でない一般人が切符を購入するときは、AランクとBランクの切符は毎年6月から全公演購入できるが、それより安い切符は1ヶ月前でないと買えない。そんな直近ではシーズンによってはフライトやホテルの手配が窮屈で不便です。ロンドンでは3ヶ月以上前から全ての席が発売になるし、パリでも2ヶ月以上前に買えます。なお、切符は歌劇場のホームページから自動的に振られるhttp://www.culturall.comから購入しましたが、特に不便はありませんでした。

インターネットで予約した切符の受け取り方ですが、各公演の開始1時間前からしか受け取れないのは不親切。私は今回3公演を購入したのですが、毎日窓口へ行ってその日の切符を受け取る手間が生じました。パリだと初日に行けばガルニエかバスティーユかに関わらず後の公演の分も全て受け取れます。

いいこともあって、インターネットで予約時にどの席を購入するか座席表に基づいて選べるのはすばらしい。コヴェントガーデンやパリではカテゴリーを選べるだけであとはシステムが勝手に選んでしまって細かい好みに合わせてくれない。ロンドンではコンサートホールの場合は同様のサーヴィスを提供していますが。

(3)プログラムについて
プログラムの価格が3.5ユーロ(パリ10ユーロ、ロンドン約9ユーロ)というのは比較的安い。しかしこれを買わないと出演者の名前がわからないというのは困りもの。その日の出演者情報は挟んである別紙に印刷されていて、本体はプレミエ時にデザインしたものをそのまま毎回使っている印象です。一度にせいぜい5-6回しか公演しないので経費節約上やむをえないのでしょうが、挟みこむ別紙に出演者の略歴情報ぐらい載せて欲しいものです。また、その表ぐらい入場者全員に配って欲しい。パリでもロンドンでも無料で配ってくれるのに。

本体には演目によっては日本語によるあらすじが印刷されているのは驚き(今回はドン・カルロ以外は日本語で印刷されていました)。恐らく、小沢さんが総監督になってからそういうサーヴィスが提供されるようになったのでしょう。上記のドン・カルロはそれ以前のプレミエだったと思われます。

(4)日本人観客
劇場内はパリやロンドンよりはるかに多いです。「ロメオとジュリエット」と「ドン・カルロ」のときは着飾った(和服姿も見ました)団体客がいて正面階段のところで記念撮影までやっていました。我々のように個人で来ている人も大勢いました。二日続けて見かけた年配のカップルがいたので話しかけてみましたが日本で旅行社にアレンジしてもらって、ミラノ、ミュンヘン、ヴィーンと全部で5公演のオペラを見て回るツアーだったとのこと。ミラノではアイーダを見たということなので訊いて見たらアラーニャ事件直後の12日だったので歴史的イヴェントには立ち会えなかったらしい。惜しい!この人たちは凄くてヴィーンフィルのニューイヤーコンサートは何度も見ているし、クライバー指揮の「バラの騎士」もミュンヘンと東京で都合3回見たという。

街を歩いても沢山一般旅行客に出会いますが人気のある街なんですね。日本人と見ると寄ってくる赤マントを着たお兄さんたちがいるのですがコンサートなどの切符を斡旋するヴィーン公式スタッフらしい(最初はダフ屋かと警戒しました)。日本人はそんなにいい客なのかと訊いてみたら「最高!」との答。割と簡単に切符を買ってくれるらしい。やはり皆さん音楽が好きだから来ているんでしょうね。

(5)新しい美術館
ヴィーンは古くて保守的なところと考えていましたが、最近は結構変化のある街であることを知りました。ヴィーンには割りと最近まで仕事で何度か来ていましたが、美術館を見て回る時間的余裕のあったのは1999年が最後でした。それ以降にいろいろ新しいものが開館したり建設されたりしたようです。私的にはおやっと思ったのはMuseum Quartierでいくつかの近代美術館が出来ていて、世界の美術に新規性を打ち出してきたこの国の伝統が今でも生きているような気がして敬意を表したくなります。狭いヴィーンにまた見るべき場所が増えたことはうれしいことです。

(6)空の旅
飛行機に乗って大陸に行くのはほぼ2年振りでした。今は全て自分のPCでチェックインして座席を選べ、搭乗券も自宅のプリンターで印刷できるようになっているのは便利です。しかし空港のセキュリティ強化による混雑はうんざり。冬でなかったら無理して車で行きたくなります。ロンドンからヴィーンまで1300kmぐらいあってちょっとしんどいし、途中で一泊しないといけませんが。
今回は行くと決めたのが急だったので航空券も安くないですが、極めつけは夜の公演に間に合うフライトを選ぶと早朝や最終便に比べて二人で200ポンド以上高くなること。前日の最終便で行ってホテルに泊まった方がはるかに安い!

