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プーシキン美術館展

只今一時帰国中でPCに携わる時間がほとんど取れないため、更新が途絶えていますが、東京に着いて翌日すぐに見に行った上野の都立美術館で開催中の上記展覧会についてまとめる時間が取れましたので感想を述べます。

c0057725_1613486.jpg今回貸し出された作品は1875年から1913年ごろまでのフランス絵画で、油絵、デッサン、版画などを取り混ぜて75点です。最近私が鑑賞したアンドレ・ドランドガの影響を受けた画家たちの展覧会を見ていたおかげで、この1875年から1913年ごろの年代のフランス美術界の流れがバックグラウンドとして頭に入っていて、理解しやすい展示物たちでした。

作家としては、モネ、ルノワール、ドガ、ピサロ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、ボナール、マティス、マネ、ロートレック、ヴラマンク、ドラン、ルソー、ブラック、ピカソなど錚々たる顔ぶれで、目玉はポスターにもなっているマティスの「金魚」なのでしょうか。シチューキンとモロゾフという二人のコレクターのコレクションから構成されていますが、テーマ的に統一が取れるはずもなく共通項はフランス絵画というだけです。しかしこの美術館といいエルミタージュ美術館といい19世紀からすごい目利きのロシア人がたくさんいたことに驚きます。とはいっても今回展示されている作品のほとんどは、同じ画家の作品の中でも特に優れたものというのは少ないような気がします。

c0057725_16133458.jpgそのなかで、一番気に入った作品はカミーユ・ピサロのL’Avenue de l’Opera(オペラ大通り、雪の効果、朝)という1898年の作品でした。残念ながらその写真はネットで探せなかったのですが、ほとんど同じ題名の1899年の作品はありました。それが左の作品ですが展示されていたものはもっときめが細かく美しい仕上げで、視点ももっと通りの真ん中に近いものでした。
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by dognorah | 2005-11-29 16:15 | 美術

マーラー交響曲第7番演奏会(11月21日)

エサ- ペッカ・サローネン(Esa-Pekka Salonen)指揮
フィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)
於:クイーン・エリザベスホール(Queen Elizabeth Hall)

創立60周年記念行事の一つとして、フィルハーモニア管弦楽団とサローネンは今月はじめよりUK各地と欧州の演奏旅行を行い、20日間で17回の公演を行ったそうですが、本日が最後の演奏会で、本拠地に戻って打ち上げです。当然この曲も今回のツアーのレパートリーになっていたものでしょう。一部の隙も無い感じの統制された指揮でほぼ完全に表現したいことをし尽くしたのではないでしょうか。オケの方も、この3週間何度も演奏した曲ですから指揮者の要求に目いっぱい応えたはずです。第1楽章最初の金管がちょっと不安定だったけれど、すぐに立ち直りましたし。

c0057725_22255192.jpgサローネンという指揮者はこの夏のPROMSではヘルシキフィルを率いて参加していました。そのときはTVで見ただけですが、指揮棒を持たず、両手を目いっぱい振り回してものすごくエネルギッシュな指揮をしていたのが印象的でしたが、今回もスタイルは全く変わらず、激しく動き回っていました(写真では指揮棒を持った姿が多くありますので、曲によって変えるのでしょうか)。第1楽章を終えた段階で、ハンカチで汗びっしょりの顔を拭いていました。楽団員は誰一人汗をかいた風でもないんですが。
この人は1958年生まれですから今年47歳、働き盛りです。作曲家としてもかなり名前の売れた人で、指揮者としてはロスフィルをはじめとして各地のオケとコミットして大忙しの身ですね。すごく有能な方だと思います。指揮ぶりは意志の強さを感じさせてとても好感が持てます。

演奏の方は、第4楽章までは比較的淡々と進み、第5楽章後半でテンポもスケールも爆発して、そのピークで劇的に終わります。第4楽章はとても美しい。全体としてすごい熱演でした。でも、正直言ってどことなく面白くない。感動はしましたが浅いのです。あまりにも優等生的だからでしょうか。実は、曲自体、9曲のうちではあまり好きな方ではないのですが。これからもっと聴いてみたいと思います。

今年はずいぶんマーラーを聴きましたが、来月聴く9番が最後です。来年も多くの演奏会を期待したいものです。
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by dognorah | 2005-11-23 22:27 | コンサート

