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ロイヤルオペラハウス昨シーズンの統計データ

2006年8月で終わった昨シーズンの活動について興味深い数字が一部ですが発表されています。それによりますと、

・£1の補助金(主に宝くじの収益金から回される)を使って£2の収益を得たお陰で7年連続の黒字決算を達成。(収益はたぶん寄付金、広告、入場料などでしょう)
・オンラインによる切符販売の売り上げは700万ポンド(15.4億円)以上。
・メインステージでの公演数は285。
・他のステージでの公演数は426。
・BP Summer Big Screensの聴衆は41000人以上。
・教育プログラムを通じて14万人以上の子供と親が参加。
・メインステージでの学校用のマチネー公演に9324人の子供が出席。

決算の詳しい数字というのは見たことがありませんが、興味津々です。発表されるものなのかどうか知りませんが。何はともあれシティが活況で寄付は集まりやすい環境だと思います。健全なる財政が継続して運営されるのはオペラとバレーファンにとっては歓迎すべきことです。
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by dognorah | 2006-09-29 03:26 | 観劇

モーツァルトのオペラ: 偽の女庭師

9月26日、ROHにて。
Wolfgang Amadeus Mozart: La finta giardiniera
Libretto: Marco Coltellini(イタリア語)
初演:1775年ミュンヘン

出演者
指揮:John Eliot Gardiner
演出:Annika Haller (based on Christof Loy)
舞台:Herbert Murauer
照明:Reinhard Traub
管弦楽:English Baroque Soloists

Sandrina: Genia Kühmaier
Serpetta: Patrizia Biccirè
Arminda: Camilla Tilling
Ramiro: Sophie Koch
Don Anchise: Kurt Streit
Count Belfiore: Robert Murray
Nardo: Christopher Maltman

取るに足らない筋のため劇としては退屈そのものでブッファとしても笑いどころは少ない。生誕250年記念でもない限り上演されることは稀であるのも納得です(今月21日のプレミエがROHでの初上演)。したがってモーツァルトの音楽を楽しむオペラで、今回は簡素ながら美しい仕上がりの舞台を背景に各歌手のすばらしい歌唱をたっぷり聴かせてもらいました。

歌手の一押しはソフィー・コッホ。すばらしい歌にうっとりしました。2年前のROHのファウストでシエベル役を歌ったのを聴いたのが初めてです。今回も含めて彼女のズボン役ばかり聴くことになりましたが、すらっとした体型が男装にはよくお似合い。先日パリで聴いたガランチャとはライヴァルになりますね。声質もガランチャによく似ています。しかし、どちらかを選べといわれたらガランチャを取りますが。
ところでこの人はスペルからしてドイツ人かと思ったらフランス人なんですね。フランス語読みでもこの表記でいいのでしょうか。

3人のソプラノもそれぞれ持ち味を出していて良い歌唱でした。一番印象的なのはカミーラ・ティリングです。昨年4月にROHで観た「仮面舞踏会」でオスカー役をやって好印象を持っていましたが今回の公演でまた記憶が深まりました。演技もなかなか上手いし。

タイトルロールのゲニア・キューマイアーもさすがと思わせる声です。演技的にはあまりインパクトがありませんが。もう一人のソプラノ、パトリチア・ビッチレは声が細く、3人の中ではちょっと見劣りするものの演技は非常にうまい人です。昨年12月にROHで観た「仮面舞踏会」でオスカー役をやった人でそのときもカミーラ・ティリングの方がいいと思ったものでした。

テノールではクルト・シュトライトが太めの声ながら朗々とした声が好印象です。これに比べるとロバート・マレーはやや弱い。美声を響かせる場面も結構あっていいのですが、何か一本芯が通っていないような軟弱さを感じてしまいます。バリトンのクリストファー・マルトマンは終始安定した歌唱でこれも好印象。2年前にROHで観たコジでグエリエルモを好演した人です。

ROHのプロダクションとしては珍しく管弦楽は外部の団体ですが、古楽器による演奏ということで特別なのでしょう。ガーディナーの指揮は主兵を駆使してレヴェルの高いモーツァルトでした。劇の進行に応じたニュアンスの表現が実に細やかです。