ヴィーンからロンドンへ帰る英国航空のフライトは霧のためにキャンセルとなりました。国内便や近距離便を中心に多くの便がキャンセルになりましたが、ヴィーンからの乗客が少なかったせいでキャンセルしたに違いありません。他社便は運行していましたから。で、振り替えられたフライトはミラノ経由のロンドン行き。オーストリア航空とアリタリア航空を乗り継いだのですが遅れは4時間程度で済みました。それよりも荷物がちゃんと悪評のアリタリア機に積み替えられているか心配でした。我々の荷物は無事でラッキーでしたが、ヒースロー空港には引き取り手のない荷物が異常に多く滞積しており、しかも荷物が未着というクレームをする客の列も異常に長く、相当な混乱になっていました。これを見たら更に空の旅がいやになります。

(7)ホテル
ヴィーンのホテルはパリに比べて同じランクで格段に安いのがうれしい。予約をしようといろいろのサイトを使っていて発見したことに、欧州の業者を使うより日本の業者を使う方が安い場合があること。例えば楽天とかappleworldなどのサイトです。円安なのにこれはありがたいことで、今回は全て楽天を通して予約しました。4日ぐらい前まではキャンセル料が無料であるのもありがたい。パリではまだそういうホテルは見つかっていなくて、たいていの場合現在の為替レートをそのまま反映した値付けになっています。
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by dognorah | 2006-12-28 20:49 | 旅行

ベルヴェデーレ上宮再訪

久しぶりにクリムトを見ようと思って10数年ぶりに訪問しました(ちなみに下宮はまだ訪問したことがない)。美しい前庭は現在修復中で無残。

あまり多くない絵のコレクションを一通り見終わったものの、裁判の結果アメリカに渡ってしまった絵(どの絵かは助六さんの詳しいコメントを参照ください)を除いてもクリムトの絵がやけに少ない。係員に訊いて見ると、クリムトの何枚かは現在イタリア旅行中で1月にならないと帰って来ないという。それでも「接吻」はちゃんとありましたので再会をたっぷり楽しみました。改めてこの絵がどれだけ丁寧に描かれた画家の思い入れに満ちた作品であることかを認識し、暫し瞑想にふけりました。それにしても永久に見れなくなった5枚の絵はオーストリーの人でなくても惜しい。

ここにも数枚のシーレの力作がありますのでそちらでまたじっくり時間を使いました。次の絵は瓦の一枚一枚まで見たぐらい(^^;
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Egon Schiele: Fensterwand, 1914
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by dognorah | 2006-12-27 22:38 | 美術

ヴィーンの美術史美術館再訪

ここを訪れるのは多分3度目ですが、改めて収蔵品の名作たちに感銘を受けました。今回は小規模ながらBellini、Giorgione、Tizianoの特別展示もやっていました。
名作たちの中でもやはり惹きつけられずにはいられないフェルメールが一枚だけ小さな部屋にあります。The Allegory of Paintingsとかあるいは単にThe Art Studioという題名がついていますが力の充実した中期の作品です。
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ロンドンで見たThe Music Lessonと似た床が描かれていますが、あれと同じくらい完成度の高い作品ですね。よく知られた寓意が沢山描かれているのでモデルは歴史をつかさどるミューズのClioであり云々といった解釈も面白いですが、私は世俗的に見るのも好きです。画家はフェルメール自身なんでしょうか。モデルの女性の控えめな性格が丁寧に表現され、彼の好きな青い色の布を身に付けさせ、可愛くて仕方がない彼女への愛情を強く感じることも出来ます。例によって光の表現もすばらしいし、奥の壁の味わい深い様もフェルメールならではです。手前のカーテンもまた精緻な描き方で絵全体の仕上げも申し分なく丁寧です。こうしてみていると飽きません。私が訪問した日は部屋にはほんの数人しかいない(ほとんどが日本人!)ことが多いのでゆっくり見れました。

c0057725_21192065.jpg特別展(左の写真)の方はほとんどがイタリアから来ていますが、目玉はカタログの表紙にもなっているティチアーノのFloraでしょうか。生気溢れる華やかですばらしい絵ですが、私は過去に何度か見た次のやや控えめな絵の方により惹かれます。この絵はもともとこの美術館にあるものなのか今回イタリアから来たものなのか忘れてしまいましたが。とても雰囲気のある絵で、飽きずに見ていられます。フローラと並べて展示されていて、前にあるソファーに座って両方を見比べて鑑賞できるのはなんと贅沢なことでしょう。
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Tiziano: Girl in a Fur Coat, c1535
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by dognorah | 2006-12-26 21:45 | 美術

