<   2005年 08月 ( 14 )   > この月の画像一覧

クリーブランド管弦楽団演奏会 -8月30日

連夜のPROMSです。今日は昨日より一段と温度が上がって25度くらい。今回の夏のもどりはよく晴れているにもかかわらず湿度が高くて、歩くとすぐ汗をかきます。恐らく50-60%はあったでしょう。いつかロイヤル・アルバート・ホールは改装時にエアコンがついたと書いてしまいましたが、それはうそのようです(^^; 数千人が入っている内部は蒸し風呂のようでみんなプログラムを扇代わりにしています。

さて、今日は、大曲なので1曲のみです。
マーラー:交響曲第3番ニ短調

メゾソプラノ:Yvonne Naef
合唱:The Cleveland Orchestra Chorus(女声のみ)
   Trinity Boy’s Choir
管弦楽:The Cleveland Orchestra
指揮:Franz Welser-Möst

マーラーの合唱を使う大曲は演奏機会が少ないので、私は第3番の実演はこれが初めてです。管弦楽の編成も大きく、ホルンだけで9挺も使います。打楽器奏者も数えたら7人も。このオケは奇数が好きなのかヴィオラは11人、コントラバスが9人。ヴァイオリンも後ろの方で一人で弾いている人がいたから奇数でしょう。チェロは10人でしたが。木管も各種オンパレードですね。

このオケを聴いたのはもう10年以上前になりますが、今日久しぶりに聴いてとてもいい楽団と改めて思いました。音量が豊かでアンサンブルがすばらしいし、弦の音もしなやか。木管や金管も言うことなし。今年のプロムスを聴くのはこれが5回目ですが、一番いいオケでした。

c0057725_743343.jpgヴェルザー-メスト(写真の左)の指揮も、すべてのフレーズでマーラーを感じさせ、流麗かつ密度の高い演奏で、90分以上の演奏時間を全く飽きさせません。満足しました。この人は1960年オーストリア生まれで、欧米で大人気の指揮者ですね。クリーブランド管の音楽監督としては10年契約で3年過ぎたところ。

メゾソプラノ(写真の右)も美しい良く通る声で、ゆっくり目のテンポのオケをバックに哲学的世界を描く感じでした(ツァラトゥストゥラから取った歌詞だからというわけではありませんが)。このイヴォンヌ・ネフという人は1957年スイス生まれで、チューリッヒオペラでメストとは馴染みのようです。

c0057725_7442137.jpg

この曲は好きだけれど、いつも何かをしながらCDで聞き流していたのであまり気が付きませんでしたが、大勢の女声合唱と少年合唱を使うのに第5楽章でちょっと歌うだけ(メゾソプラノは第4楽章で独唱)。この大勢がこれだけのためにはるばるクリーブランドからやってきたわけで、ちょっと気の毒。マーラーも罪なことをしますね。そういえば先日聴いた第4番のソプラノ独唱もほんの数分でしたね。写真は終演後拍手に応える出演者です。

オケのメンバー表を見ると日本人女性のヴァイオリニストが副コンサートマスターも含めて4人いました。昨日聴いたチューリッヒのトンハレ管弦楽団も4-5人の日本人ヴァイオリン奏者がいましたが、日本人音楽家が世界中で沢山活躍していらっしゃる姿を見ることはうれしいことです。
[PR]
by dognorah | 2005-08-31 07:45 | コンサート

チューリッヒ・トンハレ管弦楽団 -8月29日

ロンドンは日曜あたりからまた夏が戻ってきたようで、暑い中またPROMSに行った。

プログラム
ワーグナー:さまよえるオランダ人序曲
ベートーベン:ピアノ協奏曲第3番ハ短調
R・シュトラウス:ツァラトゥストゥラはこう語った

演奏
ピアノ:Emanuel Ax
指揮:David Zinman
管弦楽:Tonhalle Orchestra, Zurich

c0057725_2011298.jpg今日はポピュラーな曲が多いせいか8割ぐらいの入り。
デイヴィッド・ジンマン(左の写真の上)は1936年生まれのアメリカ人だが、このスイス最古の管弦楽団の常任指揮者を10年以上務めている。演奏やCD録音に関してはグラミー賞など各種を沢山受けているらしいが、私は先日ちょっと書いたグレツキーの交響曲第3番のCDを持っているぐらいであまり馴染みがない。

