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ニールセンのオペラ「Maskarade」 -9月22日

ロイヤルオペラでも初めて上演するというこの作品を見てきました。
Maskaradeというのは仮面舞踏会を意味するデンマーク語です。日本語に訳すとヴェルディの有名なオペラ「Un ballo in maschera」と同じになりますが、今回のものはコメディです。また、原語はデンマーク語ですが今回は英語翻訳版を使っての上演でした。ニールセンにとっては不満でしょうね。

あらすじ
主な登場人物は、Jeronimus家の当主とその夫人Magdelone、息子のLeanderとその召し使いHenrik、門番のArv、それにLeonard氏とその娘Leonoraです。場所はは18世紀のコペンハーゲン。LeanderとLeonoraはお互いに知らないのに父親同士の話し合いで婚約者同士になっています。王室ではよくある話ですが、一般のご大家でもあるんですね。

ある日、Leanderは仮面舞踏会に行き、ある娘を見初めてお互い恋に陥り、婚約者の存在など眼中になく父親の怒りを買うのですが、結局その娘が婚約者のLeonoraであることがわかってめでたし、となる他愛無いお話です。その間いろいろどたばたが繰り広げられます。

キャスト
Jeronimus: Brindley Sherratt
Magdelone: Kari Hamnøy
Leander: Michael Shade
Henrik: Kyle Ketelsen
Arv: Adrian Thompson
Leonard: Robin Leggate
Leonora: Katie Van Kooten
指揮: Michael Schønwandt
演出: David Pountney

ニールセンの音楽は美しく叙情的な場面もあり、まあ悪くないです。しかし、特に魅力的なアリアがあるわけでもないし、喜劇として非常に面白いということもなく、ダンスシーンが当然いっぱいあるものの全体としてはオペラというよりミュージカルじゃないかという印象です。舞台は全体を額縁で囲ってその絵の中で繰り広げられるお話という設定だったのでしょうが、舞台装置そのものはまずまずの出来で悪くはありません。照明の使い方が効果的で面白かったし。

歌手は、Jeronimus役に予定されていたJohn Del Carloが都合悪くなり、かわりにBrindley Sherrattという人が歌ったのですが、可もなし不可もなしというところです。更に、Leonora役に予定されていたEmma Bellが病気ということで急遽Katie Van Kootenという先日の「Mitridate, re di Ponto」でArbateを歌った人が代役になりましたが、恐らくUnderstudyだったのでしょう、問題なくこなしていました。
ということで予告時に写真入で紹介されていた二人の重要な歌手が代役という公演で、他に特に印象深い歌手もいなくて、あまり楽しめませんでした。ニールセンの作品は珍しいのですが、オペラとしてはやはりあまりいい出来ではないですね。

ところで今夜の上演は、舞台袖に手話の人が立って台詞を伝えていましたが、普通の演劇ならいざ知らず、音楽を聞くことが出来ない聾唖者が芝居の筋だけ見るためにオペラ劇場に来るのかしらと疑問に思いました。すべての演目ではないですが3ヶ月間の公演で2晩程度そのサービスが設定されています。最初、「Sign-language-interpreted performance」と表示されているのがよく理解できなかったのですがこういうことだったんですね。
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by dognorah | 2005-09-24 21:18 | オペラ

チェロとピアノのリサイタル -9月22日

c0057725_18462748.jpgハイドパークチャペルにおけるランチタイムリサイタルです。
今日の演奏者は4月16日にも演奏していますので今年2回目です。





チェロ:Rebecca Hewes
 1983年生まれ。180センチ以上の長身です。この6月にRoyal Academy of Musicを卒業しました。既にあちこちで本格的リサイタルを手がけています。

ピアノ:Russel Hepplewhite
 1982年生まれ。同じくRoyal Academy of Musicを今年卒業。ピアノだけでなく、作曲も学び、両方ともとても活発な活動で注目を浴びています。

プログラム
 ベートーベン:チェロソナタ第3番イ長調 作品69の第1楽章
 マルティヌー:ロッシーニの主題による変奏曲
 ラフマニノフ:チェロソナタト短調 作品19の第3楽章
 ヘッペルホワイト:Thinking Through Sound
 ポッパー:ハンガリーラプソディ 作品68

