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建築家、安藤忠雄氏の講演会

6月28日、Jerwood Hall(LSO St.Luke’s)にて。

City of London Festivalの一環として企画されたイヴェントです。イギリスのArchitecture Foundationも共同主催者となって、そこの理事が司会者を勤めました。講演は日本語で、通訳付です(通訳:Kyoko Kikuchiさん)。切符は売り切れで、リターンを求める行列まで出来る人気でした。日本人聴衆が駐英日本大使も含めて3-4割ぐらいです。

公演内容は、彼自身の生い立ちと建築家になった経緯、大阪市に代表される「若い人たちの提案を全く受け付けない頭の固い役所」への批判、彼の代表作の紹介、神戸地震後の新規プロジェクト(34件もあったそうです)、建築以外の活動分野の紹介(経済優先主義のために破壊されてきた日本の自然の回復運動など)、美術館への思い入れ、などです。

通訳をする時間も必要なため、あまり内容の濃いものとはいえませんでしたが、所々彼のポリシーみたいなものを述べて、なるほどと思うこともありました。
例えば、
・日本は四季の折々が美しくその影響を受けて先人たちが創造してきた美を大切にしなければいけない。自分は、例えば金閣寺や竜安寺に雪が積もった景色などをしっかりと心に留めて仕事をしている。
・それをベースに、これほど美しいものが世の中にあるのか、というような建築を作りたい。
・現代の日本は人々の寿命が延びて80歳90歳が当たり前になっているが、都市というものはそういう人たちの好奇心をも刺激するような形態でなくてはならない。

最後の文脈に関連する他の話もありましたが、人間好奇心をなくしたら終わりというニュアンスは、私の日常的考えと相通ずるものがあり、大いに同感です。
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公演後は関係者たちと挨拶されていましたが、カメラを向けた私に「一緒に撮りましょうか?」と声をかけてくれるくらい気さくな人です。写真は求めに応じてサインする安藤忠雄氏。
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by dognorah | 2006-06-29 23:55

ドン・ジョヴァンニ(コンサート形式)

6月27日、バービカンホールにて。semi-staged形式の公演で歌手たちは結構演技をします。パリのシャンゼリゼ劇場との共同制作です。

作品:Don Giovanni, dramma giocoso in two acts, K527
作曲:Wolfgang Amadeus Mozart
台本:Lorenzo da Ponte
初演:1787年

Don Giovanni: Ildebrando D’Arcangelo(バリトン)
Leporello: Lorenzo Regazzo(バス)
Commendatore: Giovan Battista Parodi(バス)
Donna Anna: Patrizia Ciofi(ソプラノ)
Don Ottavio: Francesco Meli(テノール)
Donna Elvira: Alexandrina Pendatchanska(ソプラノ)
Masetto: Alessandro Luongo(バリトン)
Zerlina: Anna Bonitatibus(ソプラノ)
Chorus: Théâtre des Champs-Élysées
Orchestra: Concerto Köln
Conductor: Evelino Pidò

とっても楽しい公演でした。コンチェルト・ケルンはピリオド楽器による小さな管弦楽で音はあまりいいとは思えませんが、ピドの指揮がすばらしく、生き生きとしたモーツァルトで心を躍らせながら聴きました。歌手たちもかなりの水準です。

タイトル・ロールのダルカンジェロは丁度1年前にコヴェントガーデンでロッシーニの「イタリアのトルコ人」のセリム役ですばらしい歌唱を聴かせてくれた人ですが、今日も何も言うことのない立派な歌唱でした。ハンサムで演技も上手そう、あれじゃ女はみんななびくだろうと自然に思ってしまいます。過去にはレポレロも歌ったことがありますが、私はドン・ジョヴァンニの方がよいと思います。今秋予定されているロイヤルオペラのカルメンでエスカミーリョを歌うことになっているので楽しみです。