細川俊夫氏の作品演奏会(Puecell Roomにて11月21日)

c0057725_2122020.jpg現在大活躍の作曲家細川俊夫氏(写真)の音楽を紹介するイヴェントに参加しました。彼は1955年広島生まれで、主にドイツと日本で活動してきた人なので、UKでは馴染が薄く、今回紹介された音楽もすべてUK初演となっています。
このイヴェントは毎月フィルハーモニア管弦楽団によって演奏される「Music of Today」という現代作曲家を紹介するシリーズで、自身も作曲家であるJulian Andersonの指導下で運営されているものです。
曲の演奏に先立っていつものごとくAndersonが細川にインタヴューします。そこで彼は、ドイツでHuberに師事して作曲を学んでいるときに、彼からもっと日本の伝統音楽を吸収しておくべきだと言われ、いったん日本に帰って多くの日本の音楽を勉強したという意味のことをしゃべっていました。

本日の演奏曲目
Singing Garden(UK初演)
Interim(UK初演)
Drawing(UK初演)

彼は舞台上のインタヴューで、線を描いてそれに沿って音楽をつけていくような作曲手法についての解説を述べていましたが、この最初の曲などまさにその通りかな、という印象を持ちました。まず弦による非常に細い音が奏でられ、他の楽器が次第に加わるも連続したメロディーになることはありません。すべての曲で、なんとなく雅楽のような日本の伝統音楽的インスピレーションが湧く音楽です。各楽器のタイミングが微妙で、奏者はかなり神経を使いそうですが、そうやって奏でられる音楽は内に秘めた静かなエネルギーを感じることが出来ます。独特な音楽空間です。日本の伝統音楽が見え隠れしながらもオリジナリティのある音と楽想が欧州で幅広く受け入れられている原因でしょうか。会場では2曲目が終わった後、さっさと帰ってしまう客が結構いましたが。最後のDrawingが最も西洋音楽っぽい響きだったので彼らはミスったんじゃないかなぁ、とちょっと残念でした。
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by dognorah | 2005-11-22 21:05 | コンサート

バスバリトンリサイタル(11月21日)

バスバリトン:Vojtech Safarik
ピアノ:Ouri Bronchti

プログラム
バッハ:Song from St Matthew Passion
ヘンデル:Aria from Samson Act II
マーラー:Der Tambourgesell
ドヴォルザーク:Biblical songs
ヴェルディ:Il lacerate spirito from Simon Boccanegra Act I
モーツァルト:Madamina, il catalogo e questo from Don Giovanni Act I

バスバリトンのサファリクは1979年チェコ生まれ。大学生になってから歌手になる決意をし、チェコで一通り学んでから現在はロンドンのRoyal College of MusicでPostgraduateとして引き続き訓練を受けています。今年、ベルリンのKommische Operで開催されたInternational Opera Studioに参加し、コンヴィチュニーの監督でドン・ジョヴァンニのレポレロを歌ったそうです。

ピアノのブロンクティは1977年イスラエル生まれ。基礎的な勉強はイスラエルでやった後ローザンヌで4年間伴奏ピアニストとしての訓練を受け、その後Royal College of MusicにPostgraduateとして移ったそうです。

今日のバスバリトンは、音域も広そうで声量も豊か、歌もとてもうまい人です。アリアなどすごく迫力もあり、後は何を勉強すればいいのでしょう、という感じです。でも、最後に歌った彼にとっては取って置きの歌であるはずの「カタログの歌」は、どこといってけちのつけようの無いうまさだったのですが、もっとうまい人を聴いたことのある私にとって、何かちょっと足りないなぁという感じにはさせられました。かなり身振りを交えてレポレロらしく歌っていたのですが、歌そのものに聴衆を笑わせるようなコミックさに欠けていたのかな?

