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ROH Young Artists Programme発表会

10月30日、Linbury Studioにて。

今年もJette Parker Young Artists ProgrammeというROHの若手音楽家養成プログラムに所属する人たちの発表会の季節となりました。メンバーは任期2年で毎年半数が卒業し、その後に新人が充当されます。卒業した人の中にはKatie Van Kootenのように主役級の役で活躍している人もいますが、そうなるかどうかは当然のことながら本人の実力如何に懸かっています。

本日登場したのは次の歌手たちです。イギリス人はゼロ。
Ana James (ニュージーランド、ソプラノ、2年目)
Kishani Jayasinghe (スリランカ、ソプラノ、新人)
Nikola Matišić (スエーデン、テノール、2年目)
Andrew Sritheran (ニュージーランド、テノール、2年目)
Haoyin Xue (中国、テノール、新人)
Jacques Imbrailo (南アフリカ、バリトン、新人)
Robert Gleadow (カナダ、バス、2年目)
Krysztof Szumanski (ポーランド、バス、新人)

歌われた曲は全てオペラの一場面またはアリアで、ソロあり、デュエットあり、カルテットありと多彩に14演目、それぞれの人が2-3曲ずつ出演しました。
この中で終始安定していた上、演技的にも上手かったのはやはり舞台経験豊富なRobert Gleadowでした。この人はここで学ぶべきものはもう無いように思いますが、さりとて世界のオペラ界に打って出るというのもちょっと存在感が薄そうで、難しい人ですね。もう少しドスの効いた超低音が出るなどの特徴があればいいのでしょうが。ところで新人のバスKrysztof Szumanskiは昨年Gleadowに感じたのと同じ期待感が感じられました。柔らかいタッチの声が気持ちよくGleadowもうかうかしていられません。

バリトンは一人だけですが上手いときもある反面、ちょっと目立たない歌唱のときもありいまいちよくわかりません。

テノールは3人登場したわけですが、2年目のNikola Matišićが一番上手かったものの安定感の上でやや不安があります。この人はランチタイムコンサートでも前科があって、なかなか任せておけない弱点があります。あと1年、何とか改善して欲しいものです。同じく2年目のAndrew Sritheranは声量もあり、昨年ちょっと注目したのですが上手さの点ではあまり改善が感じられません。相変わらずちょっと荒い。珍しくジークムントを一曲歌いましたが、ワーグナー歌いの方向が意外と向いているかもしれないと思いました。新人のHaoyin Xueはいかにも中国人という丸い顔をしたチビコロさんですが、甘くて艶のある声を持っています。ラ・ボエームのロドルフォの有名なアリアChe gelida maninaはなかなか聞かせてくれます。高音はいいのですが中低音になるとちょっと汚れるのが惜しい。これから2年間頑張れば結構ものになるかも。

ソプラノ2年目のAna Jamesは今日はそれほど目立つ歌唱ではなく、あと1年頑張っても果たしてKatieの域に達するかどうか難しいところでしょう。
これに比べて珍しくもスリランカ人のKishani Jayasingheはレッジェロ系の魅力的な声とうまい歌唱の人で注目です。何よりも、しっかりとした個性的で美しい声が素敵です。
今夜本番を歌うというスケジュールのため、あと一人いるロシア人ソプラノMarina Poplavskayaは歌いませんでしたが、彼女もKatieと同様の高いレヴェルにいるので1年後には立派に巣立つ人でしょう。
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by dognorah | 2006-10-31 08:09 | コンサート

バレー「眠れる森の美女」(リハーサル)

10月27日、ROHにて。
知人に招待されて急遽見ることになりました。Friends会員に抽選で販売されるリハーサル券はAmphitheatre席であることが多いのですが、今日はストール席の真ん中でした。前方にプロのカメラマンがずらっといて立ったり座ったりするしシャッター音はひっきりなしに響くのですが、双眼鏡なしで舞台はよく見えます。