レポレロを歌ったレガッツォは過去にロイヤルオペラで2度ほど出演したことがあるものの私は初めて聴く人です。最近Bowlesさんに名前を教えていただきましたが、キャラクターのあるバスバリトンと思います。歌唱は終始安定している上、コミカルな役どころを実に上手く表現してくれました。来年夏にはロイヤルでコジ・ファン・トゥッテのグリエルモ役への初挑戦をするそうです。

オッタヴィオを歌ったメリは張りのあるいい声をしたテノールで声量もあり、これは儲けものと思いましたが、時間の経過と共に低音部で何か喉に引っかかった様なあまり心地よくない声を出すようになり評価を下げてしまいました。それさえなければ上背もある立派な体格でいろいろな役に引っ張りだこになるだろうに惜しい。やはりテノールは難しいものです。

ドンナ・アンナのチオフィは登場直後は声量もなく声に張りもなくまるで下手なカウンターテノールのような腑抜けた歌唱でしたが、時間と共によくなり声を張り上げるようなところでは名声に恥じないコロラチュラソプラノのすばらしい声が出るようになりました。しかし終始一貫とは言えず、時たまカウンターテノール的なあまり好きではない声も出て私はいまいち楽しめませんでした。ちょっと調子が悪かったのかもしれません。来年夏にはロイヤルでジルダをやることになっていますがそのときは好調であって欲しいものです。

女性陣で唯一終始好調を維持していたのはドンナ・エルヴィラを歌ったペンダチャンスカで、ちょっと太目の声ながらいい歌唱でした。予定を見てもコヴェントガーデンでの出演は近い将来ではなさそうですが、もっと聴いてみたい人です。

ツェルリーナを歌ったボニタティブスは自分の見せ場のアリアではかなりすばらしい歌唱でしたが、その他の場面では声をセーヴしているような歌い方が見受けられちょっと残念です。

しかしこの公演全体としての出来はとても満足のいくもので、私は元来このオペラはあまり好きじゃなかったのに、音楽がこういう風に流れに乗って躍動するととてつもなく魅力的なものになることを知ったのは大きな収穫でした。
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写真は拍手に答える出演者たちで、向かって左から、ルオンゴ、ボニタティブス、レガッツォ、チオフィ、ダルカンジェロ、ピド、ペンダチャンスカ、メリです。
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by dognorah | 2006-06-28 20:18 | オペラ

小野明子ヴァイオリンリサイタル

6月26日、ウイグモアホール(Wigmore Hall)にて。

ヴァイオリン:小野明子(Akiko Ono)
ピアノ:Gordon Back

プログラム
・Igor Stravinsky (1882-1971)
Suite from Pultinella for violin and piano (1921-25)

・Leos Janáček (1854-1928)
Violin Sonata (1914-21)

・Eugène Ysaÿe (1858-1931)
Au Rouet 2ème Poème Op.13 (c1900)

・Richard Strauss (1864-1949)
Violin Sonata in E flat major Op.18 (1887-8)

アンコール
(1)ブラームスの何か
(2)クライスラー「愛の哀しみ」

c0057725_2017880.jpg小野明子さんは1978年東京生れ。12歳でメニューイン音楽院に入学。ユーディ・メニューイン最後の愛弟子とのこと。2000年にメニューイン国際音楽コンクールで優勝したのを皮切りに各地のヴァイオリンコンクールで入賞して国際キャリアを積んできた。現在使用しているヴァイオリンは1772年のJ. B. Guadagnini。

ピアノのゴードン・バック氏はウエールズ出身、小野さんが生まれた年には既に国際的に名前の知れた伴奏ピアニストで、今までにメニューイン、ミルシュテイン、パールマン、ヴェンゲロフ、ヨー・ヨー・マなど錚々たる演奏家の伴奏をしてきた大ヴェテランである。1974年に異例の若さでGuildhall School of Music and Dramaの教授に就任し、現在はユーディ・メニューイン・ヴァイオリンコンクールのディレクターである。