レベッカさん、4月に見たときよりもちょっと痩せて、より美人になっていますが、音の方もより洗練されたのではと思います。とても心地よい音で深みのある音楽を聴かせてくれます。ピアノのラッセル君も前回と同じくダイナミックな弾きぶりと硬質の和音が快調で、既に3年も組んで演奏活動しているからでしょう、両者の息もぴったり合っています。お互い主張すべきところは目いっぱい主張しているのに調和が取れている様は小気味がいい。

今回のベートーベンは前回よりはるかによろしい。始まってすぐに聴衆を引き込む説得力があります。マルティヌーは激しいピアノのタッチをバックに独自の世界の描出が印象的。ラフマニノフのこの楽章はすごく叙情的な曲ですが、ピアノのとても細やかな表現が効果的で美しい演奏になっています。ヘッペルホワイトの「Thinking Through Sound」はこのピアニスト自身の作曲ですが、現代曲らしい鋭い音も入っているものの全体におとなしめで短いながら魅力的な曲です。思うに、パートナーの意見がダイレクトに反映できる環境ですからチェロ奏者から見ても演奏のし甲斐のあるものに仕上がるのでしょう。

4月に引き続き、それぞれの確かな技量と共に、二人の共演はとてもいい結果を生んでいる印象を受けました。今後どういう道を進むのかわかりませんが、これからもぜひ一緒に活躍してほしいコンビと思いました。
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by dognorah | 2005-09-23 18:48 | コンサート

ロイヤルオペラの來シーズンへの期待(3)

2006年2月から5月ぐらいまでの演目の予約時期となりましたので詳細と期待について述べてみたいと思います。今回は5演目ですが、すべて初めて見るものばかりなので漏れなく見に行く予定です。

・ヴェルディ作曲「マクベス」
 指揮:Yakov Kreizberg
 演出:Phyllida Lloyd
 マクベス:Thomas Hampson
 マクベス夫人:Violeta Urmana
大好きなハンプソンが出るのがうれしい。ウルマナは昨年10月の「運命の力」でレオノーラ役をやり、すばらしい歌唱を聞かせてくれた人なので今回も期待しています。
指揮者はROH初登場です。名前は知っていますがまだ聴いたことがありません。ロイドの舞台はヴェルディの1847年初版を使うそうです。

・ベルク作曲「ヴォツェック」
 指揮:Daniel Harding
 演出:Keith Warner
 ヴォツェック:Johan Reuter
 マリー:Susan Bullock
 キャプテン:Graham Clark
 軍楽隊長:Jorma Silvasti
ディレクターはROHの「リング」を演出している人で、このヴォツェックは彼の3年前の仕事です。指揮者は全く知りません。タイトルロールを歌うロイターという人とブロックはROH初登場です。ブロックは先月のPROMSでグレツキの交響曲で独唱した人、シルヴァスティは「ヴァルキューレ」でジークムントを歌った人でしたが共にレベルの高い人です。

・チャイコフスキー作曲「エフゲニー・オネーギン」
 指揮:Philippe Jordan
 演出:Steven Pimlott
 オネーギン:Dmitri Hvorostovsky
 タチアナ:Amanda Roocroft
 グレミン:Eric Halfvarson
 レンスキー:Rolando Villazon
 オルガ:Nino Surguladze
新演出です。男声陣は馴染みの人が多く、なかなか豪華な顔ぶれですが、女声陣がちょっと弱いかもしれません。オルガ役の人は初めて聞く名前です。演出家もROH初登場だそうです。指揮のジョーダンは「サムソンとダリラ」以来久しぶりです。

・ワーグナー作曲「神々のたそがれ」
 指揮:Antonio Pappano
 演出:Keith Warner
 ジークフリート:John Treleaven
 ブリュンヒルデ:Lisa Gasteen
 グンター:Peter Coleman-Wright
 ハーゲン:John Tomlinson
 グートルーネ:Emily Magee
 ヴァルトラウテ:Mihoko Fujimura
 アルベリッヒ:Peter Sidhom
今年はじめから始まった「リング」の上演も来年の4月でようやく完結です。新舞台装置もこれで完成なので今後はもっと短いサイクルで4部を上演できるでしょうが、それにしても他劇場に比べると異常に長かった。藤村さんがROH初登場で、注目です。