レオポルト美術館

ヴィーンのMuseums Quartierという新しい美術館がいくつか集合している一角にLeopold Museum という近代的美術館ができています。
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2001年設立だそうですが、名前の通りRudolf & Elisabeth Leopold夫妻によって建てられたものです。彼等の50年間にわたる近代美術品コレクションは5000点を超えるそうで、美術館建設には国とスポンサー銀行がかなりお金を出した模様。とても空間的余裕のある立派な美術館で、特別展を開催するスペースも確保されています。エゴン・シーレの絵はその中でも中心的存在でしょう。数十点の油絵と多くの水彩画、素描を所蔵していますが、水彩画は退色によるダメージを避けるため精巧なコピーが展示されています。グスタフ・クリムトの絵も10点ほどあります。
今回は時間的余裕を取って全館をゆっくり見て回りましたが、やはり圧巻はシーレでした。彼の絵は今までほとんどが人物画ばかり印象に残っていますが、今回風景画をまとめて見て背中に電気が走るような戦慄を覚えました。線は人物画と同様にわざといびつに描くようなスタイルですが、絵全体からものすごい情念を感じます。街を俯瞰して描いたような風景とか河のそばの集落など、どれもこれもその魅力に取り付かれてしまいました。絵のどの部分を見ても味わい深く、下の写真の絵など白い空に塗り込められた絵の具からでさえもエネルギーを感じることが出来ます。
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Egon Schiele: Haus mit Schindeldach, 1915, 110 X 140cm

この人が28歳でスペイン風邪に罹患して死亡したなんて本当に惜しいことです。
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by dognorah | 2006-12-25 23:30 | 美術

ヴィーンのピカソ展

国立歌劇場の裏手にあるAlbertinaという美術館で開催されています。ポスターを見て何気なく入りましたが、立派な建物でびっくり。
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最近内外共に修復したらしく、まるで近代建築のようですが、もとは18世紀にAlbert公爵によって建てられ、第2次大戦中の爆撃で歌劇場と共にかなり破壊されたらしい。私は何度かこの街で美術館巡りをしましたが、1999年にはまだ無かったように思います。気がつかなかっただけかもしれませんが。
とにかく今はとても立派な美術館で、18世紀の美しい建物に現代建築を組み合わせた特異なものでちょっとロンドンではお目にかかれないデザインです。展示面積は20,000平米もあるそうです。常設美術品もシーレなど多彩なようですが、今回は特別展だけを見ましたので未見です。ピカソ以外に2種類の特別展もやっていて、そのうちの一つはアンディ・ウォーホールの木炭で描いた有名ポップ歌手の大きな肖像スケッチで、なかなか面白かった。日本人では坂本龍一がモデルになっていました。
これをさらっと見てからピカソの展示室に入ったわけですが、予想以上の展示数でくたくたになりました。もともと多作家ですが1960年から亡くなった1973年までの13年間だけの作品を世界60箇所から集めて油を中心に200点!要するに最晩年の作品展なわけですが、そのエネルギーに圧倒されました。
下の絵はこの中で最も気に入った作品の一つです。
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Pablo Picasso: Femme assise a l’echarpe verte, 1960
カンヴァスに油彩 195 x 130cm

画家とモデルシリーズが何枚か展示されていますが、その解説を読むと彼は全てのヌードモデルに対してちょっかいを出していたそうで、その元気が創造の源泉であることを再認識させてくれます。

Picasso, Painting Against Time
22.9.2006 – 7.1.2007
Albertina
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by dognorah | 2006-12-24 22:48 | 美術

シュトラウスのオペラ「アラベラ」公演

2006年12月19日、ヴィーン国立歌劇場にて。ヴィーン3連荘の最終日です。
Arabella
Lyrische Komödie in drei Auftügen
Text von Hugo von Hofmannsthal
Music von Richard Strauss

Dirigent: Franz Welser-Möst
Inszenierung: Sven-Eric Bechtolf
Bühne: Rolf Glittenberg
Kostüme: Marianne Glittenberg
Chorleitung: Janko Kastelic