出演者
Princess Aurora: Lauren Cuthbertson
Prince Florimund: Federico Bonelli
Lilac Fairy: Marianela Nuñez
Princess Florine: Yuhui Choe
Bluebird: Zachary Faruque
他多数

Choreography: Marius Petipa (1890)
Additional Choreography: Ninette de Valois, Frederick Ashton, Anthony Dowell, Christopher Wheeldon
Music: Pyotr Il’yich Tchaikovsky
Conductor: Valeriy Ovsyanikov
Original Designs: Oliver Messel
Additional Designs: Peter Farmer
Lighting: Maek Jonathan

その知人の解説によると引退したJaimie Tapperの代わりにイギリス人のカスバートソンが充当されたそうです。彼女の現在のランクはFirst SoloistなのでPrincipal dancerのすぐ下。会場でお会いしたstmargaretsさんによるとイギリス期待の若手ダンサーのようです。ダンス自体はかなり上手いと思いますが、最後にちゃんと止まれないとかふらふらすることが多く、まだちょっと技量に不安があります。しかし表現力は結構あり、Act IIでの憂愁に満ちたダンスは背景ともよくマッチした雰囲気作りに成功しており、印象的でした。ボネリはさすがにピシッと決まった安定感ある踊りで、若いカスバートソンをしっかりリードしていました。
今回注目したのは日本生れの韓国人(これも知人から教えてもらいました)であるYuhui Choeという人で、体型的には吉田都さんに似ていますが、なかなか印象的な踊りで、第3幕で演じたPrincess Florineは出番が多いこともあってかなり目立ちました。まだFirst Artistというランクですが美形でもありこれから人気が出てくる人だろうと思います。相手役のZachary Faruqueもイギリス人のFirst Artistですが相当な技量の持ち主で二人のPDDも見応えがありました。
今日の指揮者は初めて見る名前ですが、これがなかなか上手く、しっかりオーケストラをコントロールしていい音楽を作っていました。チャイコフスキーですから聴き応えがあるのは当然にしても舞台に集中している観客にこれだけの印象を与えるのはたいしたものです。下の写真は、ブルーの色の二人がYuhui ChoeとZachary Faruque、その左のライラック色がニュネス、その左がボネリでさらにその左がカスバートソンです(クリックするともう少しクリアになります)。
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by dognorah | 2006-10-29 06:08 | バレー

マグダレーナ・コジェナーのモーツァルトアリア

10月27日、バービカンホールにて。

出演
Magdalena Kožená – Mezzo Soprano
Giovanni Antonini – Conductor
il Giardino Armonico

プログラム
Mozart: Overture – Mitridate, rè di Ponto
Mozart: Non più di fiori (La clemenza di Tito)
Mozart: Non so più (Le nozze di Figaro)
Mozart: Deh vieni, non tardar (Le nozze di Figaro)
Boccherini: Symphony in D minor, Op.12-4
Mozart: Ei parte + Per pietà (Così fan tutte)
C.P.E.Bach: Symphony in F major, W183/3
Mozart: Deh per questo istante solo (La clemenza di Tito)
Mozart: Parto, parto ma tu, ben mio (La clemenza di Tito)

コジェナーは名前は知っていましたが聴くのは初めての人。昨年末のベルリンからの放送映像ではとても痩せた人でしたが、今回は夏のザルツブルグでのガラコンサートのときとほぼ同様の普通の肉付きですが、1973年生まれにしてはちょっと老けている感じがします。こんなコメントする輩がいるから生年を伏せたがる人が多いのでしょうね(^^;
声も歌唱もなかなかすばらしく、アリアはとても楽しめました。各アリアでの表現の陰影が濃く、とても味わい深い歌でした。声は先日聴いたガランチャのほうが好みですが、コジェナーしか聴いていなかったらこれで満足しちゃいます。アンコールは多分モーツァルトの何か。3分程度のアリアでした。ROHでは多分来シーズンに予定されているロッシーニのCenerentolaに出演予定とのことです。