オランダ人序曲はちょっとアンサンブルが荒かったけれど、スケールが大きくまあ聴かせる演奏ではあった。

ベートーベンのピアノ協奏曲第3番はなかなかの好演。1949年ポーランド生まれのエマニュエル・アクスというピアニスト(左の写真の下)も馴染みがなくこれが初めての経験である。タッチはあまり鋭くなく、出てくる音のつぶら立ちもあまり感じられないし、ダイナミックさもあまり無いにしても全体に優しくてしっとりとした音楽を奏でる人で、この曲にはぴったりであろう。第1楽章のカデンツァは特に印象的であった。ジンマンはしっかりと彼を支える演奏でむしろオケがメリハリを与えていた。

c0057725_20121863.jpg最後の曲は実演で聴くのは初めてである。編成の大きな管弦楽、各種打楽器群、オルガンと豊富な音を出す役者は揃っており、昔、オーディオシステムをチェックするのにこの曲の冒頭部分を良く使ったのを思い出す。このホールにふさわしい音楽で、パイプオルガンの圧倒的な音響も楽しめる。冒頭部に比べると曲全体としてはむしろ渋い音楽で下手をすると退屈してしまうがジンマンはしっかり緊張を保って聴かせてくれた。

アンコールは、WaltonのCrown Inperial Marchで、あまり魅力的とはいえない音楽であるがイギリス人聴衆へサービスしたものであろう。始まるとすぐ聴衆から反応があった。もうひとつ、ツァラトゥストゥラが派手な出だしに比べて静かに終わる曲なので、景気付けにオルガンも含めて華々しく終わるこの曲を選んだともいえる。写真は拍手に応えるジンマンとトンハレ管弦楽団。
[PR]
by dognorah | 2005-08-30 20:17 | コンサート

World Orchestra for Peace

という名前の管弦楽団をゲルギエフが指揮するPROMSのコンサートが27日にBBC TVで中継放送されていました。とてもうまい演奏なのでこのオケのことを調べてみましたら、95年に国連創立50周年を記念してゲオルク・ショルティの呼びかけで平和の使節として組織されたオケだそうで、彼が初代音楽監督を務めて各国の代表的オケに楽団員派遣を依頼して40カ国以上から奏者が集まっています。c0057725_7311567.jpg今回のトランペット奏者の一人は橋爪さんという日本人で大阪フィルから来ていると自己紹介していました(左の写真の真ん中)。

97年にショルティが亡くなってからはゲルギエフが音楽監督を務めていて、ショルティ夫人は今でもパトロンという肩書で関係を持っています。今回のツアーはCredit Suisseという銀行がスポンサーになっているようです。今年は終戦60周年ということで2年振りにPROMSに登場しました。楽団員は演奏の都度集まるのでしょうけれど、選ばれた人たちなのでうまいはずでした。c0057725_7332959.jpg左の写真のコンサートマスターは名前は知りませんが映像でよく見るウイーンフィルの方ですね。シェヘラザードのテーマはこの人が何度も独奏で弾くのですが絶品でした。

プログラムは次のとおりです。
ロッシーニ:ウイリアム・テル序曲
ドゥビッシー:牧神の午後への前奏曲
エサペッカ・サローネン:Helix(世界初演)
ワーグナー:マイスタージンガー前奏曲
リムスキーコルサコフ:シェヘラザード