・Franco Alfano作曲「シラノ・ドゥ・ベルジュラック」
 指揮:Mark Elder
 演出:Francesca Zambello
 Cyrano:Placido Domingo
 Roxane:Sondra Radvanovsky
 Christian:Raymond Very
NYのメトロポリタンオペラとの共同制作で、まずメトでやったあと同じ配役がロンドンに来てやるそうです。完全に伝統的な舞台とコスチュームらしい。
私は全く聞いたことのない作曲家ですが、プッチーニの友人で、トゥーランドットはこの人が仕上げたそうです。


ロイヤルバレーでは、3月と4月分を予約するのですが、演しものはKenneth MacMillanが振り付けした「ロメオとジュリエット」、同じく彼が振付けた「フォーレのレクイエム」を含むMixed Bill、それにMarius Petipa振り付けの「ジゼル」の3種類です。マクミラン振り付けのものを両方見に行こうと思っています。Roch+Acosta、Cojocaru+Kobborg、Bussel+Bolle、Guillem+Le Richeなどすべて魅力的なペアで選択に迷うところです。すべてを見る余裕はない(バレーは前の方のいい席で見ないと面白くない)ので同居人と相談して決めることになるでしょう。
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by dognorah | 2005-09-21 23:56 | オペラ

Piano Recital at ROH -9月19日

c0057725_5511570.jpgロイヤルオペラハウスのCrush Roomでのランチタイムコンサート、今日はDaniel de Borahという人(写真)のピアノ独奏です。1981年メルボルン生まれですが、ブダペストのLiszt Academy of Musicとサンクト・ペテルスブルグの国立コンセルヴァトワールでピアノを学び、2004年に卒業後奨学金を得て現在はロンドンのRoyal Academy of Musicで更なる研鑽中です。この間既にオーストラリア、欧州各地、ロシアなどでコンサートを独奏と協奏曲の両方を経験しています。2000年から2004年にかけて各種コンクールに出場していますが、2004年のシドニー国際ピアノコンクールで3位に入賞したのが最高のようです。

プログラム
メンデルスゾーン:プレリュードとフーガ ホ短調 作品35-1
ショパン:スケルツォ第4番 作品54
プロコフィエフ:ロメオとジュリエット 作品75より3曲
プロコフィエフ:ソナタ第4番 ハ短調 作品29

確かな技術に支えられた強靭なフォルテを奏でる人で、そのダイナミズムをちゃんと鑑賞するにはCrush Roomでは部屋が小さ過ぎると感じました。しかしフォルティッシモでも音は鋭くはなく、かなり丸さを感じます。

1曲目のメンデルスゾーンは、プレリュードの早いパッセージでかなりテンポを揺らせます。フーガに入ると落ち着いた雰囲気で心地よい空間を作りますが、後半のダイナミックな部分になるとまたテンポが揺らぎ、全体としてはかなり変化に富んだ曲想を提示する非凡な演奏で、なかなか面白いと思います。

2曲目のショパンはダイナミックな部分は緊張感を漂わせていい感じなのですが、弱奏部はちょっと平板で、もてあましている感が無きにしも非ず。

プロコフィエフは2曲とも非常によかった。とても曲にのめりこんでいるのがよくわかる演奏で説得力があります。恐らくロシアで身につけた得意曲なのでしょう。ロメオとジュリエットの弱奏部でも非常に美しい世界を描いてくれます。最後のソナタも格調の高い演奏でした。ただ、ちょっとフォルテの部分が濁るのが気になりました。それ以前のプロでは全く気にならなかったのですが。

久しぶりに強烈なピアノの音量を経験して、この演奏スタイルをもっと大きなホールで聴いてみたいと思いました。来年の3月にWigmore Hallでリサイタルを行うそうなので、プログラムが気に入ったら切符を買ってみようと思った次第です。
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by dognorah | 2005-09-20 05:53 | コンサート

Open House London(その2)