指揮と管弦楽も初めて聴く演奏ですが、こちらもなかなか上手い。ボッケリーニの交響曲などツボを押さえた説得力ある解釈でなかなかの感銘を受けました。アントニーニは全身音楽に乗っている風な指揮振りで好感が持てます。
ということで意外に楽しめたコンサートでした。
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by dognorah | 2006-10-29 00:21 | コンサート

David Hockney展2題

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Mr and Mrs Clark and Percy 1970-1
Acrylic on canvas 2134 x 3048 mm Tate


現在National Portrait Galleryで「David Hockney Portraits」という特別展が開催されています。それと呼応するかのように、Bond Street駅近くのAnnely Juda Fine Artなるギャラリーで「David Hockney: A Year in Yorkshire」という風景画展開催の情報をコメントとして守屋さんにいただき、あわせて鑑賞しました。

c0057725_6561875.jpgホックニーという人の作品はあちこちで散発的に見たことはあるものの、今までまとめて見たことはありません。特段の興味がなかったことにもよります。彼の絵に対する印象は、例えば左の写真のような明るいカリフォルニアを題材にしたイラスト的なものでした。今回の経験でも彼を理解したとは言いがたいのですが、結構奥の深い作家であることはわかりました。ペンで描いた肖像のスケッチ画でも的確に対象の個性を捉える目と技術はやはり一流画家のものです。
冒頭に掲げた写真は、学生時代からの友人達を描いた大作ですが、制作に1年かけただけあって丁寧に描かれ、かなり訴えるものがあります。今回一番感銘を受けた作品です。本人の言葉では最も自然主義的作品というだけあって色使いも含めて極めて写実的です。二人の間にバルコニーに出るドアがあって外の風景が描かれていますが、この距離を置いた構図が夫婦の現在の状況を現わしているのだという解説は面白いと思いました。この絵の完成後程なくして二人は離婚したそうです。このほかにもカップルを描いた作品がありますが、全て二人の精神的状況がわかるようになっているとの解説は説得力があります。

ホックニーはロサンジェルスに居を移してからも頻繁に故郷のヨークシャーに帰ってきて絵を描いています。その中で少年時代の自分を育んだ風景画も数多く描いていますが昨年から今年にかけて仕上げたものを数十点展示しているのが上に述べたギャラリーです。次の写真はその中の一枚です。
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かなりおとなしい色使いの作品もありますが、大体がちょっとイギリスの風景とは思えないような派手な色が使われています。c0057725_70089.jpgこれがカリフォルニアの風景なら例えば左の作品(Nichols Canyon)のようなものでも、あの太陽の下では印象的にありえると思ってしまいますが。恐らく少年時代の思い出を重ね合わせてこういう表現になったのでしょう。守屋さんは描かれた木々のフォルムを見てセザンヌを思い出されたようですが、私はむしろゴッホを思い浮かべるようなものを何点か発見しました。しかし、今年69歳ですがまだまだ制作意欲は続くようです。

David Hockney Portraits
National Portrait Gallery
12 October 2006 – 21 January 2007

David Hockney: A Year in Yorkshire
Annely Juda Fine Art
15 September 2006 – 28 October 2006
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by dognorah | 2006-10-27 07:13 | 美術

Maiko Moriピアノリサイタル

10月25日、St James’s Churchにて。

プログラム
ハイドン:Sonata in C major Hob XVI:50
ショパン:Scherzo No.2 in B flat major, Op.31
武満:Rain Tree Sketch
プロコフィエフ:Sonata No.7, Op.83

c0057725_21411611.jpg日本語で書けば、森麻衣子さん。1981年生れ。日本で奨学金を得て2000年にRCMに留学。首席で卒業して再び奨学金を得て今年修士コースをやはり首席で卒業。いくつかのコンクールで優秀な成績を収め、イギリスをベースに演奏活動に入る。写真は彼女のホームページからお借りしました。