演奏はすべてけちの付けようがないすばらしさで、特に最後のシェヘラザードは各パートの音のすばらしさといい曲の運びといいほんとに佳演でした。余談ですが、この曲にバレーを振付けたものがあり、ゲルギエフとキーロフバレーでその公演を見たことがあります。舞台も豪華で見応えがあったのですが奴隷役のボリショイから借りてきたダンサーがすごい出来で緩急自在の音楽と共に溜息をついて鑑賞したことを覚えています。ロシア音楽でもあり、こういうことからしてもゲルギエフの得意とする曲でしょう。
また、その前に演奏したマイスタージンガー前奏曲もなかなかのもので、彼にワーグナーのオペラを振ってもらっても相当楽しめるのではないかと思った次第です。

c0057725_7342516.jpgところで、当夜のゲルギエフ、左の写真のように爪楊枝のような小さい指揮棒を使っていましたが、普通の指揮棒あるいは指揮棒なしに比べてどういう意味があるのか理由はわかりません。小さくてわかりにくいかもしれませんので右手の拡大写真も掲載しました。c0057725_7352172.jpg

もうひとつ、Esa-Pekka Salonenの新曲Helixを初演したわけですが、この人、今まで指揮者だと思っていました。ほんとは作曲家で指揮もするというのが正しいようです。
この新曲のHelix、弦も金管もガチャガチャと賑やかに鳴っていきなり終わる7分ぐらいの曲で退屈はしないけれどあまりよくわからない曲でした。
[PR]
by dognorah | 2005-08-29 07:38 | コンサート

ヘンリク・グレツキの交響曲第3番 – 8月24日

PROMSコンサートはあまりにもプログラムが盛りだくさんなので1晩に2回もコンサートが催される場合があります。今夜がそういう日で、最初のコンサートは7時から9時まで、次のコンサートが10時から11時半までの時間帯が割り当てられています。
その中で遅い方のコンサートを聴いてきました。曲目は題名に記した1曲のみです。

Henryk Górecki:交響曲第3番作品36(悲歌の交響曲)
ソプラノ:Susan Bullock
指揮:David Atherton
管弦楽:BBC Scottish Symphony Orchestra

c0057725_22481913.jpgポーランドの作曲家グレツキ(左の写真、日本ではこう表記するようなのでそれに従います)は1933年に生まれ、この曲を1976年に作曲しています。1992年ごろこの曲がCD化されるや爆発的に売れ、世界中にその名を知られました。当時、私にイギリス人の同僚が、これはいい曲だよー、と教えてくれたのでDawn UpshawのソプラノでDavid ZinmanがLondon Sinfoniettaを指揮したものを買いました。確かにいい曲で、その後何度か繰り返して聴いています。しかし実演では聴いたことがなく、今夜が初めてです。

曲は3楽章構成で、第1楽章が15世紀のポーランドの宗教的哀歌をもとに曲をつけたもので、低弦による壮大なカノンが聴き所です。第2楽章はアウシュヴィッツの収容所で18歳の少女が死ぬ前に壁に記した詩をもとに作曲されたもので歌唱もメロディも悲痛な叫びが表現されています。第3楽章は第1次大戦で戦死したポーランド人兵士を思う母の嘆きの叙事詩をもとにしたもので、ちょっとグリークのソルヴェイグの歌を思わせるメロディが含まれています。

主題通り全編を通じて悲しみを表現した厳粛な音楽が流れますが、どこか暖かいところもあり、ポーランド語の歌詞が理解できないことも効いて普通の美しい音楽として聴けてしまいます。

c0057725_22483925.jpg演奏は、スーザン・ブロック(左の写真)のソプラノが心を込めた熱唱で、まさにこの曲にふさわしい雰囲気をたっぷり聴かせてくれました。オケの方は美しい音をゆったりしたテンポで醸しながらも緊張を保持した好演でした。

夜の第2部のコンサートは演奏時間が短いこともあって、入場料は安めなので今日はStallの最前列で聴きました。ソプラノの歌がすぐそばで聴けたのが音響的にも良かった。この席に座って気付きましたがラジオ生放送用のマイクがオーケストラの上に数十本ぶら下がっているのです。驚きました。これをミキシングして放送するわけで、たかがラジオといえども大変な仕事をしているんだなぁと感心した次第です。
[PR]
by dognorah | 2005-08-25 22:51 | コンサート