舞台は現代に読み替えてあります。舞台左手から手前にかけてL字型の池が作ってあり、ライオンの口からジャージャーと水が出ています。池にははすの花らしきもの浮いています。舞台右側には板の橋のようなものがオケピットの上をまたいで観客席最前列近くまで張り出していて、歌手はここまで出てきて歌ったりします。よく出来ています。

写真は、左からマルトマン、ビッチレ、マレー、キューマイアー、ティリング、コッホ、シュトライトです。
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あらすじ
市長は女庭師のサンドリーナに恋心を抱いて、しきりにモーションをかけるが彼女の気を引くことが出来ない。召使のセルペッタは市長に惚れて奥の座に納まろうと目論むが相手にされない。サンドリーナ配下のナルドはそんなセルペッタに恋をしている。市長の姪アルミンダと婚約者ベルフィオーレ伯爵は結婚するためにここに来るが、居合わせた騎士ラミロは昔アルミンダと付き合っていた仲で、屋敷でばったり会ってよりをもどしたいと彼女に迫る。一方、伯爵を見たサンドリーナは驚きで失神する。昔痴話喧嘩の末に自分を刺して負傷させた男ながら、かすかに恋心を残しているからだ。こうして男4人と女3人のドタバタが始まり、最後は昔好きだったカップル2組がよりを戻す。原作ではセルペッタはナルドの攻勢に負けて3組目のカップルになるが、この舞台ではあやふやで市長とセルペッタのカップルのように見える。
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by dognorah | 2006-09-27 22:54 | オペラ

再びオペラ「ファウスト」

9月25日、ROHにて。

本日は、オーケストラボックス脇で鑑賞。
出演者はアナスタッソフが病欠のため先日の分とはメフィストフェーレのみ変更で、アルメニアのバスArutjun Kotchinianが出演。彼はドイツオペラベルリンの常連で、この役も経験があるらしい。下の写真の一番大きい人である。

歌手は前回と同じ人たちは本日も好調を維持。上記メフィストフェーレも急に呼ばれたにしては上出来。ちょっと軽めの印象だが歌は上手く、低音もよく出ていた。時間不足で他の登場人物とのタイミングを図る必要のある動作はこなせなかったらしく、例えば箱から小道具を取り出してファウストに与えたり、マルガレーテの部屋のバルコニーにタラップを近づけたりあるいはファウストとヴァレンティンの決闘でヴァレンティンの剣を手で止めてファウストに刺し殺させるところなどはメフィストフェーレの手下たちが黒子よろしくお手伝いするように変更していた。

ベニーニ指揮するROH管弦楽団はそばで聞いたせいか前回よりさらに音楽がこなれている印象で、この指揮者もやはりすばらしい人であることを再認識した。
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by dognorah | 2006-09-26 23:10 | オペラ

キーシンとLSOのシューマンピアノ協奏曲

9月23日、バービカンホールにて。

ピアノ:Evgeny Kissin
管弦楽:London Symphony Orchestra
指揮:Colin Davis

プログラム
Robert Schumann (1810 – 1856):ピアノ協奏曲イ短調 作品54
Jean Sibelius (1865 – 1957):交響曲第1番ホ短調 作品39

キーシンのピアノはいつものように透明でカチッとした響きで、全体に遅めのテンポで旋律を歌わせていくものの、ときにはダイナミックな強弱をつけながら急激にテンポを変えてメリハリをつけていく。あまりシューマンらしくないという印象であるが洗練された演奏である。デーヴィス指揮のLSOがつかず離れずぴったり寄り添って緊張を高める。デーヴィスは協奏曲もうまいなぁと感心した。第3楽章はがんがんテンポを上げていって締めくくる。なかなか面白い演奏だった。
例によってキーシンはアンコールを1曲。曲は定かではないがシューマンの曲かしら。