すごい腕のたつひとです。和音はクリアでパルスのような立ち上がりで、スカッとする気持ちよさを感じます。演奏スタイルは、そのテクニックをベースにアレグロはダイナミックに思い切りよく飛ばすものの緩徐部分ではテンポを落としてしっとりとした情感を表現、全体としてはメリハリの効いた印象を与えます。
ハイドンのソナタの第1楽章ははっとする美しい表現でした。非常にダイナミックな演奏で、ハイドンをこんなにがんがん鳴らしていいのかという意見が出そうですが私の好きなスタイルです。
ショパンのスケルツォは彼女の特徴が最大限に発揮されたのではと思える演奏で、聴いていて背中がぞくぞくするような熱演、見事でした。中間部の緩徐部分ではロマンティックなショパンがきちんと表現され、コーダでは前半に優るダイナミックな表現で息を飲む構成美です。さすがに聴衆からも感嘆の声が飛び交いました。
プロコフィエフでもテクニックの冴えはすごいものがあります。よくぞと思える速いテンポでしかも一音一音くっきりと美しい音を連ねていく。全体としてはこの曲を完全に理解しているのではという説得力のある解釈でした。私はプロコフィエフはちょっと苦手なのですが、この演奏はほぼ集中して楽しむことが出来ました。ほぼというのは、第2楽章で何台もの緊急自動車のサイレンが外で鳴り響いたためですが、演奏者の方はこういう場合どういう風に集中力をとぎらせないようにするかお訊きしたいものです。彼女は一見平気な顔をして演奏を続けていましたが。
何はともあれ今後の活躍を期待したいものです。
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by dognorah | 2006-10-26 21:43 | コンサート

Amanda Forbes ソプラノリサイタル

10月23日、St James教会にて。

ソプラノ:Amanda Forbes
ピアノ:David Smith

プログラム
Roger Quilter
Love’s Philosophy, Op.3 No.1

Sergey Rachmaninov
Son, Op.38 No.14
Eti Ietniye nochi, Op.14 No.5
Vocalise, Op.34 No.14

Richard Strauss
Schlechtes Wetter, Op.69 No.5
Ständchen, Op.17 No.2
Ruhe meine Steele, Op.27 No.1
Cäcille, Op.27 No.2
Morgen, Op.27 No.4

Alfred Bachelet
Chère Nuit

Robert Schumann
Widmung, Op.25 No.1
Der Nussbaum, Op.25 No.2
Frage, Op.39 No.9
Stille Tränen, Op.39 No.10

Michael Head
The Singer

c0057725_9165794.jpgアマンダ・フォーブスはオーストラリア生れ。メルボルン大学で音楽を修めた後ロンドンのRAMでオペラコースを勉強した。2006年のKathleen Ferrier CompetitionでSemi-finalist、またRoyal Over-Seas League CompetitionでFinalistという成績を得ていて、かなりの実力の持ち主である。

声はちょっと固めながら高音までよく伸びて声量も豊かである。音程は全く安定していて気持ちがいい。各歌のニュアンスの表現がとても豊富である。全て高水準の歌唱であったが、特にAlfred Bacheletの曲にはちょっと感動した。いいコンサートであった。

RAMの学内オペラでは夜の女王などいくつかの主役をこなしているが、これからの出演予定は今のところScottish OperaのAdeleのみである。将来的には頭角を現わす人だろう。
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by dognorah | 2006-10-24 09:18 | コンサート

イギリスにおけるホルバイン

ドイツ生れの画家Hans Holbein (1497/8 - 1543)は10代でスイスのバーゼルに移住した。絵は同名の父から学んだ。1526年にエラスムスからトマス・モアを紹介してもらってロンドンを訪問し、2年間をそこで過ごした。いったんバーゼルに帰国するも、当地での宗教改革の破壊行動に耐えられず、1932年に再びロンドンに来た。時のイギリス王ヘンリー8世に認められて1536年に宮廷画家となってその後イギリス国籍も得た。1543年にロンドンで没。