Graf Waldner: Wolfgang Bankl
Adelaide: Daniela Denschlag
Arabella: Adrianne Pieczonka
Zdenka: Genia Kühmeier
Mandryka: Thomas Hampson
Matteo: Michael Schade
Graf Elemer: John Dickie
Graf Dominik: Adrian Eröde
Die Fiakermilli: Daniela Fally
Eine Kartenaufschlägerin: Janina Baechle
Welko: Michael Wilder

アラベラを見るのはこれが2回目ですが、2年前にコヴェントガーデンで見たときもマンドリーカはトーマス・ハンプソンでした。そのときの共演者は、カリタ・マッティラ、バーバラ・ボニー、レイモンド・ヴェリー、ディアナ・ダムラウにドホナーニの指揮と錚々たる顔ぶれでムスバッハの演出と共にすばらしい公演でした。今回のものもかなりレヴェルの高い公演と思いますがそれには及ばない印象です。一番差が付いているのは演出でしょうか。今回のものはそれなりに合理的でよくできていると思うのですが、なんとなくもたもたして流れがスムーズでなく、ドタバタばかり目に付いてやや退屈さを覚えました。ハンプソンがアピールし過ぎるのも鼻につきます。

各歌手の出来はなかなかのもので、初めて聴くカナダ人ソプラノのアドリアンヌ・ピエチョンカは大柄な美人で潤いのあるいい声でした。キューマイアーは9月にコヴェントガーデンで聴いたときに比べると活き活きしており、やはりホームでは歌いやすいようです。ただ、体型的に男装姿は似合わない。アデライデ役のドイツ人メゾ、デンシュラグはハンプソンと同程度の身長があるすらっとした美人で歌もなかなか上手い。歌の上手さではソプラノのダニエラ・ファリーも印象的です。マッテオを歌ったシャーデも昨年コヴェントガーデンで聴いたときよりかなりよい印象を与えてくれました。ハンプソンで感心したのは、アラベラがマッテオと寝たと誤解して激怒する場面で滝のように唾を飛ばしながら怒鳴りまくり、ちょっとイガイガするような声になりながらもその後の歌が何の影響も受けずいつもの美声になっていることです。強靭な喉ですね。

ヴェルザーメストのシュトラウスは濃厚で美しく芳醇な音をたっぷり引き出し、やはり実力があるからこそこれだけ人気があると納得出来る演奏でした。しかしこの人やキューマイアーに対する拍手はすごいものがあります。
写真は、左からヴェルザーメスト、ピエチョンカ、ハンプソン、キューマイアー、シャーデ、デンシュラグです。
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by dognorah | 2006-12-23 21:49 | オペラ

ヴェルディのオペラ「ドン・カルロ」公演

2006年12月18日、ヴィーン国立歌劇場にて。イタリア語版の4幕ものなので休憩一回込みで3時間半と長くはない構成です。
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Don Carlo
Oper in vier Akten nach Friedrich Schiller von François Joseph Pierre Méry und Camille Germain Du Locle
Music: Giuseppe Verdi

Dirigent: Marco Armiliato
Inszenielung, Lichtarchitektur und Kostüme: Pier Luigi Pizzi
Chorleitung: Janko Kastelic

Philipp II: Matti Salminen
Don Carlo: José Cura
Rodrigo: Simon Keenlyside
Der Großinquisitor: Kurt Rydl
Ein Mönch (Kaiser Karl V): Goran Simić
Elisabeth von Valois: Olga Guryakova
Princzessin Eboli: Luciana D’Intino
Tebaldo: Laura Tatulescu
Graf von Lerma/ Herold: Vladimir Moroz
Stimme vom Himmel: Ileana Tonca

今回ヴィーンに来た主目的であるこの公演、こうして配役を書いていても改めて凄い顔ぶれだなぁと溜息が出ます。コヴェントガーデンではちょっと真似が出来そうもない感じがしますし、恐らく将来的にも当分これに匹敵するプロダクションも経験できないでしょう。