今日のプログラムは結構渋い。私はほとんど初めて聴く曲ばかりである。しかしどの作品もすばらしい曲であり演奏であった。彼女のヴァイオリンは深みのある美しい音色を奏で、音楽を聴く喜びに浸らせてくれる。特にヤナーチェックとシュトラウスのヴァイオリンソナタは聴き応えのある曲で彼女の解釈も完全に納得のいくもの。伴奏大家のピアノはさすがにすばらしく、ヴァイオリンと一体となってレヴェルの高い音楽を構成している。
全く知らなかった演奏家で、日系コミュニティ紙の記事で知って急遽来たのだが、聴きに来てよかったとしみじみ思った。下の写真は終演後の拍手に応える両氏。
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彼女にとっても恐らくこれがウイグモアホールデビューであっただろうけれど、大成功と思う。聴衆は当然日本人も目立ったもののイギリス人が大半であった。満員とは行かなかったものの本当に音楽を愛する質の高い人たちで、暖かい拍手が長く続いたのでアンコールの2曲目は躊躇する彼女をバック氏が促して弾かせた形になった。ところで、各曲の演奏終了後は主役が伴奏ピアニストを立てる仕種をして敬意を表してから聴衆にお辞儀するのが普通であるのに、彼女がそういうことを一切しなかったのがちょっと気になった。なにはともあれ、今後の小野さんの活躍を期待したい。なお、8月には日本でリサイタルが予定されているとのこと。お勧めです。
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by dognorah | 2006-06-27 20:23 | コンサート

マーラーの交響曲第3番

6月25日、バービカンホールにて。
Gustav Mahler: Symphony No.3

指揮:Paavo Järvi
メゾソプラノ:Lilli Paasikivi
合唱:Ladies of the London Symphony Chorus
Boys of King,s College Choir, Cambridge
管弦楽:London Symphony Orchestra

イングランドとエクアドルの試合のキックオフは4時。6時には試合が終わるだろうからそれまでに家を出てバービカンホールに向かう。いつものようにバス、BR、地下鉄と乗り継いで行くも全てガラガラ、道路もガラガラ。とても気持ちがいい。こういう状態が数日に一回起こるなら、このままイングランドが勝ち進んで欲しい(^^)

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指揮者のパーヴォ・ヤルヴィ(写真左)はエストニア生まれで現在Cincinnati Symphony Orchestraの音楽監督で、今秋からFrankfurt Radio Symphony Orchestraの音楽監督も兼任することになっている。先月、Deutsche Kammerphilharmonieを率いて日本でベートーヴェンの交響曲チクルスをやったようだ。リリ・パーシキヴィ(写真右)はフィンランドの歌手である。

マーラーの交響曲第3番は1896年夏にザルツブルグ近くのアッター湖畔で書き上げられた。完成直前に、ハンブルク歌劇場で自分の助手をしていたブルーノ・ワルター(当時19歳)を湖畔の家に招び、ピアノで全曲を演奏して聴かせたという。そのときワルターは初めてマーラーという人の音楽的本質を知ったと述懐している。
1902年の初演時には各楽章と全体に対していろいろ題名をつけて聴衆に紹介したもののそれを後悔し、以降題名を全部取り去って純粋音楽として提示することを望んだという。ワルターはそれについて「ほら、家を建てるときは足場を組むけど、完成したらそれを取り払うでしょ?」と面白い説明をしている。

ヤルヴィの指揮は、第1楽章は速めのテンポで雄々しく開始。その後もずっと速めのテンポでダイナミズムを強調する演奏で、やや力任せの感がしてマーラーの世界になかなか入れない。全曲を通じて管楽器を中心とするハーモニーの乱れが時たまあるのも気になる。冒頭のテーマが繰り返される辺りから少しずつしっとり感が出てきて、第2楽章以降はテンポもゆったりしてきて結構楽しめた。第4、第5楽章でのメゾソプラノは美しい声と深みのある表現がとてもすばらしく、合唱と共に一番マーラーらしい表現になった。最終第6楽章もその流れで美しく、起伏の表現もすばらしい。このように後半はかなり挽回したものの全曲を聴き終えての満足感はやや乏しく、昨年8月にPROMSで聴いたクリーヴランド管弦楽団の演奏は名演であったことが改めて認識できた次第。指揮者とオーケストラの両方ともちょっと格が違う印象である。
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by dognorah | 2006-06-26 19:59 | コンサート