いずれにしろ、聞いていてとても気持ちのいい声と歌、何とか舞台に出れるように頑張ってほしい人です。
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by dognorah | 2005-11-22 09:47 | コンサート

マリア・カラスが舞台でつけた宝飾類

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今、コヴェントガーデンのロイヤルオペラハウスでマリア・カラスが舞台で身につけたアクセサリーの展示をしているのは最近オペラハウスの公演を見に行っている人はすべて知っていることでしょう.一見きらびやかに見えるこういう宝飾類ももちろんオペラ舞台用にクリスタルガラスを加工して本物らしく見せたものですが、ミラノでそれを一手に引き受けて作っていたのが、今は光学製品や宝石で有名なSwarovskiの傘下にあるMarangoniというこれまた有名な宝石デザインおよび加工専門店です。カラスは1947年のイタリアデビュー(ヴェロナでのジョコンダ)で使って以来いたくこの店を気に入っていたのでスカラ座に対して自分用のアクセサリーはすべてここで作らせるようにと注文をつけていたそうです。本番直前にマランゴーニから今度の舞台用のアクセサリーが完成したという連絡を受けると、いそいそと店に出かけ、あのマリア・カラスが「羊のようにおとなしく」試着させてもらっていたと説明にあって笑ってしまいました。彼女は毎回、よほど新しいデザインを楽しみにしていたのでしょう。
c0057725_9405534.jpgその中のいくつかを写真に示します。本物の宝石に比べて光の反射の具合が違いますが、デザインはなかなかよく出来ています。オペラハウスのあちこちの空きスペースに少しずつ展示してあるのですべてを見るのはなかなか大変ですが、写真や解説もあってなかなか面白いです。1965年にカラスが最後のコヴェントガーデン公演をした「トスカ」で着ていたドレスなど宝飾類以外のものも展示されています。

ずっと見ていて気づいたのですが、彼女はイタリアオペラだけでなくワーグナーも歌っていたのですね。イゾルデとかクンドリとかブリュンヒルデなど。で、どれだけそういう役を歌ったのか調べてみました。
 イゾルデ: 12回
 ブリュンヒルデ: 6回
 クンドリ: 4回
ちなみに、彼女の当たり役ノルマは84回、ヴィオレッタは58回、トスカは55回、ルチアは43回なのでマイナーな出演回数だったわけですが、でもワーグナーに出演したというのはドラマティコの彼女にしたら不思議でもないでしょうが、イタリアオペラしか念頭に無かった私にとっては驚きです。イタリアの作曲家以外で彼女が舞台で歌ったのはこの他にはベートーベン(フィデリオ、10回)、モーツァルト(後宮からの誘拐、4回)、ハイドン(オルフェオとエウリディーチェ、2回)、グリュック(タウリスのイフィゲニア、アルセステ共に4回)のドイツ作曲家のオペラとギリシャのカロミリス(Ho Protomastoras、2回)だけです。レコードで「カルメン」などがありますがスタジオ録音です。

レコードは出ていないようですが、彼女のイゾルデってちょっと興味があります。
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by dognorah | 2005-11-19 09:43 | オペラ

Eularie Charlandヴァイオリンリサイタル(11月16日)

ピカデリーサーカス近くのセント・ジェームズ教会でのランチタイムコンサートです。
今日のヴァイオリニストは10月25日に聴いたクラリネット3重奏団のリーダーであるユーラリー・チャーランドさんです。そのときの記事で彼女がとても魅力的なヴァイオリニストであることを述べましたが、偶々ネットで情報を得て今回のリサイタルに来ることが出来ました。今日配布されたパンフレットには、彼女が1981年にローマで生まれたことが書いてありました。今年24歳ですね。
共演のピアニストは、Ivana Gavricというサラエヴォ生まれの人です。既にRoyal College of Musicの修士コースを終了したということなので、ユーラリーより少し年上でしょうか。

プログラム
クララ・シューマン:ピアノとヴァイオリンのための3つのロマンス 作品22
Thea Musgrave:Colloqui
セザール・フランク:ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調 

クララ・シューマンの曲というのは初めて聴いたと思いますが、短いながらもなかなか心地よい曲でした。真摯な姿で演奏する彼女を見ているとそれだけの価値のある曲だということが伝わってきます。

次のスコットランド生まれの現代作曲家マスグレイヴの曲は、鋭い音が交錯するいかにも現代の作品ですが、これも彼女は確信を持って演奏して直前の解説どおり二人の間の会話というスタイルを貫く。彼女は、イタリア人ですが、イギリスの現代作曲家を積極的にレパートリーに加えてその音楽の普及に努めているのは大変好ましいと思います。現代の演奏家は現代音楽に積極的にコミットするべきだと常々思っていますので。私達聴衆もそれを聴きたいと思っているのですから。若い人による現代音楽の解釈ははっとさせられることも多いのです。