前の記事の続きです。

イングランド銀行は人気のエントリーで、今年もかなりの行列があり、朝10時に行ったにもかかわらず1時間も並びました。写真撮影禁止なので、外観だけ右に示します。c0057725_955710.jpg
建物を今回初めて認識したのですが、シティのひとつのブロックを完全に占有している大きなビルだということにまずびっくり。1万平米はないでしょうが、でもそれに近い土地を占有しています。地上7階地下3階の構造です。紙幣印刷設備もこの中にあるようです。
1694年設立で、現在の広さは1925年の大改修で確保しています。17世紀の造作は出来る限り保存していますので、内部の部屋はかなり豪華です。もちろんそれはエグゼクティヴたちの部屋だけで一般職員のオフィスはそういうことはないのでしょうけれど。イギリスの公定歩合は毎月一回見直しが行われますが、その会議をする部屋はCommittee Roomと呼ばれ、8角形をした豪華な部屋でした。椅子もかなりの時代物でした。その隣にはすべてのエグゼクティヴが毎週集まって会議をするCourt Roomがあり、ここの壁、床、天井も見事です。絨毯は1939年製ですが全く傷んだという感じはありません。古くてすばらしいデザインのものを日常使用しながらちゃんとオリジナルの美しさを保っているというのがうれしい。これは実はすごく経費がかかります。こういうところに数字には表れない贅沢というか鷹揚さがあり、豊かな社会ということを実感させてくれます。過去の遺産を後々までちゃんと伝えるということに意義を認めていることはその社会の成熟度を現しているのでしょう。ちゃんとやってますよーと一般公開しているわけですね。
中庭も例によってあちこちにありますが、そのひとつは昔教会だったので今でも多くの遺体が地下に眠っているそうです。そのあたりが平気なところはやはり宗教の違いを感じます。
併設の博物館があり、そこは普段誰でも入場できるのですがついでに見てきました。紙幣やコインの歴史など様々な展示がありますが、ひとつ面白かったのはよく映画で見るレンガのような形をした金のブロックの本物がひとつだけ展示してあり、実際に触れることができるのです。これが重くて片手ではなかなか持ち上げられない。約13kgあるそうです。本日のレートで10万ポンド以上の価格であることが表示されていました。1個で2000万円以上するわけです。地下金庫に沢山あるようですが、この建物の地盤の関係で1箇所に積み上げる個数は厳密に制限しているようです。

c0057725_965484.jpg次に訪問したところは、バービカンホールに隣接しているGuildhall School of Music and Drama(左の写真、水辺の地味な建物)ですが、ここはランチタイムコンサートなどでよく卒業生や現役が派遣される学校でかなりレベルの高いところと認識しており、そういう意味でどういう教育をしているのか興味があって訪問しました。音楽大学としてはRoyal Academy of MusicやRoyal College of Musicとともにレベルを競っています。今年創立125年です。
まず、日曜に訪問したにもかかわらず、学生がアクティヴに活動していることに驚きました。聞くと、学校は週に7日開いており、学生は朝7時から夜10時まで練習にいそしんでいるとのこと。この業界は競争が激しいことは十分学生が自覚しているが故と案内の先生は言っていました。学校は名前の通り大きく分けて演劇部門と音楽部門に分かれていますが、オペラ志向の学生にはいい環境と思います。もともとは音楽大学だったのが後から演劇部門が加わったそうです。どういう風に教えるかというソフトの部分は見せるのが難しいせいかあまり説明がなくほとんど学ぶ環境のデモでした。
演劇部門は丁度シェークスピアの「ヴェニスの商人」の舞台稽古をやっていましたがみんな真剣で、台詞の合間に先生が簡潔に注意を与えるので劇の進行はほとんど止まりません。広い稽古場が確保されているのみならず、リハーサル用に舞台装置および美術部門もあり、舞台はFlying tower(手動ですが)併設で、ほぼ本番どおりのリハーサルが出来る環境です。また、衣装部門もあり、必要な衣装は作ってもらえるほか、過去の衣装もすべて保管されてすぐに取り出せるようになっています。
音楽部門はまず、学生が個室で練習できるように8畳くらいの部屋が全部で75室提供されており、すべてグランドピアノが置いてあります。もちろん予約制です。そのほかに小さなアンサンブル用のやや広い部屋が6室、オペラなどを簡単に練習できる中くらいのホールがひとつ、それにコヴェントガーデンの舞台と同じ大きさの舞台がある大ホール(観客席も300くらいある)がひとつあります。
両部門に共通のものとしてすごく充実した図書室があります。台本や楽譜はもちろん、書籍やLP、CD、DVD、VHSなどあらゆる資料がきちんと棚に収められているほか、インターネットでストリーミングを聞くことも出来ます。
私は日本の音楽大学の実情は知りませんが、素人目にも充実した環境で、ここに入ったらまずは自分次第という感じがします。