Tosca公演(2回目)

6月23日、ロイヤルオペラハウスにて。キャストは前回の記事を参照してください。ただし出演者は次の一人だけ変更です。

Mario Cavaradossi: Marcelo Alvarez

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病気のため6月16日と20日の公演を休演したマルセロ・アルヴァレスが出るかどうか気を揉みましたが、今日は出演しました。体の方はほとんど変わらない太目のままですが顔はやや痩せたかなという印象です。しかし一体どういう不具合があったのでしょうか、歌唱の方はいつもの彼らしい美声と声量で文句なし。好調を維持しているゲオルギューとターフェルと共にレヴェルの高い公演となりました。これを見ると前回は何だったんだーと言いたくなります。アルヴァレスはやはり偉大なテノールです。これでこそゲオルギューとの二重唱が聴けるものになります。

トスカの第2幕でのアリア「Vissi d’arte, vissi d’amore…」は前回と同じく胸にジーンと来ましたが、欲を言えばもう少し感情表現を露にする方が好みです。しかしほんの数メートルの距離で見ても細身のゲオルギューはとても美しい。あれじゃスカルピアでなくても惚れ込んでしまいます。
ブリン・ターフェルは間近で見ると表情の作り方などやはりうまいなぁとおもいます。演技と歌唱の両方で見て3人の中では一番の出来でしょうか。

今日の私の席はオケピット横で、舞台も至近距離(あけたワインの香りがしました)ですがパッパーノの指揮する姿もよく見えるいい席です。難をいえば舞台の4分の1ぐらいが見えないことです(それゆえに安い)。しかしそれは前回見ているので今日は字幕もあまり読まずにもっぱら歌手と指揮者に集中。一番見応えがあったのはパッパーノの指揮でした。全身全霊をもって音楽作りに集中している姿を見るとそれだけで悪かろうはずがないと確信させられます。事実今回のオケの音も密度の高いものでした。歌手のアリアに対する拍手が続いている間はパッパーノも指揮棒で譜面台を叩いているんですね。他の指揮者ではあまり見たことがないような気がします。

今日は和服の「ロンドンの椿姫」さんと「Matthew」さんがいらしていたので2回の幕間は例によっておしゃべりに熱中していました。すぐ近くでピアニストの内田光子さんがパートナーの方と歓談されていましたがオペラハウスで彼女をお見かけするのは初めてです。
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by dognorah | 2006-06-25 00:01 | オペラ

The Virgin Mother by Damien Hirst

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もう旧聞なのでタイムリーな話題ではないですが、刺激的な作品でいつも物議をかもしているイギリスのターナー賞受賞(1995年)アーティスト、デイミアン・ハーストの巨大ブロンズ作品に「The Virgin Mother」というのがあり、その二つ目のコピーが5月末にピカデリーにあるRoyal Academyの中庭に設置されました(上の写真)。妊婦のヌード立像ですが、彼女の右半分は皮を剥いだ状態になっており、頭蓋骨、筋肉組織、胎児などが露になっています。c0057725_1494863.jpg立っているスタイルはドガのブロンズ作品「小さな踊り子」(右の写真)とそっくりで、恐らく敢えてそれをモデルにしたのだろうといわれています。