最後は名曲のフランクです。フランクに師事したベルギーの作曲家イザイに教えてもらったことのある人が彼女のヴァイオリンの先生だったということで、フランクに関してはたっぷり教えてもらったということを演奏前の解説で述べていましたが、解釈にはかなり自信があるようです。この高貴な曲をほんとに気高く演奏してくれました。前の記事でも述べましたが一心不乱に演奏する彼女の美しい表情に曲の持つ高貴さがより高くなる気がします。

ピアノのガヴリッチさんも、丸くつぶらだった音でフランクの世界を美しく描出していました。二人のアンサンブルも完全とはいえないまでも曲のニュアンスを表現するには十分なレベルです。

この教会での演奏会を聴くのは初めてでしたが、隣のビルを解体して新しく立て直す工事の騒音がひっきりなしに伝わってくる環境をものともせず、解説を交えながらすばらしい音楽空間を作り出してくれた彼女に敬意を評さずにはいられません。ウイグモアホールあたりでリサイタルをやってくれるなら飛んでいくのですが。
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by dognorah | 2005-11-17 09:39 | コンサート

ロンドンのアンドレ・ドラン展

André Derain (1880-1954)はヴラマンクやマティスと親交があり、フォービズムあるいは野獣派と呼ばれる新しい絵画スタイルを標榜した一連の画家たちに属するとみなされている人である。ヴラマンクを通してゴッホにも影響を受け、後年自身でセザンヌのすばらしさを発見してもいる。画風としては極度に単純化したデッサンに現実離れした派手な色使いで風景や人物を描くのが代表的である。やはりヴラマンクと似ている絵やマティスと見まがう絵もある。

その彼がまだ26歳のときに画商によってロンドンに派遣され、テームズ河の風景を主に29点の絵をものにした。一部はロンドン滞在中に仕上げたが、大部分はパリに戻ってからスケッチ帳を元に完成させたものである。モネがロンドンに滞在してかなりの数のテームズ河の絵を描いて成功した例に倣って画商が2匹目のドジョウを狙ったものである。その意図が成功したのかどうかは知らないが、少なくとも結構すばらしい作品が生み出されていることはわかった。今回はそのうちの12点がフランス、アメリカ、イギリスから集められてコートールド美術館(Courtauld Institute of Art Gallery)に展示されている。

c0057725_9571168.jpg彼の色使いは、朱に近い赤、青、黄、緑を多用するもので、中間色の出現頻度は比較的少ない。光をキャンヴァス上に再現しようとした節があり、左の最初の絵がその例である。この時期の彼はとにかく全体として、明るい色のバランスで印象を訴える傾向にある。次の絵などそれが成功している例と思う。題材としてそれほど魅力的とはいえないものの、じっと見ていると色の躍動感が魅力的で、なかなか絵の前を離れることが出来ない。
実はこれらとは違ってもっとシックな色使いの作品もあって(といっても上記の基本色はあまり違わないのだが)、それが今回の展示品中最も気に入った絵なのであるが、残念ながらネットで検索しても写真は見つからなかった。コンクリートの柵に寄りかかりながらテームズ側を見ている二人の人物を描いたものである。

展示作品数は少なかったものの、かなり充実した作品群であった。

余談であるが、展示室に今回用に作られたカタログ(4000円!)のサンプルが置いてあり、それと実物を比べてみたが、現代の技術をもってしても印刷された色は本物とはちょっと違うことが歴然。ネット上で検索してみても同じ絵が様々な色で見つかって、どれが本物に一番近いのかさえわからない。困ったものだ。私のブログに掲げた写真もその類なので、全面的には信用しないでいただきたい。
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by dognorah | 2005-11-15 10:02 | 美術

バレー「マノン」再び(11月12日)

マスネーの美しいメロディに振付けられたこの名作バレーは、今年の2月にタマラ・ロホとカルロス・アコスタの組み合わせが主演のものを見て大感動したのですが、今回はシルヴィー・ギエムとマッシモ・ムッルが主演のものを見てきました。

今回のキャスト
Music: Jules Massenet orchestrated and arranged by Leighton Lucas
Choreography and Direction: Kenneth MacMillan
Conductor: Martin Yates

Manon: Sylvie Guillem
Des Grieux: Massimo Murru
Lescaut: Thiago Soares
Monsieur G.M.: Anthony Dowell
Lescaut’s Mistress: Marianela Nunez
Madame: Elizabeth McGorian
The Gaoler: William Tuckett
Begger Chief: Steven McRae