シベリウスの1番とかフィンランディアなどは私は苦手でちょっといらいらさせられる音楽である。今日の演奏でもままそういうときがあったけれど、思ったよりも楽しめた。コリン・デーヴィスといえばシベリウスを得意としていて、昔ボストン交響楽団を指揮して全曲録音を発売したときに何枚かのレコードを買ったことがある。全ていい演奏だった。今日も、まず曲の出だしからしてぐっと引き込まれる魅力的な演奏で全曲を通じて淀みなく音楽の流れを構築し、なかなかの説得力だった。
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by dognorah | 2006-09-25 20:06 | コンサート

グノーのオペラ「ファウスト」

9月22日、ROHにて。
Charles-François Gounod (1818 – 1893):Faust
Libretto:Jules Barbier & Michel Carré(フランス語)
初演:1859年パリ

出演者
指揮:Maurizio Benini
演出:David McVicar
舞台装置:Charles Edwards
衣装:Brigitte Reiffenstuel
照明:Paule Constable
振付:Michael Keegan-Dolan
合唱:ロイヤルオペラ合唱団
管弦楽:ROH管弦楽団

Faust:Piotr Beczala
Méphistophélès:Orlin Anastassov
Marguerite:Katie Van Kooten(Angela Gherghiuの代役)
Wagner:Robert Gleadow
Valentin:Russell Braun
Siébel:Christine Rice
Marthe Schwertlein:Della Jones

2年前のプレミエの再演です。今回のマルガレーテはゲオルギューとクーテンのダブルキャストなので両者の公演を一枚ずつ買っていました。しかし今夜はゲオルギューに振られたので2回ともクーテンで見ることになりました。残念です。

2年振りに見て、やはり演出はよく出来ていると思いました。舞台装置は古典的ではあるものの美しい仕上がりです。ワルプルギスの夜の猥雑さはまさにマクヴィカーの世界だし。

歌手は全般に良かったけれど特にベツァーラは調子がよく、安定してよく伸びる高音と艶のある声質がひときわ目立っています。彼は昨年リゴレットでマントヴァ公爵で聴いていますが、今日の印象はそれを上回ります。
メフィストフェーレを歌ったアナスタッソフも立派な歌唱でした。初めて見る人ですが顔と体型がブリン・ターフェルにそっくりなのはびっくりです。低音はターフェルのほうがよく出ます。この役はもともとJohn Relyeaが歌うはずだったのにいつの間にか変更されていました。何度も聴いている人なので今回の方が新鮮でよかったのですが。
クーテンも初の大役ながらそつなくこなしていました。舞台では背の高さが目立ちます。美人度、歌のうまさと声の透明な甘さではやはりゲオルギューが上です。紙一重の差ですが。
ヴァレンティンを歌ったブラウンという人も初めて聞く名前ですが非常にまともな歌唱でした。シエベルを歌ったライスは歌は上手いのですが、高音部での乾いた声が私には苦手です。ガランチャを聴いた後ではちょっとつらい。グリードウは例によって端役ながらいい声を聞かせていましたが、大役をもらえない人ですね。ヤングアーティストプログラムのメンバーでははるかに女性上位です。男声陣の中ではこの人が頭一つ出ている感じではありますが何かが足りないのでしょう。

指揮のベニーニは3年振りくらいで接しましたがいい音楽を作っていました。劇的な表現にちょっと不足感がありましたが。ROH管弦楽団は昨夜に続きいいアンサンブルを聞かせてくれました。

写真は向かって左から、ライス、アナスタッソフ、クーテン、ベツァーラ、ブラウンです。
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by dognorah | 2006-09-23 22:25 | オペラ

アレヴィーのオペラ「ユダヤの女」コンサート形式

Fromental Halévy (1799 - 1862):La Juive(Karl Leich-Galland編曲)
Libretto:Eugène Scribe(フランス語)
初演:1835年パリ