高さ10メートルを優に超える巨体で、よくここへ持って来れたなぁと思っていたのですが、BBC TVでグロースター州の工房からこのロンドンの都心までトレーラーに乗せて運んでくる様子が放送され、ちゃんとアーチ型の正面入り口をくぐって搬入されたことがわかりました。工房では各パーツが鋳型で製造された後、溶接で各部を接合して全体像を作り、多くの作業員が表面を機械ポリッシュして仕上げる様も紹介されていました。ブロンズだけでは足首など細い部分が全体重を支えきれないので、その内側にステンレスを入れて補強してあるとのことです。

c0057725_1503146.jpg上の文章で二つ目のコピーと書きましたが、実は最初のコピーは2005年9月にニューヨーク(Madison AvenueにあるLever Houseの敷地内)に設置されています。その作品は、皮を剥いだ部分が赤い色に塗ってあり、より生々しい印象です(左の写真)。
現在第3体目が製造中で(一体の完成に18ヶ月かかる)、聞きそこないましたが欧州内のどこかに設置されるようです。

この像が設置されて以来ニューヨークでもロンドンでも様々な反応があるのは当然ですが、概してネガティヴな意見が多いようです。もっとも、みんなから歓迎されるようではハーストの名が廃れますが。私は実物を見に行って、「さすがハースト、なかなかやるじゃん」と思いました。少なくとも動物のホルマリン漬けよりはずっとましな芸術作品と思います。今回も奇抜なアイデアではありますが、とてもユニークである点は相変わらず。展示は8月20日ごろまではされるようですが、ずっとそこに置いておいてもいいじゃないかと思います。
しかし、ロイヤル・アカデミーがこういう作品を展示するとは時代も変わったものです。ここは代々、非常に保守的な雰囲気を維持してきたところで、あの印象派の作品が世に出たときは真っ先に否定的な態度を表明したものです。
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by dognorah | 2006-06-24 01:54 | 美術

ソプラノのリサイタル

6月22日、ハイドパークチャペルにて。

演奏
ソプラノ:Margaret Cooper
ピアノ:Alison Luz

プログラム
・William Walton (1902-1983)
A song for the Lord Mayor’s Table

・Manuel de Falla (1876-1946)
Siete Canciones Populares Espanolas

・Richard Strauss (1864-1949)
Heimliche Aufforderrung Op.27-3
Allerseelen Op.10-8
Zueingnung Op.10-1

・William Walton
Daphne (Edith Sitwell)
Old Sir Faulk (Edith Sitwell)

ソプラノのマーガレット・クーパーは1982年ロンドン生まれでGuildhall School of Music and Drama(GSMD)の修士課程を修了し、国内でソロ活動を始めたばかりです。
ピアノのアリソン・ルスはスペイン生まれで、2003年にGSMDのピアノ科を卒業後しばらくソロ活動をしていましたがその後伴奏ピアニストとしての道を選び、伴奏科で修士を取っています。

クーパーの声は鋼の強靭さを思わせるもので、声量があり高音までよく伸びます。音程はきわめて安定で弱音でのニュアンス表現もしっかりしています。発音も極めて明瞭。上記プログラムではリヒャルト・シュトラウスのリーダーが特にすばらしい。もう少し優しさ、あるいは柔らかさが出て欲しいと思うときがあります。最初から最後までよく声が出ていてタフな人なのでシュトラウスはもちろんワーグナーでも積極的にやればいいかもしれないと思いました。
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by dognorah | 2006-06-23 07:26 | コンサート

マッケラスの80歳記念コンサート

6月20日、クイーン・エリザベス・ホールにて。

Sir Charles Mackerrasは1925年11月生まれなので、昨年11月に80歳になっているのですが、今月2回にわたって彼の80歳記念コンサートが開かれました。本日はその2回目です。お祝いに駆けつけたのは今年75歳のアルフレッド・ブレンデルでした。

演奏
指揮:Sir Charles Mackerras
ピアノ:Alfred Brendel
管弦楽:Philhamonia Orchestra

プログラム
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲とヴェヌスブルクの音楽
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調、K.595
シューベルト:交響曲第9番 ハ長調

最初のタンホイザーの音楽は、やや速めのテンポで演奏されましたが、前半の無限旋律部がちょっとイメージではなく違和感あり。しかし中間部のヴィーナスのテーマ以降はその早目のテンポも功を奏して躍動感溢れるすばらしいものでした。