あらすじは前回の記事で書きましたので今回はカットします。

私はギエムのダンスを見るのは今回が初めてなのですが、評判通りとてもうまい。彼女のバレーだけを見るなら十分満足できるだけのすばらしさです。ただ、今回のマノンとしてのパフォーマンス全体を見たときには前回のロホとアコスタの組み合わせのほうが完成度は高く、はるかに感動は大きかったと言えます。相手役のムッルも悪くないのですが、ギエムとの共演では何か物足りなさを感じてしまいます。アクロバティックな振り付けなので男性の負担はかなりのものですが、Gaoler(看守)役のタケットとのパ・ドゥ・ドゥのほうがはるかに安定感がありました。タケットは身長もありますが体格もムルよりはがっしりした感じですからね。ただ、デ・グルー役で長時間ギエムの相手をするには若くない分体力的には無理なのでしょう。そういう意味ではロホとアコスタの組み合わせは理想的です。

今夜は満席でしたが、大部分は熱狂的なギエムファンなのでしょう。彼女が登場するだけで拍手が起こります。もう40歳を超えたこの人のマノンは恐らくこれで最後と思っているファンが多いと思います。終演後の観客の熱狂振りはものすごく、Standing ovationが果てしなく続きました。私はストール席の最前列で見ていたのですが、この間通路は後ろの方から押し寄せた人で埋まってしまい、帰るに帰れない状態です。仕方が無いからすぐ前で喝采に応えるギエムの写真を何枚も撮りました(^^; 
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しかしこの席はダンサーがよく見えて最高!体操で鍛えたというギエムの細かい筋肉、足だけでなく腕や背中も筋肉だらけなのがはっきりわかります。この席はしかし、床面に何か模様など描いてある場合は全く見えません。ピットは覗き込めるので譜面が読めるしその気になれば話しかけることも可能。各楽器の音の方向感がはっきりしているのでこれも面白い。

隣に座っていた日本人男性も彼女の大ファンで、ギエムのマノンだけですでにこれが3回目、今日のマチネーで上演されたGaleazziとBonelliの組み合わせのものも見て、先週はCojocaruとKobborgの組み合わせのものも見たというすごい方でした。彼が言うには、ギエムでもこんなに観客が熱狂したことは今まで無かったこと。やはり最後のマノンなのでしょうか。今月後半、日本で踊るボレロも最後の公演だとか。

その他の出演者もなかなかすごい人たちが揃っています。ムッシューGMをやったDowellは、昔マーゴ・フォンティンの相手役もやったことのあるヴェテランだし、レスコーの彼女をやったNunezは普段は主役級を踊る人。若手のダンサーの中では、乞食頭をやったSteven McRaeがなかなか印象深いはつらつとした踊りを見せてくれました。
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by dognorah | 2005-11-14 01:26 | バレー

ダスティン・グレドヒルのピアノリサイタル(11月12日)

c0057725_1037185.jpgハイドパークチャペルはThe Church of Jesus Christ of Later-Day Saintsという教会に付属した施設ですが、この教会の本部はアメリカのユタ州にあります。
そのユタで生まれ3歳からピアノを学んできたDustin Gledhillという人が今日の出演者です。180cmぐらいのスマートな長身で、育ちの良さを感じさせる雰囲気を持っています。彼はすべての教育をアメリカで受けてきたのですが、現在はRoyal Academy of Musicの教授についてさらに勉強しているとのこと。すでにアメリカ国内はもちろん、ロシア、ドイツ、オーストリア、イギリスなどでリサイタルを開き、CDもいくつか出している経験豊富な人です。

プログラム
ドビュッシー:エチュード第2巻から
       7 - Pour les Degres Chromatiques
       11 - Pour les Arpeges Composes
       12 - Pour les Accords
リスト:Funerailles-
    Harmonies Poetiques et Religieuses No.5
ショパン:ソナタ第3番 ロ短調 作品58

音色のきれいな人でダイナミックな音の幅も広い。ドビュッシーの世界にどっぷり浸らせてくれたかと思うと一瞬後にはリストの世界を展開し、さらにちょっと間をおいてショパンそのものという雰囲気を現出させると共にその繊細でダイナミックな音楽を余すところ無く描出してくれる。それぞれの作品すべてをとてもわかりやすく演奏したと言う感じであるが、感銘が深かったので自然にブラボーと叫んでしまいました。多くの聴衆もここでは珍しいStanding ovationを捧げていました。