9月21日、バービカンホールにて。
この作曲家の名前は初めて聞きましたが、フランス人でマイヤベーアとかオベールなどと同時代人。両親ともユダヤ人らしい。弟子のグノー、ビゼー、サンサーンスの方がはるかに有名です(ビゼーはアレヴィーの娘と結婚したそうです)。上記表示のほかFirst nameをJacquesとかJacques-Fromentalとする表示もあるようです。
今回はROHの主催ながらコヴェントガーデンではなくバービカンホールで開催されました。作品の知名度がなく、歌手もあまりビッグ・ネームの人が出ないということで客の入りは6割程度でしたでしょうか。

演奏者
指揮:ダニエル・オーレン(Daniel Oren)
管弦楽:ロイヤルオペラハウス管弦楽団
合唱:ロイヤルオペラ合唱団

エレアザル:デニス・オニール(Dennis O’Neill)
ラシェル:マリーナ・ポプラフスカヤ(Marina Poplavskaya)
ブローニ:アラステア・マイルズ(Alastair Miles)
レオポルド:ダリオ・シュムンク(Dario Schumunck)
ユードクシー:ニコル・カベル(Nicole Cabell)


管弦楽は、始まったとたん金管が音をはずしたり全体にもたもたした演奏で「何じゃこれは?」と思いましたが、しばらくして立ち直り、アンサンブルも非常によくなって劇的な音楽をよく盛り上げていました。イスラエルの指揮者オーレンは舞台上でのパフォーマンスが大きく、見ていて飽きません。彼の作る音楽はレパートリーにより様々な意見がありますが、この音楽に関しては優れた演奏だったと思います。演奏が終わってから観客の拍手に応えて出たり入ったりするのではなくいつまでも舞台上に居座って拍手を求めるのはちょっとうざったらしい感じですが。

歌手はみんなとてもよかった。特に二人のソプラノがすばらしい。ラシェルを歌ったロシア人のポプラフスカヤは昨年ROHのYoung Artists Programmeに採用されて、お披露目ではそこそこ歌っているという程度でした。それが1年でこういう主役を歌ってたくさんブラヴォーを貰えるまでに成長したとはすばらしいことです。出番が多いのに最初から最後までレッジェロ系の声の調子が維持された熱唱でした。対してユードクシーを歌ったアメリカ人カベルは2005年のカーディフ声楽コンクールの優勝者です。こちらはスピント系でしょうか、ビロードを思わせる美声がとても心地よい。
テノール二人もなかなかの出来でした。二人とも聴くのは初めてですが、オニールは太めの声で声量たっぷり。両頬に生えた髭は真っ白で写真から想像していたイメージは裏切られましたが。アルゼンチン人のシュムンクはまだ若手で、甘い声の持ち主です。バスのマイルズはROH専属のような存在ですが安定した音程と声量で迫力たっぷり。この5人の役には全てアリアが用意されていますが、みんなよく出来たアリアで聴き応えがあります。

ということで音楽的にはすばらしい出来で楽しませてもらいました。
オペラのストーリーは下記のあらすじに書きましたが、ヴェルディのイル・トロヴァトーレと類似の、相手の子供を育てて相手に殺させることで復讐を果たす、という陰惨なもので私は苦手です。ユダヤ教とキリスト教の憎み合いが今日のイラクを彷彿とさせますが、ユダヤ人作曲家にとっては書きたいオペラだったのでしょう。
写真は終演後のものです。歌手は左から、シュムンク、オニール、カベル、ポプラフスカヤです。クリックするともう少し拡大します。
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「ユダヤの女」のあらすじ
16世紀半ばのスイスが舞台。ユダヤ人男性エレアザル(Eléazar)は異端者だということで息子を殺された挙句、住んでいたローマを放逐されスイスに移住する。その途中で盗賊に襲われて炎上する家を発見し、殺された母親のそばにいた女の赤ん坊を助ける。その家をよく見ると自分を糾弾したブローニ伯爵(Brogni)の家であった。復讐の念を心に秘めてその赤ん坊を一緒にスイスに連れて行き育てる。全てを失った伯爵はローマでの公職を辞し、地元でカウンシルの長を務めている。ここまでが伏線で、オペラは宝石商を営んで成功したエレアザルの元で立派に成長した娘ラシェル(Rachel)を中心に展開する。彼女は地元のプリンスであるレオポルド(Léopold)を独身のユダヤ人男性と信じて恋に陥る。ところが彼はキリスト教徒でしかも婚約者までいることが判明し、逆上した彼女は法廷に訴える。当時の法律ではユダヤ人とキリスト教徒の交際は禁止されており、違反者は死刑になるという。父親もグルだろうということで3人は捕えられる。レオポルドの婚約者ユードクシー(Eudoxie)が獄中のラシェルに面会し、自分ひとりで罪を背負ってレオポルドを助けるように懇願する。それを受け入れてラシェルとエレアザルだけが煮えたぎる油の釜で殺されることになった。以前、スイスで再会したブローニに、実は娘はさるユダヤ人に助けられて今でも生きていると仄めかして気を揉ませていたが、ラシェルが油の釜に飛び込む瞬間にエレアザルはブローニに「あれがお前の娘だ」と教えて復讐を果たす。
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by dognorah | 2006-09-22 22:36 | オペラ