ダイヤモンドの輝き

昨年のニュースでしたか、宇宙には巨大なダイヤモンドが存在するらしいことが報道されましたが、私はダイヤと聞くとすごく興味をそそられます。
c0057725_20254779.jpg恐竜骨格の展示などで有名なロンドンの自然史博物館(Natural History Museum、写真右)でダイアモンド展をやっているので見てきました(会期2006年2月26日まで)。

c0057725_20264048.jpgあまり予備知識なしで行ったのですが、かなりレアなものが展示されているようです。目玉として5年前のミレニアムのときに展示され、大掛かりな窃盗団による強奪計画が未遂に終わったという話題を提供した203カラットの「Millenium Star」(左の写真上)でしょうか。回転台で光を照射されて輝いていました。その他の大きいものとしては「Golden Brown」と呼ばれる407カラットのもの(写真中)、世界最大の616カラットの8面体単結晶原石(写真下)など。

c0057725_20273357.jpg変わったものとしては色付きのもので、右の写真の一番上は「The SteinmetzPink」と呼ばれるピンクダイアモンド。これは世界最大の無欠陥ピンクダイヤで59.6カラットあります。この原石は133カラットあったものを2年間かけてこのようにカットしたそうです。ピンクや赤の色はダイヤモンド生成時にとてつもない圧力がかかってあのダイアモンド構造が少し歪んだために発色するのです。歪が大きいとそれだけ濃い色になります。気をつけなければいけないのは、この構造のものは大きな歪みを内包しているために大きなショックを与えると破裂して粉々になることです。したがって2年かけた慎重なカットの末生まれた苦労作だというわけです。値段のつけようがない貴重なものという気がします。

次の写真が「The Moussaieff Red」と呼ばれるレッドダイヤでこれはピンクよりもっとレアなものです。大きさはたったの5.11カラットですが、これほどのレッドダイヤは他に例がないとのことです。

その下の写真は「The Orange Flame」と呼ばれる3.23カラットのもの。自然石としては黄色や茶色はいっぱいあるけどオレンジというのは非常にレアで、ほとんどの宝石商はこの色のダイヤを見たことがないはずと説明にありました。

その下の写真が5.51カラットのブルーグリーンダイヤで、「The Ocean Dream」と名づけられています。グリーンは放射線に何百万年もさらされて、結晶構造に一様に欠陥が生じることで発色します。したがって人工的に放射線を照射しても出来ますが、調べたら自然のものか人工のものかわかるとのことです。まあ、人間の技術というのはそのうち完全に鑑定士を欺くでしょうけど。

最後の写真が世界最大の黄色ダイヤで101カラットあります。人造ダイヤというのは当初はほとんどが黄色になりましたがこれは窒素原子が不純物として結晶に入ることで発色するものです。したがって黄色ダイヤで自然ものとしての存在価値はその大きさだけでしょうね。

展示では、人口ダイヤの最新のものでも見られるのかと期待していましたが、工業用の粉ダイヤだけで、宝石店で扱っているような大きなものは全くなかった。恐らく人造ダイヤの急速な技術発展に既存のダイヤ商が恐れをなして展示をさせないように圧力をかけたのではと勘繰っています。昨年放映されたBBCの番組ではアメリカとロシアの会社が熱心に研究と製造販売をしているようですが、世界最大のダイアモンド商であるベルギーのDe Beers社は非常に気にしており、人造物と天然物を一発で見分けることの出来る装置を開発しました。それは結晶に紫外線を照射して出てくる蛍光を観察するもので、天然ものは紫色の蛍光を発し、人工ものはオレンジ色の蛍光を発します。恐らく微妙な結晶欠陥が人工ものにあるせいだと思われますが、それが克服されるのも時間の問題でしょう。
会場では、自然石の蛍光をデモする装置が置いてあり、確かに美しい紫色の蛍光が観察できました。