このハイドパークチャペルの新しい世話役は、終了後の演奏者と聴衆の交流を奨励するというすばらしい方式を実践する人で、今日は私が一番に彼に話しかけることが出来た。すばらしい演奏に対するお礼を言ってから、訊きたいことを1-2訊いてみました。
「あなたはアメリカでほとんどの教育を受けてここまですばらしい演奏をすることが出来ている。そのあなたが敢えてイギリスに来て勉強しているということは、なぜ?」
彼の答えは、予想通りでした。
「リサイタルなどを通じて欧州の演奏家とも交わり、自分が受けてきた教育に無い何かを感じた、つまりアメリカとヨーロッパで音楽に対する接し方が違うということに気づいて、こちらでも勉強してみようという気になったのです」

この人はプラスアルファを得て一段とスケールが大きくなるかも知れないという予感を感じました。もっといろいろ訊きたいことがあったのですが、ほかの人たちも順番を待っているので割愛しました。掲載した写真は、彼に撮らせていただいたものです。

フンメルさんのブログに載っているケント・ナガノ氏のインタヴューを読んだ後にこのコンサートに行ったのですが、何か共通項を見つけたような気になりました。
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by dognorah | 2005-11-13 10:47 | コンサート

荒木経惟写真展

c0057725_040527.jpgNobuyoshi Arakiによる「self.life.death」という題の写真展がバービカン・アート・ギャラリーで開催中なので見てきた。日本では有名な写真家らしいが、写真そのものにはあまり関心が無かった私には初めて聞く名前である。左の写真は、荒木氏と今回の写真展のポスターで使われた作品である。

彼は1940年に東京で生まれた。下町を愛し、若いころからその周辺に題材を見つけて写真を撮ってきたという。対象は人間が圧倒的に多く、その他に、花、食べ物、下町風景などがある。彼は言う「人間の顔は体の中で最も露出された部分で、その人の人格がすべて表れている。それを写真に収めたい。」若いころから取り続けた人物像はプリント時にすべて背景を剥ぎ取り、真っ白にして顔が際立つようにして、いかにその人となりを表現するかに研究時間を割いてきたようだ。恐らく何千枚と撮ってきたのであろう。展示してある人物の顔には一種の迫力が感じられる。
ある展示室には4000枚に及ぶポーラロイド写真が天井から床まで壁3面を使ってびっしりと並べられているが、あのちゃちなカメラでもこういう人が撮ると実にきちんと写真になっているのに驚く。
彼を有名にしたのは女性モデルの露な肢体とか緊縛写真とからしいが、それもテーマ別に展示されている。こういう写真自体からはほのかなエロティシズムも感じられるが、特殊なポーズでもやはりその人物の内面を探ろうという意図がよく見える。
展示スペースに掲げられた英文の解説によると、日本ではヘアが写っていると発禁になるので彼は苦労したみたいなことが書いてある。何度も猥褻物陳列容疑で逮捕されているらしい。出版物は従って日本向けと海外向けの2種類を出している。会場でも何種類か販売されていたが、今回のために用意されたものは本の厚さが6-7cmにも及ぶ大部で、値段は8000円であった。

今回の作品では性器そのものが写っているものが多数あるので、このままでは日本では展示出来ないだろう。日本の現状を揶揄するがごとく、こちらではこの写真展は12歳未満は入場禁止となっている。日本のお上の精神年齢は12歳未満ということか。確かにそういう面は無きにしも非ず。

会場の一室で彼を紹介するドキュメンタリービデオが放映されている。1時間以上に及ぶ長いものなので、上映は2時間に一回である。しかしこのビデオはよく出来ていてとても面白い。中味は、彼自身のコメントや日常の仕事の現場、女性モデルのコメント多数、北野武や有名評論家のコメントなどで構成されているが、彼の仕事に対する思想や姿勢がよくわかる。モデルはほとんど彼が個人的に知り合った、あるいは、志願して来たアマチュアであるが、彼に写真を撮ってもらうのが無上の喜びであるような感じがよく出ている。ほとんど日本語で、英語字幕付であるが他の観客も熱心に最後まで見ていた。これからご覧になる方はぜひこれも見ることをお勧めする。展示は来年の1月22日まで。
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by dognorah | 2005-11-12 00:43 | 美術