サロメ

Richard Strauss:Salome
9月18日、パリオペラ座(バスティーユ)にて。
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指揮:Hartmut Haenchen
演出:Lev Dodin
舞台と衣装:David Borovsky
照明:Jean Kalman
振付:Jourii Vassilkov
演技指導:Mikhail Stronine

サロメ:Catherine Naglestad
ヨカナーン:Evgeny Nikitin
ヘロデ:Chris Merritt
ヘロディアス:Jane Henschel
ナラボス:Tomislav Muzek


前日に続いて美しい舞台と音楽を堪能しました。サロメを歌ったキャサリン・ネイグルステッドはアメリカ生れのソプラノ。今年6月のロイヤルオペラでトスカを歌って好評を博した人です。私はAキャストのゲオルギュー+アルヴァレスに行ったので聴きませんでしたが。

このネイグルステッドがすばらしいサロメを演じ歌ってくれました。シュトラウスのオペラらしい豊潤な管弦楽をバックにそれと調和する官能的な声と歌でした。7つのヴェールの踊りは振付も彼女自身のダンスも見応えのあるものです。裸体を見せていただきましたが想像していたよりも細い体であったのも良かった。メリットやニキティンを始めとする他の歌手も総じて上手く、オケも文句のつけようがありません。

この作品のDVDは2種類持っていますが(ベルリンとロンドン)、共に90年代の制作のせいかちょっと古めかしい感じですが、今回の上演は舞台、演出ともにはるかに近代的で美しいものでした。プレミエは2003年にカリタ・マッティラによって演じられたものです。

ヨカナーンは地下牢ではなく檻に入れられていて、必要に応じてその檻が舞台左手から出てくるという造りです。サロメとの会話は鉄格子越しに行われます。そして7つのヴェールの踊りは、人払いをしてヘロデ王夫妻とヨカナーンの前だけで踊られます。ヘロデのために踊っていたのが途中からヨカナーンのためのようになり、最後は全裸の体を彼に見せ付けて誘惑するかのように顔を見つめます。

さらに、彼の前でヘロデ王に首を要求してヨカナーンにショックを与える様も私には新鮮でした。首とその後の彼女の扱いもグロテスクではないのも好感が持てます。
舞台奥の月も最初は右手から時々刻々移動してきて中央に止まり、ヨカナーンの首が切られる過程で満月から欠けていって新月になるというきめの細かさ。

このレヴェルの高い公演は当分私の標準となるでしょう。
下の写真は向かって左から、メリット、ネイグルステッド、ニキティン、ヘンシェルです。
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by dognorah | 2006-09-21 22:05 | オペラ

皇帝ティートの慈悲

Mozart:La Clemenza di Tito
9月17日、パリオペラ座(ガルニエ)にて。

指揮:Gustav Kuhn
演出:Ursel and Karl-Ernst Herrmann
舞台:Karl-Ernst Herrmann
衣装:Karl-Ernst Herrmann
照明:Karl-Ernst Herrmann、Heinz Ilsanker