ダイアモンドの歴史や世界各地で作られた豪華な装飾品を見ることの出来る展示でなかなか面白かったのですが、入場料£9(1800円)はちょっと高いと思いました。恐らく保険代と会場の警備費にコストがかかっているのでしょうが。
[PR]
by dognorah | 2005-08-24 20:30 | 科学技術

ベートーベンの第9「合唱付き」 - 8月20日

今日のプロムスはこれがメインです。昨年はラトル指揮のベルリンフィルによる演奏があったのですが切符を入手できず無念の涙を呑みました。今年はロンドンフィルでぐっと落ちますが、無事に切符を入手して聴いてきましたのでその感想を述べます。

プログラム
グバイドゥーリナ作曲The Light of the End(UK初演)
ベートーベン作曲交響曲第9番ニ短調

演奏者
ソプラノ:Christine Goerke
メゾソプラノ:Jean Rigby
テノール:Thomas Studebaker
バスバリトン:Honno Müller-Brachmann
合唱:Finchley Children’s Music Group
   London Philharmonic Choir
管弦楽:London Philharmonic Orchestra
指揮:Kurt Masur

最初の曲は現在74歳になるロシアの作曲家Sofia Gubaidulinaの大掛かりな管弦楽曲です。演奏時間は30分足らず。ボストン交響楽団の委嘱を受けて2003年に完成し、今日の指揮者マズアの棒で初演されました。したがってマズアにとってはレパートリーなわけです。
c0057725_9481133.jpg曲は弦が不安をそそるようなエキゾティックなメロディを奏でてそれに管楽器と各種打楽器が複雑に絡んで異様な雰囲気をかもし出します。3種の楽器の使い方のバランスがよく、力作という印象を受けました。非常に楽しめるというわけではないですが、退屈はしません。左の写真は終演後、マズアに呼ばれて舞台で挨拶する作曲家です。

マズアという指揮者ですが、私はロンドンで過去に何回か聴いていますし、数年前には出張で訪問したニューヨークでたまたま定期公演をしていたニューヨークフィルをリンカーンセンターで聴いたこともあります。印象としては、オーソドックスに手堅く音楽を作る人です。悪くはないけれど、すごくいいということもなかった。NYでは隣に座っていたニューヨーカーに尋ねてみましたが、評価は高く、彼が常任になって以来不満はないといっていました。

で、今夜の演奏ですが、第9の第1楽章と第2楽章、なかなかのものです。どっしりとして密度の高い表現でした。聴いている方も緊張が持続します。両楽章とも終了時にちょっと拍手がありましたが納得できます。特に第1楽章はみんなの期待を上回るものだったのでしょう、歓声まで聞こえました。しかし第3楽章は弱音のアダージョでちょっとぼろが出た感じです。このオケ、アンサンブルがやはりちょっとよくない。この美しい緩徐楽章の表現もいまいち薄っぺらで豊かな響きがほとんどない。まあこれは指揮者の問題かもしれません。でも、第4楽章でまた元気を取り戻してぐいぐいという感じです。
c0057725_949977.jpg独奏者は、バリトンとソプラノが水準の出来、メゾとテノールはちょっとがっかりです。特にテノールは左の写真にもありますようにこの図体なのに貧弱な声です。バリトンは声量的には合格ですが、歌い方が余りスムーズではなく言葉が途切れ途切れです。いつも思うのですが、この第4楽章で最初に歌うバリトンのパートでは独唱者はベテランでもどきどきものでしょうね。聴いている方だってどきどきしますから。ここをうまく歌ってくれるとこちらもその後安心して聴けるというものです。
合唱はすごくよかった。これだけは日本で聴く第9では真似が出来ないでしょう。大きなホールなので二つの合唱団が合同で歌ったのですが、声量はもちろんのことアンサンブルといい細かなニュアンスの表現といい大満足です。合唱のポーズの部分で気づいたのですが、このホールの残響時間は2-3秒で消え方も自然でとても聴きやすい。長年の努力でここまで改善されたものと思います。
コーダの部分は特に熱狂的になることなく、よくコントロールされて感じよく終わりました。この辺がマズアらしいといえます。聴衆の反応はとても熱狂的でしたが、特に合唱団に対してはそれまで比較的静かだった私の席の回りからも歓声が上がるくらいの大きな拍手喝采で、やはりみんなの思いは同じと実感した次第です。
このオーケストラ、まあまあの音を出してくれるのですが、17日に聴いたロイヤルフィルのほうが実力は上と思います。