モーツァルトのピアノ協奏曲はもちろんテンポ設定したのはブレンデルでしょうが、非常にオーソドックスな演奏で、モーツァルトというのはこういう風に演奏するんですよ、と見本を示しているようなスタイルでした。ブレンデルは顔や体をリズムに合わせて細かく震わせながら曲にのめりこんでいます。気品のある演奏ながら、レコードを聴くような感じなので演奏会としてはちょっと面白味に欠けたかもしれません。この人は1971年以来ロンドン在住なのでファンも多く、終演後は大歓声でした。マッケラスは非常に歯切れよい演奏でちょっとピアノとは対照的ですがメリハリの効いたよい指揮でした。写真は75歳と80歳のコンビです。
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最後のシューベルトは、第1楽章を聴いた段階ではダイナミズムといいアンサンブルといいとてもすばらしく、これはひょっとして名演になるかもと期待しましたが、全部を通して聴くとやや一本調子で飽きが来てしまいます。この曲は結構陰影があって切ない気持ちの吐露などがあると思っているのですが、マッケラスの演奏は日の当る面ばかり見せるような感じで影は置いてけぼりです。オケの演奏はかなり水準が高く、とても元気なのでブラボーがたくさん出ていましたが、ちょっと私のイメージではなかったのです。写真は拍手に応えるマッケラスとフィルハーモニア管弦楽団です。
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それにしてもマッケラスは80歳とは思えない元気さで、溌剌とした音楽を作ります。両腕の振りも派手で、相変わらずやや速めのテンポでぐいぐいとオケをリードします。休憩後のシューベルトではオケメンバーも指揮者も示し合わせて白い夏の上着を脱いで演奏していました。長い曲だし暑いから脱いじゃえということになったのかも。

余談ですが、上の写真に目障りなマイクがたくさん写っています。このフィルハーモニアだけでなくLSOもそうなんですが、最近本番演奏をCD用か放送用かの目的で録音するのはいいけど、まるで聴衆に遠慮することなくでかいマイクスタンドを立てるというのはやめて欲しいなと思います。もっとこっそりマイクを仕込んでもいい音で録音する技術はあると思うのですが。
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by dognorah | 2006-06-21 17:51 | コンサート

ブラームスのクラリネット5重奏曲

6月19日、ROHのCrush Roomにて。

Johannes Brahms: Clarinet Quintet in B minor, Op.115
室内楽としては大曲なのでランチタイムはこの曲のみの演奏である。

演奏
クラリネット:Marina Finnamore
第1ヴァイオリン:Sophia Holmes
第2ヴァイオリン:Katherine Wilson
ヴィオラ:Steven Broom
チェロ:Mary Mundy

メンバーは全てロイヤルオペラオーケストラのプリンシパル乃至はサブプリンシパルである。当然のことながら腕は確かですばらしい音を聞かせてくれる。こういうメンバーが揃っているあのオケが時々おかしな演奏をするのはやはりそのときの指揮者のせいか。

この曲は結構難曲といわれているそうだが、そういうことはほとんど感じさせずにブラームスの晩年の深遠な音楽が表現される。アンサンブルもよく、第2楽章などとても素敵である。もっと渋い曲かと思っていたがクラリネットも弦も意外に明るい音色で曲全体も明るい。楽しめました。
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by dognorah | 2006-06-20 22:08 | コンサート

プッチーニのオペラ「トスカ」公演

6月16日、ロイヤルオペラハウスにて。
Music: Giacomo Puccini (1899)
Libretto: Giuseppe Giacosa and Luigi Illica
(after the play by Victorien Sardou)