今回のテート・ブリテンでの展覧会は彼のイギリス時代の画業その他を紹介するものでバーゼルを始めドイツ、フランス、アメリカなど内外から約160点が集められた。そのうち約30点が油絵であるが、大作Ambassadorsはナショナル・ギャラリーで見てくださいというわけかここには展示されなかった。しかし肖像画家としての彼の作品を見るなら今回の油絵よりもカラーチョークを用いて紙に描いた作品がお勧めである。さすがに大画家、人物の性格を的確に捉えた迫力あるスケッチであるし、その大部分は当然のことながら王室美術館所蔵で、そこが特別展でも催さない限り一般にはなかなか公開されないものだからである。
次の写真は左がチョーク画で、モデルはトマス・モアが後見人を勤めて後に彼の息子と結婚した人。Anne Cresacre (1526–7), Lent by Her Majesty The Queen, Black and coloured chalks on paper, 375 x 268 mm
右は油絵でモデルはヘンリー8世。小さな絵であるがさすがにパトロンの絵は精緻に描き込んであり、モデルの精悍さがよく表現されている。Henry VIII (about 1537), Lent by the Museo Thyssen-Bornemisza, Madrid, Oil on oak, 275 x 175 mm
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Holbein in England
Tate Britain
28 September 2006 – 7 January 2007
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by dognorah | 2006-10-22 02:57 | 美術

ラ・ボエーム:アルバレスは絶好調

10月20日、ROHのリハーサル。

Puccini: La Bohème
Libretto: Giuseppe Giacosa and Luigi Illica after Henry Murger’s “Scènes vie de Bohème”

Conductor: Philippe Jordan
Director: John Copley
Designs: Julia Trevelyan Oman
Lighting: John Charlton after William Bundy

Marcello: William Dazeley
Rodolfo: Marcelo Álvalez
Colline: Alexander Vinogradov
Schaunard: Jared Holt
Benoit: Jeremy White
Mimi: Katie Van Kooten
Parpignol: Alan Duffield
Musetta: Anna Leese(Noccia Focileの代役)
Alcindoro: Robert Tear
Sergeant: Bryan Secombe
Customs Officer: Jonathan Coad

ROHでは毎年のように上演される人気演目ですが、私は4年ぶりに見ました。この舞台装置もかなり古色蒼然としていて、恐らく相当長く使っているはず。でも、よく出来ていて、第2幕のレストランなど実にうまく作ったなぁと感心させられる造りです。

アルバレスは6月のトスカでは食中毒にかかってちょっと痩せていましたが、もう全く元通り。歌の方は絶好調というしかない出来です。来年早々にマンリーコでまたお目見えしますが、このまま好調を維持してもらいたいものです。
ミミのクーテンもすばらしい声と表現力で、先日見た「ファウスト」のときより乗っている感じです。ゲオルギューはうかうかしていると追いつかれそうです。
ムゼッタにはNoccia Focileが予定されていましたが、具合が悪かったのかリハーサルから代役です。しかしこの代役アナ・リースがなかなかのもので、聴いている方の頬もほころびます。ちょっときつめのソプラノが柔らかく透明なクーテンとは対照的でこの役にはぴったり。演技も上手く、代役で急遽やるようなものじゃない充実振りからすると恐らくアンダースタディだったのでしょう。彼女は昨年9月にBYOで見たジュリエット役で注目したのですが、今年の4月にROHの2軍であるROH2でやった「羊飼いの王様」でも好演した人で、本日がメインステージでの晴の初舞台でした。100点満点じゃなかったでしょうか。これからもどんどん出てきてもらいたいと思いました。

マルチェロを歌ったウイリアム・デイズリーは歌は上手いと思いますが余裕のない声にはそれほど魅力を感じず、やや不満。

フィリップ・ジョーダンの指揮する管弦楽はテンポ、旋律の歌わせ方などどれをとっても非常によかったと思います。音楽的にはプッチーニを思いっきり堪能しました。
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by dognorah | 2006-10-21 08:01 | オペラ