Tito:Christoph Prégardien
Vitellia:Anna Caterina Antonacci
Servilia:Ekaterina Syurina
Sesto:Elina Garanca
Annio:Hannah Esther Minutillo
Publio:Roland Bracht

もうただただすばらしい舞台に大感激しました。ガルニエでオペラを見るのは初めてだったのですが、コヴェントガーデンに比べてこじんまりしたこのホールの空間がさらに感激を高めてくれた気がします。

まず、演出、舞台、衣装に脱帽です。白と薄いエメラルド系の色を使った簡素で現代的な舞台ながら様々な工夫がなされていて、物語の内容と全く違和感がありません。一つ難点があるとすれば、セストの放火で炎上する宮殿の様子が舞台を正面から見る観客にしか見えないことでしょうか。私は正面だったので廊下のように作られた古代ローマ式列柱の奥で上がる炎と煙はよく見えましたが。
衣装も美しいデザインであるだけでなく、裏返して着て色を変え、心の中を表現したりするきめの細かさには感心するのみ。
皇帝が次々と花嫁候補を変えていくのですが、候補の女性に肩掛けを羽織らせることでメッセージを伝えたり、花嫁衣裳をつけたユダヤの王女が大きな卵形の岩をくりぬいたようなものに横たわって舞台を右から横切っていきシンプルな舞台に彩を与えますが、彼女がその肩掛けを落としていくことで求愛を断る様を表現したり、全く細かいことを見逃せないけれどわくわくする舞台です。オリジナルプロダクションは1982年にブリュッセルのモネ劇場で上演されたもので、1992年にはザルツブルグでも上演され、ここガルニエでは2005年に初上演されたものとのことです。

指揮のクーンはとても軽快な音楽作りでオケと歌手のバランスもよく、モーツァルトの音楽をたっぷり楽しませてくれました。

歌手では、セストを歌ったズボン役のエリーナ・ガランチャ(1976年生れ)が声も歌も最高!その上演技も容姿もよく、きりっとした美しい顔がこの役にぴったりです。もちろん観客の拍手もこの人に集中していました。彼女はラトヴィア生まれで既にヴィーンやザルツブルグで名を成している人ですが、来年7月のロイヤルオペラのコジ・ファン・トゥッテでドラベラ役を演じることになっています。楽しみが増えました。
アンニオを歌ったチェコ出身のミヌティロも同じくメゾですが悪くはないもののちょっと地味な存在です。
ヴィテリアを歌ったアントナッチもなかなか良いソプラノです。もうすぐロイヤルオペラでカルメンを歌うことになっていることからもわかりますが、声はやや太めです。時々ヴィブラートがかかることがありましたが全般的にはなかなかの熱唱でした。
セルヴィリアを歌ったシューリーナは最初ちょっと調子が出ない感じでしたが、2幕はいい声を披露してくれました。
ティート役のプレガディエンは容姿的には皇帝にぴったしですが、声はややバリトン的なテノールです。歌や演技は上手かったと思います。
プブリオ役のブラハトはこれも適任。声はバスというよりもややバリトン寄りでしたが。

写真は向かって左から、ブラハト、アントナッチ、クーン、ガランチャ、プレガディエン、ミヌティロ、シューリーナです。クリックするともう少し大きくなります。
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by dognorah | 2006-09-20 20:57 | オペラ

マーラー交響曲第8番「1000人の交響曲」

9月15日、ロイヤルアルバートホールにて。

演奏
Janice Watson (soprano)
Christine Teare (soprano)
Gillian Keith (soprano)
Catherine Wyn-Rogers (mezzo-soprano)
Susan Parry (mezzo-soprano)
Kim Begley (tenor)
Phillip Joll (baritone)
Matthew Best (bass-baritone)

London Symphony Chorus
London Philharmonic Choir
London Chorus
Brighton Festival Chorus
New London Childrens' Choir

Royal Philharmonic Orchestra
Daniele Gatti – Conductor

ロイヤルフィルの創立60周年を記念して開催されたイヴェントです。このオケは1946年に故トマス・ビーチャム(Sir Thomas Beecham)によって設立されたのでした。