コヴェントガーデンのトスカ(Tosca)が40数年振りに新演出となった。なぜ40年以上も続いたかというと、やはりよく出来ていたということもあるが、かのマリア・カラス(Maria Callas)がコヴェントガーデンでタイトルロールを歌うのに合わせてイタリアの名演出家ゼッフィレッリ(Franco Zeffirelli)が演出した記念すべきものであったからでもある。この演出による最後の公演は2003年4月2004年7月にされたそうで、したがってトスカの公演は今回が3年2年振りということになる。ちなみに私はその旧演出を4-5年前に一度見ただけであるが、非常にまっとうな演出と古めかしいながらも美しい舞台装置であったことを憶えている。その公演でカヴァラドッシを歌ったルチアーノ・パヴァロッティは確かそれがコヴェントガーデンでの最後の出演だったと思う。コヴェントガーデンにとってこの思い出多い舞台装置は、シカゴのLyric Operaによって買い取られ、さらに使われ続けるという。

本日のキャスト
Floria Tosca: Angela Gheorghiu
Mario Cavaradossi: Nicola Rossi Giordano
Baron Scarpia: Bryn Terfel
Cesare Angelotti: Carlo Cigni
Sacristan: Graeme Danby
Spoletta: Enrico Facini
Sciarrone: Robert Gleadow
Gaoler: John Morrissey

Conductor: Antonio Pappano
Director: Jonathan Kent
Designs: Paul Brown
Lighting: Mark Henderson

カヴァラドッシを歌う予定だったマルセロ・アルヴァレスは病気で降板、ダブルキャストのもう一人が急遽歌いました。

新演出
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筋を追っても特に目新しい演出というのは気付きません。よく知っている物語をごく普通に演じるものでした。舞台装置は完全に古典的というか写実的なもので、第1幕の地上と地下に分かれたセットは美しい仕上げですが、ゼッフィレッリの古典的装置の呪縛からは逃れることができなかったような気がします。ということであまり新演出という感じはしないのですが、物語には素直にのめりこめるものです。第3幕のサンタンジェロ城の屋上の上方に何か雲のような造形物がかかっているのですが(上の写真)、私の座ったAmphithetreの席からは何かよくわかりませんでした。この辺りは演出家の意図があるはずです。

歌手
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アンジェラ・ゲオルギューは前回「La Rondine」で見て以来1年半ぶりですが、かなり痩せたような気がします。そのせいか、相変わらず美しいのですがちょっと鋭い顔つきの印象です。最初に舞台に登場して第一声を聴いたときはあれっ?と思うぐらい声量が小さいと感じましたが進行と共に正常に戻りました。声自体は全レンジ昔通りの美しさで心地よい。声による感情表現も上手いし立ち居振る舞いもスマート。出てくれてよかった。カーテンコールでの歓声はやはり一番大きい。

カヴァラドッシを歌ったジョルダーノ、私は初めて聴く人ですが、テノールにしては長身で容姿もよく、舞台栄えします。声もなかなか魅力的で、これだとアルヴァレスの代わりでもいいかと思ったとたん耳障りな声を出す場面があってがっかり。声を張り上げて歌うところはいいけど声量を下げたり音程を下げたりするとその欠点が出るように思います。第3幕のトスカとの最後の二重唱も彼の声が耳障りで全くだめ。「星は輝き・・・」のアリアは比較的上手く歌えた方だと思いますが拍手一つなし。カーテンコールでもブーこそ出なかったものの声はかけてもらえず拍手のみでした。

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スカルピアを歌ったターフェルも1年2ヶ月ぶりですがやはりちょっと痩せていました。歌は上手かったしスカルピアの迫力もさすがによく出ていました。この人はどちらかといえば悪役の方がいい味が出るような気がします。カーテンコールは盛大なブラヴォー。

指揮
すばらしいの一言です。パッパーノは思いっきり叙情的に演奏しましたがプッチーニの美しさが余すところなく表現されただけではなく劇的な部分も内面から出てくるようなエネルギーを感じました。今日はオケもほとんどミスがなくほぼ完璧な演奏でした。オケに対するブラヴォーも大きかった。
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来週もう一度行きますが、アルヴァレスが復帰していて欲しい。カヴァラドッシさえまともになれば今回のプロダクションはかなりのレヴェルになるでしょう。
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by dognorah | 2006-06-18 01:23 | オペラ