ところで、今日は安い席は満席、高い席でも9割方埋まっていました。先日のシェーファーのときが5-6割の入りだったことを考えると、イギリス人もベートーベンの第9が好きなんだということがわかります。
こういう満席のときに、まんの悪いことにダブルブッキングのトラブルに巻き込まれた人たちがいます。システムエラーですね。私は先日と同じサークル席にいたのですが、私の斜め前の最前列でありました。それも一人や二人ではなく6人以上。まるで飛行機の座席予約みたいにオーヴァーブッキングしちゃったんですね。不思議なことに1曲目の現代曲が始まるときには何もトラブラなかったのです。かなりの人が第9だけを聴こうと思って来たんですね。それで休憩時間後に発覚。第1楽章が始まってもまだ揉めてました。「私はこの曲をこの席で聞きたいと思っていたのにー」と、ある婦人がドイツ訛りの英語で嘆いていました。お気の毒としか言いようがありません。
[PR]
by dognorah | 2005-08-21 09:53 | コンサート

BBC PROMS コンサート – 8月17日

ようやく今シーズン初めてPROMSのコンサートに行きました。オーケストラの生を聴くのは7月31日以来で、やっぱり生はいいと実感した次第。

今日の演目は、
(1)ベルク作曲ルル組曲
(2)マーラー作曲交響曲第4番ト長調
ベルクとマーラー、いい組み合わせのプログラムと思います。ソプラノに両方出演してもらえるし。

演奏は、
ソプラノ:クリスティーネ・シェーファー(Christine Schäfer)
指揮:ダニエレ・ガッティ(Daniele Gatti)
管弦楽:ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団
会場:ロイヤルアルバートホール

最初に、ロイヤルフィルってこんなにうまかったけ?というのが正直な感想。もうかなり長い間このオケを聴いていなかったので、その間実力が向上したということか。弦のアンサンブルもいいし、木管も金管もいい音を出している。ホルンなんか弱音でもとても表現力があって感心した。ガッティは96年から常任指揮者らしいが、納得のいく演奏で安心して曲に浸れる。かなりの実力者と見た。

ルルはまだオペラを見たことがなく、組曲も初めて聴いたのですが、なかなか饒舌な音楽で楽しめます。20分ぐらい経過したところでシェーファーが黒のお引きずりのドレスで静かに入場し、指揮者のそばに立つ。彼女を聴くのも久しぶりですが、相変わらずやや細めの透明な感じの美しい声でした。安い席だったので双眼鏡を持参していたのですが、見てびっくり。そのドレスが胸の下からおへそのかなり下のほうまで細かいメッシュになっていて、色っぽいったらありゃしない。コンサートの直前に食事し、豊麗な音楽でややとろとろしかけていたのですがいっぺんに目が覚めました。でも彼女はほんの2-3分歌っただけでまた静かに退場したのでした。それから10分ぐらいして再び彼女が入場して今度はオーケストラの後ろで歌いましたが、なんと、別のドレスに着替えているではありませんか。やはり黒ですが、ラテックスのような光沢ないしはラメが入ったもので、メッシュはなし。そしてまた2-3分歌ったらもうおしまい。着替えなくていいからもう少し長い間歌う組曲にしてほしかった。