規模が大きいゆえにめったに演奏されないこの曲を聴くのは15年ぶりです。15年前はロイヤルフェスティヴァルホールで聴いたことだけは憶えていますが演奏者のことはすっかり忘れてしまいました。イラクのクエート侵入をきっかけに米英がイラクに攻撃を仕掛けた事件の直後であったため時期だけはよく憶えているのです。

さて、今夜の演奏も立派なものでした。さすがに1000人も出演するわけではないですが、600人ぐらいにはなったでしょう。下の写真は演奏者全員が揃ったところです。左右の合唱隊のさらに上にも金管奏者が配置されています。
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第1部も第2部もコーダの部分は思い切り盛り上がるところですが、大オルガンの迫力もあってさすがのロイヤルアルバートホールも飽和状態となりました。
いつものように合唱は言うことなしの快演ですが、オーケストラもダニエレ・ガッティの棒捌きよく、とても頑張っていました。独唱陣ではソプラノのクリスティン・ティーア(えらく太った人ですが)とテノールのキム・ベグリーが好印象です。写真は独唱陣です(後ろは少年少女合唱団)。
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終演後何度目かのアンコールのときに拍手をさえぎってガッティが聴衆に向かってタクトを振り60周年記念らしく”Happy birthday to you…”と歌わせました。彼ももう音楽監督に就任してから10年になるんですね。とてもいい指揮者なのでもっと彼の演奏を聴きたいのですが、めったに振ってくれないのが難点です。
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by dognorah | 2006-09-16 07:45 | コンサート

ゲルギエフ指揮ヴィーンフィル演奏会

9月14日、満員のバービカンホールにて。ルツェルン、ワルシャワと回ってロンドンへ来たVPOは今日が二晩目。来週はオセアニアとアジアへの演奏旅行らしいです。人気ブログで有名な第1ヴァイオリニストのKさん(6月にリサイタルを聴きました)も今回は前から2番目のポジションで弾いておられました。ゲルギエフは6月に一度、先月は3回も聴いたのでこれで5回目、さらに今年中にもう一回聴くことになっているという頻度の高さに自分でもびっくりです。やはりショスタコーヴィッチを記念の年にまとめて聴いておこうという意思が働いたせいかと思いますが。

プログラム
シューマン:序曲、スケルツォと終曲、作品52
ショスタコーヴィッチ:交響曲第9番変ホ長調、作品70
ブラームス:交響曲第4番ホ短調、作品98
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番(アンコール)

最初のシューマンを聴いただけで心地よい音にやっぱりヴィーンフィルはいいなぁと思いました。今月始めにベルリンフィルを聴いたばかりですがヴィーンの方が好みであることを再認識しました。

ショスタコーヴィッチの9番は実演では初めて聴きましたが、とてもバランスのよい構成で、彼にしては小規模ながらよい曲と思います。ゲルギエフの指揮も説得力あるものです。

ブラームスはさてどういう演奏をするかとしっかり聴きましたが納得の演奏でした。第1楽章の導入部もいい感じでしたが、後半の盛り上げ方はなかなかのもの。第2楽章は情感を盛り上げるしっとりしたもので豊かな音楽です。セクシーささえ感じます。第3楽章はダイナミックで力強い。オケの統制がよく取れています。第4楽章は速めのテンポで畳み掛けるような演奏。しかし中間部は木管にじっくり歌わせて切なさをたっぷり表現させ、終曲は再びダイナミックに盛り上げて壮大な終わり方。上手い演奏です。今のところ私の経験した4番では最良の演奏です。

アンコールのハンガリー舞曲は楽しく盛り上がる曲。やや土臭さを感じさせるものでしたが、こんな短い曲でも譜面をめくりながら指揮するんだなぁと妙なことに感心。なかなかアンコールをする気配がなく、5-6回ステージに呼び戻されてやっと演奏してくれましたが、ちゃんと第4交響曲の譜面の下に小さな譜面が用意されていたのでした。
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by dognorah | 2006-09-15 19:30 | コンサート