訃報:木村尚三郎氏

10月18日に逝去されました。心からお悔やみ申し上げます。専門の西洋史では特にフランスに詳しく、先日パリに行ったときも著書の「パリ」(1992年文芸春秋社)を携えていったものです。その他、含蓄深いエッセーをいくつか読んだことがあり、私の敬愛する方でした。
また、TV番組で接した人格にも感銘を受けた記憶があります。1980年代であったか、NHKの番組(多分N響アワー)で作曲家の芥川也寸志氏、作詞家のなかにし礼氏と組んだ対談番組があって、この3人のキャラクターが醸しだす雰囲気がすばらしく、毎週この番組を楽しみにしていたのを思い出します。N響の演奏を放送する前のイントロダクションとしてこの対談があったように記憶しますが、演奏はいいから対談をもっと長くしてくれ、と当時思ったものです。
この番組は惜しくも芥川さんが亡くなって事実上消えましたが(芥川さんの後任に岩城宏之さんが参加されたもののあまり3人は噛み合わなかった印象があります)、お三方のエスプリに富んだ会話は稀有のものでした。芥川さんが64歳という若さで亡くなられたときもショックでしたが、木村さんの76歳も現代ではまだまだ活躍できるお年と思っていただけに残念です。先日も著書の内容でお訊きしたいことがあって手紙を書こうかと家内と話していたところでした。まことに残念です。
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by dognorah | 2006-10-19 09:25 | 悲しい出来事

ヘンデルのオラトリオ「テオドラ」公演

10月17日、バービカンホールにて。
George Frideric Handel (1685 – 1759): Theodora
Libretto: Thomas Morell (English)
初演:1750年コヴェントガーデン

出演
Theodora: Geraldine McGreevy (soprano)
Irene: Anne Sophie von Otter (mezzo-soprano)
Didymus: Stephen Wallace (counter-tenor)
Septimius: Paul Agnew (tenor)
Messenger: Simon Wall (tenor)
Valens: Matthew Rose (bass)
管弦楽と合唱:Le Concert d’Astrée
指揮:Emmanuelle Haïm

ヘンデルはドイツ生まれながらイギリスに帰化したので上のようにaのウムラウトが取れて、イギリスではハンデルと発音されます。

このオラトリオの内容は、キリスト教がまだ禁制であったローマ帝国の時代に、信徒として捕えられたシリア王家の娘テオドラと彼女に恋をして密かにキリスト教に改宗したローマの役人が彼女の救出に失敗して共に死刑になる過程を描いたもの。

c0057725_20475642.jpgレヴェルの高い演奏でした。管弦楽は2000年にフランス生れの指揮者のアイム(左の写真)によって組織された団体で、合唱に至っては昨年結成されたばかりですが、共にとても上手い。指揮はきびきびしたもので冗長に流れることは一切なく、歌手も歌いやすそう。彼女は身のこなしと指揮ぶりからしてすごく若い人のように見えましたが、近くで見ると結構年をとっていて40歳前後と思われます。

管弦楽と合唱がフランス勢なのと対照的に独唱者は全てイギリス勢です(オッターはスエーデン人ですがロンドンで音楽教育を受けて在住しているのでイギリス人みたいなもの)。この中ではテノールのポール・アグニューの声がバリトン的であまり魅力がなくやや不満がありましたが、後は概していい歌唱でした。ソプラノのマクグリーヴィーは透明ないい声をしています。メゾのオッターはいつもながらとても安定した上手い歌唱です。カウンターテノールのウォーレスはなかなか艶のある声で、歌も上手く今まで聞いたカウンターテノールの中ではもっとも好感が持てました。バスのローズはROHでお馴染ですが、オペラよりこういう独唱の方が存在感を示せる人です。朗々としたすばらしい歌いっぷりで唯一の低音は迫力がありました。

第1部が約75分、第2部と3部がそれぞれ50数分で正味3時間の大曲でしたが、しっかりまとまった好演でした。第1部は長大なので時々失神してしまいましたが。
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by dognorah | 2006-10-18 20:51 | コンサート