マーラーの4番は実は私のお気に入りの曲で、これを目当てに来たのですが、期待に応えてくれるニュアンス豊かで優美な演奏で満足しました。ソプラノは第4楽章で歌うのみですが、シェーファーは再び着替えていて、今度は平凡な黒のパンツに黒のブレザーといういでたち。この曲ではルルと違って非常に静かな歌い方になるので、この大ホールにはちょっとそぐわない感じです。気品さは十分伝わるのですがもう少し声量がほしい。

今日の席は座席としては一番天井に近いサークルというところで、この上が立ち見ギャラリーになります。このブログに時々コメントをしてくださるSardanapalusさんはよくそのギャラリーで聴かれるようですが、音が良いんだとのこと。私も今日それを実感しました。すぐ下の高いボックス席より良いです。ホール自体も天井にいろいろ工夫を凝らして音がより良く反射分散するようにしているので、年々改良されているのかもしれませんが。
[PR]
by dognorah | 2005-08-18 09:11 | コンサート

イギリスにあるシャガールのステンドグラス(その2)

c0057725_841527.jpg4月にこの題名の(その1)の記事を書いてから大分時間が経ってしまいました。本日ようやくもう一箇所の教会を訪問して、そこの宝となっているシャガールのステンドグラスを見てきましたので感想を述べてみます。
場所は、イギリスの南海岸にあるチチェスター(Chichester)という町にあるチチェスター大聖堂(Chichester Cathedral)です。ロンドンからは南南西に約100キロぐらい、一般道路を約2時間ぐらい走ったところにあります。割と有名な港であるポーツマスの東側20キロぐらいのところです。かなり大きな教会で、この町での数少ない(唯一の?)観光ポイントでしょう。

c0057725_842167.jpgシャガールの作品はたった1枚で、教会入口から見て一番奥の左側の窓に嵌められていました。完成したのは1978年、前回紹介したTudeleyの教会の最後の作品が完成したのが1976年でしたのでその2年後です。
この作品は、前回の12枚の作品のどれとも違った手法が用いられています。まず、色が赤に重点が置かれているのです。シャガールといえば美しい深みのある青が思い浮かびますが、今回のものは赤なのです。もちろん青や緑など他の色も使われており、少ないブルーは効果的なアクセントとなっています。
特筆すべきは赤の多様性で、下地に白、緑、黄色を使った3種類のニュアンスの異なる色を組み合わせているのです。そのためガラス自体の厚さが部分部分で異なり、そばで見るとかなり立体的になっています。これがえもいわれぬ効果を上げており、作品全体が気品さと色の躍動感を与えられて見事な雰囲気を醸し出しています。上に述べたように少ないながら青も要所に使われており、私は飽きもせずうっとりと見惚れていました。さすがにシャガールです。これ一枚のためにはるばるやってきた甲斐がありました。
日曜にもかかわらず、見物客はあまり多くなくゆっくりと見ることが出来たのもラッキーです。しかも美しいオルガン演奏をバックに丁度教会の聖歌隊が歌っていて、雰囲気もよし。いつの間にか私たちだけになっているので不審に思うと、遠くのほうで教会関係者が手招きしています。この部分の見学は3時で終わりだとのこと、あわててその場を去りました。

これでイギリスにあると思われるシャガールのステンドグラス作品13枚をすべて見たことになります。今度はフンメルさんに教えていただいたヨーロッパ各地の作品を見たいものです。さていつになるやら。
[PR]
by dognorah | 2005-08-15 08:46 | 美術

パイジエロのオペラ「ニーナ、または恋狂いの娘」DVD

イタリアのオペラ作曲家Giovanni Paisiello(1740-1816)の「Nina, o sia La pazza per amore」というオペラです。
c0057725_1341485.jpg
あらすじ
ニーナにはリンドロという恋人がいたが、父親の伯爵が金持ちの貴族と結婚させようとしたために、その男たちが決闘する羽目になり、リンドロは重傷を負う。リンドロが死んだと思ったニーナはショックで記憶を喪失し、家族を含め周りの人間を識別できなくなる。そこへ傷が癒えたリンドロが戻り、今は後悔している父親共々彼女の記憶を呼び戻す努力をし、最終的にそれがうまくいって二人はめでたく結ばれる。