なお、学生数は数百人で、授業料とCorporate of London(City of Londonの行政府)の補助金および寄付金で運営されています。このCorporate of LondonというのはもともとCityの自治政府でイングランド議会のParliamentよりも古い歴史があります。今では政治的権力はありませんが、伝統はかなり残っており、独自の芸術パトロンとしての活動も盛んなようです。

ということで今年も充実した見学が出来ました。来年がまた楽しみです。
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by dognorah | 2005-09-19 09:14 | 観光

Open House London(その1)

この週末、9月17,18日は毎年恒例のロンドン・オープン・ハウスのイベントがあり、周辺部を含むいわゆる大ロンドン圏の何百という施設や建物が一般に無料で見学可能となります。政府、地方行政府、宗教施設、学校、企業、個人に及ぶエントリーがあり、普段は一般の人が見ることの出来ない建物がこのときに限り開放されるのです。政府関係ではParliamentを含む各省庁の建物やロンドン市庁舎、話題の最新建築物、リノヴェーションした個人住宅など私には興味をそそるものばかりです。私は優れた建築物や美しい内装に大いに興味があり、このイベントのことを知ってから毎年見学するのをとても楽しみにしてきました。
c0057725_454521.jpg昨年はSwiss Reというスイスの会社がシティに建てた例の葉巻型のユニークなビル(30 St Mary Axe、写真右)が初公開され大人気を博し、私も大行列をものともせずに見果せましたが、すごいビルではありました。欧州では売れっ子のイギリスのデザイナーFoster & Partnersの手になるものです。それに比べると今年は新建築が少なく、やや地味な印象を受けるのですが、いずれにしても一生かかっても見切れないくらい多くのエントリーがあるので見るものには困りません。新しいビルもいいけれど、ヴィクトリア時代に代表されるような古い建物を当時の豪華な内装をちゃんと保ったままインフラだけ近代化したものは特に好きです。そういうよく手入れされた歴史的建造物は都心部に集中しているような気がして、今年もWestminster地区とCity地区に絞りました。
今回二日間で見たのは次のとおり。
(1)HM Revenue and Customs / HM Treasury
   日本の昔の大蔵省に相当する官庁ですね。
(2)Crown Estate
   王室所有の土地を管理する会社です。
(3)Vitro – 60 Fenchurch Street
   新しい11階建てのオフィスビルです。
(4)Bank of England
   ご存知のイングランド銀行。
(5)Guildhall School of Music and Drama
   バービカンホールに隣接の音楽と演劇の学校です。

第1部では最初の3つをレポートします。

c0057725_414195.jpg(1)は右の写真の一番上のようにブロックの一角を占める大きなヴィクトリア調の建物ですが、内部はその下の写真のように中庭がいくつもあり居住者に精神的安らぎを与える設計になっています。また、内部は階段室の上などに明り取りのドームがあって現代的装飾なども施されているのが好もしい感じです。ただ、全般に装飾はシンプルで、この点においては2年前に見たすぐ隣の外務省がきらびやかな大理石で贅を凝らしているのと対照的です。





c0057725_4201043.jpg(2)は左の上の写真のようにセント・ジェームス公園の北側にある立派な建物の一部を占有していますが内装は木を多用した19世紀前半のデザインをちゃんと保っており(その下の写真)、質の高さが印象的です。関係ないですが、私は90年代前半はアスコット競馬場(王室所有)のすぐそばの家に住んでいましたが、このCrown Estateを通して女王陛下から土地を借りていました。その後周りの人たちと一緒にその土地を買い取りましたが、いつも相手をしてくれたのがこの会社なので結構親しみを感じていて、今回アプローチした面もあります。
(3)は特に特徴のない建物で、上に述べたSwiss Reのビルがよく見えるというだけです。上の写真は今回ここから撮ったものです。

17日の土曜は朝は10度前後と少し冷え込みましたがすばらしい秋晴れでした。セント・ジェームス公園を歩くとサフランの群生が見つかりました。前日の強風で倒れたものも多いのですが、見たのは初めてなので割とましなものを探して撮ってみました。
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by dognorah | 2005-09-19 04:36 | 観光

ピアノリサイタル -9月15日

私がよく行くもう一つのランチタイムコンサートは、サウスケンジントンにあるハイドパークチャペルで開催されるものです。主に若い音楽家による演奏ですが、時にははっとさせられる名演に出会ったり知らない曲のよさを発見したりで、いつも期待を胸に秘めて参加します。ここは大体木曜にあるので、今日が今シーズンの幕開けです。