その歌手陣ですが、期待に違わず圧倒的な歌唱であり声でした。贅沢を言えば、大審問官と先帝カール5世の声がもう少し低音部で迫力があれば何も言うことはないというところです。男声陣ではサルミネンもキーンリサイドもクーラも好調でした。まずちょっと太目のテノールが舞台に響き、おお、クーラの美声だと頬が緩みましたが、次いで登場したキーンリサイドのど迫力の声で更にうれしくなります。最初から第3幕で射殺されるまで緩むことのない歌唱で、ややクーラが食われ気味。
サルミネンも持ち前の迫力ある低音が冴えます。彼の声が果たしてフィリッポ2世の役にふさわしいのかと言う巷の前評判もあったようですが私的にはすばらしい出来です。第3幕冒頭での独白シーンは悩める王の姿を感動的に歌って長い拍手を貰っていました。
c0057725_22452010.jpg女声陣ですが、エボリを歌ったディンティノが全く期待通りの歌唱でしびれました。演技も上手く凄い存在感があります。この夏にヴェローナ歌ったカルメンもすばらしいものでしたが、この小さな歌劇場では声をぐっと絞っても十分迫力を出せる歌手です。これに対してグリヤコワも一歩も引けを取らず凛々しく気品のある声を響かせて見事なエリザベッタ役を披露しました。私は初めて聴く人ですが細面の美人で、この役にはぴったりです。左の写真はクーラとグリヤコワです。
存在感的に一番アピールしたのは僅差ながらキーンリサイドとディンティノでしょうか。逆に5人の主要役者の中ではクーラがやや薄い存在感という印象です。

舞台は、宮殿などのフェンスでよく使われている金飾り付きの高い鉄柵を多用したやや象徴的な装置に古典的な柱を組み合わせたもので、衣装は古典的です。演出的にも特に変わった点は認められない素直なものです。最後はカール5世がカルロを引き離し、王との間に鉄柵が出現する仕組みになって終了。

演奏ですが指揮のアルミリアートを高く評価します。ヴェルディらしい劇性と叙情的な美しさを余すところなく表現した格調の高い音楽でした。管弦楽もさすがと言わせる美しいアンサンブルで、昨日のグノーとは大違い。国立歌劇場管弦楽団らしい甘美な音に酔いました。
本当に感動した公演で、途中何度か感動の余り涙が出るほど。カーテンコールでブラヴォーを連発しすぎて帰宅時には喉がガラガラでした。
トップの写真は第2幕終了時のもの。カーテンコールで珍しく舞台を見せてくれました。
次の写真は最後のカーテンコール時のもの。左からクーラ、グリヤコワ、アルミリアート、ディンティノ、サルミネン、キーンリサイド、リドル、シミッチです。
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by dognorah | 2006-12-22 22:51 | オペラ

グノーのオペラ「ロメオとジュリエット」公演

12月17日、ヴィーン国立歌劇場にて。

Roméo et Juliette
Music: Charles Gounod

Diligent: Bertrand de Billy
Inszenielung: Jürgen Flimm
Lichtarchitektur: Patrick Woodroffe
Kostüme: Birgit Hutter
Chorleitung: Ernst Dunshirn
Bewegungsregie: Renato Zanella

Juliette: Annick Massis
Stéphano: Michaela Selinger
Gertrude: Margareta Hintermeier
Roméo: Giuseppe Sabbatini
Tybalt: Marian Talaba
Benvolio: Martin Müller
Mercutio: Eijiro Kai
Paris: Hans Peter Kammerer
Grégorio: Clemens Unterreiner
Capulet: In-Sung Sim
Frère Laurent: Dan Paul Dumitrescu
Le Duc: Janusz Monarcha

舞台はとてもシンプルで装置はほとんどないに等しく、光線を多用してその場の雰囲気をイメージさせるやり方です。ほとんどミュージカル的という印象。花火が好きな演出家でもあります。ジュリエットのバルコニーシーンも舞台中央にしつらえた半円形の板が少し持ち上がって、その上に乗った彼女で表現している。最後にその板が垂直に立って回りの照明が全て消える中で発光し、瀕死のロメオとジュリエットが影絵になって手を取り合うシーンは効果的で美しい。

歌手では、ロメオを歌ったジュゼッペ・サバティーニがすばらしい声でした。ジュリエット役がいまいちの声だっただけに聴いている方は救われた感じです。そのジュリエットを歌ったアニック・マシスは一枚ヴェールがかかったような不透明な声が好きになれません。
他の歌手は概ねよい出来で、日本人バリトンの甲斐栄次郎はよく声が出ていて目立ちました。

管弦楽は全体的にはほぼ満足ですが、ヴィーン国立歌劇場管でもこんな音を出すのかというようなときがあり、ベルトラン・ドゥ・ビリーの指揮にやや疑問が生じました。
写真はちょっと暗いのですが、左からサバティーニ、マシス、甲斐、シム、ビリーです。
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by dognorah | 2006-12-21 23:02 | オペラ