キャスト
ニーナ:Cecilia Bartoli
リンドロ:Jonas Kaufmann
スザンナ:Juliette Galstian
伯爵:László Polgár
指揮:Adam Fischer
管弦楽:Opera House Zurich
演出:Cesare Lievi

c0057725_1435692.jpg初期のモーツアルトを思わせる古風な音楽にあまり場面展開のない舞台で単純な物語が進行するが、なんと言ってもバルトリとカウフマン(右の写真)の歌が聴きものである。
バルトリは、期待通りの歌唱で、ルチアを思わせるような狂乱の場もあって結構ダイナミックなう歌いっぷりである。
カウフマンは以前ロイヤルオペラの演目「La Rondine」でRuggero Lastouc役を聴いて以来注目してきたテノールであるが、この人も思った通りの甘いよく伸びる声で満足。
スザンナや伯爵も十分なうまさ。アダム・フィッシャーの指揮も軽やかな音楽をそつなくまとめている。
[PR]
by dognorah | 2005-08-13 01:45 | DVD

ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」 – DVD視聴記

1998年のミュンヘンオペラを記録したものである。

c0057725_2046127.jpgキャストは次の通り。
Tristan: Jon Fredric West
Isolde: Waltraud Meier
King Marke: Kurt Moll
Kurvenal: Bernd Weikl
Brangane: Marjana Lipovsek
指揮:Zubin Mehta
管弦楽:The Bavarian State Orchestra
演出:Peter Konwitschny

トリスタンを歌うWestは終始すばらしい声を聞かせてくれる。
イゾルデのマイヤーもさすがにうまいのだが、時々声がかすれるところがありこの舞台では絶好調とはいえないのが残念である。
マルケ王のモルは文句のつけようがない。堂々たるものだ。もっと歌う場面があればいいのにと思うくらい。

私は2002年にロイヤルオペラで実演に接しているが、イゾルデ(Lisa Gasteen)以外の歌手はすべてこちらの方がいい。あのときのリサ・ガスティーンはちょっと忘れられない名唱だった。

c0057725_20465888.jpgあちこちで話題のコンヴィチュニーによる演出は、すごい軽い乗りで重々しい音楽に対してかなり戸惑うところがあった。第1幕の船は遊覧船みたいだし(左の写真上)、トリスタンが髭を剃るための石鹸の泡をつけたまま長々とイゾルデと愛の交歓をする場面はどういう意味なんだろう。この石鹸を髭につける場面は第3幕でも登場するのでコンヴィチュニーは何か意味を込めているはず。第1幕ではトリスタンはイゾルデを馬鹿にして髭を剃る途中の格好のまま彼女に会いに行って恋愛関係になったことを思い出し、再会直前にまた石鹸を塗ってみたというところか。
第2幕ではトリスタンがイゾルデと座るためのソファーを舞台袖口からずるずると引っ張り出してくるのが笑える(写真中)。観客から特に失笑の声は漏れてなかったようだが。
第3幕は現代のアパートの一室みたいな部屋(セントラルヒーティングのラジエーターまである)でトリスタンがオーヴァーヘッドプロジェクターのヒモコンを操作してセピア色のスライドを壁に映している。
トリスタンが死ぬ場面はなく、最後は二つの棺桶の前にマルケ王とブランガーネの二人が祈りを捧げるシーンで幕となる(写真下)。これはトリスタンの死体の前でイゾルデが愛の詩の歌を歌う通常の舞台に比べて新鮮であり唯一感心した場面だ。
メータの指揮はこのオペラにふさわしく濃厚で格調の高いなものであった。
[PR]
by dognorah | 2005-08-11 20:55 | DVD