演奏者:Jan Daniel du Preez
プログラム
 ヘンデル:シャコンヌ ト長調
 ベートーベン:ピアノソナタ第17番 作品31-2 テンペスト
 ブラームス:ピアノ小品集 作品118
  インテルメッツォ
  インテルメッツォ
  バラード
 ドビュッシー:前奏曲集第1巻より4曲
  Le vent dans la plaine
  La danse de Puck
  Minstrels
  Ce qu’a vu le vent d’Ouest

このピアニストは南アフリカ共和国生まれで20代後半の長身の男性です。ワインで有名なステレンボッシュ(Stellenbosch)の音楽大学を卒業後ドイツのハノーヴァーに留学して研鑽を積み、故国はもとより欧州とカナダで幅広くリサイタルや室内楽で演奏活動をしています。イギリスの音楽大学との接点はなく、そういう人がここでコンサートをやるのは今までに例がないので、ここの方針が変わったか。

演奏は、ヘンデルのシャコンヌの冒頭の音を聞いただけで、只者ではないと思いました。造形のカチッとした音、美しい和音、自然な音楽の流れ、私はもうぞっこんです。次のベートーベンもブラームスも惚れ惚れ。ドビュッシーもとてもいいのですが、欲を言えばもう少し奔放なところがあってもいいかなという感じです。
しかし何でこんな人がたったの20名程度しか聴衆が集まらないこんなローカルなコンサートに来るの?という疑問が付きまといます。教会の世話役が一新されているのであるいは企画者が頑張りすぎたのか。しかしもったいない。彼ならSt. Martin in the Fieldでのランチタイムコンサートでやった方がいい。あそこはいつも数百人が集まりますから。ウイグモアホールでコンサートを開けるだけの実力はありますが、知名度がないから切符は売れないかもしれません。コンクールに出場するには年齢が問題かしら。
とにかく今年このチャペルで聴いたピアニストにはいろいろ上手な人はいましたが、この人が今までのベストと思いました。
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by dognorah | 2005-09-16 04:11 | コンサート

ドニゼッティ「ドン・セバスティアン」 -9月13日

コンサート形式ではありますが、ロイヤルオペラハウスの今シーズン最初のステージを聴いてきました。2ヶ月ぶりのオペラ開幕のせいか、この馴染みのないしかもコンサート形式だというのに客席はほぼ満席でした。世界的にもめったに上演されない作品で、長い歴史を誇るコヴェントガーデンでも演奏されるのは今シーズンが初めてです。

作品
Paul-Henri Foucherの書いた戯曲「Dom Sebastien de Portugal」をもとにEugene Scribeという人が台本を書いて、それにドニゼッティが作曲した。

あらすじ
物語は16世紀後半のポルトガルを舞台にしたもので、スペインのフェリペ2世(カルロス1世とポルトガル王女の子)がポルトガル併合を狙っているというのに、暢気なポルトガル王ドン・セバスティアンはモロッコ遠征などに熱を上げています。
王を冷ややかに見送るのが、既にスペインと通じている大審問官Dom Juam de Sylva。実際の歴史通り、その目論見は成功してポルトガルは併合されてしまうのですが。

歌手として重要な役に、詩人Camoensがおり、この人は故国および王を賛美する人で、王に従ってモロッコ遠征に参加することにします。

一方、このオペラでただ一人の女性登場人物のZaydaは、これより前に起こったポルトガルとモロッコの戦闘時に捕虜としてリスボンに連れてこられ、キリスト教に改宗して修道院に入っていたのですが、故国の父に会いたい思いを口に出して沈黙の誓約を破り、火刑の判決を受けます。不憫に思った王がその判決を取り消し、モロッコへの追放という処分にしたため、彼女は心からの感謝を捧げ、それがいつしか愛に変わっています。

モロッコでは彼女の父Ben-Selimと婚約者でモロッコ軍指揮官のAbayaldosが彼女を歓迎し、結婚式を挙げようとしますが、ポルトガル王を愛している彼女は苦悩します。そのときにポルトガル軍侵略の知らせを受け、結婚は戦闘勝利後に延期。

戦闘はモロッコ軍の圧勝に終わり、王、副官、詩人はすべて負傷。王のとどめを刺そうとするAbayaldosの目をごまかすため、副官Dom Henriqueが王の振りをして死ぬ。
Zaydaが戦場で王を見つけ、介抱する。死を免れた王は彼女と共に愛を誓う。彼を王とは気付いていないAbayaldosが生存兵は皆殺しと言うのを彼女は必死でなだめ、すぐに結婚してあげるからと言って王の命を救う。

Ayabaldosは両国の和平交渉の使節としてリスボンを妻Zaydaと共に訪問。
一方、王と詩人もリスボンに帰りつくが、王はそこで自分の葬式が執り行われているのを知り、身分を明かす。しかし、Abayaldosが王は自分が殺したはずと証言するや、大審問官は王を詐欺師として逮捕する。この過程でZaydaが王を愛していることもバレ、一緒に逮捕され共に死刑を宣告されてしまう。

スペインのフェリペ2世は穏便にポルトガルを併合するために、Dom Sebastienが王位を譲るという書類にサインしたものを大審問官に求めたため、彼はZaydaと王の間の愛を利用して書類を入手する。
一方、詩人Camoensは王に忠誠心を持っている軍人たちを組織し、王の救出を画策する。二人が幽閉されている塔にアプローチして縄梯子で二人を脱出させようとするが、気付いた大審問官によって縄梯子は切られてしまい、二人は墜死して幕。

主な配役
モロッコの娘Zayda(メゾ・ソプラノ):Vesselina Kasarova
ポルトガル王Dom Sebastien(テノール):Giuseppe Filianoti
大審問官Dom Juam de Sylva(バス):Alastair Miles
モロッコ軍司令官Abayaldos(バリトン):Simon Keenlyside
詩人Camoens(バリトン):Carmelo Corrado Caruso

演奏
指揮:Mark Elder
管弦楽:The Orchestra of the Royal Opera House
合唱:The Royal Opera Chorus

大叙事詩的で複雑な筋ですが最後が唐突だし全体のまとまりもあまりなく、見ているほうもイマイチ納得の行かない台本です。しかし、ドニゼッティのこの音楽はなかなか聴き応えがあり、ヴェルディのような壮大な管弦楽と合唱をバックに美しく親しみやすいドニゼッティらしいアリアも散りばめられ、最後まで飽きることはありません。今回はコンサート形式とはいえCD録音も兼ねた舞台のせいか、いい歌手を集めています。

一番感心したのは、サイモン・キーンリサイド。ど迫力の歌唱で、豊かな声量なのに声も美しい。やや一本調子ではあるものの、その時々の心情を遺漏なく表現していたと思います。
そして、憎々しい声で悪役振りがよく表現されたアラステア・マイルズのバス。
タイトルロールのジュゼッペ・フィリアノーティも美しくよく伸びる高音がとても心地よい。お国の大事に戦ごっこや恋愛沙汰に身を焦がす脳天気な王様にはぴったりでした。
詩人の性格付けおよび存在の必然性がイマイチよくわからないのですが、急遽代役だったのにカルーソーはなかなかいいアリアを聞かせてくれました。
唯一の女声カサローヴァは、ところどころ声がかすれることはありましたが美しい声で、声量もありました。歌唱もとてもうまかったと思います。恋と婚約者との板ばさみ的悩みはあまり感じられませんでしたが、この婚約者同士ちっとも愛情というものが見えない関係なのでこんなものでしょうか。
その他大勢の登場人物がいますが、下手な人はいません。短い登場時間なのにみんな聴き応えがありました。今回の席が舞台のすぐそばだったこともあるかもしれませんが迫力が感じられました。
忘れてはならないのは合唱で、いつもながらすばらしい歌唱でオペラを盛り上げてくれたと思います。
マーク・エルダーの指揮はとても切れがよく、壮大な部分と叙情的な部分をきっちりコントロールして劇的表現を高めていました。合唱の部分など自分も声を出しているのか口を動かして曲に没頭しています。歌手に対する気遣いも細かく、さすがヴェテラン指揮者です。

これは一度ちゃんと演技も入った舞台を見たいと思いますが、果たしていつになるやら。

今回は「ロンドンの椿姫」さんと、そのお友達「カルメン」さん、それに「Sardanapalus」さんと席は違うけれど一緒に聴き、休憩時間にいろいろ感想を話し合って面白かったです。特にSardanapalusさんからは先週の土曜の公演との比較などお聞きし、とても参考になりました。その場で意見を交わせるってのはいいですね。
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by dognorah | 2005-09-14 23:02 | オペラ

弦楽8重奏団のリサイタル -9月12日

9月も中旬になり、ロンドンもほぼ休暇シーズンが終わって街は以前のように多くのビジネスマン(ウーマン)が行き交っています。昨日までの3日間雨模様だったのに、8月下旬に戻ってきた夏はあまり衰えを見せず、今日も歩いていると汗ばむ陽気でした。

さて、今週から各地の昼休みの無料コンサートも新しいシーズン入りです。その中でも最も聴き応えのある演奏を披露してくれるロイヤルオペラハウスのランチタイムリサイタルも今日から幕開けで、早速行って来ました。

ヴィヴァルディ:弦楽器のためのコンチェルト
バルトーク:ルーマニア舞曲集
メンデルスゾーン:8重奏曲 作品20
演奏:The Prince Consort Ensemble

この団体は、ロンドンの音楽大学Royal College of Musicのヴァイオリンの教授Dona Lee Croftの主宰でこの学校の卒業生および現役の学生を集めて2001年に結成されました。各地で演奏会を開いてきましたが、この秋には欧州とアメリカへの演奏旅行を予定しています。第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが2名ずつで、ヴァイオリントップにこの教授が座ります。写真は終演後のものですが、一番左が教授です。
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ヴィヴァルディは演奏時間が5分程度の小品ですが、始まったとたん「ああ、これはうまい!」と思いました。小さな部屋でしかも目の前で演奏されるのでホールの響きが加味されない生の音が直接耳に届く状況なのに各楽器の音もアンサンブルも文句なし。とても心地よい音楽です。音楽そのものに没頭できます。
バルトークはハンガリー人なのにルーマニア舞曲を作っていたことは知りませんでしたが、全体に舞曲らしい陽気さはあまりなく郷愁を誘うような親しみやすい作品です。これも演奏時間が10分程度の小品ですが、各曲のニュアンスを多彩に弾き分けていてよく練れた演奏でした。
メインのメンデルスゾーンは、室内楽の範疇ながらとてもスケール感のある曲で、彼の何か深い思索が込められている重い曲という印象です。全楽章を通じて、演奏からはそういう深い精神性が垣間見えます。
とにかく演奏のレベルが高い。海外演奏旅行はこのレベルを保っている限り成功間違いなしでしょう。幕開けからこんなすばらしい演奏を聴けてとても幸せな気分でした。

このランチタイムリサイタル、先シーズンは個人名のスポンサーが付いていたのですが、今日はロイヤルオペラハウス自体の主催、つまりスポンサーなしです。ちょっと先行きに不安を感じました。スケジュールは11月ぐらいまで発表されていますが。
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by dognorah | 2005-09-13 02:07 | コンサート

イチョウの木

コンサート続きでしたので閑話休題です。
c0057725_23193167.jpgPROMSも10日のLast Night Concertでめでたく終了しましたが、今年は全部で9回も楽しませてもらいました。マーラーの交響曲3番、4番、6番とブルックナーの8番など、しばらく感動の記憶は消えないでしょう。写真はPROMS開催中のロイヤル・アルバート・ホールです。

頻繁に行ったので夕食はいろいろなものを食べましたが、晴れた美しい夕方はよくすぐそばの公園ケンジントン・ガーデンでサンドイッチをゆっくり食べてピクニック気分を味わったりもしました。食後、まだ時間があるときは公園の中を散歩して時間をつぶします。あちこちにきれいな花も植えられていて、植物やリスの振る舞いなど見ていると飽きません。

c0057725_23195156.jpgそのときに発見をしました。イチョウの木が生えていたのです。イギリスにも日本から伝わって植えられていると言う話は聞いていたのですが、実際に見たのは初めてです。それも都心のこんな身近な場所にあったとは!
しかも、それは雌株でびっしりと銀杏の実が付いていました。ということは雄株も近くにあるはずと更に歩き回ると20メートルぐらい離れたところにそれを見つけましたが恐らくもっとあるでしょう。
とてもうれしくなりました。銀杏は私の大好物なのです。いや、別に熟した実を拾って食べるということは考えていません。拾っても処理が結構大変という話は聞いたことがありますし、シーズンになればロンドンの中華街で日本より安い値段で買えますので。それより、この国で見ることはないだろうと思っていたものに出会ったことがうれしく、こうして記事にしているわけです。
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by dognorah | 2005-09-11 23:21